プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
別の小説とか、シチュボ台本とか書いてたら、こうなりました
「おはようございまーす」
「おはようございます、シロガネさん!」
「あ、おはよ、カヤバさん……」
お嬢様乱入事件からのヴァルガ初狩り交戦から翌日。
アメリアさんのポケットマネーなら一生過ごせる、なんて思っていたけど流石にバイトをやめる気にはなれない。
というかお金が手に入ったので、急にバイトをやめるとかそんな非常識なことできるわけもなく。
こうして、無断で1日サボったコンビニの職場にやってきたのだった。
はぁ、帰りたい……。気まず……。
「大変だったんですよ、シロガネさんが急に休んで。その日に限ってやたらお客さん来るし!」
「あぁ、ホントにすみません……」
「まぁいいですけど。流石にこれは貸し1ですよ?」
「分かってます。何か奢りますか?」
「嫌ですー!」
5歳下というのは割りと複雑な距離感というか。
彼女はカヤバ・マヤさん。19歳で現在はアルバイトをしながら、声優になるためのお金を稼いでいるらしい。
確かに声はいい方だし、なんというか……。かっこいい寄り?
いざとなれば威圧感強めな口調で厄介お客さんを迎撃していたりと、当社ではとてつもなくありがたい存在となっていた。
ただ5歳差なので、こう、話すトークデッキがなくて。
アニメもガンダム以外は軽く触れる程度。声優や演技のことなんてからっきしだ。
なので、割と距離感には困っている子の1人。まぁ最近もっと距離感に気を使わないとヤバい人が来たんですけどね。へへっ。
いつものように出勤手続きをして、着替えてレジに立つ。
なにげにシフトが同じ時間のカヤバさんなので、よく話すことは多いんだけど……。
「…………」
「……うーん」
気まずい。
とても。気まずい。
今日は2人シフトだし、これから入ってくる人も多分8時までは来ない。
相変わらずだけど、この空気感が非常につらいのだった。
だけど、今日のカヤバさんは何やら考え込んでいるのか、しきりにあたしの顔を見て考える。
え、なに? あたしの顔に、何かついてたりします?!
「……ん、何か、あった?」
恐る恐る尋ねる。もしかしたら知らないうちに声優の卵さんを辱めてしまったかもしれない。
カヤバさん、顔もなにげにいいからそういうところで粗相をしてしまったと考えると、将来のファンに殺されるんじゃないだろうか。わー、恐ろしい。
「いえ。なんか今日のシロガネさん、妙に明るい気がして」
「そ、そうですか?」
「はい。いつもはもっとどんよりしているっていうか。死神オーラ全開、というか」
「どんなイメージですかそれ」
あたし、そんなに陰険に見えていたのか。
それは、徹夜してたからなのでは?
アメリアさんが来てから、あたしの生活が強制的に行儀良くなったからかな。確かに今日の眠気はそんなに酷くはなかった。
「んー、彼氏とかできました?」
「げっほげほっ!! ないないない! ないです! ありえないです!」
「確かにシロガネさんってモテそうなのにプライベートダメダメですもんね」
「……否定はしない」
まぁ、うん。これでもゲーマーで陰キャですので。はい。
「でもなーんかいい匂いもするっていうか。香水付けました?」
「これは……えーーー、っと……」
あ、これ。多分シャンプーの匂いだ。
「お嬢様に庶民が使うシャンプーなど使うことは許されません!」とナツメさんが持ってきたシャンプーを勝手に使わされてるんだった。
当の本人であるお嬢様はそんなの微塵も気にしてなかったけど、メイド様がそういうのであればしょうがない。
あと反論したら何かされそうで怖いし。
「シャンプーの匂いかなー、あはは。最近変えたんです」
「へぇー……。妙に色気づいたことしますね。気になる人でも?」
「いないってさっきカヤバさんが否定してたじゃないですか」
「それもそうですねー」
この子にならアメリアさんのことを明かしてもいいとは思う。
思うんだけどもー! ちょっと。こう。なんか。機密情報の漏洩って、結構怖いじゃないですか。
うちにはテレビはないから知らないけど、こういうお嬢様の家出ってもしかしたら多額の懸賞金がかけられてて、うっかり漏らしたらカヤバさんが一線を超え、あたしは罪に問われて死刑、なんてこともあるんじゃ……。
あー怖すぎ。そんなことになったら今度発売のガンダムエボリューションXX(ダブルエックス)がプレイできなくなってしまうじゃないか。
言えない。流石に、言えないよ……。
「うーん。なんか気になりますね」
「あはは、なんでそんなに気になるんですか?」
「わたしの勘がささやくんですよ。この人面白そうなこと隠してるなぁ、って」
「身も蓋もなさすぎて怖すぎる」
「この前休んだことも、なんか関係があったり?」
「ないないないないないっ!!!! ないです!!!!」
完全に誤解されそうなぐらい否定した。
だってー、明らかに動揺を誘ってくるんだもの。
こちらだって動揺を隠しきれないのだから、しょうがない。
はぁ、これがGBN内なら器用に振る舞える自信があるんだけどなぁ……。
……帰ったらなんかGBNにログインしよう。
アメリアさんに教えたプラモデル作りもそろそろ終わってるはずだろうし。
割りと分かりやすいガンプラにはしたし、GBN内でも癖のないガンプラとして動かすことができるはずだ。
「やっぱり、なんか怪しい……」
「……うぅ」
こんな感じで年下に何か面白そうなことを隠しながら、あたしは仕事を続けるのだった。