プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
第34話:果し状ですのね?!
アメリアさんへの懺悔と絶対に守ると約束した日の夜。
GBNからログアウトし、リアルの自分の家へと戻ると、ナツメさんがお行儀よく正座で座っていた。
あたしたちの帰還を待っていたと見える。
その表情は、あまりにも悲壮感に溢れていた。
「あの、ナツメさん……?」
「……お嬢様、失敗しました」
「そう、ですか……」
この一言ですべてを察したのだろう。
アメリアさんは1つ大きく息をこぼす。失望よりも、絶望している声色。
あたしですら分かってしまった。バレたんだ、ここが。
「申し訳ございません。どんな処遇でも受ける予定です」
「いえ、ナツメさん。あなたは何も悪くありません。いずれ、分かることですから」
「それから、ヒメリさんに手紙が」
「あたし?」
まぁ、いろいろと察するものがある。
その内容も、読めば読むほど脅しのようなニュアンスだった。
だけどここまで向こうが譲歩してくるとは思わなかったな。
「なんと書いてあるのですか?」
「読み上げますね」
名も知らぬ共犯者へ。
はじめまして。私の名前は桜芽往斗と申します。
GBN内で嗅ぎ回っていたあなたならばきっと存じ上げる名前でしょう。
さて、本題に参りましょう。
あなたの家で匿っている私の娘「桜芽アメリア」のことです。
家出の後、メイドのナツメが努力を重ねていたようですが、無駄なことです。
休暇はさぞ楽しんだことでしょう。
今後は家のために文字通り身を粉にして、貢献する番です。
次期当主はロザリーに決まり、アメリアには政略結婚という形で桜芽財閥に貢献していただきます。
そのために、あなたのような家出に組する共犯者が迷惑なのです。
あなたの素性は簡単に出てきました。誘拐犯として、警官が不思議と自宅にやってくるかもしれません。
が、それでは面白くない。
私は少し不思議に思ったのです。
あの素直なアメリアがいつまでも家に帰ってこないことが。
あなたが、私の家族を誑かしているのではないか、と。
いわば、あなたはアメリアに付く害虫。いえ、桜芽財閥に近づく悪魔。
普通の手段を使えば、簡単にアメリアは私の下に戻って来るでしょう。
ですが、因果は絶たなければならない。
ちょうどあなたはGBNのプレイヤー。
ブレイクデカールを使い、ランキングを荒らし回った元マスダイバーだ。
だからこそあなたのホームグラウンドで、あなたを再起不能なほど完膚なきまでに潰す。
そう決めました。
◯月✕日、午後13時から。
あなたのフォースにフラッグ戦を仕掛けます。
そちらのフォースのフラッグはあなた。こちらのフラッグはその時ご確認ください。
戦場はどこでも構いません。準備も怠らないように。
必ず、あなたを迎えに行きます。アメリア、待っていてください。
桜芽往斗より
「果し状、ですか……」
「はい。断れば人知れず処理する、とも言われております」
「お父様……」
つまり、同じ土俵にわざわざ立つから、アメリアさんの処遇についてはそこで決める。
ということなのだろう。
本当に。本当にやり方が腹立つ。
同時に妙な違和感も感じる。それが何なのかは分からないけど。
調べ尽くしているのなら、さっさと捕まえればいいのに。なんでこんな回りくどいマネを……。
「あたしはこの果し状を、フォース戦を必ず受けなくてはならない。そうですね?」
「はい。ご主人様はそのように申し上げています」
「あたしたちのフォースが勝てば、アメリアさんは見逃してくれるんですか?」
「話の機会を設ける、と聞いています」
金持ち故の上から目線。
例え勝ったとしても、あたしの態度次第でいくらでも変わる、ってことか。
やるしかない。あたし1つの犠牲で、アメリアさんを救えるのなら。フォース戦をしっかり戦う。
相手が誰だって構わない。これは下剋上だ。絶対にアメリアさんを渡してなるものか!
「分かりました。この試合、受けて立ちます」
「ヒメリ様?!」
「こんなに舐められたんじゃ、しっかり分からせるしかないじゃないですか。自分の娘は道具じゃないって!」
本心は別のところにある。
流石にそれを言う勇気はなかったが、それ以上に仲間が不当に奪われるのを良しとはしない。
だからこそ、手段は選んでられない。
「アメリアさん、あなたにもしっかり強くなってほしいです」
「…………」
「誰のためでもありません。ただ、あなた自信のために、気高くあってほしいから」
あたしが思う、もっとアメリアさんが幸せになれる方法は、自分の思ったことが出来ること。
そのためにはみんなで強くなるしかない。あたしも、アメリアさん自身も。
「ナツメさんにも手伝ってもらいますからね!」
「あなた如きの指図は、と言いたいところですが……。私も体の良い暇をいただきました。アメリア様のためなら身を粉にして働く所存です」
「ナツメまで……」
当の本人は未だに戸惑っている様子だったが、その辺は後々話があるだろう。
それにエマさんとコロンさんにも伝えないとだし、人手も欲しい。どれだけの総数が相手になるか分かったもんじゃないから。
ただこれだけは言える。あたしの大切な、アメリアさんを渡してたまるか。
「それでは夕飯にしましょう。お二人ともお食事はまだでしょうからね」
「……。ありがとう、ナツメ」
「いえ。お嬢様のためですから」
そうなれば作戦を練らないと。
それに、あのガンプラも完成させなくちゃ。
◇
「って感じだから用意しておいて」
「え? は? 先輩なんてことしてるんですか?!!!!!」
「後輩、RP」
「いや、今はそうじゃないでしょ?!」
わっはっは! エマさんめ、慌ててらー!
はっはっはっは……。はぁ……。そうですね。あたしもちょっと嫌な気持ちになってますとも。
「ど、どどどどっ!! どうするんですか! 相手は普通に金持ちですよ!?」
「エマさん落ち着いて。アメリアさんもいるから」
「あ、すみません……」
「いえ、大丈夫ですよ」
とはいえ、あたしも不安で仕方ない気持ちだ。
場所は好きにしてもいいと言われても、正直どこだって変わらない気がしないでもない。
広い場所でも、入り組んだ洞窟だとしても。森林でも数をまとめられたら、ひとたまりもないし。
そうだ。向こうの数が何機なのか。制限は聞いてない。
つまりは、相手は上限まではフォースを組むことが出来るってことだ。
4対50。なんてこともあり得る。
あーーー。どうしよう本当に……。
「本当に、どうすればいいんですか……」
はは、エマさんが頭抱えて唸ってーら。
でも分かる。分かってしまう。あたしがフラッグとなるフォース戦で、どう立ち回るか。
同じくアメリアさんもあたしも、あまりにも大きな話しすぎて目測もできない状態。情報が本当に足りないんだ。
「話をまとめますと、その桜芽財閥からご招待を受けて、フラッグ形式でフォース戦を行うことになったと。それでそのフラッグがヒメリ様ですと」
「まぁ、そうなりますね……」
「なんでわたくしじゃないんですの?!!!!!!」
そこ、怒るところかな?
足をドンドン地団駄を踏むコロンさん。そんなにフラッグしたいのなら譲ってあげたいけど……。今回だけは譲ることはできない。
そもそもあたしが始めた戦争なんだから。
「今回はあたしがやらないとダメなんです。やらないと……」
「ヒメリ様、ワンマンプレイはダメです! 絶対1人で行かせませんから!」
「そうですね。ヒメリさんはだいたい1人で突っ走りますし」
「間違いありませんわね! 短い付き合いではありますが、そればっかりは納得ですわ!」
「……え、そんな感じなんですかあたし」
それは、あの……。聞いてないんですけど……。
あたしって、そんな突っ走る鉄砲玉みたいな……。
ちゃんと後衛支援に徹してると思うんだけど。
「はぁ、そうですよねぇ。先輩ってそうですよねぇ……」
「そうですね。ヒメリ様は無茶しがちです」
「むぅ~~~……」
フォースの面々がそういうのであれば、うーーーん……。
はぁ……。
「……分かりました。無茶はしないです」
「はい! わたくしたちで、4人で勝つのです!」
「……ん、勝とう。勝って、アメリアさんの自由を手に入れましょう!」
GBNは自由だ。そこに無粋にもリアルの状況を持ってくるなんてのは、馬に蹴られてどっか行けばいいんだ!
頑張る。あたしだけじゃなくて、4人で作戦を練って、考えて、強くなって。
アメリアさんと一緒にいたいんだ。行きたいところはたくさんあるんだから。