プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
「はぁ……つっかれた……」
久々のアルバイト。久々のバイト仲間。そして謎の詮索。
何が悲しくてこんなフリーターの秘密を暴こうとしているんだか。
いや、10割ぐらい面白そうだったからの理由だから、もはや愉快犯のそれでは。
まぁ、バレなかったからいいか。
向こうも、流石にGBNにログインしているわけじゃないだろうし。
カヤバさんだって見習いとは言えども声優さんだ。きっと忙しいことこの上ないはず。
GBNに来る暇なんて、絶対ないでしょ。
「ただいまー……」
「おかえりなさいませ、ヒメリ様。言われた通りストライクガンダムが出来上がりました!」
バーーンッ! とあたしに見せつけるべく、顔の前に出来立てほやほやのストライクガンダムが飛び出してくる。
感動的だ。あたしが教えたゲート処理の技術をもう完璧にマスターしている。
この辺はさすがお嬢様、と言うべきなのか。単純に覚えが良いのかもしれない。
「すごいですよ、アメリアさん! ゲート処理まで完璧にこなすだなんて!」
「…………」
「ん? どうかしました?」
アメリアさんの様子がやや曇り空。
褒められることに何か引っかかるような顔色というか、それよりも意外、という表情の色が濃いのか。
ともかく、ただ子供が褒められたときのような顔ではなかった。
「ヒメリ様に教えていただいたのです。これぐらいできて当然です」
「うーん、当然じゃないと思いますけど……」
「……そうですか?」
「人によってはアメリアさんみたいに最初からパチ組みすらできない方もいますし、初心者がゲート処理までするなんてややこしくてできませんから。アメリアさんはもっと誇っていいですよ」
「そんなものでしょうか?」
「お姉さまなら……」
ボソりとそのような言葉を口にした気がしたが、おそらく気のせいだと思う。
あるいはこの雑多とした部屋の中に不安が溶けていったのか。
訳アリお嬢様、かぁ……。なかなか踏み込みづらいかも。
「そんなものです! アメリアさんはもっと自信を持って!」
「……はい」
普段は物わかりの良い子だが、今回はちょっと不満そうだった。
自分に自信がないのか、納得をしていないのか。
どちらにせよ、今後の接し方について、どうしようかと、思案せざるを得ない。
「今日はそのストライクでGBN、ログインしますか?」
「ミカエリス様は?」
「今日はストライクでゲーム自体の練習です。ヴァルガでの出来事なんてのはなかった。いいですね?」
「は、はい……」
きっとアメリアさんも激しすぎるサル山マウンテンゴリラのGBNは、なんか違うと判断したのだろう。
そうそう。今日こそ本当のGBNを教えるのがベストだ。
そう考えるとあたしもガンダムアンタレスみたいな癖しかない機体よりは、別の機体の方が教えやすいかもしれない。
ストライクガンダムはガンダムSEEDで出てきた機体。
ならインパルスガンダム辺りでも持ってこよう。後継機ではないにしろ、使いやすさはストライク並にあるから。
「えっと、今日はそちらのガンダム様なのですか?」
「そうですね。教えるならシンプルな方がいいかと」
「なるほど……」
そういえばガンダム作品も見たことがないのか。
ガンプラを選ぶ基準として、何かしらは見せておきたいよなぁ……うーん。
まぁ、あれこれ考えてもしょうがないか。
いつものようにダイバーギアをセットして、GBNへとログインを果たす。
なんというか。出会ってから2回目だけど、アメリアさんの姿は本当に映える。
顔がいいのは当然として、オーラと言うか、気品さと言うか。まとっている雰囲気が周りのダイバーに比べて全く違う。
道行くダイバーが見惚れてしまうぐらいの美しさ。これは、浮いてるなぁ……。
「どうかしましたか?」
「……あ、いえ! 全然なんでもないですよ?!」
「……ふぅん。そうですか」
これ、初心者狩りが放っておかないのも無理ない気がする。
こんなかわいい子、他にそうそういないもん。
「へい、お嬢さんたち! これからお茶してかない?」
「え? えっと……」
「結構です! ガーフレ呼びますよ」
「チッ……」
しっしっ! まったく。女で遊びたいならエントランスじゃなくて、もっと別のところにしろっつーの。
「これがナンパ、というものですか?!」
「ま、まぁ。そうですね……」
お嬢様はそこに反応するのかい。まぁいいけど。
軽いため息をつきながらも、とりあえずは予定通りミッションガールのところに行き、初心者用チュートリアルミッションを選ぶ。
ま、やることは大まかな操作方法のマスターで、そこからの特殊兵器の操作は別ではあるんだけども。
「今日はこちらを?」
「前回はまともにプレイできませんでしたから。普通はこうやってチュートリアルを進めるものですよ」
「……普通っ! いいですね、その響き!」
いい? いいのかな?
まぁ、お嬢様がそう思うのならいいんだけど。
各種準備。主に修理キットや回復アイテムなどを買い足してから、あたしたちは格納庫へと向かった。
……相変わらずこの1/1スケール再現はやっぱりすごい。こうやってストライクとインパルスが並んでいる絵面もなかなかだし、なんと言っても圧倒的な存在感!
これがガンダムファンどころか、ロボットファンの夢だよねぇ。
「すごい……おっきいストライクガンダム様ですね……」
「でしょう! ヴァルガの時は見れなかったですけど、GBNの醍醐味はこれなんですよ!」
自分で考えたガンプラが、作ったガンプラがこうして目の前に作り出される。
それだけでもすごいのに格納庫に入ったり、さらには実際に搭乗することもできる。
すごいよね、GBNっていうゲームは。
「じゃあ早速チュートリアルに行きましょう!」
「はい!」
まぁ、搭乗するときだけは流石にボタン一つなんだけどね。
そこはゲームの仕様というか、ご都合主義と言うべきか。仕方のないことかも。中身まで作り込んだらいったいどれだけ容量を食うんだか……。
カタパルトに移送されると、レッドランプが緑色に点灯する。
「ダイバーヒメリ、インパルス。行きます!」
「えっ?!」
カタパルトが起動し、パチ組みで組まれたインパルスが射出される。
若干のGを体感しながらも、外に出ればその浮遊感でやや内蔵が浮くような感覚を身に覚える。
「こんな感じにダイバーはガンダムのパイロットを真似て射出するんです!」
「な、なるほどっ!!」
多分この辺は全ダイバー、ノリで言ってるだけの暗黙の了解。
でもこういう時にぐらいしかカタパルトで射出される機会なんてないし。ロマンは味わえるときに味わう。それが一流のロマンチストというもの。中二病とも言う。
「え、えっと……っ! ダイバーアメリア、ストライク様。行かせていただきます!」
目をつぶって慣れないGに耐えている様子を見ると、少し可愛らしく見える。
「目を開いて! ここがGBNですよ!」
「はい……っ!」
その視界の先に見えるのは無限とも言えるGBNの世界。
いくつものディメンジョンが常に生成されて、終わりなんてものがない。そんな。そんな理想郷なんだから。
そう。終わりなんてものはなかった。理想郷。そうだよ……。
「す、すごいです! 広い……っ!」
「さぁ、この青いゲートの中に!」
そうしてチュートリアルディメンジョンへと入っていくのであった。