人気出れば投稿するかも?
メインは別作品ですけど
「・・・随分久しぶりだな。ここに来るのも」
「ワンッ!」
長い黒髪を靡かせながら青年は、薄く笑みを浮かべながらオラリオの都市を眺めてそう呟く。
その横では、キセルを加えた隻眼の犬がオラリオの街を見ていた。
「・・・んじゃ行くか。ラピード」
「ワンッ!」
◇◇◇◇◇
「最近はオラリオも面倒な手続きをしなくちゃいけねえのかよ。全く・・・」
「・・・クーン?」
オラリオに来てそうそう面倒な手続きをして愚痴を溢すユーリとラピードはそびえ立つ城壁に作られた巨大な城門をくぐる。そしてユーリ達の視界に美しい街並みが現れた。
「ここは変わってねえな。街も全然変わってねえや」
「ワンッ!」
オラリオの喧騒は変わらず、石造りの建物に石畳に舗装された通りは昔、ユーリがここに居た時と変わっていなかった。
様々な種族で溢れる大通りを縫うようにユーリとラピードは人混みの中をすり抜けていく。
「さて・・・ギルドはこっちだったよな」
ダンジョンを運営管理する『ギルド』。この迷宮都市オラリオ、ひいてはダンジョンを管理する『ギルド』を中核にして栄えるこの都市は、ヒューマンも含めあらゆる種族の亜人が生活を営んでいる。
ここに住んでいた時はでかい『ファミリア』で冒険者をしていたが、ある一件を理由にユーリは団員と揉めてしまい、その日以来オラリオの外でユーリはラピードと共に根無し草の用心棒として生活をしていた。
そんなユーリをどこで嗅ぎつけたのか・・・主神が手紙を寄越してきたのだ。───戻ってこいと。
正直な話戻らなくてもよかったのだが、フレンやアイツに顔を見せるくらい良いだろうと思い、オラリオまで帰ってきたのだ。
「おー此処もあんまし変わってねえな」
ユーリがギルド館を見上げていると、その隣から何かが脱兎の如く駆けていく。
「エイナさぁあああああああああんっ!」
「おわっ!?」
ユーリが避けるように身体を反らすと、全身をドス黒い血色に染めた少年が走っていった。
そしてすぐに悲鳴がギルドの中に響き渡る。
「うわあああああああああああああ!?」
「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださああああああいっ!」
その少年が上げた名前を聞き、ユーリは少しだけ笑った。
「なんだ?アイツ絡みか」
ユーリがまだオラリオに居た頃。フレンとユーリの後ろをずっとつけてきた少女。
【剣姫】───アイズ・ヴァレンシュタイン。
『ファミリア』でもかなりの問題児でまだ子供だったアイツが今やどうなっているか分からないが、フィンやリヴェリア、フレンがいるのだ。
その問題児っぷりもマシになっているだろう。
「ま、問題児つったら俺もそうか」
ユーリはフレンやアイズを巻き込んで馬鹿やったなあと思い出していると、ラピードが吠える。
「ワンッ!」
「・・・っと、そうだったな。早く行かねえと」
ユーリはラピードの返事に答えると、そのままギルドの窓口へと向かった。
◇◇◇◇◇
「案外早く終わったな」
「ワンッ!」
夕暮れが迫る街の中をユーリとラピードは屋台で買ったじゃが丸くんが入った袋を片手に食べ歩きながらユーリは周りを見渡す。迷宮から帰ってくる冒険者達で溢れ、酒場は賑わいに満ちていた。
ぽつぽつと照り始める街灯、『魔石灯』の明かりが、喧騒の途絶えることない都市を彩っていく。
「今日はもう疲れたし、適当なとこで宿取るかね。帰るのは・・・明日でもいいか」
「ワォン!」
───と。
「ユー・・・リ?」
「・・・あん?」
「ワウ?」
後ろから声をかけられ、ユーリとラピードは首を傾げるように振り返るとそこには───
「ねーえー!!急にどうしたのアイズ!!って・・・あーッ!!」
アマゾネスの少女がユーリに指を差しながら叫ぶ。
「ユーリだ!!それにラピードも!なんで!?いつ帰ってきたの!?」
「よぉティオナ。久しぶりだな。因みに帰ってきたのはついさっきだ」
嬉しそうにはしゃぐティオナにユーリは笑って答えると、そのままアイズを見る。
「元気にしてたか?アイズ」
「・・・うん」
少しだけ顔を赤くするアイズにユーリは笑う。
昔と変わっていない。
と、アイズはユーリの手を握る。
「・・・ユーリ」
「ん?」
アイズはユーリと顔を合わせると、
「おかえり」
「ああ。ただいま」