夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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神に呪いと祈りを

スノーフィールド工業地域 地下

中心街から離れた場所に作られた工場が立ち並ぶ区域。

その中でもさらに奥まった場所に作られた塀の高い食肉工場。

外見は変哲もないがその地下は異常とも言える程の世界が広がっていた。

地上の敷地面積をゆうに越す空間があり、その正体は何重にも張られた結界により守られている魔術工房だった。

そんな工房を作ったのが『スクラディオ・ファミリー』。

一般的に言えばマフィアなのだがその正体ははぐれ魔術師を吸収した組織。

トップは魔術の知識もない一般人と言われており、魔術師の根源へ至る行為そのものを支援することで着々と力を蓄えていった。

そのボスであるバズディロット・コーデリオンは1人地下工房に立っていた。

外見年齢は30代ぐらいで外見はかなり整っているものの目つきは獅子のように鋭く見つめたものの魂を掴むようだった。

 

「…戻ったか」

 

気配を感じ振り返ると影のようにアルケイデスが立っていた。

 

「どうだった。噂の英雄王は」

 

「…強いな。こちらの挑発に乗る素振りもなく戦っていた。怒りを見せることもあったが表面的だろう」

 

()()()()()()()の話では慢心に満ちた激情家と聞いたが…鵜呑みにするのは良くないな」

 

今の英雄王は本来なら有り得ない慢心を捨てた寛大な状態にある。

それはたった一人の友と同じ戦場で会った事による結果。

 

「それに邪魔してきた奴も少し気になる」

 

「ライダーは1度殺せたならまた殺し返してやればいい」

 

「違う。もう1騎だ」

 

「…」

 

ライダーと同時に割り込んできた謎の英霊。

両者に襲いかかることなく自衛のみ行っていた。

 

「あれから異なる神の力を感じた。だが、神にしては少し歪に取らえた」

 

「純粋な神霊を呼ぶ事は難しい。恐らく何かが混ざりこんだのだろう」

 

アルケイデスが憎む神々を召喚する手は無いわけではない。

しかそこへ至るには触媒や魔力のみでは呼べず、最も波長の合う依代を捧げる必要がある。

 

「あのサーヴァントも場合によれば私の邪魔になる存在だ。場合によれば優先して倒す必要がある」

 

「順番など構わん。好きに殺せ」

 

「…マスター、貴様の魔力の源はなんだ。その泥ですら普通の魔術師が扱えない物だ」

 

「俺の魔力の枯渇を心配しているのか?」

 

「私の宝具とその性質を知らないはずがなかろう」

 

宝具とは自分が持てるカードのようなもの。

円滑に使えればそれだけ有利に事を運べる。

だが、膨大な宝具にはそれ以上の魔力が必要。

アルケイデスは魔力そのものの流れを感じ取れるものの底を感じることが出来なかった。

 

「簡単な話だ。電池を使ってるにすぎない」

 

懐から取り出したのは野球ボール程の透明な結晶。

しかし光に当たる度に様々な色に輝いていた。

 

「魔力結晶か。しかしこの純度なら数は限られるのではないか」

 

かつてギリシアの魔女達がマナを吸収し圧縮した形で生成していた。

それと同じ製法なら現代では作れない上、アルケイデスに流れる魔力量と釣り合わない。

 

「…魔力に関しては、問題ない」

 

バズディロットについて行くと呼び出された場所よりも更に広い部屋が広がっていた。

そこにあったのは奇妙な機械に繋がれた円柱型の水槽で区画の中央には召喚陣が複数設置されている。

そして奥には宝箱のように先程の結晶が敷き詰められていた。

 

「あれはほんの一部に過ぎん」

 

バズディロットの手下が何やら作業をすると水槽に浮かんでいた人型の魂が泡となり消え、中央に結晶が作り上げられた。

 

「…贄か」

 

「スクラディオ・ファミリーは敵対する相手には事かかかないんでな。不服か?」

 

魔力に関する納得が行き、アルケイデスは首を横に振る。

 

「オリンポスの暴君への復讐する前には、些細なことに過ぎん。それに…」

 

全身から赤黒い魔力を放ちながら怨嗟の言葉を放つ。

 

「奴らは魂を贄すら思わず…嫉妬だけで我が子の命を捨てるのだからな」

 

 

安ホテル

目を覚ますと心地よい風が藤丸の顔に当たる。

昨日の一件でホテルの窓が開いたままになっていた。

応急処置としてオーナーがビニールシートで補ったものの気持ち程度。

それでも雨を凌げるだけマシなんだと思い滞在している。

 

「先輩、失礼します 」

 

ノックと共にマシュが入ってきた。

 

「よく眠れましたか?」

 

「ありがとう。ちゃんと寝れたよ」

 

寝起きもあって目がしょぼしょぼしたが目を擦り意識を覚醒させる。

 

「アサシンさんを見ましたか?昨日の夜から見ていないのですが」

 

「彼女は1人で動いているよ。どうしてもやりたいことがあるって」

 

「分かりました。無事だといいですが…」

 

パスがまだ繋がっており、弱まっているのも感じ取れないので無事でいるのは分かった。

 

「まずはご飯食べましょう。昨日は体力かなり使ったのでお腹減ってますよね」

 

スノーフィールドに来てから何も食べていない。

何とか誤魔化してきたが胃が痛くなり限界だった。

 

 

2人で外に出て路地裏に入りサーヴァントは霊体化させ歩いていた。

途中、売店に売られていたベーグルとコーヒーを食べる。

これまでの異聞帯ではいつも食べているものを再現したような味付けや効率の良いシンプルな食事ばかりだったので落ち着いて食べれた。

 

「まずは昨晩の出来事を整理しましょう」

 

『まさかギリシャの大英雄があんな姿になるなんて… 』

 

「アルケイデスと言ったな。奴は間違いなく黒化している」

 

黒化、別名『オルタ』。

アルトリア・ペンドラゴンやジャンヌ・ダルクと言った善性のサーヴァントが聖杯等の外的要因により本来なら有り得ない悪性や別側面を持った状態。

聖杯戦争で召喚されることはほぼ有り得ない例外。

 

「あの泥は余と同じ聖杯由来のもの。アレを飲み干すとは恐れ入った」

 

「貴方から見て彼はどのくらい保ちそうなの?」

 

「…この聖杯戦争が終わった後でも保てるくらい、と言えば良いか」

 

「聖杯戦争終わってもいるんですか!?」

 

「泥を浴びれば並のサーヴァントは霊基が汚染され朽ちる。だが、それすら乗り越えたならその肉体は受肉したも同然となる」

 

つまりアルケイデスは人とサーヴァントの境界に立っているようなもの。

当然、心臓を抜かれれば死ぬだろうが神を惚れさせた肉体を穿つのは至難の業。

 

「やつを倒せるのは聖杯戦争中だけ。それを超えれば誰も止めることは出来ん」

 

「ギルガメッシュ王の宝具を抜けば勝てるのでは無いでしょうか?」

 

「あれは対界宝具よ。世界そのものに影響を及ぼすから最大値にはリミッターがある。彼相手では本気と言えど出力は抑えられるわ」

 

藤丸が見たギルガメッシュ王の本気はバビロニアでの出来事。

ビーストⅡことティアマトに対し振るわれた渾身の一撃。

まさにこの世の地獄を放つほどの禍々しさがあった。

 

「ますます戦力を増やす必要がありますね。今日も行くんですよね?」

 

「うん。それに早く合流しないと危ないからね」

 

たとえサーヴァントでもあのレベルの戦いに巻き込まれれば無事で済む保証は無い。

藤丸は昨日と同じくパスを辿り歩みを進める。

 

スノーフィールド中央教会

街の中央からやや離れた所に建てられた教会。

白の壁にやや赤い屋根のシンプルな景観。

通りを挟んだ先には大きな病院が建っていた。

 

「ここにいるんですか?」

 

「間違いない」

 

「まぁ彼ならここに居てもおかしくないわね」

 

木製の扉を開けると天井の高い講堂が広がっていた。

奥には祭壇があり、ステンドグラスで綺麗に飾られていた。

 

「誰かと思えば君か」

 

綺麗に並べられた長椅子の一つに眼帯の神父が座っていた。

 

「警察署ではありがとうございました」

 

「別に感謝されるようなことはしてないさ。聖杯戦争の運営が俺の仕事だからな」

 

「神の道具がこんな所でゆっくりしてていいのか」

 

「こんな真っ昼間からやり合う馬鹿は居ないだろ」

 

ハンザは横に置いてあった皿から赤い野菜を1本頬張る。

山のように置かれている事からよっぽど好きなのだろう。

 

「それ、ジョロキア?」

 

「よく分かったな。食うか?」

 

「遠慮しとく。なんで聖職者って辛いの好きな人ばっかりなの…」

 

「ここに来た理由は分かっている。迷子センターじゃないがちゃんと保護したぞ」

 

コツンコツンと革靴の音が講堂に響く。

 

「ご無事でしたかマスター」

 

ハンザと同じ黒い神父服に身を包み、日焼けした茶色い肌と白い髪が特徴的な青年。

ルーラー、天草四郎。

江戸時代、長崎で発生したキリシタンの地位向上のための反乱、島原の乱を起こした張本人。

魔術に対する知識もあり、監督役のようなものもした事あるらしい。

 

「俺と似たような服装だからてっきり聖堂教会からの監督役かと思ってな」

 

「聖堂教会とは少し縁はありますが今回は1人のサーヴァントとしていますからね」

 

「にしても何体引き連れてんだ?魔力量だけでも冠位じゃないと扱えきれんぞ」

 

「仲間がサポートしてくれているから大丈夫なんです」

 

藤丸はあくまでカルデアと特異点を繋ぐ橋。

魔力そのものはノーチラスが送る電力をベースに変換している。

 

「…そうか。用は済んだろ?俺に関わっても何も出てこないぞ」

 

「1つ質問よろしいですか?」

 

マシュがハンザに問いかける。

 

「この聖杯戦争をどう思いますか?7騎以上のサーヴァントが召喚され競い合うこの現状。明らかに異常です。監督役なら行動されるべきでは無いんですか?」

 

「…確かに変なのは認める。だが、聖杯戦争のルールそのものは違反していない。幾らサーヴァントが増えようが残るのは1組だけ。それを逸脱しなければ俺は良いと思っている。それにだ」

 

人差し指をくるくると回しながら説明していたがピタリと止まる。

そして、ゆっくりと藤丸の方へ指先が向く。

 

「アンタが1番変だけどな」

 

サーヴァントを複数使役してても息切れ1つかかない。

仲間のサポートとは言えど限度を超えている。

 

(しかも一般人と来た。魔術回路を隠すにしてもあまりにも上手すぎる…)

 

深くは聞かなかったが死徒以外で危険と感じている人物になっている。

味方であれば心強く、敵であれは試練となる存在。

 

「そこまでの力を持ってしてアンタは何を願う」

 

監督役なら参加者の願いを聞くことは本来あってはならない。

だが、その強大な力を持つからこそ聞く意味があるとハンザは思った。

 

「この戦いを止め、何気ない明日を掴みたい。それだけです」

 

「…」

 

想像以上に普通過ぎる夢。

呆れてしまうような話ではあるものの否定は出来ない。

 

「そうか…なら文句は言えないな。引き止めて悪かったな」

 

そう言い、藤丸が天草を連れて出て行っても深追いはしなかった。

 

 

安ホテル

 

「なるほど。アヴェンジャーが召喚されたのですね…」

 

これまでの出来事を天草に手短に説明する。

その際、何処から持ってきたのか分からないがアルクがホワイトボードを出してきてくれた。

街のデータを端末に表示し、現状の見取り図を把握する。

 

「本格的な戦闘は行われていませんが時間の問題だと思われます」

 

「そうですね。しかも神霊がここまで召喚されるのは異常です。今夜、何か大きなことが起こってもおかしくありません」

 

「同じクラスのサーヴァントが2騎も同じ聖杯戦争に現れる…大聖杯がこの地にあるんでしょうか」

 

「話を聞く限り大いに有り得ます。それに私の知るものよりもかなり強大です」

 

ここまで大規模な聖杯戦争はルーマニアで行われた聖杯大戦、そして魔術王ソロモンによる7つの特異点クラス。

どちらにせよ莫大な魔力が必要であり人が管理できるものでは無い。

 

『ここは冬木のような霊脈も、魔術王による土地そのものへの干渉も無い。人工的な魔力だけでここまで呼べるのか…?』

 

「そもそも聖杯ってどうやって作るんですか?」

 

ククルカンが生徒が質問するように手を上げる。

 

「聖杯は器と大聖杯に分かれる。器はアインツベルンの人形に降ろし実体化させ、7騎のサーヴァントの魔力をもって大聖杯の炉に穴を開け根源へ至る…が魔術師共の考えだろう」

 

ドラコーが手元に小さな聖杯を浮かび上がらせ説明する。

これまで手に入れてきたものよりも小さく器と言うよりグラスみたいだった。

 

「まぁ余はビーストだからな。人間の欲望さえあれば作れる」

 

クツクツと笑いながら掲げる。

 

「さすが黙示録の獣ね。なら何処にあるかは分かるはずでしょ」

 

「もちろんだとも。ここが他と同じならな」

 

「どういう事ですか?」

 

「何度も言うがここの魔力は入り乱れている。更に神霊同士の衝突により不純物が混じって特定が出来ぬ」

 

「つまり、犬が匂いで探すのと同じという事ですね」

 

「余を犬風情と同じにするでない。マスターがいなければ首を跳ねていたぞ聖教師」

 

鷹のように睨みつけても天草は笑顔を変えることは無かった。

藤丸は夜まで安静にし状況が動くのを身構えていた。

そしてネオンが輝き始めた時、事態は想像を越えて動き始めた。




ルーラー枠は天草四郎にしました!
ジャンヌもありましたけど申し訳ないんですけど最初に候補から消しました。
原作知ってる人なら分かりますけどかなり目つけられてるんですよね。
それじゃ在り来り過ぎると考え嫌われてる方を選びました。
元監督役で、聖杯の加護をかすり受けた。
この采配いいんじゃない?(自己満)

そして各陣営のマスターを少しづつ紹介していきます。
FGOでコラボしたらアポみたいにマスターの居ないスノーフィールドでサーヴァントたちが入り乱れる感じかなと。
それやると暴走しそうなのが何体か出そうなのでやりませんでしたが…

あと評価とお気に入りが一気に上がって更に焦ってます。
感謝感激宝具あられ!
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