プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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5億年ぶりに投稿です。
何か変わったと言えば……。ナッシュを頼むようになりました。


第38話:1on1の決闘はお好みですの?

 個人ランキング913位。

 新進気鋭のダイバーであり、トライファイターズのカミキ・セカイのような格闘技を中心とした戦い方で人々を魅了するランカー。

 その名をアリサ。ガッチガチのインファイターである。

 

 使用するガンプラも、ガンダムバルバトスルプスとゴッドガンダムを組み合わせたマジンガンダムという超近接特化のビルドがされている。

 そこにいくつかの換装パーツで主に3種類のマジンガンダムが紹介されていたりする。

 どれも近接特化であるものの、最も恐ろしいのがマジンガンダムZERO。サイコシャードを展開し、火器系の武器を一掃。強引に近距離での戦いを強いられるのだ。

 

 あー怖い。1on1で一生戦いたくないレベル。

 ただそれを知っていてアリサもあまり使いたがらない。

 彼女もまた相当のバトルジャンキー。一方的な戦いを望まないとのことだ。

 

 それは有り難いものの、協力するとなったらZEROのチカラに頼ることだろう。

 まぁそれもこれもこのバトルに勝たなきゃいけないみたいなんだけどさ。

 あー、面倒くさい。けど……。

 

「……アメリアさんのためだもんなぁ」

 

 目を閉じて、息を吐き出す。

 相手は間違いなく強者。そしてあたしよりも格上。

 だからって負けていいというわけではない。あらゆる手を用いて、チカラを使って……。

 

 ――ぶっ倒す。

 

「ダイバーヒメリ。ガンダムアンタレス、行きます!」

 

 カタパルトから射出される重力を疑似体験しながら、レールはコース上を走り、とあるセクションの一角へと送られる。

 決闘ディメンション。原作の水星の魔女に登場するアスティカシア学園の決闘場の1つだ。

 1on1の決闘においてはほぼこういう小さい区画で行われることが多い。

 

 そして必ずと言ってもいいぐらいには近距離での戦闘を強いられる。

 つまるところ……。

 

『ここじゃ中距離支援タイプのヒメリさんは不利っすね』

 

 知っててここを選んだんじゃないの? と内心ツッコミを入れつつ、いつも通り両手にマシンガンを装備する。

 

『ヒメリ様は、大丈夫なのでしょうか?』

『アタシもそれは流石に分かんないや! でもヒメリちゃんも強いんしょ?』

『もちろんです! ヒメリ様はお強くて、心強いお方ですから!』

『なら大丈夫っしょ! アメリアちゃんが信じる彼女の事を信じてあげなって』

『……はい!』

 

『……で、実際はどうとかって聞いたことあるの?』

『かたや今は飛ぶ鳥を落とす勢いのアリサ殿。そしてもう片方は一時期は地獄姫などと呼ばれていたヒメリ殿ですが……。お互いに得意な間合いが異なります』

『そーねー。うちのアリサちゃんは近づけば、ほぼ一撃必殺を何回も繰り出す格闘家。ヒメリちゃんは最近再開したから、その辺のテクは衰えてるかもじゃんね?』

『ですがわざわざ口車に乗った手前です。何かあるのかもしれません』

 

 まぁ何もなかったら本当にただ無様を晒すだけで終わってしまう。

 少し、本気を出さなきゃな。

 

『決闘口上は覚えてるっすよね?』

「もちろん」

 

 それは水星の魔女における、両者同意の旨の儀式のようなもの。

 いわゆる契約と言ってもいいだろう。この戦いの一切の責任は己自身にある。

 

『勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず……』

「操縦者の技のみで決まらず……」

 

「『ただ、結果のみが真実』」

 

 点灯ランプが赤から青に変わる。

 決闘開始。フィックスリリースだ。

 そしてその瞬間から勝負は始まっている。まずはレンジ取りだ。

 

 即座に地面を強く蹴り、間合いを縮めようと走り出すマジンガンダム。

 流石に読めていた。というよりもそれ以外の手段を切り捨てた戦い方はさながらケモノ。

 魔神が聞いて呆れる。あれは魔物だ。当然、魔物退治には猟銃が必要だろう。

 そして罠も。

 

 全力で出力を後ろに移行。ブースト全開で後方へと対比する。

 

『早速逃げ腰っすか?!』

「そうだったらよかったんだけどね」

 

 同時に両肩からミサイルランチャーを射出。襲い来るマジンガンダムへと牽制がてら全弾射出する。

 もちろんあらゆる攻め手を考えているであろうアリサさん。

 そしてこういうときに最も有効的で、さらに最短距離での移動手段も知っているはずだ。

 

『ぬぅぅぅ! ビームカッター!!』

 

 腰に装備しているビームソードを手に取り、エネルギーを前方に斬る。

 まさにビームによる斬撃波。ゴッドガンダムがよく使う手だ。

 そう、近づく攻撃は大抵これが対当してくる。

 

 ミサイル弾を斬り裂いて爆発しながらも、さらにこちら側への侵略を続けるビームカッター。

 サイドステップで地面を蹴りながら、こちらもヘビーマシンガンの連射を開始する。

 相手はバルバトスもベースにしたガンプラ。一部にはナノラミネートアーマーが採用されている。

 だから手持ちのGNビームマシンガンは効かない。捨てる他ないが、これにも用途がある。

 

 弾丸を乱発しながら、ターゲットをこちらに定めるように誘導する。

 

『何を考えてるか知らないっすけど、そんな攻撃、屁でもないっすよ!』

「知ってるよ、そんなこと」

 

 もちろん目的はそうではない。

 決闘のルール上、お互いのアンテナをへし折った方の勝利だ。

 それは機体がどんな状態であろうとも、最終的にそこに落ち着く。

 あるいはコックピットによる一撃の判定をもらってしまうとそれまでだが。

 

 無論奇策しかない。しかないが……。

 すでに準備は整えた。

 

 マジンガンダムへの攻撃は全てかすり傷程度の判定。

 蓄積ダメージも大したことはないはずだ。だからこそ、この一撃が少しでも混乱するはずだ。

 ヘビーマシンガンの下部に存在する近接用ブレード。これが突然射出したら、どうなる?

 

『突然ナイフが飛んでいきましたわ?!!!』

『まずは奇策ですか。ですが……』

 

『自分は驚かないっすよ!!』

 

 振り払うのも避けるのも勝手だ。

 だけど攻撃が1つとは、限らない。

 

「じゃあ今度はこっちに驚いてもらおうかな」

 

 奇策の2つ目がマジンガンダムの頭上めがけて落ちてくる。

 GNシールドビット、ミサイルと一緒に紛れて分離させていた。

 気付かないように上を飛び回り、奇襲のナイフと共に頭上に落ちてくるように仕向けている。

 もちろん狙いはアンテナだ。

 

『意外と姑息な真似、するっすね!』

「そりゃどーも」

 

 3つ目。当然左右どちらかに逃げるはずだ。

 だったらそのナイフの先を少し弾丸が掠めれば、どうなる?

 ナイフの柄の部分の一部を弾丸に被弾させ、軌道をやや逸らす。

 もちろん、狙いはただ一点のみ。

 

 カキン!

 そんな金属音が反射した後、勢いが暴走したナイフが回転を始める。

 

『っ! さっきから、ちまちまチマチマ!』

 

 流石のアリサさんも分かってきただろう。

 すでにこの盤上を支配しているのがどちらかということに。

 パワーでねじ伏せようと、ビームカッターでの迎撃。

 最初のプランにはなかった行動のはず。いくらか隙が生まれる。

 

 だから対処には少しだけ、ほんの少し脳のリソースを割かれる。

 そんな美味しいチャンス、逃すわけがない。

 奇策なんて言っているが、全部これのための布石だと言っても過言ではない。

 

 役目を終えたヘビーマシンガンをそのまま手放し、ビームに被弾させ爆発させる。

 

『はぁ?! 何やってんの先輩!!』

『アホですの?!』

『いえ、あれは……』

 

 火器が爆発すればそれだけ大きな音と煙が発生する。

 こちらにも少しのダメージが入るが、こんなのは必要経費に過ぎない。

 飛び出すナイフを処理後にその場を確認するが、正直言ってもう遅い。

 

 ナイフを巻き込んだビームカッターが煙を斬り裂いても、あたしはその場にいない。

 

『大道芸人、みたいっすね!』

「正面から戦う気はないからね」

 

 もちろんシステム上レーダーには感知されている。

 それを認知、把握。それら諸々を脳内で処理しきれば、の話だが。

 巨大な熱源の塊となったガンダムアンタレスをすぐにどうこうする。

 3桁ランカーのアリサさんに出来るかどうか。割と賭けに近かった。

 

 だから最初からフルスロットル。ノンスピードで脳内の処理をかき乱させていただいた。

 ここまで来ると、レンジだの近接特化だのは関係ない。

 

『っ?!!』

 

 ブラスト・トランザムによる急接近に加えてのビームマシンガン下部からの急襲。

 どんな斬撃よりも突きの動作が一番素早い。狙いは最初からコックピットだ。

 

『豪胆!!』

 

 すかさずマジンガンダムの鋭い蹴りが、コックピット直前にまで襲いかかったビームマシンガンを弾く。

 そんなに大きな動きで避けてしまえば大きな隙が生まれる。

 直前までセコセコとナイフに銃弾。回避にと大きく狂わせていただいたんだ。

 これぐらいの勝機がないと困るというものだ。

 

 反対の手に握ったビームサーベルが蹴りで弾かれた勢いとともに、コックピット背面を目がけて斬り裂こうとする。

 これでダメならもう正面切って戦うしかない。

 そう覚悟を決めた矢先だった。

 

 ――あっけなくバッサリ。マジンガンダムが斬り裂かれた。

 

 熱を帯びた機体がクリティカルヒットした証明となって、斬撃後から爆発した。

 

《WINNER ヒメリ!》

 

「はぁ……はぁ……。はぁ、怖かった」

 

『……すご』

『ヒメリさんがノーダメージで……?』

『……あたし、前言撤回するわ。ヒメリちゃん、やっば。アリサちゃんに一方的に勝つなんて』

 

 ◇

 

「いやー! 負けた負けたっす! この通り、全て謝罪しますっす!」

 

 まさしく憑き物が晴れたかのように、後頭部に手を添えながら頭を下げるアリサさん。

 謝罪って態度じゃない気がするけど、まぁいっか。

 

「あの鬼神の如き連撃! っかー! あんな精度で積まれたら、溜まったもんじゃないっすよ!」

「あんたのパワーでねじ伏せようとする戦い方も大概ですけどねー」

「アリサちゃん、それじゃあ、そういう感じでおっけい?」

「モチのロンっすよ! フォース『AtoZ』は、そちらの全面戦争に協力するっすよ!」

「よーっし! 戦力増強! やれば出来んじゃん、ヒメリちゃん!」

 

 エマさんさぁ、よくそんな能天気でいられるわホントに。

 こっちは精密操作LvMAXで神経ボドボドに疲れ切ってるのに、まったく。

 

「今度はわたくしとも死合しませんか?」

「いや、もう疲れたので……。えぇ、落ちます」

「あらら、振られてしまいました。まさしく寝落ち、ですね?」

 

 ……ちょっと何言ってるか分からないけど、まぁいいか。

 サイカさんが時々変なことを言うのはいつものことだ。

 とにかくこの一戦で相当つかれた。あたしはバトルジャンキーじゃないし、とっとと寝ますか。

 

「あ、ヒメリさん!」

「ん? まだ何かありましたか?」

「今度は "ちゃんと" 戦いたいっすね!」

「……あー、はい」

 

 はぁ、どうやら見事に作戦勝ちされたのがお気に召さなかったようで……。

 ちょっと負けず嫌いみたいな態度されると、意外と年相応なんだなって微笑ましくなるじゃないですか。

 

「あとはアメリアさんが戦ってくれますよ」

「えぇ?!」

「お! 本当っすか?! それなら早速……!」

「ヒメリ様? ヒメリ様?!!」

 

 気の毒だとは思うけど、あたしはもう疲れたので後のことは全部明日の自分に任せよう。

 きっとしばらくしたらプンスコしてるアメリアさんをなだめなきゃいけないと思うと、少し面倒くさいけど。

 

 ま、アリサさんなら戦いの練習にはもってこいなはずだ。……多分。




・ダイバー:アリサ
格闘家の装いで、ガッチガチのインファイター。
ゴッドガンダムとバルバトスルプスレクスをミキシングした『マジンガンダム』で戦場をかき乱すタイプのヤバいダイバー。
多分生身も普通に強い。

初見は結構失礼極まりないが、実際は戦いたいがために挑発しているフシがあったり。
バトルした後はちゃんと礼儀正しく謝罪する狂犬。

見た目通り高校生で、しっかり負けず嫌いでお肉だいすき!
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