プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

2 / 40
第2話:家に居候させてくださいまし

 早朝の5時ももう少ししたら6時に切り替わり、人によってはもうすぐ出勤の時間なんだろう。

 あたしは基本アルバイトのシフト制。昼から深夜にかけての仕事だ。だから今頃の時間帯は大体寝なきゃいけないんだけど……。

 それができないのはあたしの乱雑に広げられたゴミ山をどかした場所に座る、場違いなメイドさんとその主人が原因だ。

 

 てか何。あたし、どうしてこういう状況になってるのかが分からないんだけど。

 あれかな。あたしが過去にした蛮行が今の今になってリアルに現れたってことなんだろうか?

 そんな訳あるか。あってたまるか。あの日の精算はしたわ。あたしの心の中でだけ、だけど。

 

「……え、っと」

「汚い家ですね」

「そ、そうですねー」

 

 初見のメイドさんにそんなことを言われてしまった。キレそう。殴りたい。

 クラシカルなメイド服にしっかり礼儀は正しい。口は悪いし、事情は唐突でおかしいけど、まぁ、うん。ある程度は許してあげよう。

 

「ねぇ、これはなに?」

「それは、何でしょうねぇ。空き缶でしょうか?」

「どうしてゴミを捨てないの?」

「それはそちらのズボラな方に聞いてください」

 

 問題は主人の方だった。

 主人と言っても、ただの物事を知らないような箱入り娘感を感じる。

 目立つだろうその金髪のストレートヘアはこのゴミ屋敷に場違い極まりないし、寝巻き? であたしの家まで来てるし。ひらひらが付いたシルクでも着ているんじゃないかっていうぐらいの、埃1つない綺麗な寝間着だ。きっと高いところのものだと思う。

 

 何にせよ、この2人は異常だ。

 午前5時の公園にいるってことは、十中八九家出なんだろう。

 キャリーケースもメイドさんが持っているみたいだったし。

 

 GBN歴4年のあたしはいくつものトンチキエピソードに出くわしてきたわけだけど。

 今回もひしひしと感じる。トンチキな何かに巻き込まれる……っ!

 

「お嬢様。改めてご挨拶をしましょう」

「はい。わたくしはアメリア。桜芽アメリアと申します。こっちはメイドのナツメです」

「どうも」

「あ、あー。はい……どうも……」

 

 主人、改めアメリアはそれはそれはご丁寧な仕草でお辞儀をする。

 ただ正座が慣れていないからか、ちょっとぎこちなかったけども。

 こ、こういうのはお礼の気持ちだ。何故お礼してるのかあたしには一切わからないけれど。

 

「で、えーっと。どうしてあたしのお家に?」

「えーーーーーっと。あ、あなた様のような方をお待ちしていたと言いますか……」

「正直に言ってしまえば、お嬢様は誰でも良かったのです」

 

 身も蓋もないなぁ?!

 まぁそうだと思ってたけど。同性で都合のいい一人暮らしで。

 あたしは家でゲームするか、バイト先に行くか、しかしないほぼ引きこもりのフリーターだ。

 そういう世間のはみ出し者の方が都合がいいってことなんだろう。

 

 桜芽、なんて名字。聞いたことがある場所なんて1つしかないし。

 

「えっと。ナツメさんはお付きになられないのですか?」

「私がいるとメイドが1人欠けることになります。ですからお嬢様の家出に加担したと思われますので、残念ながら側につくことはできないのです」

 

 あー、なんか訳アリって感じかぁ。しかもバレたらナツメさんの職がなくなる的なね。

 従者付き。桜芽の名字。ここまで来たらなんとなくバックに何が付いているか分かってしまう。

 

 桜芽財閥。確かGBNの協賛企業だった気がする。

 主にアミューズメント関連の会社が中心となってできた財団で、財団B社と共に世界をまたにかけるプラモデル屋だったはずだ。

 そのご令嬢が2人いたという話をちらっと聞いたことがあるけど……。

 もしかしてその片割れ様では?!

 

 あたし、一般モブ女子ぞ?!

 数年前にちょっとやらかしてからは就職もうまく行かなくてアルバイト生活だし、GBNでもろくなことをしていない。

 いきなりそんな重たい事情を持ったお嬢様を引き取るなんて、命が何個あっても足りない!!!

 

「で、ですが。その。お金が……」

「お嬢様の貯金からお渡しします」

「あー、えっと。あたしの部屋汚いですし……」

「今日1日休暇を頂いております。しっかりと掃除させていただきます」

 

 あ、やばい。逃げ場がどんどんなくなっていく。

 

「あ、あたしはGBNをやっていてぇ……」

「えっ?! そうなんですか! わたくしもちょうどやってみたくて、買ってみたのです、ゴーグル!」

「あっ……。そうなんですねぇー」

 

 オワタ。

 メイドのナツメさんももう覚悟を決めろって顔で訴えてきてるし。逃げ道なし。

 

「ではアメリア様をよろしくお願いいたします。私も定期的にこちらに伺いますので」

「はい、不束者ですが、よろしくお願いいたします」

「あっはい……」

 

 なんか、もう。疲れた。

 お昼からバイトだし、今日はもう寝ちゃおうかなぁ……ふあぁ……。

 

「それで、その……。早速ですがGBNの設定をしたいのですが……」

「……あっはい」

 

 どうやら今日は完徹かなぁ。

 とりあえず後でエネドリ買ってこよう、っと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。