「いやぁーごめんね〜」
ボロボロの白衣を着た男がおちゃらけた様子で言う。
社内に用意された会議室に集まった者たちは『またアイツか…』と、特に気にした様子はない。
「主任、ふざけすぎですよ」
「あ、そう?…で?それが問題?」
「問題です」
白衣の男、主任の背後にいた女性がその態度を注意するも彼は特に気にした様子はなく『ハハハ〜』と笑っている始末だった。
流石にこれ以上は話が進まないので今回の主催者として会議を始めることにした。
「今回は突然の招集に集まってくれてありがとう。早速だが今回の議題は新型ACの増産に関することだ」
「…別に会議を開く必要はないのでは?」
即座にエネルギー部門のトップが疑問を口にする。
この企業では当たり前になっているが基本的に研究と生産、そして大まかな方針は俺が決めている。
流石に核兵器の大量生産や衛星を新たに打ち上げるなどは話し合いが必要だが、殆ど売れないACの生産なんてわざわざ議題に上げるものではない。
「そうだな、ではこれを見てくれ」
そう言って”あの写真”を集まった全員に回す。
すると会議に参加した者の頭の上には一様に?が浮かんだ。
――どうしてこれを?――
みんなの気持ちはそんなものだろう。
「何だこれ?」
「主任、アメリカが公開した写真ですよ」
「へぇ〜」
…一部別の意味で?を浮かべていた者いたが気にせず進めよう。
「皆、知っての通りアメリカが地球外生命体を発見した」
「それは知っていますが、なぜそれがACの増産につながるのです?」
「言い方は悪いが、ACの生産は大戦が終わってから万年赤字だぞ?」
各部門の代表がそう言うと、ヒソヒソと皆近くの者と話しだした。
…当たり前だがBETAの脅威をこの時期からわかるような人間は俺以外に存在しない。
前世のゲーム中に登場した横浜の魔女と呼ばれる天才がこの時代に存在するなら分からないが、彼女が生まれてくるには少なくともあと20年は必要だろう。
【Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race】
人類に敵対的な地球外起源種、訳してBETA。
前世にあったゲームマブラヴに登場し、人類を滅亡寸前まで追い込んでいる。
生理的嫌悪感を感じさせる外見に会話は不可能、圧倒的な物量にまともな方法では勝てず、最終的には敵の頭脳部を叩く事で一応のハッピーエンドを迎えたゲーム。
俺はこの世界はそのゲームに限りなく近い世界だと思っている。
いや、下手したらもっと酷いかもしれないし、運が良くてBETAなんて地球には来ないかもしれない…希望的観測は無駄だな。
どちらにせよ、早々に対応しなければまずいと言うことだけ分かればいい。
「この写真だけでは上手く伝わらないかもしれないが、こいつは相当デカい。探査衛星のサイズを考えれば全高3mはあるだろう」
「…」
それまで疑問を口にしていた各部門のトップ達が一斉に黙り込んだ。
3mと聞けばそれほど大きく感じないが成人した人間より大きく、物によるが我社で販売している中型ACの半分程度の大きさがある。
これ程の大きさで腕があるなら普通はその必要性があると言うことだ。更にこれ以上の大きさの生物がいる可能性もあり、過酷な火星に適応できるなら皮膚の強度や生態は全くの未知、危険性もゼロとは言えない…彼らはそう考えているのだろう。
「…なるほど、そんな生き物がいるのでは火星開発は遅れる。更にその生物の特性にもよりますが武器を空に上げる必要性も出てくる」
「戦車や自走砲は重すぎる、戦闘機やヘリは精密機械だしまともに飛べるか分からない」
「将来的には環境に適応したのが出てくるかもしれないけど〜莫大な予算が必要だし〜」
「ACはそれほど重くなければ中東やアフリカでも問題なく動くし整備性もいい。コックピットも気密式で酸素が無い環境でも運用できるし不整地の踏破能力も高い」
「更に搭乗員の育成も容易だ」
各部門がそれぞれ利点を述べていく。
こちらが考えたように話が進んでいく、やはり我社には優秀な社員が集まっていると改めて実感した。
「――売れるな」
その一言を皮切りに全員が頷き新型ACと旧来のAC双方の増産が決定した。
はい、また書けたので更新しました。
…続きは書けてません。