プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
『どぉぉりゃあああ!!!』
「くっ!」
『そらそら、どうしたぁ!!』
手を抜いているのか、ただ戦闘を楽しんでいるのか。
それはあたしには分からないが、この自称海賊ジェガン、なかなかやる。
大型武装、ムラマサ・ブラスターを振り回しているようだが、あたしに対してプレッシャーをかけ続けている事実を利用されている。
そもそもムラマサ・ブラスター状態のクジャクのレンジが大きすぎる。
こっちはただのヒートナイフだぞ?! ようやく間に合っている程度なのに、不意打ち気味にビーム刃が出てきたらとっくのとうに死んでいたはずだ。
一旦距離を取り、ビームライフルでビームを発射する。
もちろんそのどれもがABCマントによって防がれてしまう。
『なかなかやるねぇ、キミ。ただのレンタル装備のインパルスだってのに、このあーしと互角にやり合うとかなかなかできないよ?』
「お世辞をどーも。その割には手加減してるっぽいけど」
『そっちもだろぉ? インパルスっていう手加減、してる』
それはそうなんですがぁ!
はぁ、面倒なのに会ってしまった。エマって海賊モドキ、ガンプラの性能差はあれど、強者と見ている。さっきチラッとプロフを見た時もランクBだったし。
やや芝居がかった口調といい、大分ロールプレイも達者なようだ。
それにしても、この声どっかで聞いたことあるような……。
なんだっけ、すごい知り合いに似てる気がするんだよなぁ! くぅ、喉に小骨が引っかかったような違和感が戦闘の邪魔をする。
『でもいいなぁ、ガンプラを縛ることで自分を鍛えるやり方っ! あーしは好きだぜっ!!』
バックパックのクロスボーンスラスターが音を上げ唸る。
形式は突きの型。一気に接敵して、突きの一撃を与えようって魂胆。
だけどその鋭さはさっきまで見ていたアメリアさんのとは程遠い。練習相手には、十分だっ!
『このスピードを、避けたぁっ?!』
突きは面の一撃ではなく、点の一撃。
極論を言ってしまえば、判定の先にあたしのガンプラがいなければいい話。
少しだけ横にズレて、そのスピードの突きを避ける。
余裕を持って横にズレるなら、攻撃にも転じられる。次はこっちの番だ。
コックピットは無理でも、左腕は持っていく!
「避けるだけじゃない!」
進行方向へ沿うように熱した刃を左腕に当て、振り抜く!
まるでバターのように真っ二つに斬り裂かれた左腕が肘の先から抜け落ちる。
まずは片腕、頂いた!
『カウンターか!』
「読みやすかったからね」
『ふっ、抜かせっ!』
肘を切断したが、その勢いは止まることはない。
一旦離れたクロスガンが、ムラマサ・ブラスターが更に変形。
ピーコックスマッシャーへと形態を切り替えれば、ビーム溜まりが砲身に溜まっていく。
今度はこっちか。
「っ!」
とっさにジャンプして回避しようとするが、時すでに遅し。
発射された15門の線は容赦なく下半身を焼き殺す。
レッグフライヤーを切断するかしばし悩むが、このままでいい。
だが足への一撃は致命的だ。着地にも失敗し、両足を失ったインパルスが地面へと転がっていく。
耐久値はもうすぐ尽きる。
レッグフライヤーを外せば、まだ爆破ダメージは防げるだろうけど。
いや、でもこの両腕だけで逃れられるとは思えない。はぁ、流石に負けか。
あたしは両手を上げ、持っていたヒートナイフを地面に落とした。
「あたしの降参。強いね、あなた」
『にっひっひ、でしょう?』
「素、出てるけど」
『あ、ごほんっ!』
エマさん、素の声も結構かっこいい寄りだ。さらに誰かの声に似ている気がする。
気がするんだけど、本当に思い出せない。
『後でフレ交換しないかい? あーし、キミのこと気に入ったよ』
「まぁ、いいよ。基本はソロだから好きにして」
『うっしっ! んじゃ!』
エマさんのクロスガンがあたしの正面に立つと、右腕に持ったムラマサ・ブラスターを思いっきり振り上げる。
あ、この人容赦ねぇなぁ。
『エントランスで、先に待ってなぁっ!!』
コックピットごと真っ二つに両断。
撃墜判定を受けたあたしのインパルスはデータの破片となり散った。
あー、久々に歯ごたえのある相手だったけど、今度からはちゃんとアンタレスを持ってこよう。
やっぱり負けるには死ぬほど悔しいなぁ。
◇
「よっ! キミがぁ……。…………」
「どうかした?」
エントランスエリアで件のエマさんに出会う。
声をかけてきたくせに、あたしの顔を見た途端固まるってどういう了見だよ。
赤髪のロングヘアーに右目の眼帯。中華風のチャイナドレスをモチーフにした、見た目は海賊、もしくは中華系のマフィアにいそうな子だ。
でも顔。顔が、すごく……。
「い、いやぁ! なんつーか。……ああ、フレ交換だったよな!」
「…………」
「……な、なんだよ」
知ってる。この顔。そしてこの声。
あたしは知っている。通りで聞き覚えのある声だと思ったんだ。
メニュー画面からダイレクトメールを開いて、メールを1通送信してみた。
『もしかして、カヤバさん?』
「…………」
無言で『エマさん』が頷いた。
「……はぁーーーーーーー!」
「なんで……。えぇ。やってたんですか、GBN」
「まぁね」
理解した。目の前の海賊モドキが『あの』バイト仲間のカヤバ・マヤさんだということに。
向こうもあたしがシロガネ・ヒメリと気づいてしまったらしい。
あー、リアバレ。いや、ネットバレ? まぁ。キッツ。気まず……。
「こ、このことはなんというか。他の方にはご内密に……っ!」
「う、うん……。あたしも何卒……」
これはー、どうすればいいんだろうか。
まぁ……。とりあえずフレ交換しておこっと。
「ま、まぁ! そんな感じでよろしくっ! んじゃ!!」
「あ、うん……」
速やかに消えていった……。
まぁ、そうだよね。気まずいか。
あたしも相当気まずい。またバイト休もうかな、と思うレベルで。
でもそれはそれで今度はこっちで「なんでバイト来なかったんですか?」って言われるんだよねぇ。
はぁ……。まぁ、一応フレンド同士になったことだし今度一緒に遊ぶとするか。
あとでエナドリ買ってログアウトしよっと。