プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
ルートは確かこの後カーブがあったはず。突破後に最速でトランザムを起動。
後続は任せて、あたしがエアマスターをやるしかない。
「ということです。なのでわたくしは可能な限りエネルギーを温存しますわ!」
「分かりました。でしたらわたくしから先手、いただきますわ!!」
コロンさんのソリの後方部から出現したのはミサイルポッド。
それらが一度に射出されると、迷いなく前方にいるはずのトールギスへと向かう。
「わたくしも行きますわ! 突貫!」
「えっと。あの、状況が見えないのですが……」
エマさんが接近戦のために移動を開始した後、おずおずと後ろから出てくるのはアメリアさんのベギャンベウだった。
少し戦闘した跡がある。おそらく世紀末ザクと1戦交えて倒したのだろう。
「状況が変わったのですわ! こちらコロンさんですの」
「コロンですわ! お気軽にコロン様、とお呼びくださいませ!!」
「分かりました、よろしくお願いします。コロン様!」
図々しいなこのELダイバー様は。
とは思ったけど、アメリアさんだったらみんなに様付けだから別に問題ないか。
あたしはこの戦いが終わったらコロンさんと、さん付けで呼ぶけど。
『クソわよ! このトールギスの速度に合わせてこれるだなんて!』
「そういう時はお排泄物っていうのですわ!!」
向こうは向こうでエマさんのクロスレンジに入った。
同時にカーブゾーンに入ったみたいだ。減速した相手とは言え、接敵できる実力はなかなかと言える。
支援攻撃と言わんばかりにコロンさんに指示を仰ぐと、やれやれと言わんばかりにミサイルポッドが追加で射出。さらにまたどこから出してきたか分からないガトリング砲を取り出すと、彼女は砲撃を始めた。
「さぁさぁ! この《トイボックス》付属の兵器群を突破できますかしら?!!」
『後ろからビームガトリングガンって、正気?!』
「わたくしにも当たりそうなんですけどぉおおお!!!!」
やってることがハチャメチャすぎる。バクゥのビームガンに加えて、構えたビームガトリングガンの高火力攻撃。さらにはソリ――トイボックスって言ってたっけな。そこから出てくるミサイル。
これだけの弾幕をたった1機で出すなんて、モデラーは相当な変態と見て間違いないだろう。
『こんのぉっ!!』
「ドーバーガン、来ますわ!」
「……っ!! 舐めないでくださいましっ!!」
ドーバーガンの射線上。ちょうどカーブしたところを捉えられたエマさんは……えっ?!
進行先の射線を回避するために、ムラマサ・ブラスターを地面に突き刺して、強引にターゲットから外れる。
次の瞬間、空を切るビームがクロスガンの進行方向に射出されるが、それはかの機体の端を掠める程度に抑えられた。
『外した?!』
「やってやったわ! コロン様!」
「捉えましたわ、一斉発射!!」
『しまっ?!』
ドーバーガンの発射のために足を止めたがゆえだった。
狙いを定めたコロンさんがビームガトリングガンとミサイルの雨を発射。
原作では一度掠めただけでもかなりの威力だったあれをまともに受けてしまえば、紙っぺら装甲に改造したトールギスでは守ることなど不可能だった。
穴あきになった機体を隠蔽するかのようなミサイルが直撃。
青いデータの塵へと姿が変わってしまった。
「やりましたわー!!」
「おめでとうございます、コロン様!」
「よくってよ! 後は任せましたわ、ヒメリ様!」
「了解!」
この兵器を使うのは約数年ぶりか。
使いこなすにはだいぶ時間がかかった。3倍の出力なんて並大抵のダイバーに操作できる代物ではないのだから。
だけど、今日は。今日だけは。アメリアさんのために、この力を振るおう。
ちゃんと慣れたままでいてくれよ……っ!
「ブラストトランザム!」
背面のGN粒子がキーワードを聞いて即時に活性化する。
出力がどんどん上昇し、余剰エネルギー排気口部分から排出される。
次第にコマンドガンダム似だった色合いがトランザムエディションのごとく真っ赤に染まっていく。
「行くよ、アンタレス!!」
操縦桿を切り、真っ直ぐに突き進む。
くっ、相変わらずGがとてつもない。吐きそうになる。けれど意外と慣れているらしい。
これならやれる!
『6時方向から接近?! あの緑のか!』
「そうですわよ!!」
数秒も満たぬ間にエンゲージ。
ビームマシンガンを手にエアマスターに乱射するものの、相手もその道のプロらしい。
軽々避けながら、その熱でさらに加速する。ある種のスリップストリームのような原理か。
「ならこっちで!!」
軽量化のためにビームマシンガンを破棄。
ヘビーマシンガンを装備したあたしは進行方向のエアマスターを攻撃するものの、これも避けられる。
というか、トランザムしても同速かそれ以上のあのエアマスターって何者?!
ただ、こちらもされたままっていうのじゃつまらない。肩部分のミサイルを発射後、パージしてからのGNビットシールドも起動。これで後は速度に乗るしかない!
『あまい。甘いですわ! そんなスピードではエアリアルマスターであるこのガンプラを超えられませんわ!!』
「っ!」
専門分野は尖らせた方がより鋭く、鋭利に結果を残しやすい。
そんなのは分かっている。向こうのエアリアルマスターも、さっき倒したトールギスもそんなもんだ。
だからこそ、あたしの専門分野がそんなものだと思うなよ!
ヘビーマシンガンの銃身下部に装備されたブレードを取り外す。
狙いは投擲。外せば恐らく向こうがゴールするギリギリのタイミング。
だけど、デュナメスが基盤となったこのアンタレスなら照準補正は通る。
真っ直ぐ突き進むなら。こっちだってもっと速度を上げるだけっ!
『まさか、この距離から投擲を?!』
「……そうです、わっっっ!!!!」
同速ならそれ以上の速度を、相手が捉えられない速度で投げればいい。
光を越えろ、その先に未来があるんだからっ!!
投擲したブレードがぐんぐんとエアリアルマスターめがけて伸びていく。
もちろん相手は行動として避けるだろう。だけど、その刃は外さないっ!!
『なっ?! 左翼が!』
「これで同速以上!!」
狙いは左翼か右翼。どちらでもよかった。
どちらにせよ、通常コンディションとは異なる状態での飛行が鍵だった。
これだけでも飛行中の被弾はとてつもない被害を見出す。
とっさにMSモードへと移行したエアリアルマスターは地面に墜落しながら、ガシャンガシャンと音を立てて回転する。
そこを逃すバカはいない。ヘビーマシンガンを構えたあたしが照準を定めると、苛烈なる連射を始める。
『逃げ切れると思いましたのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!』
蜂の巣に姿を変えたエアリアルマスターの巨大な爆発とともに薬莢がカラカラと落ちていく。
エネルギーを使い果たしたアンタレスはそのままトランザムアウト。通常色に戻りつつ、その場で膝をついた。
「さぁお行き! 露払いはいたしましたわ!」
『そう。それではありがたく頂戴いたしますわぁぁぁぁぁ!!!!!』
「あ」「え」
悪びれもしないバクゥとELダイバーの一味がそのまま突出。
止める暇もなく、1位になったのはコロンさんだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!!!」
「えっ、と……。ヒメリ様?」
「……はぁ。ヒメリさんは先に行ってください。あたしも行くので」
「あっはい……」
完全にしてやられた。
そうだよねぇ。眼前の露払いを他の人がしてくれるなら、裏切るのは当然だもんなぁ。
はぁ……。まぁこれも勉強代ってことで、いっか。
2位としてゴールしたアメリアさんを見て、あたしはにんまりと笑う。
まぁ、結果としてダイバーポイントはもらったし、ノーカンだ。ノーカン。