1958年末―
あの会議から約3ヶ月が過ぎ、社内では前大戦の頃からある旧ACの製造ラインが復旧されエンジン・継戦能力を強化した改修型ACの生産が始まり、既存の兵器製造ラインも拡大され大型化した新世代ACの生産に対応可能になった。
既に戦車や野砲などの生産は大幅に縮小し輸送に使う艦船と防衛用の艦艇双方の増産が始まった。
「いや〜軍事部門はやっるきだね〜」
「それだけの利益が見込めるからな」
その日、俺は珍しく一人で社内を視察して回っていた。
そんな折、一人で
「ほんとにそれだけ〜?」
関心と言った様子で地下ドック内の新型戦艦047ST1260の建造風景を眺める主任の言葉に答えると、主任は『ニヤ〜』とした表情で疑問の声を上げる。
世捨て人のように新型兵器の開発を繰り返す彼は一見ただの変人にしか見えないが、その実『非常に頭の回る変人』なのだ。
普段からこの会社には好きなだけ研究が出来るから入ったと言う彼だ、俺にもズカズカと物を言う。
その制御役として付き人を何人かつけているのだが今回はその筆頭であるキャロル・ドーリーを含めて誰もいなかった。
「やっぱり分かるか」
「そりゃ〜分かるでしょ。他の人は利益と企業の拡大に眼がくらんでるけど〜流石に不自然じゃない?」
当たり前といえばそうだが、彼の視点は他の社員と比べても随分常識的な視点を持っている。
我社はその創設から特殊な研究と軍事産業ばかりを行って来たため、その手の研究に従事してきた変人ばかりで運営や資金管理も一癖も二癖もある人材ばかりであり、運営は楽で腕は確かだがいささか常識に欠けることがある。
その点、主任はやっている実験や研究はイカれているが言動は常識的だ…他の社員よりも随分イカれているが。
「…正直、火星に適応した生物にしては造形が不自然だ」
「確かにあんな人みたいな腕は不自然ですね〜…でも、米国の情報戦略の可能性もあるんじゃ?」
「ならいいんだが…」
正直、あれが米国の情報戦略なら大手を振ってネクストACをホワイトハウスに送り込んでやるが…流石にあれだけ大々的に内外に報道したなら嘘ということはまず無いだろう。
下手な希望的観測は何の慰めにもならない。
「とにかく、杞憂ならいいが将来的な脅威を考えれば備えておくことに越したことはない」
「アハハハッ!ま、いいんじゃないの?そのほうが面白そうだし」
主任がさも狂ったかのように笑いこちらを肯定する。
こちらも話した事で幾分か気が楽になった。その事を感謝しようと口を開いたところで『主任?』と冷ややかな声が聞こえてきた。
「あ、キャロりん〜どうs「覚悟はお出来で?」‥い、いやぁ〜何のことだか?」
「勝手に何処かに行くのはおやめください。他の部門に我々がどれほど煙たがられているかご存知で?」
「いやぁ〜勿論、天才主任のワクワクランドって感じでしょ〜?」
「万年失敗続きの金食い虫「うグッ」イカれ主任の産廃兵器工場「あグッ」――お分かりで?」
主任はキャロルにメッタメタに言われうなだれた。
「――それでは、失礼します社長」
「あ、あぁ」
キャロルはこちらに一言言うと主任をその見事な腕っぷしで締め上げるとそのまま去っていった。
…主任は苦労しそうだな、そう他人行儀に思いながら俺は次の部門を見に歩き出した。
【side主任】
「いやはや、面白いことになってきたね」
所長はなかなか想像力豊かなもんで…いい加減、彼も歳なのかな?
初めて話を聞いた時は耄碌したかと思ったけど、その様子は無いし〜そのくせ本気で地球外生命体が脅威になると思ってるんだから、びっくりしちゃったよ。
「主任。あまりおかしなことは考えないでください」
「アハハッ!嫌だなキャロルは…こんなに面白いんだからそんなことするわけ無いだろ?」
まぁ、彼歳の割には20代みたいな外見してるし、身体能力もかなりあるみたいだからね。
しばらくの間は彼の妄想に付き合ってあげようじゃないの。
「ま、少しは楽しめるでしょ」
それまでは従うのも有りかな?
「私の給料にも関わるので次はありませんよ」
スッと背後から声が聞こえる。
「あはは…それはご勘弁願いたいね」
流石にキャロりんの蹴り技はもう喰らいたくないからね…。
―最も主任の予想は彼にとっていい意味で裏切られることになる―
はい。
書けたので更新します。