プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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第40話:誓った想いに嘘はつきませんわ!

「ほえー、これがヒメリさんの新しいガンプラですかー」

「いいでしょ?」

「すっごい前衛的ですわね」

 

 失礼な。確かにリボーンズガンダムをベースに、ちょっと腕にオーライザーとガトリングガンを装備したから、腕の積載重量がとんでもないけど、それだけでしょうに。

 

「まぁこれからビームにミサイルの嵐が渦巻く、チンパンジーの魑魅魍魎跋扈するヴァルガに行くんですもの。これぐらいはアリですわね!」

「あはは。そうですね……」

 

 1割ぐらいはヴァルガ突入に胃を痛めてそうな顔をしているアメリアさん。

 まぁ。残り9割の元気の無さの理由は、さっき会った相手にあるのだけども。

 

「大丈夫そうですか?」

「え、えぇ。ただ緊張しているだけですから……」

 

 あたしにはそうは見えないわけだけども。

 話は数十分前に遡る。

 

 ◇

 

 アメリアさん争奪戦。というか件のフォース戦当日。

 あたしたちは当日の、この時間に集合するよう言われた場所に集まった。

 言ってきた本人は多分、目の前にいる長身の男の人だろう。

 隣にはミレイナさんもいるから、多分そうだ。

 

 あの人が……。

 

「お父様……」

「…………」

 

 桜芽財閥の代表であり、アメリアさんの父。桜芽往斗だ。

 

「時間通りに来ましたか。いくらか遅刻するものと、考えていましたが」

「その場合不戦勝にでもしてましたか?」

「ふふっ。どうでしょうね」

 

 細いフレームのメガネレンズの奥からは、到底笑ってもいない瞳が真っ直ぐにこちらを見抜く。

 まるでアバターを通して、こちらの心までもお見通しのような。そんな面持ちで顔が強張る。

 

「当日まで泳がせたのです。対策はたっぷりと重ねてきたのでしょう?」

「……っ! それはもう、バッチリと」

 

 緊迫した空気感。胃の中が煮えている。キリキリと粘液が痛みという形で引き返せと言っているような気さえする。

 正直な話。今はものすごく帰りたい。

 今だって見栄を張っているだけ。いつまでもこんな緊迫感を続けているのは身体に悪すぎる。

 もしかしたら、リアルの方では膝が笑っているのかもしれない。

 

 けれど。あたしは約束したんだ。

 アメリアさんに道を選ばせてあげたいと。

 アメリアさんの道は、あたしたちが一丸となって切り開くと。

 

「威勢がよろしいことで。ですが果し状にて宣言いたしました。あなたを再起不能なほど完膚なきまでに潰す。と」

「そのために用意したのがミレイナさんですか」

「はい。あなたにとって、最悪の強敵をぶつける。それだけでも十分な痛手でしょう」

 

 大丈夫。それにも対策はしてある。

 何より、もう覚悟はできた。過去との決着。未来への開拓。

 そのためにこの戦いは、必要だ。

 

「最後に確認です。こちらが勝ったら、アメリアさんと話す機会を設ける。その約束でいいですね?」

「財閥の代表として、お約束いたしましょう」

 

 話す機会、だけ。

 最後に決めるのはアメリアさんと、この人の気まぐれ。というわけか。

 でも。それまでに道は繋げなきゃいけない。

 未来を切り開くためにも、あたしはミレイナさんと。アメリアさんは家族と決着を付けなくちゃいけない。

 

「それでは30分後。フォース戦の開始と行きましょう」

 

 コツ。コツ。と革靴がガラスの上を歩く音が響く。

 ……あの人、アメリアさんと全く目を合わせなかったなぁ。

 

 ◇

 

 そして足の力が抜けてガレージの今である。

 

「いやー、何なんだろうねありゃあ! あーしもヒヤヒヤもんだわ!」

「ねえ海賊モドキさん、もっとガン飛ばしてほしかったですよ?」

「ムリムリ! 中の人は一般アルバイター女子っすよ?!」

「おーーーーっほっほっほっほ!!!! とーーーーーんだ腰抜けですわねぇ!!!!! まったく、ただのカカシですわ~~~~~~~~~!!!!!」

「アンタはビクビクしながら、あーしの背中に隠れてたでしょ」

「お、お……。おほほほっほほほほほ!!!!!」

「バグったー!!」

 

 大丈夫なんだろうか、この部隊は。

 とりあえずアライアンスを組んだ2つのフォース。『AtoZ』と『アストロ・ブルー』は開戦と同時に戦地ヴァルガに飛ぶ予定だ。

 

 あ、そうそう。これは言ってなかった。

 今回、フォース戦に選んだ場所は言わずとしれたお猿の総本山、ハードコアディメンジョン-ヴァルガである。

 単純な話、10対50の差をどうやって埋めるか。

 シンプルな答えだ。他の第三者の介入によって潰し合いをしてもらう。

 

 突拍子もない話だが、ヴァルガでフォース戦を行う、というシチュエーション自体は何度か記録にあったりする。

 その全てにもれなく第三者からの妨害。即ちヴァルガ民の撃墜記録が載っていた。

 

 フォース戦において、第三者からの妨害行為は基本封じられているのだが、もの好きのためにヴァルガのみ特例処置を受けている。

 まぁモンキーマウンテンとも言うべき、戦闘狂の蠱毒にそういった不自由はいらないのだろう。

 

 ともあれ、今回はヴァルガに行って修行したり、生存率の底上げをしたりといろいろ画策したわけで。

 少なくとも最初の3分の壁は84%の確率で突破できる想定だ。

 なお、全員ではないのがミソ。

 

「さて作戦概要を説明しますね」

「はい!」

 

 作戦は至ってシンプルだ。

 ヴァルガ民はこのフォース戦を知らない。

 だからまずそれを利用して、相手のフォース『サクラメント・ツリー』への電撃作戦を決行する。

 もちろん、ヴァルガ民を盛大にトレインして。

 

 フォース戦開始とともに、突撃部隊目がけてフレンドリーファイアを仕掛けてもらう。

 もちろん当たるつもりで攻撃するわけではなく、周辺を攻撃する。

 そのため突撃部隊が攻撃を仕掛けた、と考え、直感的にヴァルガ民が突撃してくる。

 

 ここをいい感じに往なしつつ、電撃作戦を仕掛け大将首を狙う、という寸法だ。

 

「何回考えても、綿密に練られてるようで何も考えてない作戦ですよね」

「言っていることはただの無策なカミカゼ作戦ですからね」

「しょうがないじゃないですか! 持久戦を仕掛けても、数でも質でも上回る相手にはこれしかないんですから!」

 

 個人ランク881位の八重月に、633位のミカミカサタデー。437位のナーヴェル。

 他に並み居るランカーを混乱させるならこれしかない。

 あたしたちは弱者だ。弱者がどうするか。答えは決まってる。奇襲によって隙を撃つ。

 それにこちらには、こと電撃戦に置いて専門家レベルのフォースも味方にいるわけで。

 

「泣き言は言いません。絶対、お父様にギャフンって言わせます!」

「……ふふっ! ギャフンって何さ、ギャフンって!」

「え、言いませんか? ギャフンと言わせる、は?」

「まぁ言うけど……っくふふ! あはは! あーしそれ聞いたの久々かも!」

「わたくしは初めてですわね! アメリアさまらしくかわいいですわ!」

「え、え?! わ、わたくしの中では最高峰の悪口なのですが……」

 

 あーもうホント。

 かわいい妹みたいな子で……。

 絶対に、守りたい。いや、守るんじゃない。繋げなきゃいけないんだ。

 話し合いの場を設けさせるための、いわば第一事項。

 

「……時間です。やりましょう、あたしたちの、開拓戦を!」

「おっし! 任せとけ!」

「見事派手に散らしますわ~~~~~~~!!!!」

 

「……ヒメリ様」

「ん?」

 

 アメリアさんのか弱い指が、そっと手に触れる。

 冷たいし、震えている。けれど……。彼女はチカラ強くあたしの手を握った。

 

「頑張りましょうね」

 

 ……彼女は、間違いなく戦士の顔をしていた。

 

「うん、もちろん」

 

 あたしも手を握り返す。今までの総仕上げ。

 やってやろうじゃん。嘘つきだの、犯罪者だの言われようが!

 今から本当のことをすればいい。心に誓った想いに、嘘は付かない!

 

「ダイバーヒメリ。ガンダムライノット、行きます!!」

 

 決意と、覚悟を胸に抱いて。

 赤い閃光が空のワープゲートへと飛び立っていった。

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