プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
さてまぁ。仲間の準備はほぼ整ったと言ってもいい。
アリサさんのフォース『AtoZ』。
それからサイカさんのところのフォース『アストロ・ブルー』。
他にも幾人もの傭兵を雇ったことでBCはほとんどスッカラカンだ。
はぁ……。明日発売のエナジードリンクの新フレーバーが気になるところではあるけど、そこに関しては一旦よそにおいておくとする。
決戦場の下見も見に行ったし、大まかな作戦についても細かいところは詰めるにせよ、だいぶまとまったと言っても過言ではない。
あとはもう1つ。必要なことがあるとすれば……。
「本格的なガンプラの製作……」
ハッキリ言って、ミレイナさんのナイトブラウドの強度は尋常ではない。
シナンジュをベースにしたバランスの良い体躯から叩き込まれる猛スピード。
サザビーのファンネルに加え、ビームショットライフルに大型の実体剣であるロングナイトソード。
どれを取っても、ランカーにふさわしいシンプルで、故に強力な武具の数々。
そして、本人はそれを手足のように動かす事のできる実力者の持ち主。
正直、敵として出てこなければ真っ先に仲間に加えたかった1人であり、あたしの癖を最も理解しているであろう相手だ。
恐らくあたしのアンタレスのことを事細かに研究し、あたしの一挙手一投足にも対応できるはずだ。
あたしの基本的な戦術は堅実に戦い、隙を見せた場所から崩していくこと。
要は持久戦が物を言う戦い方だ。
対して相手はパワータイプ。矛と盾。構えが取れなければ一瞬で取られてしまうような相手なわけで。
「無理ゲーでしょ、こんなの」
スタミナと集中力を切らさずに、一撃必殺のラッシュ攻撃を受け切る自信はない。
つまるところ、必要なのはどれだけ相手に意外性を、隙を与えることができるか、だ。
「結局は視覚外からの一撃。ファンネルだよねぇ」
目の前に鎮座するリボーンズガンダムの背面。GNフィンファングを眺めて考える。
リボーンズガンダム自体、作中では背面のリボーンズキャノンとの変形、さらにはGNフィンファングによる全領域での戦闘を可能にしている。
あの刹那のダブルオーライザーを半壊にまで追い詰めたラスボス機体。
今回、これに頼ろうと思っている。
本格的な戦争の前にガンプラを新調するのは、恐らく愚の骨頂だと思われる。
慣れない機体、装備で強敵に挑めるほど、あたしの操縦スキルは高くない。
そもそもこういうのこそ、ガンダムアンタレスで挑むべきだと考えるが……。
データとして揃っていない新規の装備であれば、相手にも対応せざるを得ない隙ができる。
相手の強力な攻撃を受け流し、隙を与えた後に一撃で勝負を決める。
一長一短のあるハイリスク・ハイリターンな作戦のリターンを目当てに運用することにした。
「って言っても。どうしようかなぁ……」
とりあえず素組みでリボーンズガンダムを組み立てたけど……。
変形ギミックいる? これ。
イノベイターであるリボンズならまだしも、あたしが扱うには手に余る代物だ。
強力なギミックなんだろうけど、関節とか強化のしようがないし、オミット、っと。
「あとはGNフィンファング、かぁ……」
どう考えても今回の奇襲作戦に必須の誘導兵器。
なんだけど……。攻勢に転じるだけでいいのだろうか?
あくまで使い切りのファング兵器だ。ならビットのような特殊な動きをしてもいいんじゃなかろうか。
例えば防御に使う用と考えて、じゃあ攻め手はビームライフルとサーベルでいいのか?
よくないでしょ。いくつか追加要素を入れないと防御だけ強くても、ジリ貧になって攻め落とされる。
「あー、もう。だからガンプラ作りって苦手なんだよぉ……」
手足を投げ出して、背中からバタンと倒れた。
はぁ……。今ごろアメリアさんはアリサさんと一緒に修行中かなぁ。
モチーフがあるにせよ、アリサさんのマジンガンダムは本当に素晴らしい出来だ。
アメリアさんのベギャンベウも相当いいセンスしてるし……。
理論的に考えるのがよくないのか?
ガンプラは自由って言うけど、自由すぎて何から手を付ければいいか分からないんだよなぁ。
はぁ……。こういう時はモチーフでもネットから拾ってこようかな。
「……あー、ガンスタグラムいいなぁ。このガンプラかっこいいー」
こうしてSNSにかじりつく作業者の完成である。こんな事をしている場合じゃないんだけど。
いやだってね? 飽きるからこうやってSNSに潜るんだよ。
そしたらこうして沼に沈んでいくんだよ。そう、ショート動画沼とか、ガンプラ写真漁りとかさ。
時間がー。過ぎてくー。あー!
「でもいいなぁ……。こんなガンプラ、思いつきたいものだよ」
ガンダムMk-Ⅱを軸にしたスーパーガンダムにも似たガンプラ。
ストライクガンダムにストフリ要素を組み込んだスーパーストライクフリーダムガンダム。
これはνガンダムとRX-78のミキシングだろうか?
それぞれ思い思いの夢を詰め込んで、ガンプラを形にしている。
……あたしはどうなんだろうか?
あたしの夢。あたしの、願い……。
「あたしは……」
ふと、目に入るのはGBNにログイン中のアメリアさんの身体。
ゴーグルを付けてすやすやと、まるで寝ているようにも見える。
あたしは、この子を守りたい。お互いに逃げ出すだけの臆病者同士。
最初は目と目が合っただけで巻き込まれるだけだったけど、お互い腹を割って話して通じ合う何かを感じるようになった。
――妹のように感じる時だってあった。
今だって、親子で話し合うべきだとは思うけど、それでも……。
こんな強引なやり方には賛同することが出来なかった。
確かに、きっかけはアメリアさんの家出だった。
なんであたしが。そう思うことだってあった。
守るだけじゃない。今度は戦わなくちゃいけない。
戦って、チャンスを勝ち取って。それから。それから……。
「……あ、そっか」
目に入ったガンプラが何気なく答えを示していた。
戦いを勝ち取ったあと。その後に待つものは勝利だけじゃない。
「対話して。アメリアさんは自分だけの道を歩まなきゃいけないんだ」
そのための準備。お手伝い。
必要な、ガンダム……。
「……っよし! ふう。頑張るかぁ!」
点と点が線になったように繋がった感覚がした。
あぁ、そうだ。そうなんだ。
あたしはその想いをこのガンプラに込めよう。
今度こそ、嘘を付かないように。
守ると誓ったもの。それを手放さないようにと、願いを込めて。