コールズマン特殊矯正センター
「オーランド署長には伝えなくて良いのですか?上の決定を」
アルドラと呼ばれる秘書の言葉に、ファルデウスは淡々と答える。
「不要です。元より最悪のケースの場合、オーランド署長を命令系統から切り離す予定でしたから。問題はフランチェスカが余計なことを言わないかですね」
目の前のモニターに映されていたのは上層部からの指示。
偽りだらけの聖杯戦争のコントロールが離れた際に発動される『オーロラ落とし』。
高高度から特殊弾頭を落とし土地の魔術基盤ごと塵に返す単純明快な後始末。
そんな結末を見せられてなお、ファルデウスはさして焦った様子は無い。
トラブル続きの聖杯戦争ではあったが、始まる前からこうなる結末は算段に入れていた。
不確定要素と言えばフランチェスカの気まぐれだ。
「当初の予定通りに、幻術を使って大聖杯のシステムだけ回収すれば良いですが、『終わらせるのが惜しい』と思い始めたら何をするのか分かりません」
「我々はどう行動しますか?」
「明日には撤収します。やり直すまで身を隠すことにはなりますがこちらも手札を使い果たすことはします」
「では予定通り通信網を全て遮断します。理由にあのハリケーンを使えば不自然さは無くなります。ただ…ハリケーンも異常存在と認識されていますが」
「そうですね……。英霊の力や大聖杯の活性化によって呼び出されたものならば、町の破壊と共に威力も弱まると推測出来ます。あくまで、嵐の中で全てを焼き尽くせる前提ですが」
アルドラに一通りの指示を伝えたファルデウスは自らの工房へ足を向けた。
そして周囲に誰もいないのを確認してから、鏡に反射する暗がりに話しかける。
「聞いていますね、アサシン」
暗がりの影が濃くなり、その中に微かに揺れ動く何かが現れたのをファルデウスは感じた。
「変異したフラット・エスカルドスは行方不明、藤丸立香とアヤカ・サジョウも同様にサーヴァントと合流したのち行方不明。不確定要素でありますが私たちでは対処出来ませんので警戒をするしかありません」
藤丸に関してはアサシンより不殺するよう釘を刺されていたこともあり慎重になっている。
しかし、これまでの戦闘を見れば彼はあまりにも危険すぎる。
偽りとはいえ基本的な聖杯戦争と同じく1人一騎しか召喚出来ないにも関わらず、七騎を息切れすることなく従える。
そんな藤丸よりもファルデウスが警戒すべき存在がもう一人現れた。
「今、私が注視しているのは小聖杯としてフィリアに宿った何かです。恐らく、神霊の残滓か呪いといった所でしょうが、こちらは土地に根ざし環境そのものを変えようとしています。アサシン、あなたには彼女たちの調査をお願いしたい」
闇からの返答は無い。
そもそも聞いているのかすら不明だが、そこに居ると確信を持つファルデウスは言葉を紡ぐ。
「最優クラスの気配遮断が可能なあなたでなければ、フィリアに取り憑いた神霊のサーチからは逃れられません。彼女は土地そのものに合わせカスタマイズしています。このまま繋がりが深くなれば……
フィリアの魔力量が増大し、スノーフィールドの街そのものが彼女のテリトリーに変わった時点で、汎人類史の枠から外れ行き止まりの歴史となる。
「彼女の目的に深い意味はありません。好きに遊び一方的に愛するくらいの理由で聖杯戦争を終わらせる訳には行きません。猶予は2日程しかありませんが、最低神霊の残滓さえ消すことが出来れば私たちの勝利目は出てーーーー」
「取り繕う必要は無い、契約者よ」
「!」
今まで沈黙を続けていた闇がはっしたような錯覚を覚える。
ファルデウスは焦ることなく闇からの言葉を平静を保ちながら待つ。
「汝の中で我が霊基を使い潰す時が来たのだろう」
「……ええ、その通りです」
言葉を1つ間違えれば、命を失う可能性もある。
普通の英霊であれば令呪を使われる前に殺される可能性とあるかいとうだが、ファルデウスはアサシンを観察した末に、短絡的な行動は起こさないと判断した。
その上で、更に一歩踏み込んだ言葉を口にする。
「私は、貴方に死んでこいと命じようとします。ただ、自害しろという訳ではなく、死ぬ可能性の高い命令を出すだけですので、あとは好きにしてください」
「……」
サーヴァントは感情も出さない。
敵意も、無くただ主人の命令を待つかのようだった。
「次の命令の後、貴方はここに戻る必要はありません。私は、聖杯戦争のマスターとしてリタイアします」
安ホテル
「いきなりの訪問にも関わらず歓迎してくれて感謝する!」
藤丸達の拠点であるホテルに突如訪れたのは、現代風の装いをしたセイバーだった。
東部の沼地にある屋敷に潜伏していたが、何事もない1日が過ぎたことに違和感を感じ街におりてきた。
「藤丸に友が増えて母は嬉しい。歓迎するのは当たり前」
「同盟と友は違うだろう。目的が済めば敵に戻るだけの関係だ」
「確かに一理ある。まぁ俺は裏切るとしたら真っ正面から斬りかかるけどな!」
あっけらかんと言い放つセイバーだが、その言葉には裏も表も無いものだと藤丸は直感した。
それはこれまで出会ってきた古今東西の王が持つ人を惹きつける何かを感じ取った故だろう。
「それにしてもカルデアか…。話を聞く限りものすごく心躍るところだな!」
既にカルデアの存在と目的を既に伝えてあり、聖杯を獲得してもカルデアへ譲渡することを了承してくれた。
「ここに居る英雄達も素晴らしいが、更に多くの英雄が君の背中を押してくれているのだろう?実に素晴らしい物語じゃないか!」
セイバーが藤丸をべた褒めする一方、オベロンが乾いた笑いをしていた。
「セイバー。嫌がることはしちゃダメだよ?」
「そんなつもりはないぞアヤカ。彼が嫌がるならちゃんと止めるつもりだった」
部屋に入ってきたアヤカに対して堂々と言うセイバー。
フラットの一件から寝付けていないため、アヤカの為に一部屋更に借りて休憩していた。
「それはセイバーの圧に気圧されてるだけなんじゃ…。藤丸君。少しいいかな…?」
藤丸は首を縦に振り、アヤカの休憩した部屋に招かれる。
雷雲が近づく影響かこのホテルも藤丸達とオーナーを除いて誰も居なくなってしまったため借りるのは用意だった。
内装は同じではあるがアヤカの私物が全くないため質素な雰囲気であった。
「あ、飲み物いる?コーヒーとか出せたら良かったけど…」
「気遣ってくれてありがとう。ジュースがあれば欲しいかな」
「それならあるね。そこに座って待ってて」
アヤカはやや古い冷蔵庫を開けオレンジジュースを取り出す。
喉が乾いた時に飲んでとカルデアのサーヴァントに言われたものの、眠気に呑まれて空けてすらいなかった。
静かな部屋にコップを置く音と注ぐ音が響く。
(気まずい…!凄い気まずいよ…!!)
藤丸に背を向けているアヤカだが内心はかなりテンパっていた。
彼女の知る限り歳の近い人と2人っきりになったことは人生1度もないうえ、コミュニケーションを振るのは苦手。
どうしようか悩んでいた時ーーー。
「ゆっくり休めた?」
「うぇ!?あ……うん。よく寝れたよ」
いきなり話を振られて思っていたよりも多くのジュースを注いでしまった。
「それなら良かった」
藤丸ははにかんだ笑みをアヤカへ向ける。
ドギマギしながらもふと息を吐き心を落ち着かせると、藤丸の前に座り話す。
「えっと…まずは助けてくれてありがとう。色々あって…どうしたらいいか分からなかったから…」
「色々あったから無理もないよ。落ち着いたら出ていってもいいからね」
「ありがとう。それにしても藤丸君…お人好しすぎない?」
「自覚はしてるよ。困ってる人がいたら俺のできる範囲で助けたいってエゴだけど」
「自覚した上で押し通してるんだ。羨ましいな…」
アヤカは視線を落としジュースを1口飲む。
彼女には振り返るほどの過去は無い、正確にいえばこの聖杯戦争以前の記憶を思い出せない。
自身が何者か分からないまま流れに半ば任せここまで来た。
「羨ましいなんてことは無いよ。俺だって色んな人との出会いや経験を通して気づいたんだから。アヤカさんもいつか気づける日が来るよ」
「出会い、経験…。藤丸君から言われると妙に納得しちゃうんだけど。もしかして洗脳かけてる?」
「そんなことないって。俺は普通の学生だよ」
「あんなにサーヴァント使役して普通はないと思うよ!?」
「俺、魔術使えないどころか魔力回路も無いよ」
「そうなの!?ならなんーーー。あ、私も似たようなものか…」
アヤカ自身もセイバーの宝具を連射しても魔力切れを起こさないことを指摘されていた。
他の魔術師達から異質と呼ばれた存在同士にしか分からないこともある、そう思ったアヤカは藤丸に問いかける。
「……ねぇ。良かったら貴方の経験を聞かせて欲しい。嫌な話なら大丈夫だから」
「分かった。なら…アメリカ大陸を徒歩横断した話とかどう?」
「待って。その話カロリー高くない?」
「そうかな?ハロウィンとかに比べたら軽いと思うけど」
「お願いしたのは私だけど想像を絶する経験積んでるのかな…」
アヤカは軽い頭痛を覚えながら藤丸の話に耳を傾ける。
彼の話す驚天動地の内容に驚愕、唖然を繰り返しながら笑っていた。
その笑顔はスノーフィールド聖杯戦争参加者の誰よりも人間らしく笑っていた。
お久しぶりです!
10巻販売を待っていたらFGO終章とFakeアニメ化してました!
オチを考えていたらスランプに陥り筆が止まってました…。
本当にすみません…。
そして10巻が今年夏に販売と告知された挙句、まさかのFGOコラボ!
やったぜ!さぁ、答え合わせと行こ…え?1部6章ベース?
じゃあネタ被らないから無し!みんな、コラボイベント楽しもう!