STAND NAME:
【破壊力 - E / スピード - D / 持続力 - A / 射程距離 - C / 精密動作性 - C / 成長性 - E】
僕の名前は、クロエ・ファルティス。
文を書くことを生業とするスタンド使いだ。
ポルナレフを始末したあと、彼の『本』を別の本でカモフラージュしながら、僕はまとめてデスクに置く。時計を見る限り、やり合っていた時間は三十分前後のようで、時間的には余裕がまだある。次はジョースターか、アヴドゥルにしよう。あるいは、二人まとめてでもいい。そう思案しながら振り向いた先に、黒いアウターに身を包んだ巨躯が聳え立っていた。承太郎だ。
「──わ、ぁ」
ほとんど素だった。驚きのあまり上がった声に、「すまない」と謝罪の声が降ってくる。
「ポルナレフはどうした」
どきりとした。
「……彼なら、外の空気を吸うと言って離れましたけれど。ご用事なら僕が探してきますよ」
もしかしたら、全て見透かされているのかもしれない。そんな恐怖と共に、僕は言葉を紡いだ。
「いや、いい。さっき聞いてた感じじゃあ、本当に小さな文字がダメなようだからな」
「そうですね。クウジョウさんはこの手の物は嫌いではないので?」
「ああ。特に抵抗は無いし、むしろ好きな部類だ」
「それはよかった」
「それから、悪いが外の空気を吸ってくる。何かあったら教えてくれ」
「ええ」
僕はいつもの微笑と共に会話を終わらせた。承太郎の声は心地よく、いつまでも聞いていたいくらいなのだが、それはメインデッシュに取っておくことにしよう。
本棚の方へと戻ると、ジョセフだけが頁を捲っていた。アヴドゥルは別の場所に行ってしまったらしい。……実に、好都合なことに。
僕はジョースターに声をかける。
「どうですか、ジョースターさん。何か手がかりはありました?」
「う〜ん……、微妙じゃの。そっちはどうじゃ?」
「こちらも変わりなく。でも、クウジョウさんは私の蔵書を好きだと言ってくださいました。それが嬉しかったです」
「おぉ、アイツがそんな事を。……ところで、少し聞きたいことがあるんじゃが」
「はい?」
先程までとは違う空気感を感じ取って、僕は鋭い視線でジョースターを見た。……もちろん、手帳とペンに手を伸ばしながら。
「おっと、手を止めるんじゃ。懐の物は出させんぞ」
「っ、痛……!」
ジョースターのスタンド──
だがそれでも、僕はスタンドが見えていないように振る舞うことにした。それがここを切り抜ける最善手だと思考回路が告げているのだから。締め上げる紫色の蔓に耐え兼ねて、僕は手帳を落としてしまう。
「な、何か手に、絡んで……っ」
「……おや? 少し聞きたいことがあると言っただけなのだが……予想外の所でDIOの刺客を炙り出してしまったかね?」
「何を言ってるんですかっ? 何が起こってるんです……!」
「とぼけても無駄じゃよ、ワシの目にはな。クロエ、お前さん、スタンド使いじゃろう」
「スタンド……?」
くそっ、このじじい、やはり鋭いッ! しかし何故、何故……!
「そこの手帳自体がスタンド。違うかね?」
「わ、わから──」
「案外手強いの。ならば、質問を変えよう」
しかし、手首を締め上げる手は加減すること無く、胴体と足にさえ絡みついて僕を縛る。くそっ、こんな拘束、僕のスタンドさえ機能していれば!
僕の能力はッ、こんなやつに負けるはずが無いのに……!
「お前さん、男じゃろう?」
てっきりDIO様について尋ねられると思っていた僕は、ジョースターの問いにむしろ冷静になってしまった。
「は……?」
「分かっておる。女性のように美しい容姿と体型じゃが、男だ」
「はぁ。そんなことを……そんなことを、聞きたかったのか? ジョセフ・ジョースター……!」
下らない、実に下らない。こんな下らないことの為に、僕はうっかり炙り出されてしまったっていうのか! 腹が立つ。腹が立つが、それ以上に、ジョセフの言葉に失笑する。
「んはっ、はははははは!」
「何を笑っておるっ?」
「んは、ははっ、ははは、はぁ……。
本当にどうでもいいなぁ。どうでもいいと思わないかジョースター。性別なんてなぁ……」
自らを戒める
「そんなもの、文を書くにあたって一番必要のない事なんだよ」
そしてさようなら。
「
とっても優しい、隠者のスタンド使いさん。
「何じゃ──がはぁ、っ!」
僕を縛る荊が真っ二つに千切れた。スタンドの能力で身体を『切り裂か』れ、ジョセフは苦悶の声を上げた。
「ああもう、駄目だよ、駄目駄目駄目駄目。いくらおじいさんとはいえ、そんなに狭い世界で生きてちゃあ。そりゃあ僕の肉体は男さ、生えてるし。けどねぇ、僕の心はどっちでもないのさ……勝手にどっちだなどと決めてくれるな……」
口の端から血を流す彼の髪を掴んで、僕は優しく諭すように言う。そして問う。
「なあ、僕の前で、貴方の力を見せておくれよ。そうしたら酷いことだってもうしない。分かっているのか?僕がちょっと能力を使うだけで、貴方は木っ端微塵になって死んでしまうのだよ? それをこうやって提案してあげているんだ。でも、安心して欲しいな。僕はとっても優しいから、人の事を痛めつける趣味は持ち合わせちゃあいない」
「ぐ、うぅ……何じゃ、そのスタンドはさっきの手帳が能力なん、ご、ぉっ!」
「でも、抵抗はして欲しくないなあ。僕はとーっても性格が悪いから、……なあ?」
がっ、と鈍い音があって、ジョースターの頭を踏みつける。手帳、と口にされてようやく、僕はペンと手帳を手に取ることを思い出した。もう油断はしない、としっかりとジョースターの方を見ながら、床に転がる道具達を拾った──否、拾おうとした。
「……え、なん、で、」
「落とし物はこれかい」
体の芯にまで響くようなバリトン。
百九十を超える長身。
黒いアウターに包まれた、腕。
「クウジョウ・ジョウタロウ……」
そして、紫色の肌と逆立った髪の、屈強な戦士。
「すたー、ぷらちな……」
どうして、ここに。
書庫の『隠し部屋』に、彼が。
「だが!」
それに手は伸ばさない、見え透いた罠には引っかからない。
「スタープラチナ!」
「
本が開く。スタープラチナの腕は承太郎の横を走り抜けた僕に振り下ろされるが、拳はあさっての方向へ空を切る。それと同時に、開いた『本』の効果が終わり、ただの本と化して落ちた。
背筋を嫌な汗が流れる。あんなパワーでの攻撃、僕が受けたら骨折じゃあ済まない……!
ゆっくりと、余裕を持って、承太郎が口を開いた。
「ポルナレフはどこへ行った?」
段々と濃くなってくる怒気が、彼の本心を示している。
僕は自らの心中を悟られないように笑った。
「そんなこと、気にしている余裕があるのかい? 現状ピンチなのは君の方だろう」
「もう一度だけ聞くぜ。ポルナレフは、どこに行った?」
「──ここだよ。おいで」
埒が明かない、と僕は、仲間との劇的な再会を演出してやることにした。
僕の手に収まる二冊の本。シルバーチャリオッツと、ポルナレフのものだ。
「まさか、てめー……!」
「そ。これが僕のスタンド『
んはぁ、と吐息のような声が漏れる。僕はどうしようもなく楽しい時、笑いを堪えきれないのだ。
悪癖だ、と自覚している。
「改めて名乗ろう。僕の名は、クロエ・ファルティス。トート・タロットの『欲望』を暗示するスタンド使いさ」
「欲望を暗示するスタンド使いか……てめーにはお似合いだな」
「トート・タロットだと!?」
声の主は承太郎のものでも、ジョースターのものでもない。となれば答えは一つ──アヴドゥルだ。
「おやおや、随分とお早い登場だなあ。モハメド・アヴドゥル……てっきりどこかへ逃げたのだと思っていたのだがね?」
「誰が。貴様がその本を抱えている所を、私ははっきりと見ていた」
「そうかい。それじゃあ君は、ジョースターが叩きのめされるのも、承太郎と話しているのも、ずうっと傍観していた訳だ」
「いいや、何故だかずっと同じ場所を歩かされていて、突然ここに来られただけさ」
ずっと同じ場所を歩かされていた、とアヴドゥルは言った。つまり、僕の『隠し部屋』は機能していたという事だ。それならば何故、ここに来られたのか。
いや、突然──突然、と言った。アヴドゥルは。この一、二分ほどで現れたというのなら、単純に経験不足の戦闘に気を取られ、そこに割いていたリソースを途切れさせてしまったというだけだろう。
僕は、自分の未熟さを恥じた。
「さっき貴様は『トート・タロットの欲望を暗示するスタンド使い』と言ったな? 他にも仲間が居るのかっ?」
「ああ、言ったとも」
しかし、仲間──仲間、ねぇ。あんな連中が……?
「んはっ、ははははは……」
あんな連中が、仲間! 同じタロットを原典とする以外には、なんの共通点もないあいつらが!
「何を笑ってやがる」
「仲間だなんて心外だ、と言いたいところだけど。仲間がどうか、だったね? ずうっとそこにいるじゃあないか……!」
「お前さん、まさか……やったのか。ポルナレフと同じように……」
「そうだ。こいつは、仲間すらも本にしやがったってことだ」
唸るような発声が、承太郎の怒りを感じさせる。だが、何も知らない人間の言葉に、僕は少しだけ苛立ってしまった。
「うるさいなぁ。人としてもスタンド使いとしても尊敬できない、クズの集まりを処分して何が悪いッ?」
人を食い物にする、道義にもとる者の集まり。
そんなもの、この世界には、いらない。
「いいさ。なあジョウタロウ、僕はDIO様の居場所を知っている」
「その為に俺達のスタンドを差し出せと?」
「物分かりがいいね。でも、少しだけ違う。君のスタープラチナを貰えれば、僕はそれでいい。どうだい? 取引としては十分だろう」
「いいや、違うな」
「は?」
「ポルナレフは返して貰うし、DIOの居場所も吐いてもらう。当然、スタープラチナを渡すなど有り得ない」
「……ふうん。いいだろう。ならば最後通告に、これだけは言っておこう」
「聞かせてもらおうじゃあねえか」
「君では僕に勝てないよ。絶対にね」
本体を攻撃することすら、これから彼には出来なくなるのだから。
だが、承太郎は依然として鋭い視線で、こちらを見つめるのみだった。
「それが本当かどうか、確かめてやるぜ。アヴドゥル、じじい。ここは俺一人でいい」
「なっ、承太郎!」
「──だ、そうだ。二人には黙って見ていてもらおうか」
不承不承といった感じで引き下がる彼らに、僕はねっとりと微笑んだ。
「いつでもどうぞ。かかっておいで。僕のスタンドは既に発動している……」
「スター──」
「『
本が開く。液体と化した僕の体に、目にも止まらぬラッシュが叩き込まれるが……そんなものに意味は無い。
だって、今の僕は『水』なのだから。
水面をいくら殴ったとて、影響などあるわけがないだろう?
彼の攻撃が終わったところで、僕は距離を取りスタンドを解除する。
「今度は、水……」
再び拳が繰り出される。その連打を受けながらも、僕は承太郎に向かって語りかけた。
「無駄だよ」
「もしかして……」
「てめーは本にしたスタンドを扱えるのか」
その問いには答えず、僕は断ずる。
「ジョウタロウ。君のスタンドは単純だね。力にものを言わせて敵を捩じ伏せる。無駄なものを削ぎ落とした、ある意味ではスタンドの究極形と言ってもいい。でもね──」
スタープラチナではなく承太郎に向かって、水の槍を飛ばす。延長線上には、未だ立ち上がれぬままのジョースターがいる。そして彼は、自分のせいで仲間が傷つくことを嫌うだろう。予想通り、自分の腕で水槍を受けた。
「ぐっ……」
「承太郎!」
「んはっ……ほらね。君は仲間を見捨てられない。無理だよ。今の君には、僕と正面切って戦うことさえ出来ない」
しかしなんというタフネス。一本しか飛ばさなかったとはいえ、高圧水流に腕を貫かれたというのに、再三再四と僕に振り下ろされる拳は威力の低下を見せない。
これこそがスタープラチナの真髄、とでも言うべきなのだろうが。
液体化を解いて、僕は笑った。
「センスがないねジョウタロウ。殴る蹴るじゃあ僕を倒せないよ」
再び水の槍を放つ。今度は三本。しかし、一度見せた手札は食らわないということだろう。スタープラチナは自慢のパワーで、水流を断ち切って見せた。
「もう見切った。てめーの攻撃は、一発も通さねえ」
『
「そうかい」
『
膠着状態。そう表現するのがぴったりだろう。傍から見ればの話だが。睨み合いなどという面倒なことは、嫌いだ。
「なら──こういうのはどうだい? 『
ぴしり、と風を切る音が響き渡り。新たな攻撃を警戒した承太郎の視点が、不意にひっくり返る。皮の光沢を持った何かが、八十キロを超えた男の肉体が天井へと釣り上げていた。
「な……!」
「承太郎っ」
これにはさしもの承太郎でも驚いたようだ。目を見開いて天井を眺める彼の姿は、実に気分を良くしてくれる。
僕は思わず、地面に放られていた手帳を拾い、ペンを走らせていた。
不気味なものを見る目で、承太郎がこちらを窺っている。
「てめー、何をしている……」
「見てわかるだろう? 記録さ。君のそういう姿も素敵だよ」
イカれた女だ、と承太郎が吐き捨てる。気が付けば僕は、彼の腕へペンを突き刺していた。
「へぇ……君でさえ見抜けないんだね。……失望したよ。君もジョースターと同じなんだぁ……」
ぐりぐりと腕を抉るペン先に、承太郎が呻き声を上げるがそれさえメモの材料にしかならない。
ぐじゅ、と湿った音を立ててペンを引き抜くと、僕は間近になった承太郎の頭を掴んだ。
「駄目なんだよ。そういう男だ女だって二分するような凝り固まった思考からは、真に自由な作品なんて生まれない。ゼロか一しかない世界なんて必要ないんだ……。君なら、僕のことも理解してくれると、そう思っていたのに!」
「がはっ!」
「本当に!」
「ぐっ!」
「残念、だよ!」
「ごほっ……!」
承太郎を吊るす鞭を操り、何度も壁へと叩きつける。嫌な音がするが、壁には傷一つ付かないので気掛かりはない。
「おい……まさか、この場所自体が……」
「ああ、気付かれてしまったか。流石は僕の見込んだ男だ」
彼の悲鳴を聞いていたら、幾分か気が晴れた。正解にたどり着いた承太郎に優しく頷く。
「改めて、取引しないかいジョウタロウ。君が僕と共にいてくれると言うのなら、今回の戦闘については目を瞑ろう」
「断る」
「んはっ、君は判断が速いねえ」
「てめーの手下になるぐらいなら、殺された方がマシだぜ」
「命は大切にしなくてはならないよ、ジョウタロウ。特に今のような……いつでも僕が、スタンドを奪える状態の時はね」
「ならやれよ。できるんだろ?」
「それもありだね。だけれども、ジョウタロウ──君は少し、そこで寝ていなよ」
承太郎の逞しい首に手を伸ばす。逆さ吊りではあるが、彼の意識を奪うくらいは問題ないだろう。そう判断して、沿わせた手に力を込めた、刹那。
嫌な予感がして振り向いたのと、スタープラチナの拳が目の前に迫っていたのはほぼ同時だった。
『本』を呼ぶ時間はない。腕で受けるのはまずい。アイオーンシェラの防御壁を張りつつ、身を捻って左半身で受けるが僕は派手に吹っ飛んでいく。
そうして開いた距離のお陰で、僕は何とか射程から逃れることができた。
「かはっ……」
「やはりな。どうして今度は水にならなかった」
「ぅ、ぐ……」
「考えてみれば合理的だな。恐らくてめーは、スタンドを奪えても同時使用はできない。切り替えじゃあなく使い捨てなんだろう」
「そして、一度捨てたスタンドは再度使うことはできない……だからこそ、何人もの仲間を……」
「……道理じゃな。奪ったスタンドを無制限に使えるのなら、無闇に殺す必要も無い」
「恐ろしいぜ。一体何人のスタンド使いをそうして葬ってきた」
僕は、口を開けなかった。
頭のどこかを、この男を殺せという言葉がよぎる。きっと承太郎をにらんで、僕は断言した。
「危なかったよ。そして見事だジョウタロウ。敵の特性を見抜くその
すうっと思考回路が冴えていくのを感じる。今までの余裕などなく、承太郎は全力で殺しに行かねばならないのだと、DIO様の言葉を真に理解した。
この本はもう使えない。ただの蔵書となったそれに戻るよう命じて、僕は言葉を踊らせた。
「
トラップ系のスタンドだ。僕は躊躇わない。残弾如何に関わらず切り替え、次の本を呼び出す。
「
鎖が絡みつき、スタープラチナを拘束する。しかし、地面にかすったほんの一瞬でそれを振り切ってみせた。
何という
だが、その一瞬で良かった。僕のスタンドの準備は、完了している。
僕の
「『僕は
そして投擲。瞼の裏で漏れる僅かな光を感じながら、僕は承太郎の気配を探った。
フラッシュバンでの目潰しは、僕の十八番のひとつ。命を狙われた際や単に逃げたい時など、殺傷したくない場合大いに役に立つ。
そして使用頻度が高いということは、こちらは対策を施せるということ。僕は普段から、遮光塗料を配合したアイシャドウを瞼に塗っている。完全に遮断できる訳では無いが、視力を奪うほどの威力はなくなるという訳だ。
「『
そして、スタープラチナの位置を把握しきった今……僕の任務は、完遂されるのだから。
次に承太郎がスタープラチナを見る時、自らの無力さと苦痛に膝をつくだろう……! 僕にはその、確信があった。
閃光が失せる。目を開くと、承太郎も目を閉じていたようで、僅かながらに視力を取り戻しているようだった。
「うぐっ……!?」
承太郎の唸るような声が耳に届く。どうやら発動にも、捕まえることにも成功したらしい。
「何だ、これは……」
スタープラチナがゆっくりと、しかし確実に、表面から侵食されていく。
攻撃能力を有した流体。スタープラチナとは決定的に相性の悪いスタンドだ。
「ただの霧じゃあねえ……!」
「んははははっ! ときにジョウタロウ。僕はこの戦いが始まる時、三十一の能力を支配下に置いていた。確かに君のスタンドは素晴らしい。どんなに速いスタンドでも、どんなに硬いスタンドでも、そのスタープラチナには適わないだろうさ」
僕が『無駄なものを削ぎ落としたかのような』と評したように。
「けれど、所詮はスタンドだ」
スタープラチナが振り払おうともがいた。しかし、黒と白の霧は意志を持ってまとわりつき、混ざり合い、決して獲物を逃すまいとしている。
「『
このスタンドを持っていた男は、あらゆる物を風化させることができていた。しかし、僕が本にした時、その能力は
だが、スタンドだけを風化させられるのであれば……あらゆる場所で、被害を考えずに使える。
故に切り札。故にこれまで、一度も切ろうと思っていなかったのだが。
「これを切った損失は、君達に埋め合わせてもらうことにするよ。スタンドと、首を頂くことで、ね」
「ぐ……っ、くそ、」
絶叫し暴れ回るほどの痛みでは、ない。しかしどんどん鈍くなっていく感覚と、ぼろぼろと崩れていくスタープラチナが、承太郎の窮地を主張していた。
僕は自らの勝利を確信した。
「君の敗因は戦略性さ。多数のスタンドを操る僕に対して、君のそれはたったの一つ。そしてスタープラチナは、極めてシンプルなスタンドだった」
チェックメイトへ近づいて行くのを眺めるような、恍惚とした感覚に身を任せる。
こうなってはもう、誰も邪魔することなどできない。ジョースターもアヴドゥルも、ただスタープラチナが力を失っていくところを見ていることしか。
「さようなら、ジョウタロウ。絶望を抱えながら、スタンドの力を生かせぬまま……死んでいくといい」