プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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第32話:いつの間にか事態がヤバそうですわ!

 《マッドマーチャント》。

 GBNの比較的アンダーグラウンドな界隈では有名な武器商人だ。

 その実態は優秀すぎる武器を高額で取引するというもの。

 ここまで聞けば、ちょっと高級感溢れる闇の商人と言ったところだが、話はそれで終わらない。

 

 彼女が作る装備はだいたい変なのだ。

 普通の武器を作りたくないのか、それともすべてをひっくるめて最強の武器を作りたいのか。

 恐らくは後者だ。彼女は武器を作りたいから作っている。

 

 そして適当に捌ければいい、という理由で武器を売っている。

 そういう意味でマッド。狂っている。という意味らしい。

 

「ちなみにラムネ様はG-tuberとして成功収めていますのよ! 登録者は数十万人ですわ!!!!」

「へ、へー……」

 

 うん、聞いたことある。

 変な武器のテスト。普通の装備のグレードアップ。

 ガンプラの新作が出た際の考察も兼ねた詳しいレビュー。

 どれも聞き覚えがあった。というか前にラムネさんの動画を見たことがあった気がする。

 

「すごいのですね……! そんな方がコロン様の後見人? でしたのね!」

「ふふ~~~ん!!!!! それはもう!! 自慢のわたくしの!!!!!! 後見人ですわ!!」

「うるさ……」

 

 てかそれをさも自分の手柄みたいに言うコロンさんは一体なんなんだ。失礼か。

 まぁでも。少しの間接しているだけでも大変面倒くさいELダイバーってのは分かる。

 ひょっとして友だちがいないんじゃないのか? あ、それはあたしにも刺さるわ。

 

「それで? コロンさんは何しに来たんだい?」

「用がなければ、フォースの皆さま方を連れてきてはいけませんの?」

「いいや、歓迎さ。ようこそ、マッドマーチャントのラボに」

 

 改めて思うが、随分と健康に悪そうな場所だこと。

 こんな薄暗い照明でずっと作業していたら、視力が下がってしまいそうだ。

 うーん。さて、どうしよう。やることなくなった。

 

「……というか君」

「ん? あたしのことですか?」

「いやはや、久しい顔を見たなと思ってね。先代の地獄番だったか?」

「それはどーも」

 

 まぁ、ここでも2年前の話を掘り起こされるわけか。

 あたし的にはもうすでに終わった話なんだけど、過去は何故すーぐ追っかけてくるのか。

 ちらりと横目でアメリアさんの方を見てみた。目があってしまって、すぐさま目線を戻す。

 我慢する、とは言っていたけど、知りたいという興味にはどうしても抗えないように見える。

 

 けど。でも……。

 元マスダイバーであることを、アメリアさんには知られたくない。

 どうしてか、なんてもう分かってる。失望されたくないだけ。自分がただ傷つきたくないだけなんだ。

 

「ふーむ……」

「……なんですか」

 

 そんな考えを知ってか知らずか。じっとりとした不健康そうな目線があたしを見通す。

 なんか、品定めされてるみたいで居心地が悪い。

 

「いや、君の丁寧ながらも堅実な戦い方をコロンさんから聞いていてね。装備の実験に一役買ってくれそうだな、と」

「えっと……。ご遠慮します」

 

 コロンさんの、あたしへの評価が意外にも高いことはさておくとして、後半の内容は聞き捨てならない。

 どっちかというと聞きたくなかった。

 装備の実験ってあれでしょ? ヘンテコな装備を手に持って模擬戦をさせられるやつ。

 配信で見たことがある。が、正直爆発オチか暴発して爆発しているかのどちらかしか見たことがない。

 

 それを楽しんでいるフシがあるから、リスナーとしては楽しいんだけど、実際にそんな武器を持ちたくはない。

 

「まぁとは言ってもここにあるのは大量の戦闘データとそれに基づいて作られた武装の仮データだけ。こんなところを見ても大したものはないから、暇じゃないなら別の場所に行くことをオススメするよ」

「あーしも結構気になるデータはあるけど、4人も入ると流石に窮屈よな!」

「そうだね。フレンド登録でもして、暇なときにでも遊びに来るといいさ。コロンさんも歓迎するだろう」

「んなっ?! ありえませんわそんなこと!!!!!!」

 

 顔を真っ赤にして、毛が逆立っているようにも見えるレベルで反論するクソデカボイスお嬢様。

 確かに散々失礼なことは言うわ、声は大きいわで、そんなに周りとノリを調節できないだろうから、友だちは少ないんだと思う。

 こんなんでも、ラムネさんはちゃんとコロンさんのことを見ているんだな。少し安心した。

 

 あたしたちはそれぞれラムネさんとのフレンド登録を済ませると、各々解散していった。

 というのも、何故かあたしだけ呼び止められてしまった。コロンさんも出て行かされる始末。なんか、居心地悪いなパート2。

 

「……それで、本当に武器のテスターにでもしようと言うんですか?」

「いや、そういうわけじゃない。元マスダイバーとしての話だ」

「そういうことですか」

 

 人除けはバッチリってことですか。そうですかい。

 

「僕個人としては正直終わった話に首を突っ込むのはどうかと思っていたんだけどね。どうもそうもいかないようだ。これを見てくれ」

 

 ラムネさんが開いたウィンドウモニターに映っていたのはGBN掲示板だ。

 いろいろあることないことや、攻略情報なんかが載っている、知っている人は知っているコンテンツの1つ。

 そこには面倒ながらも、そういうことが書かれるだろうな、という内容が記載されていた。

 

「嘘つき姫の復活……」

「風の噂になり始めているよ。2年前のブレイクデカール事件を知らない連中も増えただろうが、こうやって根に持つ連中は大勢いる。そのうち噂に尾びれがついて面倒なことになるだろうね」

「でしょうね」

 

 いつかはそんな日が来るだろうなとは考えていた。

 それが少しばかり早かっただけ。とはいえだ。そんな話を切り出してきたからには何らかの脅し、と見るのが妥当だろう。

 

「それで。あたしに何をしてほしいんですか?」

「1つは親切心だ。コロンさんもあぁやってツンケンしているが、フォースの話をよくしてくれてね。それは楽しそうに言うもんだから、居場所はしっかり守ってやらないとな」

 

 あのELダイバー、意外と裏ではよくあたしたちの話をするのか。

 ゲーミングお嬢様なんて言ってたけど、どっちかと言うと悪役令嬢寄りのツンデレでは?

 

「2つ目は警戒だ。そんなフォースに爆弾があるのだから」

「はは……」

 

 笑えないジョークだ。

 

「そして3つ目。こっちの方がより面倒だ。君たちのメンバー、アメリアさんを探している人がいる。いや、人たちがいる言った方がいいだろうね」

「っ! それは……?!」

「彼女、こっちではあまり顔をイジってないそうだね。桜芽財閥が裏で動き始めてる。行方知れずの令嬢を探してね」

 

 しまった。ついアメリアさんの顔の良さに惚れ惚れしていたが、彼女は何らかの理由で家出をしている。

 ナツメさんがうまく立ち回っているらしいけど、流石に目をつけられたか。

 アバターをちゃんと別のものに変更すべきだったかもしれない。

 

「そしてこんな話も出ている。桜芽財閥の次期当主に自分の娘を起用しようとしていると」

「え、それって……?」

「いや、これは彼女のことじゃない。姉である『ロザリー』という者が次期当主の筆頭株らしい」

 

 確かに次期当主の噂はこの前調べて出てきた。

 けれど、それをロザリーさんという娘に継がせる話は聞いたことがなかった。

 あれ? じゃあ妹がアメリアさんなのであれば、アメリアさんはいったい桜芽財閥の中でどういった立ち位置になるんだ?

 

「その顔。ここまで言えば君も分かってきたかい?」

「本来世継ぎではない妹のアメリアさんを今さら探していて、アメリアさんは家出している。それって……」

「お貴族様のやることは分からないがね? こういう時、真っ先に出てくる話はよくなろう小説でも見るだろう? 政略結婚さ」

 

 つまり、アメリアさんは無理やり政略結婚させられるのが嫌で、家出してきた?

 

 それって、かなりまずいことなんじゃないの?

 政略結婚なら相手が居て然るべきで、家のコネを太くするために行われるビジネス婚なわけで。

 家出1つでそれがご破算になろうとしている。

 

「ややこしくなってきただろう? だが簡潔に3つのことをすべて合わせるとこういうことになる。今、GBN内で最も危険な立ち位置にいるのは、元マスダイバーと家出令嬢がいる君たちプリンセスダイバーズであることだ」

 

 うわぁ……。事態は思ったよりも深刻だった。

 つまりあたしたちは今、貴族にターゲッティングされている。

 それも悪い印象を持たれた嫌なタイプの。悪いことをした人と結婚相手が一緒のフォースにいるということがどういう意味を持つのかを。

 

「幸いにもこのGBN内ではELダイバーという生命がいる以上、国家事業としての価値があるんだ。国や他の財閥と牽制し合う必要があって、むやみには手が出せないだろう。だが、このGBNにも悪しきダイバーは存在して、報酬のためなら君たちのフォースを潰そうとするだろう。気をつけたまえ、リアルはもちろん。このGBNにおいてもな」

 

 思わず頭を抱えてしまった。

 あたしたちのフォースはいつの間にか渦中の中心となってしまっているらしい。

 あたしはただ、3人とぼんやり遊べればよかったんだけどなぁ……。

 

「それも、親切心ですか?」

「ここまで来ると親心と言ってもいいかもしれない。その程度にはコロンさんに肩入れしている。君たちにもね」

「ありがとうございます」

 

 どうしたものか……。

 きっとこの問題は予想以上に面倒くさいし、誰も彼もが幸せな決着になるわけではないだろう。

 だけど。あたしはどうなろうと構わないけど、アメリアさんには幸せであってほしい。笑顔であってほしい。

 

 ――あたしの、妹みたいな子だから。

 

 この際、準備を始めても損はないかもしれない。

 以前から設計していたガンプラを作るときが。




ヤバいわよ!
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