―1973年5月―
BETAが襲来したのと同じ年、遂に悲願であったアームズフォートが完成した。
「――流石に大きいな」
下から見上げれば首を痛めること間違いなしだろう。
全高600m、全長2400m。
多数の飛行甲板に巨大な長射程大口径実体弾砲、防御用の多連装ミサイルランチャー多数に近接防御用機関砲が備えられ、中近距離砲がその隙間を埋める。
ACから戦闘機までの通常兵器を数百機単位で運用でき、艦内にはそれらの整備からACの生産までを行える十全な設備が備わっており、単艦で国家を滅ぼしうる戦力を有している。
移動手段に6脚での歩行を行い、強力なコジマ機関がそれらを稼働させる莫大なエネルギーを賄っていた。
「…明らかに過剰戦力だと思うのですが」
「…自覚はしてる」
ハスラーがげんなりした表情で言う。
流石の俺もそれは否定しない…間違いなく過剰な戦力だろう。
地上のあらゆる地形を踏破でき、100〜200kmの有効射程を誇る主砲を備え、その高い防御力は対レーザー装甲も相まって通常の方法では撃破不可能。
唯一、撃破可能な戦力であるネクストACも内部に侵入して攻撃せねば有効打を与えることは出来ない。
…まぁ、
「はぁ…対外的には対BETA兵器とでも言っておきますか」
彼の気持ちも分かる。
だが、そんな悩みは直ぐになくなるから問題ない。
「どうせ量産するからな」
「は?今なんと?」
既に軍事部門の人間と主任などの技術部門の人間には既に話は通してある。
このレベルのアームズフォートは流石に量産出来ないが、既に設計が終わっているランドクラブとギガベースは逐次建造が進められる手はずになっている。
早ければ5年で纏まった数のアームズフォートが完成するだろう。
「…もう何も言いませんが、赤字だけはやめてくださいよ」
「そこは問題ない。これから建造するアームズフォートは販売するからな」
「こんなの買うとこいるんですか?」
「既に中国からはいい返事をもらっている」
こんなのとは失礼な。
ギガベースなんて既に3機は購入が決定してるんだぞ?ランドクラブは見向きもされなかったけど…それを差し置いても大幅な黒字化が約束されているんだ、実績としては充分だろ。
「確かに中国は壊滅した軍隊の再編に必死ですからね」
「そういう事だ。ACも火砲も軍艦も、ありったけ買うと言ってるぞ」
そう言って一枚の書類を彼に渡す。
手渡した書類には、現在までに中国政府が購入してくれた多数の物資について書かれていた。
新世代AC20機、旧式AC70機、戦車・装甲車3000両、火砲4000門、かの国は国家予算並みの物資を大量に購入してくれている。
この特需に社内は湧いている。
はっきり言ってBETAが存在する以上終わることのない特需だ、唐突に弾けることは無いのだ、売れる内に売るという気持ちなのだろう。
「…これ、新世代ACの技術が流出する可能性があるのでは?」
「出来るのなら、な」
ブラックボックス化された制御システムにAC4時代レベルの技術力と工作機械がなければ作り出せない装甲に関節部、内部構造はネクストACを元にした特殊なもので既存の技術では解析に100年はかかる。
更に、それらの問題が奇跡的に解決できたとしても、コジマ粒子を使って生成した機関部のパーツはコジマ粒子を使わなければ莫大なエネルギーがなければ製造できない。
はっきり言って、彼らからすればオーパーツである。
「新世代ACって、そんなとんでもない代物なんですか…」
「機関の製造は技術部が独自の手法で行ってるからな。彼らと俺くらいしか製造方法は知らないぞ」
「呆れを通り越して、疲れてきました」
俺は疲労感を漂わせる彼を放置し、アームズフォートの視察を続けた。
途中、主任と出会いルンルン気分で主砲の試射を行い、二人揃ってキャロルに蹴り飛ばされたが…なんだかんだで充実した時間を過ごすことが出来たとだけ言っておこう。
はい、書けたので以下略。