プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~   作:二葉ベス

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第9話:剣道は嗜んでいますのよ!

 チュートリアルディメンジョンはいわゆる初心者向けのワールドだ。

 かつて第一次有志連合戦が行われたエリア11。それがこのワールドの正体だ。

 各種初心者用のチュートリアルミッションがあり、それをクリアするとガチャチケットやアバターパーツなどと交換できる石をくれたりする。

 

 戦う練習もでき、報酬ももらえ、更には実地的な対戦も可能にしてくれる。

 そんな夢のような初心者に優しいディメンジョンなのだ。

 あぁ何たる神ゲーか。数年前まではブレイクデカールの取引先が主にここだったというのに、平和に変わった。それはいいことだ。

 

「広いですね!」

「ここなら思う存分ガンプラを動かすいい練習場になるかなって」

「はい! じゃあまずはビームライフルの練習を……」

 

 ただ、あたしがこんなところにいても、大した役には立たないんだけどね。

 自分で言うのもあれだけど、自分自身操作方法がおぼつかないなんて時期はとうに超えてるし、名前だけだけどダイバーランクはSS。要するに上級者ではあるんだ。

 実際にやって見せても高度すぎて得られるものが少ない、なんて言われたら困るし手を抜いて射撃訓練なんてしたら、それこそメイド長様のナツメさんに殺されかねない。

 

 ここは穏便に……。的あてに一喜一憂してるアメリアさんを眺めながら、一杯、開けるとしよう。

 

「……はぁ。この味。この人工的な薬物の甘みがたまらん……っ!」

 

 一杯、って言ってもビールじゃなくてエナジードリンクなんですけどねーーー!

 あー、味は好きだけど、リアルじゃカフェイン取りすぎて中毒になるし、カロリーも馬鹿にならないし。

 その点GBNはいい。いくら飲んでも減るのはコインだけ。他のブースト効果なんてないわけだし。ふふふ、GBN最高。

 

「ヒメリ様、的に全然当たりません……」

 

 ははは、しょぼくれてるお嬢様もかわいいなぁ。

 というのは心の奥底にしまっておくとして、そろそろ本来の仕事をすることにしよう。

 

「最初のうちは両手で構える方がいいですよ。例えばこんな感じに右手で持って、左手でもう1つのグリップを持つんです」

 

 これはどんなことにも言えるが、剣も銃も、両手で持ったほうが安定する。

 ビームサーベルはほぼ片手剣扱いなので、ブンブン振ってればいいがライフルはそうじゃない。

 だから原作でも両手で持って射撃する、精密射撃モードなるものが存在したりするんだ。

 グリップを持って、両手で撃つ。その方が最初のうちは安定するはずだ。

 

「こう、ですか?」

「はい、あとは狙いを絞ってみて……放つ!」

「わぁっ!」

 

 ビームライフルの音が周りに響くと、オレンジの閃光は的の端っこをかすめる。

 

「いいですね、その調子ですよ!」

「な、なるほど……っ!」

「何度か撃ってみて、照準も合わせていきましょう!」

 

 何事も繰り返しの練習が上達への秘訣!

 ある程度の誤差はゲームシステム側が修正してくれるけど、思った場所に思った通りのビームをぶつけるにはやはり腕前が必要だ。

 かっこよくノールックで射撃するなんて初心者には無理だし、そもそもあたしもやったことはないし。

 まぁやろうと思えばできると思うけど。

 

 やっぱり日々の練習と経験が物を言う。

 その点で言えば、アメリアさんはヴァルガでの1件があったからか、元々飲み込みが早いのか、上達の早さが尋常じゃない。もう両手持ちで的の中央に当ててみせた。

 

「すごいですよ! 飲み込みが早い!」

「そ、そうですか? えへへ……」

 

 両手持ちのエイムが出来上がってきたら、今度は連射。

 次に片手持ちと、色々やらせてみたけれど、それも1時間もかからずにクリアしている。

 こりゃ初心者向けミッションがたんまり溜まっていくなぁ。

 

「次はビームサーベルかな」

「わたくし、剣道には心得があります!」

「おぉ、それは頼もしい」

 

 ビームサーベルの訓練は動くNPDのリーオーを実際に斬ってもらう、というものだ。

 NPDとは侮るなかれ。このリーオー、攻撃はしてこないがそこそこの速さでそこそこ機敏に動く。

 そう、初心者が微妙に捉えられないそこそこの距離感を保ちながらだ。

 意外と面倒くさかったなぁ、こいつ。

 

「ほっ! やぁ!」

「…………」

 

 案の定引っかかってる。

 ビームサーベルのピンクは文字通りリーオーを捉えるが、かわされる。

 そしてそこそこの距離感を保ちつつ逃げる。それを追うストライクガンダム。

 うーん。このゆるい光景を見てる感じ、初心者だなぁ……。

 

「むむむ……。堂々と戦ってください! 逃げ腰ではいつまでも勝てませんよ!」

『PPP……』

「ぐぬぬ……」

 

 かわいい。悔しがるアメリアさん、見たことがなかったし、その想像もあまりなかったのが本音。

 それが、ホントまぁ……。こういうところを見ると、年相応に見えてかわいらしい……。

 

「なるほど。こういう時は待っててはダメ。攻めに行くように体全体を前に……っ!」

「おっ!」

 

 アメリアさんのストライクガンダムが両手でビームサーベルを構えると、重心を前に持っていきそのまま踏み込む。

 NPDリーオーはその瞬間的速度にとっさに反応できない。喉元を貫くサーベルの突きがリーオーに突き刺さると、傷口が融解を始める。

 この突きの速度。確かに素人じゃ真似できないかも。というかあたしでも避けるのは結構容易いことじゃないんじゃ……。

 キレのある恐ろしい突きを目の当たりにし少しの悪寒とまた別の、昔置いてきたものを蘇らせながら爆発するのを見守る。アメリアさんって、もしかしてかなり才能あるのでは……?

 

「見てくださいましたか?! あ……。すみません、気持ちが上ずってしまって」

「い、いえいえ! 全然! とても鋭い突きでしたよ」

「あ、あはは……! ありがとうございます」

 

 並みのダイバーがあの突きを躱すことはできるだろうか。

 少なくとも単調な動きであれば必ず殺す一撃となるだろう。ゲームアシストなしの必殺技、かぁ。そういうのあたしにも欲しかったなぁ。

 

「よし、なら何度か練習しましょうか!」

「はい!」

 

 NPDリーオーが切り刻まれていくのを見ながら、あたしは考える。

 どんな機体が最適解かを。お気に召すかはさておきとして、恐らくこのガンプラならきっと。

 

 広がる夢。それと同時にふつふつと失っていた何かが蘇るような感覚。

 違う違う。今はアメリアさんを自立させるんだ。1人でも強くあれるように。いわゆる、あたしは師匠なんだから。

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