夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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混ざりゆく縁

ゆめのなか

ライダーのマスター、繰丘椿は夢の世界に構成されたスノーフィールドで満面の笑みを見せていた。

綺麗に手入れされた庭の芝に座り込み、複数の動物に囲まれている。

 

「皆可愛いね!まっくろさんも触ってみて!!」

 

木陰に縮こまってふるふると震えていた。

客観的に見れば明らかに異常な光景と思うだろう。

影、ペイルライダーにとって人の体は無くただ事象としての存在が形となっている。

 

「お日様が苦手なの?たいへんそうならお家入ろ?」

 

友達を心配するように声をかける。

椿にとってライダーは命の恩人とでも言える存在。

 

「みんな、この街が嫌いだからどこか行っちゃったのかな…」

 

夢の世界だからこそ誰も入れることは無い。

いるのは家族とライダーだけ、街もただの見かけに過ぎない。

 

「もう、誰も街から出ていかないよね」

 

ライダーにとって椿の願いは自分の行動理由になっている。

そこから今の発言が願いと判断し動こうと影を現実へ伸ばそうとした。

 

「へぇ。この世に及んでまだそんな幸せを願うなんてね」

 

見知らぬ第三者の声が夢の世界へ響き渡る。

 

「だぁれ?」

 

ライダーは自身の拡張を中止し声の主への警戒を最大にする。

この世界へ他人を入れるのはライダーの意思で行われる。

仮にアクセス出来たとしても即座に感知出来る。

サーヴァントと定義できるか曖昧な肉体と言えど危険と感じるものはある。

芝を優しく踏む音が聞こえ日の元に正体が明かされる。

白と青のきらやかな王様のような服を身につけた青年。

背中には身丈程の大きな蝶の羽が生えている。

 

「わぁ!妖精さんだ!!」

 

「その通り!僕は皆の人気者の妖精さ!!」

 

クルクルと回りマントを華麗に翻す。

まるで演技をしているような立ち振る舞い。

椿はその青年に見いられていた。

 

「貴方のお名前は?」

 

「僕の名はオベロン。()()()()()()()さ!」

 

 

スノーフィールド北部 大渓谷

ギルガメッシュのマスターであるティーネ・チェルクは宝具の一つである『ヴィマーナ』の後部から顔だけ覗かせ目の前の光景を焼き付けていた。

謎のアーチャーに横やりを入れた2体のサーヴァント。

考察をしようと思考を巡らせる前に事態が動いた。

瓦礫に埋もれたアーチャーが岩を火山のようにはじき飛ばす。

見上げるほどまで上がった岩の中から禍々しい魔力を纏った矢が現れた。

アーチャーが岩と同時に飛び上がり放ったからだろう。

ギルガメッシュは門から武具を放ち、女英霊は手の中に現れた弓に複数の矢を番え射出した。

そして謎の英霊は右手から緑のフリスビーのような光を込め投げる。

それぞれの攻撃で矢は空中で爆散する。

女英霊を一瞬アーチャーと予想したが横に美しい馬を召喚し空に浮いた岩を駆けていたからライダーと確信した。

問題は目の前に未だ立つ英霊。

アーチャーとライダーの戦闘をずっと見ていた。

 

「王の前で背を向けるとはどのような了見だ」

 

ヴィマーナに戻ったギルガメッシュ王が不機嫌そうに問いかける。

 

「ごめんなさい。貴方が眩しくて目を逸らしてしまったんです」

 

透き通るような声でギルガメッシュの方を向きニコリと笑う。

遠目からだったがその表情は唯一の友、エルキドゥがしていたものと似ていた。

 

「異邦の神でも我の威光を察するのは褒めてやろう。だが、その行為を次したなら真っ先に処断してやる」

 

そう言い玉座に深く座り戦闘する2騎に視線を合わせた。

目の前の英霊から殺気は感じられないが魔力が溢れていた。

状況が変われば直ぐにでも攻撃を仕掛けるつもりなのだろうと察知し警戒を少し強めた。

そして警戒を強めた大きな理由は彼女だけクラスの予想が出来ないからだ。

特徴的な武具は見当たらず、エネルギー波を放っていただけ。

魔力量からしてキャスターと予想したが肉弾戦が出来るとは考えられない。

 

(まさかルーラー?)

 

戦場に来たものの誰も攻撃することなく戦況を見ている。

少ない判断材料からそう決めつけるしか無かった。

 

 

「お待たせしました先輩!」

 

戦闘を見ていた藤丸の元にマシュとドラコーが合流した。

 

『状況は芳しく無いね。ギルガメッシュ王に敵対意思が無いことを言ったけど何処まで信じてるのか分からない。それにあの2騎、神霊クラスのサーヴァントだ』

 

これまで様々な国の神霊と出会ってきたが、どれも英霊の枠を越えた力を宿していた。

ククルカンも異聞帯とは言え神の力を持っているので魔力量で劣ることは無い。

 

「あのアヴェンジャー、かなり強い憎悪を持ってるわ。相当嫌なことがあったのね」

 

「だが神の力を宿した所で所詮人間なのは変わらぬ。それにお互い力の使い方が異なっている。やつが復讐者なのもそこが由来なのかもしれん 」

 

「お2人とも流石です…」

 

分析力もあるが2人と藤丸たちでは見えている世界が異なり、言葉を通して要訳してるように思えた。

 

「カルデアにいる彼と同じ性格なら高みの見物に徹すると思う。それに動いたとしてもウォーミングアップ程度だしね」

 

『マスター。またややこしくなってきました…』

 

念を通じてククルカンが報告してきた。

戦闘前はやる気に満ちていたのに今は困惑しているようだ。

 

「どうしたの?」

 

『あの2人問答に集中しててそんな戦わないんです。これじゃタイマンも無理ですね…』

 

「どんな話してるの?」

 

『ライダーの方がお前に殺されたんだとか言ってたり、武具が同じ神気を宿してるとか…』

 

聖杯戦争において真名は命取りにもなる。

どんな英霊であれ死因という弱点からは逃れられないからだ。

それが神霊なら尚更。

 

『…まさか。いや…有り得ない…!』

 

ダ・ヴィンチの声が微かに震えていた。

 

「どうしたんですか!?」

 

『候補が1人いる。けど…私たちの知る彼と余りにもかけ離れているんだ!!』

 

「あのサーヴァントは誰なんですか!?」

 

『彼の名は、■■…』

 

ブツンとブレーカーが落ちるように通信が遮断された。

同時に感じたのは恐ろしいほどの悪寒。

藤丸は心臓を冷たい手で握られるような錯覚を感じた。

 

「今のは…」

 

「あやつ…飲んだのか…」

 

その悪寒の正体は男から発せられた覇気。

この世全てを恨むようなおどろおどろしい雰囲気だった。

同時に沸き立つのは赤黒い影。

それが生き物のように蠢いている。

 

「ククルカン!」

 

『とってもヤバいです…全員本気になっちゃいました…!』

 

かなり危険な戦場に放り込まれていたにも関わらず声が上ずっていた。

彼女の内に潜む本性が顕になった証拠だ。

バーサーカーのように止められない訳では無いがやると言ったらやるというレベル。

 

「このままだと本当に街に被害が出ます!」

 

「皆行こう!!」

 

影から身を乗り出し向かおうとした時、見渡す限り

の大森林に立っていた。

 

「え…?」

 

マシュの呆けたような声が響く。

 

「幻術か。くだらぬ術を使いおって」

 

ドラコーが雪の粒を爪で払い除けながら呟く。

しかし手に触れると冷たい感覚が伝わった。

 

「これ、土地そのものを騙してるわね。よっぽど使い慣れてないとここまで制御出来ないわ」

 

「しかし…誰がこんな事を…?」

 

『おや、僕のことをお呼びかな?』

 

森の中に少年の声が響く。

周りを見るも人らしき影は見えない。

 

『これが天文台のマスター…うわっ!ホントに魔術の魔の字もない一般人じゃん!凄い凄い!!』

 

パチパチと拍手が聞こえる。

煽りでもない賞賛が森を揺らす。

 

『ここまで来れたのも運命のお陰かもね!』

 

「黙れ。貴様の道楽などに付き合うほど暇では無い」

 

『まぁまぁ。あの3人ならお話で解決したから許してよ』

 

姿が見えない以上その言葉を信じるしかない。

それにしてもこの胡散臭さはマーリンレベルだ。

 

『それじゃまたね!今度は夢の中だったりね!!』

 

感謝にもならない言葉を残し森は蜃気楼のように薄れ元の渓谷が現れた。

 

「今のはキャスターでしょうか…」

 

「かもね。今はククルカンを連れて帰らないといけないけど無事かしら」

 

アルクの言葉で気づいたが3人の鞘を納めたのが事実だとしても、ククルカンへの敵意は別。

目の前から逃がすはずが…

 

「ただいま戻りましたー!」

 

元気な声が夜空にこだまする。

 

「無傷か。つまらんな」

 

「私をなんだと思ってるんですか!南米の風ククルカンですよ!」

 

「侵略者の心臓がよく吠える」

 

「それ貴方が言える立場じゃないと思うけど?」

 

「余は特別なのだ。手を貸してやるだけでも光栄と思え」

 

フンと鼻を鳴らし2人を睨む。

上から目線ではあるがちゃんと守ってくれるのがドラコーの優しさでもある。

 

「3人について何か分かった?」

 

「最後に真名言ってましたね。確か…ライダーはヒッポリュテ、アヴェンジャーはアルケイデスと」

 

「アルケイデス…それって…」

 

『やっと繋がったー!皆無事かい!?』

 

ダ・ヴィンチの声が割り込んできた。

 

『急に通信切れて焦ったよ!それにしてもアヴェンジャーは!!』

 

「もういなくなりました…ダ・ヴィンチちゃん、彼はアルケイデスと言っていたようです…それは…」

 

マシュの声が先程のダ・ヴィンチ同様震えていた。

 

『やはりか…アルケイデスはある英霊の幼名。神に気に入られその名は封じられた。彼の本当の名は…ヘラクレス…ギリシャが誇る大英雄だ』

 

 

森の中

4騎の英霊が一食触発の事態に迫っていた頃。

セイバーに巻き込まれる形で魔力供給をしている仮のマスター、アヤカ・サジョウは困惑していた。

オペラハウスで召喚に巻き込まれ、警察署、ライブハウスと連れ回されてきた。

そして、静けさが漂う森の中でセイバーと1人の英霊と話していた。

その光景を頭に角の生えた少女に膝枕され、大きめの犬を撫でながら見ていた。

 

 

「俺達と、同盟を組む気は無いか?」

 

セイバーは薄緑の長髪を靡かせる英霊に問いかける。

 

「組む理由はあるのかい?」

 

「街で吸血種を見た。あれが表に出てくるのは異常だ…この聖杯戦争、何かが変だ」

 

「…」

 

「このまま行っても良い結果が得られるとは考えられない。裏で糸を引くものを排除してか仕切り直たい所だが…」

 

チラリとアヤカの方を見て聞こえないくらい声を小さくし続ける。

 

「仮に俺が敗退し教会に助けを求めたとしても安全とは限らない。奴らは手段を選ばないからな」

 

「随分、マスターの事大切にしてるね」

 

「巻き込んだのは俺の方だからな。その責任を全うせず逃げるのは我が一族が系譜する国々と、偉大なる王に泥を塗る事になる」

 

小声ながら強い決意が乗っていた。

不思議な状態に相手の英霊はクスリと笑う。

 

「君は僕の知る王様とはタイプが違う。友達が人一倍多そうだ」

 

「そうか?君の方が友人多い気がするが」

 

「僕はこの世界に生きる全ての人が友人だと思ってるよ。一方的な片思いになるけどね」

 

両手を静かに広げると地面が泡立つように波打ち、中から剣や槍、斧等無数の武器が生み出された。

 

「ちょと、あんた達何やってんの…」

 

談笑の割には物騒な展開になりアヤカは話しかけるもセイバーは振り返らず手を上げる。

 

「安心しろ、アヤカ。ただの力試しだ。弱いやつと手を組むのは普通の事だろう」

 

お互い全身に魔力を流し戦闘体勢をとる。

間合いを図りタイミングを見計らっていたその時。

 

「ふたりとも。やりすぎはめっ、です」

 

喧嘩をする子供を叱るように少女が声を発した。

この森に来た時点で座り込んでいたので何かしてくるのかと身構えていたが黙って微笑みポンポンと足を叩き招いていた。

セイバーも行ってこいと言わんばかりに背中を押され今に至る。

 

「大丈夫だよ。全力であって本気じゃないから」

 

「エル…ランサーの全力は、母でも手を焼く」

 

「お母さんなの!?」

 

「彼女から見れば僕たちは子供だからね。気にしなくていいよ」

 

母と呼ぶ英霊は子供のように頬を膨らませていた。

 

「止めなくていいの…?」

 

「この森に被害を出すなら止める。こう見えて強いから」

 

フンスと鼻を鳴らし2人を見る。

このサーヴァントの真名を聞き、腰を抜かすのは別の話。




プリテンダー代表は皆大好きオベロン!
というかオベロンしかこの大役無理でしょ!
レディアヴァロンもありと思ったけどただの妹だし…
短編での絡みをそのまま移植しました。
そしてロリママの姿も。
誰かは作中にて解禁するまで言いません。
まぁバレバレですけど。

ところでオーディールコールそろそろ来ませんかね。
来月辺りには来そうと踏んでますけどどうなんでしょうか。
周年でも『強くしとけよ!』押しがありましたけどまた個人レイドですかね。
気長に待ちますけど!
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