プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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第6話:お友だちになっていただけませんか?

 エントランスロビーに戻ってきたところ、アメリアさんは両手を胸元に寄せてキラキラとしたそれはそれは眩しい眼差しで私めを見てくださった。

 

「すごいです! これがGBNなのですね!!」

「あー、えっと。あれは結構例外中の例外というか……。ホント、すみません……」

 

 これは土下座モノだ。というか今から土下座する。

 おぉ、あたし白金姫梨は桜芽アメリア様を傷物にしてしまった罪で死刑にされるんだ……っ! 打首祭りで最後はバルバトスの最後のように槍で掲げられて……。

 

「……。その、そういう態度、やめてくださいませんか?」

「えっ、ふわふわとした態度を?!」

「わたくしの態度を伺うような素振りのことです」

 

 ……バレてたか。

 いや、大して隠すつもりもなかったけれど、こうまで直球どストレートに言われるとは思ってなかった。

 他人だから。まだ赤の他人だからこそ言えることなのだろう。

 

「だ、だって、桜芽財閥のご令嬢に粗相があったら、あたしはこの世から東京湾に沈されてしまいますし……」

「しませんよ!」

「じゃあオホーツク海ですか?!」

「だからしませんってば!」

 

 お互いに肩で呼吸しながら、息を整える。

 でも恐らく。アメリアさんの言いたいことは何となく分かる。

 それを実行できないからこそ、あたしは一般モブ女子なわけで。

 ……しかしこの子とは、これからも暮らしていく予定だ。ここで水に流せることは流さないと、後が大変な気がする。

 言うタイミングを逃して、ズブズブと泥沼の状態になった経験もある。

 

 言いたいことは、いま言うべき。打首になりたくなはないし。

 

「理由も何も、アメリアさんが想像しているとおりです。あたし、あんまり堅苦しい相手とか苦手で。情けないですよね。年下相手に怯えるだなんて」

「わたくしも、堅苦しいのは苦手です。桜芽財閥のご令嬢、だなんて言うかもしれませんが、お飾りみたいなものなので」

 

 どういうことだろうか。お飾りなんてことはありえないのに。

 アメリアさんも、何かを抱えているのかもしれない。それが嫌で家出までしていて。

 それでもお飾りから逃げられない。なるほど、だからやめてほしい、なのか。

 

「その、すみません……」

「よいのです。わたくしのワガママですから……」

 

 それは、違うと思う。

 誰だって友だちはほしい。親しい人はほしい。アメリアさんにはきっとそういう人がいない。

 みんな桜芽財閥のご令嬢という肩書きだけを見てしまっているから。

 なれるだろうか、友だち。相手の歳は知らないけど、あたし、24歳だけど……。

 でも、だからって。この顔から悲しそうな表情は見たくないと思った。

 

 妖精は笑ってなきゃいけない。笑っていた方が、かわいいから。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅ、うぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「どっ!? どうかいたしましたか?!」

 

 やるのか、やらないのかあたし!

 いや、本音を言ったらやりたい! けど、けど恥ずかしすぎるからーーーー!!!

 いい歳こいて、友だちになってくださいとか、は、恥ずかしいし……。

 

 で、でも。覚悟を決めろヒメリ。たった1人。これから居候する相手の顔を見れずに、何が年上だ!

 あたしは、あたしは頼れる大人なんだぁっ!!

 

「っ! あたしと、友だちになって!!」

「へっ?!」

 

 頭を思いっきり下げて、桜芽財閥のご令嬢ではなく、ただのアメリアに対して口にする。

 これはお金のためじゃない。ただ相手のためでもない。いや、3割ぐらいそうかも知れないけど。

 これの真の目的。それはあたしが今後自宅で気まずくならないようにするためだ。そうだ! 悪い大人が、自分の都合で子供を騙しているだけなんだ!

 

 うぅ、沈黙がつらい。

 数秒しか経っていないのに、まるで1時間も2時間も凍結されたような感覚。

 じわりじわりと刃物を首元に突き立てられているような、今にも刺されてしまうんじゃないか、っていう恐怖が今は恐ろしい。

 

 でも口には出した。だから、後は答えだけだ。

 

 心臓の鼓動も、息遣いも、聞こえないはずなのに、何故か胸の高鳴りだけが聞こえた気がした。

 

「よいのですか?!」

「ま、まぁ……」

「喜んでお受けいたします!!」

 

 差し出した手を両手で掴まれる。

 その場で顔を上げれば、キラキラ輝く宝石のような笑顔が広がっていて。

 見るものすべてを引き付けるような、ゴールドの糸は、アクアマリンの瞳は、ルビーの衣装は、あたしの胸を貫いた。

 

「…………」

 

 あ、あれ? なにこれ。なんでときめいてるの、あたし?

 いや、確かに。確かに美少女で妖精みたいだなって思ったけど。

 こ、こんなのは、違う。違うから!

 

「どうかいたしましたか?」

 

 下からあたしの顔を覗き見るアメリアさんの視線でハッとする。

 違う。違う違う。そうじゃなくて!

 

「い、いやぁ? 友だちに感動しちゃってぇ!」

 

 完全に嘘からでまかせである。

 

「本当ですか?! わたくしも嬉しいです! 初めての、お友だちなので……」

「そ、そーなんだぁ……。初めての……」

 

 ダメだ。恥ずかしすぎてダメだ。

 何かで誤魔化さなきゃ。えっと。えーっと……っ!

 

「とりあえず、カフェテリアでお茶しない?」

「おぉー! お友だちみたいです!」

「あはは……」

 

 なんか、この子といると調子が狂う。

 でもさっきまでよりは、少し近くに来れた気がする。

 まだまだ遠い距離感だと思うけど、このぐらいじゃなきゃロクに二人暮らしなんてできないよね。

 

 それからあたしたちはカフェテリアでお茶をして、ログアウトに至った。

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