―1973年4月―
中国・新疆ウイグル自治区
「遂に始まったか…」
分厚い報告書の表紙を眺め、俺は熱々のコーヒーを飲み込んだ。
コーヒーの熱さで冷静を保ちながら報告書のページをめくる。
「…」
中国政府は内政干渉を理由に国連の介入を拒否。
かの国は月面での戦闘報告を受けて地上であればBETAを殲滅できると踏んでいたのだと思われる。
「…ふむ、なるほどな」
確かにBETAの数と速度は脅威である。
しかし、多数の火砲と航空戦力を用意でき、充分な補給が行える地上ならば人類が勝利することは容易だと考えるのも仕方がないだろう。
「だが、通常の戦力でBETAには勝てない」
矛盾するようだが、
多数の戦車師団、砲兵、そして数百機の爆撃機。
あちらこちらに張り巡らされた陣地に地上部隊支援用の攻撃ヘリ。
敵がBETAでなければ完勝できるだろう。
「――BETAでなければ、な」
BETAの着陸から既に10日、不確定要素もあるが地上からレーザーと思われる光線が航空機に向けて放たれ、多数の被害が出ているらしい。
…要するに、
記憶が曖昧だが、回避不能の高出力レーザーを12秒間隔で撃ってくるBETAだった気がする。
シュヴァルツェスマーケンで詳しく描写されてたと思うが、このBETAを狩るのも相当困難らしい。
「あれ、そういやシュヴァケンって東ドイツの話だよな?あれってどうなるんだ?」
今更だが我が社は西はフランスから東はポーランドまでを支配する企業だ。
各国にもところどころに子会社があるが…いや、それはいいんだ、問題は気づかぬ内に原作の舞台を完全に破壊していることだ。
「…いや、別にいいか」
…まぁ、よくよく考えたら、あの話は要するに内乱の話だし。
主要人物の大部分は死ぬしで、ろくなものじゃなかったな…そう考えると、内乱の可能性を事前に排除した我が社はある意味ファインプレーと言えるのでは?
いや、そうに違いない。
「ま、取り敢えずは中国に対BETA兵器としてACをアピールしとくか。それでだめなら向こうに我が社の傭兵部隊でも送りこんで新兵器の実験でもさせるか」
どうせこれから更地になるんだ、多少地形が変わっても問題ないだろう。
そんな事を考えていると報告書も最後のページに差し掛かっていた。
「なになに【BETAの生態は不明ながら、着陸ユニットの周辺を平らに均すことが確認されている】と」
確か光線級を効率的に運用するためだったか?それとも奴らの戦術がそういう用に作られているからか?…細かい設定は忘れてるからな、報告書は重要だな。
改めて情報部の仕事ぶりに感心しながら読み進める。
「【これらの攻略には多数のレーザーライフルを用いた制圧が効果的と思われる】ねぇ、レーザーライフルは継戦能力が低いからな、相当な数が必要になるぞ」
高出力のエネルギーを用いるレーザーライフルやエネルギーライフルは長時間の戦闘に向かない。
その代わりに絶大な火力を持つため、一概に悪いとは言えないが…BETA相手には致命的な気がするな。
――いや、迎撃されないから逆にいいのか――
実弾系の兵器は迎撃される可能性があるのに対し、レーザーは迎撃されない。
そう考えれば最適解と言えるのでは?
「まぁ、他の人間の客観的な意見は勉強になるな」
報告書を閉じ、すっかり冷めたコーヒーを飲む。
程よい苦味に眠気が飛ぶ。
「…何にしても言えるのは、BETA相手に戦うには従来の軍隊では勝てないってことだな」
あと数ヶ月もすればACが飛ぶように売れるようになる。
それも、これまでの比ではない程に。
我が社は儲かり、彼らは国を守れる。
「これこそウィン・ウィンって関係だな」
これからハスラーが大量の書類を持ってきて地獄を見るとは知らない彼は、今後の展望に胸を躍らせた。
―3日後、人民解放軍はBETAの総攻撃を受け壊滅した―
はい、書けたので以下略。