プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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第26話:ご褒美のコンビニスイーツですわ!

 夜も更けてきたということもあり、フォース結成後にコロンさんをフレンド登録してその場で解散という形になった。

 久々にレースで神経を使ったからか、ログアウトした後はベッドへゆらゆらと誘われて睡魔に身を任せた。

 ご飯、確か食べてなかった気がするけど、まぁいいか。どうせ明日食べることになるし。

 

 そんなこんなで翌朝である。

 チュンチュンと窓の外から聞こえるスズメの鳴き声。

 揺れる身体で再び眠気に誘われたが、そろそろ起きなくてはと気合を入れた。

 

「おはようございます、ヒメリ様」

「うん、おはおー……」

 

 アメリアさんとの同居生活で1つ変わったことがあった。

 それは夜更かしできなくなったということ。

 アメリアさんが元々規則正しい生活習慣の塊で朝になったら起き、夜になったら寝るという真っ当な人間らしい仕草をしてくる。

 あたしがまるでダメ人間みたいだが、その通りなのでしょうがない。

 

 大きくあくびしながら、パシャパシャと水道水で顔を洗う。

 んん、とてつもなく冷たい。11月ともなればこの水道水の冷たさが身に染みるってもんだ。

 

 それから軽い朝食を作って、2人で食べる。

 これが最近の朝のルーティンである。あたしも規則正しい人間になりつつあるから、そろそろ夜更かしがしたくなってくる。

 やっぱりアメリアさんに料理を覚えさせるべきか。物覚えのいい彼女ならきっと容易くあたしより美味しい料理が作れるに違いない。本人が頑なに拒むのが謎だけども。

 

「それではヒメリ様! 昨日のご褒美というのは?」

「フッフッフッ……まずは出かける準備でもしましょうか!」

 

 アメリアさんが疑問符を頭に浮かべた顔をしている。

 こんな朝っぱらから行くのはナンセンスだけど、24時間やっているような場所だ。いつ行っても変わっているのは在庫の数だけだろう。

 あたしは部屋着から軽くジャンバーを羽織る。着替えるのも面倒くさいし。

 

「着替えないのですか?」

「あぁ、うん。なんかー。気が変わったから着替えよっかな」

 

 決してお嬢様と、いやそれを取り除いてもこんなかわいい子と出かけるのに、部屋着ジャンバーは流石に隣に立つ資格がなくなってしまうというか。

 日和ったわけじゃない。立つ瀬がないと言いたいのだ。うん。

 

 そんな感じで近くのあそこに行くだけなのにだいぶ重装備になってしまった。

 こんなに着飾る理由なんてないのに、隣の格好を見ていたらなぁ……。

 

「どうかしましたか?」

「いえ、その……。今から行く場所にそんなおしゃれな服は必要ないと言いますか……」

「ダメなのですか?!」

「うーん。まぁ……。いいか」

 

 久々の外出に心が躍るアメリアさん。なかなか可愛らしいが、大丈夫かな。あたしちゃんと隣に立つのに合う格好をしているだろうか。

 まぁ、しょうがないか。あたしそんなにいい服持ってないし。

 だって、今から行くの、コンビニだし。

 

 ◇

 

「おお、ここがいわゆるコンビニエンスストア!」

「もしかして来たことなかったんですか?」

「はい、初めてです!」

 

 最先思いやられるというか。

 近所のコンビニにやってきたあたしたちは微妙におしゃれな格好をしている。

 アメリアさんと比較したら相対的にプラマイゼロになるはずだ。

 

 ……なるかなぁ?

 

 入り口を通れば耳に残る入店音。

 アメリアさんと一緒だと、何でも新鮮に感じる。なにげに2人でどこかにきたのって初めてなんじゃないだろうか?

 その行き先がコンビニなのはちょっと問題があるかもしれないが。

 

「ここへは何をお求めに?」

「まぁまぁ。本当の庶民の贅沢っていうのを教えてあげますよ」

 

 そうやって小さい店内を歩いてたどり着いたのはコンビニスイーツの棚だ。

 久々に来たけど、うーん。この宝の山……っ!

 

「こ、これは?」

「アメリアさんは知らないと思いますが、庶民の贅沢といえばこれ! コンビニスイーツの爆買い!!」

「お、おおっ!」

 

 コンビニスイーツ。

 それは甘く蕩けてしまうような安っぽいクリームの味わい。

 

 コンビニスイーツ。

 それは舌触りのいい冷たさが心地がよくなる気持ち。

 

 コンビニスイーツ。

 それは……。あたしの大好きな食べ物である。

 うん、ごめんなさい。金銭面的にもコンビニスイーツしかなかったんです。

 都合もなんだかんだいいし、あたしも満足することができる。つまりWin-Win。どちらも美味しい思いができる、というわけだ。

 

「これはなんというのですか?!」

「えっと……チョコチップクレープですね」

「こちらは?!」

「こっちは……もちもちどらやきですね」

 

 おぉ、予想以上に食いつきがいい。

 こういうお菓子を貴族は食べたことがないと思っていたから、物珍しがっているのかもしれない。

 よーし、お姉さん奮発しちゃうぞー!

 

「じゃあこっちとこれも。後こっちを2つずつ……」

「それもですか?!」

「今日は贅沢する日だし、アメリアさんへのご褒美もあげないと!」

「……恐縮です」

 

 改まる必要なんてないのに。

 むしろあたしの方が改まる他ないというか。

 こんなところナツメさんに見られたらどうなることか。おお恐ろしや。

 

「さて、こんなもんかな。あとはレジに行って……。アメリアさん?」

 

 見つめる先には、おぉ。ホットスナックコーナー。

 そうだよね。コンビニと言えば、みたいなところもあるよね。

 このレジの横に並んでるホットスナックが妙に美味しそうに見える魔法は一体何なんだろうね。

 仕方ない。コロッケも2つ追加だ!

 

 まぁ合計額がちょっとコンビニで見るような内容じゃなかった、とだけは伝えておこう。

 ありがとうございましたー、という挨拶とともにコンビニを出ると秋の風が頬を撫でた。

 うぅ、さむ。もうちょっとで冬かな、これは。

 

「アメリアさんもどうぞ」

「え、これはコロッケですよね?」

「はい。これをガブッと!」

 

 サクッとした衣に中には肉汁とホックホクのじゃがいも。

 んん~! 寒い日に食べるコロッケが旨いんだ!

 

「はむ……。んんっ! 美味しいです!」

「でしょう? 立ち食いって行儀悪いですけど、これは2人の秘密ってことで」

「秘密……。ふふっ、いいですね!」

「お、アメリアさんもノッてきた! そなたもワルよのぉ!」

「ふふっ! 貴方様には及ばないですよ? なんて!」

 

 アメリアさん、そういうネタも通じるのか。

 と言うよりも出会った頃よりも少し元気が出た気がする。

 無理やり合わせようとしているよりも、この天真爛漫で好奇心旺盛な方があたしは好きだ。

 

 それから家につくと、テーブルの上にズラッと買ってきたコンビニスイーツの数々が並ぶ。

 こう。圧巻だ。すごい量買ってきたけど、いつ見ても幸せを今から食べるぞ、と言っているようで堪らない!

 

「それじゃあお昼ごはんということで。いただきます!」

「いただきます!」

 

 それから美味しい楽しいの舌鼓。

 あたしも当然のごとくコンビニスイーツを食べれて嬉しい。

 けれどそれ以上にこの幸福をアメリアさんと分け合えるのが、本当に嬉しいんだ。

 

 ご褒美だなんて大層なことを言ったがあたし自体、実際は彼女の幸福に喜ぶ顔を見たかっただけなのかもしれない。

 考えたら、まるであたしがアメリアさんのこと大好きみたいに思えてくる。

 当然だ。妹みたいな存在なんだから。

 

「……ヒメリ様」

 

 そんなときだ。改まってあたしに何かを言いたがっているようだった。

 

「ん、なんですか?」

「……ありがとうございます。何から何まで」

 

 それはただのお礼だった。

 確かに朝のおはようから、夜のおやすみまで。ずっといるのは間違いない。

 でも全部あたしが好きでやっていることだし、1人でいても日常はさほど変わらなかったはずだ。

 

「わたくしからも、何か恩返しができたらよかったのですが……」

「大丈夫ですよ。心配なんてしなくても、アメリアさんと一緒に入れるのがあたしの幸せなんですから」

 

 変わらなかった。けれど、2人で嬉しかったことは山ほどある。

 一緒にご飯を食べるのだって、これまではしてこなかったこと。

 久々に食卓を囲むと、こんなに楽しいことなんだって思わなかった。

 

 寂しくもなくなった。分け合える幸福が増えた。

 それだけで、あたしの生活は潤ったと言っても過言ではないんだ。

 

「アメリアさんがいて、あたしは嬉しいんです。出会いの神様に感謝ですね!」

「……! はい!」

 

 だからこれから先も何があろうと守りたくなる。

 アメリアさんのことを。だからちゃんと調べなきゃ。桜芽財閥のことを。

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