プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
先ほどのアメリアさんの照れ隠し脱走ログアウト? の後にすぐさまログアウトするのは、流石に気が引けるわけで。
じゃあどうするか。この適当に組んだインパルスガンダムにレンタル装備を付け加えて、適当なフリーマッチで何戦かしたら、後追いでログアウトする予定だ。
それまでに彼女がふて寝していることを願うばかりだ。
「到底そんな風には見えないけど」
お嬢様にふて寝も照れ寝もあるのだろうか?
答えは上流階級の闇の中ってことで。
まぁ庶民のあたしが何を考えたって、分からないものは分からないんだ。いろんなことを憶測で語っても無意味というもの。
「さーて、まぁヒートナイフとビームライフル。それからシールドも欲しいよなぁ」
まとめて数千BG。
初心者向けということもあり、使いやすさだけで威力はほとんどないが、ないよりはマシだろう。
さーてさてさて。フリーマッチにインしてランダムにマッチした相手を待つ。
ランダムフリーマッチと言っても、実はこのゲームには2種類存在する。
1つはフォース――ギルドみたいなメンツ同士が争い合うチーム戦。
それからぼっち専用の1対1のソロマッチ。フォースに所属してないあたしにとってしてみれば、このソロマッチが非常にありがたい。
訳あってランク戦はできないし、そもそも誰かの注目を集めるようなプレッシャーの中の戦いをあたしは好まない。
自由に気ままに。なんだろう。ガンプラバトルっていうのは孤独で自由じゃなくちゃいけないんだ。心が満たされて、豊かな気持ちになれる。そんなバトル。
まぁ言ってしまえばアメリアさんの練習風景を見て、ちょっと血が滾ってしまったのかもしれない。
我ながら影響されやすいタイプだこと。
「お、見つかったっぽい」
えーっと、相手は†黒炎覇王†漆黒の翼†さん。
え、これと戦うの? マ?
うーん、まぁいいけど。GBNになってもこんな、名前にダガーを使う人初めて見たかも。
アメリアさんには悪影響になるかもだから、なるだけ見せたくないなぁ……。
「ダイバーヒメリ、インパルス。行きます!」
カタパルトから強制射出され、強引にゲートを通らされる。
通った先は水星の魔女にアスティカシア高等専門学園の決闘場。ここならシンプルに対人戦ができるからだいぶ楽かな。
『黒炎覇王、ミッションを開始する』
「は?」
目の前に現れたのは黒いウイングガンダムゼロカスタム。
そこからさらになんのエフェクトなのか青い炎まで点火しているじゃないか。
あれってぇ……。バーニングガンダムの改造? つまりゼロカスとバーニングの複合機?
そうなると、かなりパワー高いんじゃ……。
『塵芥となれ! 黒炎熱波!!』
「うわっ!」
バサッと黒い翼を広げると、青い炎が周囲に拡散する。
これ当たり判定あるんだ。シールドで防いでからビームライフルの照射を開始する。
向こうの手持ちはバスターライフル。ツインじゃないだけマシだけど、火力高いな。
『くっ! 邪教風情が……っ! この覇王を敵に回すか!』
「ランダムマッチから来たんでしょうが!」
フォースシルエットを忘れてきたため、機動力はそれほどない。
そして相手は宙を舞う空中適性持ち。なるほど。地の利は向こうにあると。
ビームライフルを乱射しても、青い炎や羽根を掠めるだけで本体にダメージを与えることはできない。
『姑息な手を……』
「普通のバトルじゃん!!」
ロールプレイ勢とは言え、本当にやりずらい。
くっ……。こんなことだったら普通にアンタレス持ってくるんだった!
『喰らえ闇の裁きをっ!』
バスターライフルの照準がこちらに向く。
まずい。VPS装甲の対ビーム耐性は低い。これ受けたらほぼ間違いなく死滅する……っ!
『闇の炎に抱かれて消えろっ!!!!』
バーニングガンダムのエフェクトを加えた闇の炎バスターライフルが射出される。
でもさ。それを撃つのは早計だったんじゃないかな。
素のインパルスガンダムにはシルエットが存在しない。
だからこそできる芸当が、体術を駆使することで可能だ。
ガンプラ体術。どこかで聞いたことがあったけど、やってることは大体体育の授業で習ったこと。
前に受け身を取りつつ、体勢を整える。後ろでは着弾点が爆発しているが、当たらなければどうということはない。
懐からヒートナイフを起動し、熱帯びた状態でそのまま思いっきり投擲する。
「何が、闇の炎だっ!!」
『ナイフだとっ?!』
コックピット直行コース。
バスターライフルによる反動で身動きができない状態でヒートナイフが胴体ど真ん中に命中。
装甲ごと熱で溶かした黒炎覇王ゼロカスもどきに撃墜判定が下る。
水色のデータの塵となりながら、ヒートナイフを残して爆散していった。
「ふぅ……。意外となんとでもなるもんだなぁ」
落ちてきたヒートナイフを拾い上げて、後ろ腰にマウントした。
それにしても味の濃い人だったが、なんであんなロールプレイをしていたんだろうか。
やや腑に落ちない、謎のロールプレイだったが。まぁ気にしないでおこう。
◇
その後も何戦かプレイしたが、結果は概ね好調。
ヴァルガの時も感じたが、どうやら腕前はあまり落ちていないようだ。
ただ普段使っているアンタレスよりも使い勝手が良くないのが難点かな。
やっぱり自分用にチューンナップしたガンプラの方が強い。
「お、またマッチした」
深夜だってのにダイバーはみんな元気だなぁ。
あたしも流石に明日のバイトに支障をきたすから、この1戦で終わりにするとしよう。
「えーっと。相手のダイバーはエマさんか」
エマって言えばZガンダムで出てくるヒロインの名前だが。
それをもじったわけでもないだろうなぁ。割りとよく出る名前だし。
着地したのは海岸線かな。砂浜と海。それから港町が隣接した日本らしい戦闘エリアだった。
そういえばダイバーランクがBだったなぁ。少しは歯ごたえのありそうな相手だといいけど。
そう考えた瞬間だった。敵の攻撃を察知するレッドアラートが鳴る。数は……。
「15?!」
15本のビームが扇状に展開される。
これ、もしかしなくてもピーコック・スマッシャーか?!
どちらにせよ当たったらまずい! すぐさまバックステップをして、空中から放たれたビーム群を回避する。
クロスボーン系? となるとABCマントはあると仮定していい。
問題はどこから射撃を……っ?!
『チェストォォォォォォォォォォ!!!!!』
「うわっ!?」
砂浜に足を取られながらも、天空から振り下ろされた『何か』からギリギリのタイミングで回避が成功する。
風圧のあまりインパルスでさえもゴロゴロと地面を転がる。
まぁいい。いいけど……っ!
今の、確実に殺しに来てたなぁ……。
『チッ。やるじゃん、キミ。今の攻撃を避けるとか』
「……クロスボーンのシルエットに、それから」
――ジェガン。
ABCマントを纏い、一部をクロスボーンガンダムとニコイチしたクロスボーンジェガン。否。
『奇襲を避ける実力は認めてやるよ。でも、あーしとクロスガンの前じゃ、これ以上は無理ってもんでしょ!』
「くっ!」
ピーコック・スマッシャーが変形し、ムラマサ・ブラスターへと変形する。
あれはクジャク?!
『さぁ! 海賊らしく、勝たせてもらうよっ!』
これは、面白くなりそうだ……っ!
久々に感じる対戦への高揚感を胸に、あたしは懐からヒートナイフを抜刀し、戦闘を改めて開始した。