プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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2週間ほど振りです。
いろいろ忙しかったけど、一旦平和を取り戻しました


第27話:調べ事は図書館ですのね

 桜芽財閥。GBN協賛の企業団体の総称。

 アミューズメント関連の企業が中心となって出来上がった財団であり、財団B社と共に様々な支援をGBNに施している。

 主にVR技術の提供を賄っていたはずだ。

 

 凡人のあたしには想像もつかない技術の提供。

 それから品質の向上に加えて、ガンプラとの整合性のチェックなどなど。

 一手に引き受けているある種GBNの基盤を支えている団体といっても差し支えはない。

 

 というのが表では知りえる限りの情報。

 裏ではIT企業特有のブラックな残業や無茶な要望などを通している、なんて噂もあるが、それはどこも一緒だと思うからどうでもいい。

 

 あたしが知りたいのは桜芽財閥のトップとその家族周り。

 公には桜芽 往斗(さくらめ おうと)という恐らくアメリアさんの父親が財閥のトップを担っているらしい。

 流石にそれ以外の情報は出てこないが、近ごろ次期当主交代の話も出ているとか。

 ならアメリアさんはそれが嫌で抜け出してきた?

 

 いや、仮にも責任感と生真面目さで生きてきたような少女が役目を放り投げるとは思えない。

 ならどうしてあたしの家に逃げるように……。

 

「ぬあぁぁぁぁぁぁ!!!! わっかんない!!!!」

「図書館ではお静かに」

「あ、すみません……」

 

 実際にGBNの図書エリアに引きこもれば、何か情報を引き当てられると思ったんだけど、流石にダメか。

 現当主がガンプラ雑誌に登場して「ウィングガンダムはEW版も捨てがたいのですが、やはりTV放映版のディティールも好みで」みたいなトークを永遠していたことしか書いてなかった。

 うん、多分この人。相当Wガンダム好きだな。

 

「餅は餅屋って言うけど、アメリアさんには聞きづらいしなぁ……」

 

 わざわざ家族のことを避けてきたのに、ここに来ていきなり踏み込んでいくのは勇気がいる。

 何よりあたしの家に転がり込んできた話の根幹だ。そうやすやすと話してくれる気にはなれないだろう。

 今まで話してくれなかったことも含めて、きっとアメリアさんの中でも触れられたくない地雷。

 

 はぁ……。あたし、信用されてないのかなぁ……。

 

「おや、そこにいるのはヒメリではないか?」

 

 永遠悩み続けていると、それを知ってか知らずか。

 いやこの人のことだからきっと知らないんだろうけど、鋭い声色と共によく知った顔があたしの視界に入ってきた。

 呆れるほど長い栗毛のポニーテールは運動をするのに向いているのか。

 はたまた目つきがきついから女騎士っぽく見えているのか。

 多分格好のせいだろうな。ジークジオンみたいな制服着てるし。

 

「何か用ですか、ミレイナさん」

 

 じっとりとそののんきな顔を見る。

 この人、意外と戦闘狂なだけで普段は脳みそ筋肉でできてるだけなんだよなぁ。

 だから前回みたいに空気が読めないんだ。

 

「いえ。たまたまヒメリを見つけて声をかけただけです。君がここにいるのはとても珍しいですがね」

「そりゃそうでしょうね」

 

 脳筋なのに小説が好き、という点がまた矛盾している。

 昔は彼女と一緒に図書エリアに入り浸っていることがあった。

 それぐらいには彼女とそれなりに付き合いがあったと言える。

 ブレイクデカールの1件で向こうはあたしのことを敵視するようにはなったけども。

 だから何故わざわざあたしに声をかけてきたのか、わからないのだ。

 

「君はもっぱら戦闘でしたからね、昔は」

「あんたもそんなもんだったでしょ」

「私は昔から小説を愛読していました。ヒメリとは違います」

「そう」

 

 やっぱり鼻につく言い方。むかつくなぁ。

 

「……桜芽財閥ですか?」

「人の本を盗み見るなんて、いい度胸してますね」

「今は私の方が強いので」

「……そうかもね」

 

 争うことは苦手だ。

 何かとストレスやプレッシャーが付きまとう。

 勝ったら気持ちいい、負けたら悔しい。なんて世界にあたしはもう生きていない。

 勝っても負けても、それに連なる感情が新たな戦を起こす。さらに戦わなければいけなくて、それが終わってもさらに。その次も。

 いつの間にか気軽にやっていたはずの趣味が、チートにまで手を出す義務になっていたんだから、もう争いごとなんて御免なんだ。

 

「……やはり変わりましたね。昔の君はもっと好戦的でしたよ」

「いろいろと、考えることができましたからねぇ、っと」

 

 こういう時は席を立って、そのまま逃げるに限る。

 なんならアンタレスのトランザムをぶっ放して逃げてもいい。

 今は、こいつにあんまり触れられたくない。

 

「ランキングも。やっぱり未練はないのですか?」

「…………」

 

 手が止まる。

 本当に。何故彼女はこんなにもあたしの神経を逆なでするのが大好きなんだろうか。

 あたしは争うことが苦手だ。ランキングなんて、もってのほかなんだから。

 

「どうでもいいよ。今のあたしは気ままにGBNを漂うダイバーなんだから」

「あ、ヒメリ!」

「図書館では、お静かに」

「あ、はい……。じゃなくて……あぁ……」

 

 今だけはお静かにNPDに感謝だ。

 彼女は未だに苦手だ。あたしのことを嫌ってくる割に、やたら積極的に絡んでくる。

 嫌なら蓋でもすればいいのに。

 

 それとも。まだ2年前のことを引きずっているんだろうか。

 あれはもう終わったことであり、あたしだって当時の知り合い全員と顔を合わせないようにしている。

 それでもよくしてくれている善人はいたりするけど、それも数えるほど。

 

 あたしは結局のところ元マスダイバーなんだ。

 その事実は変えられようがないっていうのに。

 

「はぁ……。なんか萎えちゃったなぁ……。八つ当たりしに行くか」

 

 行き先ヴァルガ。目的は適当な場荒らし。

 やり場のない感情を叩きつけるには幼稚で稚拙な発散のさせ方が効率がいい。

 まぁ、だから。大人らしくないって思ってしまう。争いごとはやっぱり苦手だ。

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