1958年―
その報告はネクストACのジェネレーター出力強化実験中にもたらされた。
「何?アメリカの探査衛星が地球外生命体を見つけただと?」
「はい。どうやら彼らの探査衛星ヴァイキング1号が火星上で生物らしき影を撮影したらしく…」
報告を持ってきた情報部門の社員は情報の不確定性は限りなく少ないとも言った。
世界各国に忍ばせたスパイからの情報だ、情報の出処は社内でも極秘だが信用に足るだろう。
「…ふむ、地球外生命体の存在がこれでほぼ確実になったわけだな」
前世の記憶もあり宇宙人なんて探しても無駄だと考えていたが、どうやらこの世界においては違うらしい。
「そんな呑気なこと言ってられなくなりましたよ!」
最近メガネを新調した技術者の彼は大慌てだ、それもそうかと納得し今後について考えた。
今後、そう遠くない内に米国は大々的にこの発見を宣伝するだろう。
この一件で東側陣営の国々や我々企業に対して優位に立てるかもしれないのだ、世界中にこの事実を広め他国の抜け駆けを阻止し優位に立とうとするだろう。
「あぁーだが、我が社は宇宙開発にそれほど重きをおいてないだろ?」
「それは、そうですが…」
そう、我が社は基本的にコジマ粒子を用いた莫大なエネルギー販売や武器弾薬の製造販売、世界中での物資の輸送など基本的に宇宙開発に関わっていない。
輸送事業の延長としてマスドライバーを用いた物資の打ち上げこそ行っているが、言ってしまえばそれだけだ。
「我社の主要な資金源は何だ?」
「…エネルギー部門と軍事部門、そして近年から始まった運輸部門です」
「その通り」
最大の部門は戦前からあったエネルギー部門だ、この部門では前述した通りコジマ粒子によって無尽蔵のエネルギーを生産している。
そのため非常に安価で欧州やアフリカでは間違いなく覇権を握っている、しかしアメリカやその影響下の南米や日本では大々的には広まらず民間で使われている程度だ、更に東側陣営では完全に禁止されており我社も向こうには輸出していない。
次にこれまた戦前から続いている軍事部門、これは我社が最も力を入れている部門で末端は医療品から果ては戦艦や空母まで生産している。
最近は主力商品として性能を向上させたノーマルACが販売されるようになった、性能を向上させる過程で全高17mまで拡大してしまったが通常時で時速300km、OB使用時には500kmを出すことが可能な機動兵器に仕上がっている…売れ行きは良くないが。
最後に近年になって始まり軌道に乗りだした運輸部門、世界中に民間軍事問わずありとあらゆる物を決められた日時までに運んでいる。
地球上でここまで大々的に展開している運輸事業は我社を除いて他におらず、延長として宇宙での物流も受け持っており他国の事業を圧倒していた。
「つまり我社が慌てる必要は何一つとしてない」
「確かにそうですが…」
「さぁ、そろそろ次の実験の時間だ早く行かなきゃ痺れを切らした主任が始めてしまうぞ」
時間を理由に納得できていない彼を連れて試験場に動き出した。
「…。(次の実験は艦船用の
度々実験に失敗していた超電磁砲が実用可能段階まで行ったと報告を受け、ウキウキで進む中社内の各所に設置されたテレビから臨時ニュースが流れていた。
事前に報告を受けていた俺は気にせず通り過ぎようとしたが、実際の写真が公開されたとアナウンサーが言ったことで振り返った。
『――これは実際に米政府より発表された写真です』
『なにかの腕に見えますね』
「…は?」
テレビを見ると火星の赤い大地と黒い腕の影が写った写真が公開されていた。
自分でも驚くほど間抜けな声が漏れていた。
「所長?」
俺はこの写真を知っている。
なぜ?どうしてあれが写ってるんだ?疑問が浮かんでは消える…いや、よくよく考えて見れば気づける要素はずっとあった。
前世以上の技術革新の速さ、日本帝国や将軍の存在、特需レベルの宇宙開発に月面基地。
確かに俺の知る作品の世界観に限りなく近い、異物は俺という人間の存在だけだ。
「なるほど…だから、あいとゆうきのおとぎばなしか…」
転生する時 聞こえてきた謎の声、どうやらかなり厄介な世界に連れてこられたらしい。
「…ハスラー」
「は、はい。どうしました?」
メガネの技術者ハスラー・ワンに声をかける。
「ハイエンドACの開発はどれだけ早められる?」
「はぁ…現在の進捗ならば来年末までには完成させられるかと」
報告を聞き頭の中で計画を組み立てる。
少なくとも戦闘可能なノーマルACはそこそこの数があるが充分とは言えない、充分な能力を持ったノーマルACは来年をまたなければ完成しない。
完全に対応可能なACは稼働数が未だに一桁を超えないネクストと建造中のアームズフォートのみ…まだ時間があるとは言え不安が残る。
俺というイレギュラーが存在する以上、知っている知識が全て役に立つとは思えない。
「超電磁砲の視察が終わったら緊急会議を開く、各部門の代表を呼んでおいてくれ」
「分かりました。直ちに招集します」
ハスラーが駆け足で去ると俺も動き始めた。
全ては最悪の結末を防ぐために…敷いては自身のAC開発のために。
「…この音は何だ?」
「あ、所長。主任が超電磁砲の発射実験にまた失敗したそうです」
疑問を口にすると社員のひとりが答えた。
…なるほど、主任が待ちきれずに実験を始めていたのか、莫大なエネルギーを溜め込んだ超電磁砲の発射に失敗したとは…え?いや、不味くね?
―次の瞬間、社内に爆音が響いた―
はい、プロローグを投稿したあと何故か書けてしまったので更新しました。
感想・評価ありがとうございます。
これからも続けていきたいと思います(不定期更新)