プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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第17話:社交界はヴァルガでなさりますのね

 ヴァルガには3分の壁、という概念が存在する。

 これは知らないダイバーが呟いた言葉だ。ヴァルガで3分間生存することができれば、一人前であると。

 

 これを真に受けたヴァルガを知らないダイバーたちが数多く潜っていったが、あまりの惨状に誰一人生き残ることができなかったとかなんとか。

 

 苛烈な無法のPvPディメンションでは何が来ても合法。

 例え核を使おうが、サテライトキャノンしようが、月光蝶しようが、生き残った者が正義であり強者なのである。

 そんなGBNの変態どもが集まる地にあたしたち3人は今から向かっている。

 

「最初の3分ですか?」

「そう! あーしも時々しか達成してないんだけど、とにかく生き残らなきゃ戦いにすらならないってこった」

「あたしがある程度作戦練ってるから、それで行きますよ」

 

 これでも3年前からGBNをやっている身。

 暇つぶし、という名目で何度もヴァルガに潜っては散っていった覚えがある。

 けれどその中で見つけた1つの攻略法がこれだ。

 

「最初のスポーン地点から半径数キロをエリア1として換算します。ここが激戦区。初心者狩りの狩場です」

 

 エリア1の激戦区からすぐさま離脱。

 その後、実力者と運がいい連中が残るエリア2、前線地区も抜ける。

 ここは初心者狩りなどの弱っちい奴らがあまり手を出さない穴場。

 この辺から実力者がポップし始める。そしてここも抜けて、エリア3。

 外周の後方エリアへと逃げるのだ。これがヴァルガで長時間生き残る方法。

 中心点であるスポーン地点から円型に広がる外側に真っ先に逃げ、そこで出てくる真の実力者と戦う。これがあたしが編み出した3分の壁を超える方法だった。

 

「だからこのワープを抜けてスポーンしたら、真っ先に離脱してください」

「了解よぉ!」

 

 ベギャンベウからの反応が薄い。

 やはりデビュー戦ということと、過去の記憶が邪魔をしているのだろうか。

 ここは激励の声をかけてあげるしかないよね。

 

「アメリアさん」

「は、はい……っ!」

 

 緊張した、張り詰めた声でふるふると反応する彼女。

 やっぱりそんなことだろうと思った。

 そんなあなたにあたしから先人の言葉を授けよう。

 

「ガンプラバトルは所詮遊びです。だから勝ち負けなんてどうでもいいんですよ」

「……え? でも皆さま方勝つために必死に戦っておりますが?」

「そうですね。でもこうとも言えます。ガンダムの世界みたいに命を懸けた戦いじゃないからこそ、何度も挑んで、何度も勝ちを求め続ける。何回だってやり直せるんですよ!」

「何回でも、やり直せる……」

 

 自分で言っててこの名言はやっぱり刺さるなぁ。主にブーメランとして。

 そう、命を懸けた戦いじゃない。だからみんな必死に勝ちを求めるんだ。その先のさらなる勝ちを求めて。

 所詮は趣味人どもの人形遊び。でも楽しいからみんなやるんだよねぇ。

 

「はい! が、頑張ります!」

「あはは、まぁ気を張らずに」

「まっ! 気張らないと最初の3分なんてあっという間に撃墜されちまうけどねい」

「それは困ります! ベギャンベウ様の初陣ですので!」

 

 3人で軽く笑い合う。

 あたしがまた誰かとパーティを組むなんて思いもよらなかったなぁ……。

 

「抜けますよ!」

「はい!」「了解!」

 

 青いゲートの出口からヴァルガへとポップする。

 強い光と共に、曇った天気と荒れた岩肌。まさしくヴァルガって景色だ。

 そして鳴り響くレッドアラート。はいはい出たな、リスキルのぱんたーさん!

 

「えっ?! なんですか?!」

「ビーム来る! エマさん!」

「分かってるっての! ABCマントォ!!!」

 

 7時の方向。空中に排出されたあたしたち三機のガンプラを狙う3本のビーム。

 やっぱりいるよねぇこの時間帯。でもその狙撃はパターン化しすぎているから、分かりやすいんですよ!

 お出迎えと言わんばかりに撃って来たビーム群をABCマントにて無力化。

 その後の追撃もないところを見るに、やっぱりスナイパーのぱんたーさんだろう。

 

 スポーンだけを狙う悪質な初心者狩りの1人、ぱんたーさん。

 AIによって、狙撃がパターン化されているから対策するのは楽なんだけど、これが地獄のギャラルホルンになっちゃうんだよなぁ。

 

『来たぜ! 今回のお客さんがよぉ!!』

『ヒャッハー! 獲物だぁ!!!』

「やっぱ来るよねー」

「こちらの方々、この前も見ました!」

「ほぼコピーアバターですからねぇ……」

 

 狙撃を合図に群がるハイエナたち。もとい世紀末仕様のザクたちが……。えーっと……。10機か。

 

「2人は後退しながら射撃! あたしも撃つ!」

 

 装備済みのヘビーマシンガンを手に、まずは一発挨拶がてらに両肩のミサイルを発射。

 もちろんこれは煙幕みたいなものだ。手前に着弾し爆発した土煙から1機ずつザクたちが押し寄せてくる。

 それを的確にヘビーマシンガンで撃っていく。数は10。なら軽く3機撃墜させれば、相手は混乱するはず!

 

「そーら! ピーコックスマッシャー!!」

 

 エマさんの支援攻撃もありきで致命に命中した弾丸は7発。

 これで2機撃墜。まぁ及第点か。でもこれで少しは混乱するはずだ!

 

『ぐあー!』

『モヒの助!』

『こいつら、つえーぞ!』

『くっそ! 囲んで叩くぞ!』

 

 だろうと思った。

 エマさんのクジャクがムラマサモードに変形。

 続けてアメリアさんもベイオネットのビームソードを展開する。

 こっちは援護射撃。遠距離のやることなんて大抵こんなもんよ!

 

 ヒートアックスを持って突貫してくる8機の世紀末ザクたちだが、こっちは白兵戦の鬼2機だぞ!

 まず先に突撃したのはエマさんのクロスガン。

 クロスボーンガンダム譲りのスラスターが火を拭き、急激な加速とともにザクの胴体を切断する。

 続けてベギャンベウのホバー移動から連続ビームソード突きで別のザクを串刺し。

 これであと6機!

 

『ちくしょー! コイツラ強すぎる!』

「なかなかやるねい、お嬢様!」

「すごいのはこのベギャンベウ様です! すごく使いやすい!」

 

 無理攻めしてきたザクをそのまま斬って捨てる。

 まるで踊っているようだ。バレエを嗜んでいるのなら、多分こういう動きになるだろう。

 ホバークラフトを駆使しながら、さらに2機撃墜。残りは3機!

 

「そらそらそらそらぁ!!」

『こいつ、一撃が……っ!』

「クロスガンだって、やれんだよ!」

 

 パワープレイに任せた大振りなムラマサ・ブラスター。

 だけど全体的なガンプラ完成度の違いが、明らかな戦力差となる。

 頭からめり込んだムラマサ・ブラスターがビーム刃を発現させて、一気に引き抜く。

 ズタズタに引き裂かれたザクが1機出来上がった。

 隙を伺っていた後方2機は怯えすくんでいた。

 

『や、やべぇ……! カン太郎、ズラがるぞ!』

『くそ、覚えてやがれ!』

「覚えてやるもんかよ!」

「あのお二方はどうするのですか?」

「放っといていいです。ともかくエリア2に行きましょう!」

 

 GN粒子を吹かせて、まずはエリア1の脱出を目指す。

 途中現れたガンプラたちをなます切りにしたり、串刺しにしたり。

 とにかくベギャンベウの性能実験については成功らしい。

 

 あたしがこのガンプラを作っている最中、ずっとGBNにこもっていたけれど、まさかここまで腕が成長しているとは。

 天才っていうのは、本当に存在するんだよなぁ。悔しいけど。

 

「ねぇ先輩。アメリアさんって何者なんですか?」

 

 秘匿回線でエマさん、というよりも今はカヤバさんか。

 バイトの後輩として聞いてきているのだろうか。

 

 この場合の何者かって、上達ぶりのことを言っているんだろうけど、それはあたしも聞きたいよ。

 元々剣術については心得があったみたいだし、バレエの癖も見受けられる。そしていつもの丁寧な気品ある所作。流石は桜芽財閥のお嬢様、ってところだ。

 

「あたしはアメリアさんのことを全然知らないけど、少なくとも1つわかることがあります」

「なんですか?」

「あたしたちの心強い味方、ってことです!」

「ふふっ、違いないですね!」

 

 ピーコックスマッシャーで全体への牽制。

 そのままヘビーマシンガンでの撃破。それで無理ならベイオネットでの追撃。

 チーム戦としては意外と相性がいいのかもしれない。

 チーム。チームってことはフォースかぁ……。

 

 浮かび上がった言葉を一旦棚の上に置いておく。

 今はエリア2を目指している最中だ。

 

『やぁやぁやぁ! 我こそは東雲武重である。いざ尋常に勝負勝負!』

「なんかやべーやついるじゃねぇか!」

「1on1所望のタイプか」

 

 たまに武者ロールなのか、こういう1on1を挑んでくる輩がいる。

 大抵は蜂の巣にされたり、複数人でボコったりと、なかなか思い通りにいかないと聞いたことがある。

 こんなことをやる人、本当にいたんだ。

 

「どーすんだい? 3人でボコすってのは、ちったぁ気が引けるが」

「アメリアさん、お願いできますか?」

「……はい!」

『ノッてくれるかい!』

「わたくしはアメリア。ベギャンベウで行きます!」

『そうこないとな! 我が武者南無が参る!』

 

 ジャハナムだよね、それ。

 と野暮なことをいうのはさておき。和風の鎧武者改造が施されたジャハナムがビームサーベルを両手にブーストを吹かす。

 一方アメリアさんはというと、これまで使っていたベイオネットのビームソードを引っ込める。

 

『怖気づいたか!』

「いえ、これは必要なことです!」

 

 振り下ろすビームサーベルと鍔迫るように、ベギャンベウの腰に収めていたレイピアが抜刀。

 ビームの火花が散るが、このレイピアは実体剣。そんな装備ごときでは断ち切ることなど出来ない。

 一旦引いた武者南無だが、それが仇となった。

 ムチのようにしなるイメージすらあるレイピアの剣先が武者南無の左肩へと向かう。

 

『っ?!』

 

 殺気を感じたのか、それともまた別の第六感か。

 攻めに転じたベギャンベウが武者南無の左肩に攻撃。

 惜しくもスラスターを吹かせることで武者南無は事なきを得るが、続く攻撃が2回目。今度は腰だ。

 無理やり躱したのだ。2回目の腰への攻撃は見事に突き刺さる。

 

『ぐおっ!!』

 

 弾き出された武者南無も体勢を整えようとするが、襲いかかるのは第三の刃。

 これは見たことがある。鋭く、真っ直ぐなまでの殺気。そして確実に仕留めるという純粋なる闘志。

 コックピットへの突きの一撃が武者南無を襲おうとしている。

 もちろんこれを避けなくては明日がない。全力で抗うために後方へと加速する。

 

 判断は正しかった。だがその上を行くのがアメリアさんのベギャンベウである。

 ギャン由来のブースター。さらにベギルベウの速度を組み合わせれば、確実な死が待ち受けていた。

 武者南無は自分のコックピットを守るように両腕を胸の前でクロスさせる。

 諦めない意志を感じる。だが、これで終わりのようだ。

 

「突きっ!!」

『あま……いぃっ?!!』

 

 もう1つ言っておこう。ベギャンベウのレイピアは特別性だ。

 カートリッジが存在しており、それを起動することで突きのスピードを更に加速させるパイルバンカーの要素を取り入れている。

 つまり、勢いよく射出された刀身が両腕を突き抜けてコックピットへと突き刺さる。

 撃破判定の許諾だ。

 

『み、見事……っ!』

 

 カラン、とカートリッジの薬莢が落ちると同時にジャハナム武者仕様はデータの塵へと消えていった。

 判断は素晴らしかった。でも何もかもその上を行ったのが、天才だっただけの話だ。

 

「やりました! ヒメリ様、見ていてくださいましたか?!」

「はい、見てましたよ。とてもかっこよかったです!」

「ありがとうございます! えへへ!」

 

 自分が作ったガンプラをここまで使えるようになっているとは。

 やっぱり物覚えがいい。ゆくゆくはあたしの強さなんか超えていきそうなほどだ。

 

『ヒャッハー! 手負いをやるぜー!』

「ってやば、さっさと離脱します! 見られてたみたいです!」

「あ、はい!」「いいねぇ、あーしも滾るってもんよっ!!」

 

 ヴァルガ、エリア2進行まであと数キロ。

 さて、これからどんな悪魔が立ちはだかるか。ちょっと怖いなぁ……。

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