1967年―
月面基地開発などで民間用の作業用ACがそこそこな利益を上げる中、不穏な報告が入ってきた。
「――月面基地の人間が謎の生物と交戦して消息不明か…」
「はい。どうやら火星の生物と同種と考えられるようです」
再び情報部からもたらされた情報は非常に大きいものであった。
地球外起源種の月への侵攻…遂にこの時が来たかと俺は息を吐く事しか出来なかった。
「月に武器を上げることは出来ないか?」
「…難しいでしょう。形骸化しているとは言え空に兵器を上げるのは国際法で禁止されています」
戦後すぐに結ばれた宇宙開発条約によって宇宙空間に自衛以上の重火器を持ち込むことは出来なくなっている。
今や形式上守られているだけだが、表立って無視する勢力は存在しない。
「ハスラー」
「はい」
「今、思ったんだが…ACは作業用のパワードスーツだよな?」
「――…はい。そう言えばそんな気がしてきました」
ハスラーはニヤリと悪い笑みを浮かべた。
ACに月面用の改修を施してから打ち上げることになった為、結局打ち上げは67年までずれ込んだ。
この頃になると地球外起源種の名前もBETAに定まり、本格的に国連軍が結成された。
そんな67年、月面への武器輸送計画の第一弾として、近接用のスーパーカーボン製長刀を『デブリ撤去用』として20本、スラスターや推進剤、関節を月面用に改修した10m級AC20機を月面支援用のコンテナに載せマスドライバーにより打ち上げた。
我が社は以前から食料品の打ち上げを行っていた事も有り、意外と簡単に月面まで送ることが出来た。
途中、大型軌道ステーションで情報部の職員によって物資は月面基地『プラトー1』に直接送り届けられた。
【sideプラトー1】
「どう言う事だ…」
月面基地への食料補給物資のはずが、コンテナ内から出てきたのは10mの巨人機計20機。
更にデブリ撤去用とは書いてあるが明らかに戦闘用の刀が20本。
ご丁寧に宇宙用に改修されていると来たら…とても笑えない。
「司令…これはどうすれば」
物資を確認した職員が不安そうに聞いてくる。
「取り敢えず、国連本部に連絡してみるが…」
おそらく知らないだろうな。
口には出さないが、私はそう思った。
昨年から奴らとの…BETAとの戦いが始まった月面の国連宇宙総軍司令部に、直接こんな物を送りこむことが出来るのは…おそらく
企業と敬意と侮蔑を持って世界中に知られている奴らだ。
彼らは前大戦の前から民間企業としては奇妙な連中だったが、戦後は本格的に表舞台に参入して世界中のエネルギー分野で莫大な利益を上げ、今や超大国と変わらぬほどの経済規模を誇っている。
近頃は大規模な軍拡も行っており、各国はその動向に注視している。
「――司令!奴らです!奴らがB5ラインを突破して来ました!」
この機体の出処について思考していると基地オペレーターの一人が走って報告を伝えに来た。
「むう…B5か…」
このプラトー1から約50km。
奴らなら2時間もあればここまで迫ってくる。
―まずいな―
あの近くには米国の探査基地がある。
小銃程度ならあるだろうが、あんな物奴らには焼け石に水だ。
「ふぅ…」
―この
「――よし、この基地で
「はっ!了解!」
今、この場で奴らをどうにか出来るのはこの機体だけだ。
どんなつもりで送ってきたかしれないが、有効活用させてもらおう。
【side国連軍兵士】
基地で休息を取っていると突然我が小隊が物資集積場に集められた。
ちょうどその時、同じ部隊の隊員と宇宙食を食べていた俺はオペレーターに促されるまま集積場に向かった。
「よく来てくれた諸君」
「――ハッ!月面基地駐屯第78小隊、各員招集に応じ参上しました」
物資集積場に集まってみればビックリ、そこにいたのはこのプラトー1の司令官だった。
国連軍大将…はっきり言って俺たちみたいな1小隊が直々に合うことなんてまず有りえない人間だ。
しかし、いま眼の前にはその司令官がいる。
俺は驚きと疑問をかき消すため声を張り上げた。
「うむ、早速で悪いが君たちにはこの機体に搭乗し、B5ラインを突破した”奴ら”を撃破してもらいたい」
「奴ら?まさか…」
司令がそう言って指し示したのは目測で10mは超すであろう人型兵器。
それは俺たちには、よく見知った機体だった。
【AC】
前大戦の時、欧州のありとあらゆる戦場で相まみえることになった機体だった。
司令はそれに乗って最近月面を荒らしまわっている
「君たちは戦後、この兵器の評価試験をアメリカで行ったと聞いている」
「はい。それは間違い有りませんが…なぜこれが、ここに…」
「詳しくは言えんが…今は時間がない、動かせるのかどうなのか?それだけだ」
司令の言葉を聞き、後ろに連なる部下たちを見る。
皆、不安そうにこちらを見るも異論を申すものは誰一人いない。
「やります。やらせてください」
司令にそう答えると部隊は機体に付属していたパイロットスーツに着替え、即座に出撃した。
「…武装はこれだけか」
各機、5mほどの長さの長刀を1本。
遠距離用の火器は一切なし、装甲も最低限、その代わり速度は推進剤込みで700kmを超えている。
無重力下の宇宙空間とは言え流石に快速だ。
その分Gは大きいが地球で動かした時と比べれば充分許容範囲と言える。
「見えてきたぞ!」
『敵影確認!70はいます!』
『既に米国の基地職員が戦闘中です!』
ものの5分で戦闘地域に部隊はその機動力を活かして奴らの裏に回り込んだ。
「――よし、各機速度性能を活かしながら突撃しろっ!」
『了解!』
「味方の攻撃に当たるなよ!」
各機が速度を僅かに落とし攻撃体制に移る。
長刀を構えたACはその練度が低いことを考えれば充分な動きを見せ、最初の攻撃で各機1体以上を撃破し、返す刀で反復攻撃を行いその過半数を撃破した。
「はあ、はあ、はぁ…各機被害は無いか?」
『ありません…我々の完勝です』
『同じくありません、残った奴らは米国の連中が処理したようです』
『問題なし!まだまだ行けるぞ!』
一つの戦闘が終わり、撃破した敵の影と小銃のマズルフラッシュが時折見えるだけの月面で小隊各機はお互いの状況を確認し合っていた。
幸い、この機体に乗り込んで初の戦闘ながら損失はなく小隊内には言葉に出来ない高揚感が広がっていた。
『―隊長。米国基地から通信が来ています』
「了解。こっちで対応する…こちら友軍。第78小隊、プラトー1より救援に来た、どうぞ」
『――こちら米国探査基地プロメテウス05。救援感謝する…しかし何故月面に
いや、それは俺たちが聞きたいんだが…そんな事を言えるはずもなく、俺は部隊の隊長として当たり障りのない事だけ伝えることにした。
「詳しい情報は我々も分からない、後ほどプラトー1の司令部と国連に聞いてくれ」
『了解した。我々も本国の指示が出次第そちらに向かう、改めて諸君らの救援感謝する…向こうについたら一杯奢らせてくれ』
通信が終了し、機内を静けさが包み込む。
「各機、聞いたな!基地に帰ったら飲むぞ!」
『了解!』
僚機に通信を繋ぎ基地に帰還するよう命じると、残った推進剤に点火して帰還した。
はい、書けたので更新します。
なんか納得出来てないから過筆するかも…。
それはそうと感想・評価ありがとうございますm(_ _)m