プリンセスダイバーズ~GBNお嬢様クラブはこちらですわ!~ 作:二葉ベス
チュートリアルディメンジョンはいわゆる初心者向けのワールドだ。
かつて第一次有志連合戦が行われたエリア11。それがこのワールドの正体だ。
各種初心者用のチュートリアルミッションがあり、それをクリアするとガチャチケットやアバターパーツなどと交換できる石をくれたりする。
戦う練習もでき、報酬ももらえ、更には実地的な対戦も可能にしてくれる。
そんな夢のような初心者に優しいディメンジョンなのだ。
あぁ何たる神ゲーか。数年前まではブレイクデカールの取引先が主にここだったというのに、平和に変わった。それはいいことだ。
「広いですね!」
「ここなら思う存分ガンプラを動かすいい練習場になるかなって」
「はい! じゃあまずはビームライフルの練習を……」
ただ、あたしがこんなところにいても、大した役には立たないんだけどね。
自分で言うのもあれだけど、自分自身操作方法がおぼつかないなんて時期はとうに超えてるし、名前だけだけどダイバーランクはSS。要するに上級者ではあるんだ。
実際にやって見せても高度すぎて得られるものが少ない、なんて言われたら困るし手を抜いて射撃訓練なんてしたら、それこそメイド長様のナツメさんに殺されかねない。
ここは穏便に……。的あてに一喜一憂してるアメリアさんを眺めながら、一杯、開けるとしよう。
「……はぁ。この味。この人工的な薬物の甘みがたまらん……っ!」
一杯、って言ってもビールじゃなくてエナジードリンクなんですけどねーーー!
あー、味は好きだけど、リアルじゃカフェイン取りすぎて中毒になるし、カロリーも馬鹿にならないし。
その点GBNはいい。いくら飲んでも減るのはコインだけ。他のブースト効果なんてないわけだし。ふふふ、GBN最高。
「ヒメリ様、的に全然当たりません……」
ははは、しょぼくれてるお嬢様もかわいいなぁ。
というのは心の奥底にしまっておくとして、そろそろ本来の仕事をすることにしよう。
「最初のうちは両手で構える方がいいですよ。例えばこんな感じに右手で持って、左手でもう1つのグリップを持つんです」
これはどんなことにも言えるが、剣も銃も、両手で持ったほうが安定する。
ビームサーベルはほぼ片手剣扱いなので、ブンブン振ってればいいがライフルはそうじゃない。
だから原作でも両手で持って射撃する、精密射撃モードなるものが存在したりするんだ。
グリップを持って、両手で撃つ。その方が最初のうちは安定するはずだ。
「こう、ですか?」
「はい、あとは狙いを絞ってみて……放つ!」
「わぁっ!」
ビームライフルの音が周りに響くと、オレンジの閃光は的の端っこをかすめる。
「いいですね、その調子ですよ!」
「な、なるほど……っ!」
「何度か撃ってみて、照準も合わせていきましょう!」
何事も繰り返しの練習が上達への秘訣!
ある程度の誤差はゲームシステム側が修正してくれるけど、思った場所に思った通りのビームをぶつけるにはやはり腕前が必要だ。
かっこよくノールックで射撃するなんて初心者には無理だし、そもそもあたしもやったことはないし。
まぁやろうと思えばできると思うけど。
やっぱり日々の練習と経験が物を言う。
その点で言えば、アメリアさんはヴァルガでの1件があったからか、元々飲み込みが早いのか、上達の早さが尋常じゃない。もう両手持ちで的の中央に当ててみせた。
「すごいですよ! 飲み込みが早い!」
「そ、そうですか? えへへ……」
両手持ちのエイムが出来上がってきたら、今度は連射。
次に片手持ちと、色々やらせてみたけれど、それも1時間もかからずにクリアしている。
こりゃ初心者向けミッションがたんまり溜まっていくなぁ。
「次はビームサーベルかな」
「わたくし、剣道には心得があります!」
「おぉ、それは頼もしい」
ビームサーベルの訓練は動くNPDのリーオーを実際に斬ってもらう、というものだ。
NPDとは侮るなかれ。このリーオー、攻撃はしてこないがそこそこの速さでそこそこ機敏に動く。
そう、初心者が微妙に捉えられないそこそこの距離感を保ちながらだ。
意外と面倒くさかったなぁ、こいつ。
「ほっ! やぁ!」
「…………」
案の定引っかかってる。
ビームサーベルのピンクは文字通りリーオーを捉えるが、かわされる。
そしてそこそこの距離感を保ちつつ逃げる。それを追うストライクガンダム。
うーん。このゆるい光景を見てる感じ、初心者だなぁ……。
「むむむ……。堂々と戦ってください! 逃げ腰ではいつまでも勝てませんよ!」
『PPP……』
「ぐぬぬ……」
かわいい。悔しがるアメリアさん、見たことがなかったし、その想像もあまりなかったのが本音。
それが、ホントまぁ……。こういうところを見ると、年相応に見えてかわいらしい……。
「なるほど。こういう時は待っててはダメ。攻めに行くように体全体を前に……っ!」
「おっ!」
アメリアさんのストライクガンダムが両手でビームサーベルを構えると、重心を前に持っていきそのまま踏み込む。
NPDリーオーはその瞬間的速度にとっさに反応できない。喉元を貫くサーベルの突きがリーオーに突き刺さると、傷口が融解を始める。
この突きの速度。確かに素人じゃ真似できないかも。というかあたしでも避けるのは結構容易いことじゃないんじゃ……。
キレのある恐ろしい突きを目の当たりにし少しの悪寒とまた別の、昔置いてきたものを蘇らせながら爆発するのを見守る。アメリアさんって、もしかしてかなり才能あるのでは……?
「見てくださいましたか?! あ……。すみません、気持ちが上ずってしまって」
「い、いえいえ! 全然! とても鋭い突きでしたよ」
「あ、あはは……! ありがとうございます」
並みのダイバーがあの突きを躱すことはできるだろうか。
少なくとも単調な動きであれば必ず殺す一撃となるだろう。ゲームアシストなしの必殺技、かぁ。そういうのあたしにも欲しかったなぁ。
「よし、なら何度か練習しましょうか!」
「はい!」
NPDリーオーが切り刻まれていくのを見ながら、あたしは考える。
どんな機体が最適解かを。お気に召すかはさておきとして、恐らくこのガンプラならきっと。
広がる夢。それと同時にふつふつと失っていた何かが蘇るような感覚。
違う違う。今はアメリアさんを自立させるんだ。1人でも強くあれるように。いわゆる、あたしは師匠なんだから。