夢想煉獄都市スノーフィールド   作:薫製

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防衛戦

???

目を覚ますと真っ白な空が見えた。

ホテルに戻ったのだから起きれば少し汚れた天井が見えるはず。

普通なら驚くはずだが藤丸は軽くため息をつき起き上がる。

これまで特異点やサーヴァントの過去と接続してきたからこそ培われた勘がある。

ただ、誰のなのかは分からない。

アサシンの夢にしてはクリア過ぎる。

立ち上がりあてもなく街を歩く。

人はいるものの魂を抜かれた人形のようにブラブラと歩いている。

 

「おや?おやおやおや〜?」

 

聞きなれた胡散臭い声が街にこだまする。

 

「これはこれはマスター!夢心地でここに来るなんて何処までも運がいい!」

 

「何でここにいるの、オベロン」

 

蝶の羽の生えた妖精王のオベロンがにこやかに笑いながら立っていた。

 

「僕は妖精だよ?夢の世界へ誘う魔法の粉を持ってるんだからいるのは当然さ」

 

そんなもの持ってないでしょと心で思い怪しむ。

オベロンの妖精眼があればこの感情は筒抜け。

それを敢えて言わず内に隠すのが彼らしい。

 

「ここはある女の子の夢の中。純粋な願いのみが叶う楽園」

 

笑みを崩さず淡々と説明する。

 

「まぁその願いも今揺るがされているけど。他人から唆され放つ言葉も願いとされる。機能とは言え害なら助言ぐらいすれば良いのに」

 

やっと表情を崩し悪態をつく。

 

「誰かに脅されているの?」

 

「脅されてないさ。単に巻き込まれてメンタリストに…おっと。マズイ」

 

目線の先にあったのは雷雲のようなどす黒い塊。

この街を覆うかのように膨れ上がり2人に迫っていた。

 

「僕も警戒されているとはいえ軽率だったか。それじゃ目覚めの時だよ。なぁに。直に帰って来れるさ」

 

指を藤丸の顔の前でクルクルと回す。

すると指の動きに合わせ視界がグニャリと曲がり始めた。

 

「せいぜい抗いなよ。その善が報われることを祈ってるよ!」

 

嘘くさいエールを貰い視界は完全に黒くなった。

 

安ホテル

ゆっくりと目を開けると黒い染みが少し付いた天井が見えた。

外を見ると日が傾き始めている。

 

「おはようございます。先輩」

 

傍らにはマシュが座っており微笑んでいた。

 

「ふぁぁ…おはよう。寝すぎたかな」

 

「いえ。6時間キッチリ寝られてました」

 

「うん。本気の寝だね」

 

すると藤丸の腹が軽く鳴る。

昨日の戦闘からまともに食べておらず疲労で寝れたようなものだ。

 

「フフッ。今からご飯用意しますね」

 

「ありがとう」

 

マシュが部屋を出ていくのを見て通信を開始する。

 

『おはよう。ちゃんと寝れたかい?』

 

「うん。あとは体力をつければ大丈夫」

 

『そっか。今日はハードになりそうだからしっかり食べるといい』

 

ベットから少し足を垂らし楽な姿勢を取る。

意識を整えダ・ヴィンチの報告に耳を傾ける。

 

『君たちが行った工場の持ち主はダミー会社だった。本来の持ち主はスクラディオ・ファミリー。簡単に言えば魔術師によるマフィアだね』

 

マフィアが聖杯戦争に関わるのは異常だ。

触媒を用意するだけでも至難の業な上、魔力供給も安定しなければ枯渇し自滅する。

 

『時計塔からつまみ出された違法魔術師を引き取り勢力を拡大した。恐らく人ならざる行為も容易く行われているに違いない』

 

「泥…」

 

『そう。霊基を変えるほどの泥をこの時代で回収するのは難しいし不可能だ。そこから考えられるのは…』

 

「黒幕による提供…」

 

この特異点を生成した原因が触媒と泥を提供した。

目的がまだ判明していないが人理そのものを覆す事態ならどうであれ止めるしかない。

 

『あと病院を中心に人の気配が不自然に消え始めている。広域に及ぶ人払いの影響だろうけど気になるね』

 

魔力の流れそのものは歪とは言え検知は出来る。

人払いは魔術師にとって基礎的なもの。

聖杯戦争に参加しない魔術師もいるらしいので張られるのは不思議では無い。

だが、広範囲に展開したとなれば話は別。

 

「行こう。何か起こるかもしれない」

 

通信を切り静かに息を吐く。

何か嫌な予感がする。

これまでの経験からなのか薄れてきた運命力なのかは分からないがそんな気を感じていた。

 

 

中央病院付近

結界を抜け静かになった街を歩く。

裏路地のような所ではあるものの真っ直ぐ行けば病院前の通りに出る。

近くには前に訪れた教会があるので土地勘は何となくある。

同じ街にいるのにこことは違う世界に来た感覚。

まるでオベロンに会った夢のような。

 

「この先に何名か居ますね。皆さんが会敵した宝具持ちかと」

 

「病院を攻めるつもりでは無いだろうな」

 

「一体誰から守るんでしょうか…」

 

「地獄。かもね」

 

アルクはある方向に指を指す。

そこには象ほどの大きさの3つ首の黒犬が青い吐息を口から揺らめかせながら歩いていた。

 

「ケルベロス!!」

 

ギリシャ異聞帯で何度も合間見えた神獣。

見慣れた存在とは言え街中に現れる姿はミスマッチしている。

 

「奴が来たのか」

 

「うわっ。アソコに居ますね…」

 

犬の体毛と夜空に紛れて見にくかったが背中にアルケイデスが弓を構え狙っていた。

 

『病院を吹き飛ばすつもりだ!皆彼を止め…』

 

通信がまた途絶した。

ケルベロスとアルケイデスから溢れ出た神代の魔力により遮断される。

 

「ここで彼を止めないと!」

 

「はい!!マシュ・キリエライト!行けます!!」

 

「やっと戦えますね!」

 

「今宵は存分に暴れよ。インヴェイダー。余では奴との相性が悪いからな」

 

「番犬は私とアルクェイドさんで対処します。よろしいですか?」

 

「えぇ。少し気になる気配もあるけど任せて!」

 

地面に向かって1度放たれたタイミングを見て飛び出した。

 

「先手必勝!!」

 

ノーモーションで音速に至ったククルカンがケルベロスの背中目掛け突貫する。

存在には最初から気づいていたからなのか歪な軌道を最低限の動きで避け落下した。

地面に着地すると当たり前のように道路に巨大なクレーターを作る。

ただの着地でクレーターを作り上げるのを2度も目撃した警官隊たちは宝具を握る手が強くなった。

 

「邪魔者が居たら、かみ殺せ」

 

ケルベロスに指示をし、アルケイデスは目の前に立つサーヴァントを吟味する。

 

(このスピードとパワー。神域に到達しているな。しかし、本当に神の力なのか?)

 

アルケイデスの感じてきた神の力とは似ているが何処か異なる。

信仰だけではなく想いで完成されたような。

 

(だが、異邦の神であろうと屠るのみ)

 

神である事には変わらないと判断し、矢を手に持ち距離を取ったククルカンへ投げる。

 

「ちょっ!?」

 

避けようとしたものの背後に建つ病院に気づき、矢を正面から受け止める。

それでも完全に止めきれず地面を抉りながら下がっていく。

少し大きめの矢とはいえここまで押されるとは思っておらず焦る。

 

(マズイですね…このままだとリングアウトかも…!)

 

勢いを殺しきれ無いと判断し真上にかち上げるように矢のパワーを逸らす。

ガラ空きになったボディを逃すほど愚かではなかった。

 

「終わりだ」

 

限界まで引き伸ばした弓から手を離す。

空気を押し退け矢がククルカンの心臓目掛け飛ぶ。

慢心をしている訳では無かったもののアルケイデスは見落としていた。

ククルカンは死に際だと言うのに笑っていたことを。

矢の前に黒い泥が湯水のように突如湧き上がり飲み込む。

勢いを無理やり止められ溶けるように矢は泥へ消えていった。

 

「ナイスタイミング!」

 

体勢を戻したククルカンが止められた車に向かって親指を立てて感謝を述べた。

 

「フン。貴様なら上手く立ち回れていたろうに」

 

椅子のように車の上に腰をおろし戦況を眺めるドラコーがいた。

 

「貴様も俺と同じか」

 

「同じ?馬鹿げたことを。アレを少し飲み干せただけの復讐者が吠えるでは無い」

 

幼子の様相だが中身は世界を滅ぼす人類悪そのもの。

霊基のみをサーヴァントに合わせただけであり思考は変わっていない。

 

「この技を使っても容易く超えられるだろう。だが…」

 

ドラコーの背後から6匹の龍が顕現する。

隣にそびえ立つビルくらい大きく、それぞれが首を伸ばしアルケイデスを威嚇する。

 

「気分が良い。特別に試練をくれてやろう。なぁに、この程度朝飯前だろう?」

 

余裕の表情を浮かべた売女がケタケタと笑っていた。

そんな状況でも魔力を乱すことなく龍を見上げる。

 

「その慢心。後悔するがいい」

 

布越しにアルケイデスは自身の持つ宝具の切り時を見ていた。

そんな思考も小さな邪魔で遮断される事になる。

 

 

ケルベロス相手に天草とアルクウェイドは立ち回っていた。

これまで幾度も戦ってきたがこのタイプは少し違う。

同じ攻撃をしてくるもののパワーが格段に上がっており、それぞれが思考しているのか攻撃が読めない。

 

「よっと!」

 

青い炎をアスファルトを地面ごと素手で捲り上げ防御壁として使う。

本来なら壁になること無く溶けるはずだがアルクは霊脈を強引に回収し強化した。

 

「はっ!」

 

天草が空間に固定した三本の黒鍵を火が収まったタイミングで放つ。

1頭の首元に刺さるとケルベロスと同じ青い炎が上がる。

拒否反応を起こすかのように首を振り体勢を崩す。

 

「今です!」

 

「オッケー!ぶっ飛ばす!!」

 

周りに飛び散っている瓦礫を跳ねるように渡り、顔面目掛け回し蹴りを叩きつける。

体格差が何倍もあるのにケルベロスは勢いに負け地面に倒れた。

 

 

「これが…サーヴァントなのか…」

 

警官隊は目の前で起こる戦闘に唖然とするしか無かった。

神の獣を打ち倒し、規格外の力を持つ男とタイマンで張り合う。

聖杯戦争の概要しか知らなかったとは言えここまでのものとは想定していなかった。

 

「皆さん大丈夫ですか!!」

 

オルテナウス装備をつけたマシュと藤丸が警官隊へ近づく。

反射的に武器を構え身構える。

 

「落ち着いてください!私たちは争うつもりはありません!!」

 

盾もこちらではなく戦闘している方角に向けられており敵意は無いのは判断出来る。

本能を何とか抑え警戒心だけ残し下ろす。

 

「状況を教えて貰っても良いでしょうか」

 

「…この病院にマスターがいる。ただ、英霊の制御が出来てない。このままだと聖杯戦争どころの騒ぎじゃなくなる。その為にもその子を保護し教会へ届けなくてはならない」

 

「分かりました。ここは俺たちが引き受けます。皆さんはその子の元へ!」

 

藤丸は眼前の敵を見る。

ケルベロスは問題無いものの、アルケイデスは厄介だ。

ヘラクレスの持つ十二の試練は死からの再生。

一度受けた攻撃に耐性を持ち、ランクを上げながら十二回倒す必要がある。

オケアノスではその力に圧倒され、アークに封印する事で対処した。

それも召喚されたサーヴァントが良かっただけで一つ間違えば終わっていた。

 

「分かった。ここは任せ…」

 

警官は最後まで言いきることなく、目を少ししかめた。

 

「何かありましたか?」

 

「いや…あそこにいるの誰だ?」

 

戦場を見るとケルベロスとアルケイデスに対して警官が攻撃を加えていた。

宝具を持っていても分が悪いのに何の加護もない警棒を振り上げている。

サーヴァントたちも何が起こっているのか分からず攻撃の手を止めている。

 

「失礼。君があのサーヴァントたちのマスターか?」

 

藤丸の横に現れたのは金髪を刈り上げたガタイのいい警官。

 

「はい。貴方は?」

 

「名乗るほどの者ではないがバーサーカーとでも言わせてくれ」

 

「バーサーカーなのに理性的なんですね」

 

「これは偶々だよ。狂気に飲まれなければまともに居られないだけさ」

 

肩を竦めながら皮肉を言う。

 

「君たちの誠意を知った上で敢えて言わせて貰おう。ここは私たちに花を持たせてくれないか?」

 

「まさか一人でやるんですか!?」

 

「あぁ。そのまさかさ」

 

バーサーカーは少し笑いながらハッキリと言う。

あの神霊をたった一人で倒すのは至難の業。

 

「ならお手伝いします!」

 

「何処までもお人好しなんだな。だが、そうなると私のマスターの覚悟が無駄になる。どうかこのわがままを許して欲しい」

 

ケルベロスとアルケイデスに攻撃する警官が増えてきている。

弓でなぎ払われようとも体を牙で噛み砕かれようとも尚立ち向かう。

 

「…分かった」

 

「感謝する。次会った時は美味しい紅茶をご馳走するよ」

 

黒い煙に巻かれ話していた警官は消えていった。

藤丸は念で皆を後退させ集めた。

 

「どういう事だ。奴らは普通の人だぞ」

 

「しかも顔が同じでした。あそこまで多いと少し気持ち悪いです…」

 

「宝具で化けている。もしくはあのサーヴァントの性質か…」

 

「ともかくやる気ならやらせるのが筋でしょ。非効率で嫌だけど」

 

藤丸と警官たちはただ見守るしか出来なかった。




ドンパチが激しくなるシーンがやってきました!
少しだけですけどカルデア対アルケイデスというマッチアップを用意!
全員で挑んでもどっこいくらいかもしれませんけど。
そしてやっと登場バーサーカー!
彼のCVが杉田智和なのはあのアニメのせいかな。
原作をなぞりながら入れるのは本当に難しい…
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