紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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※文以外の原作キャラは出ません。ご了承の上どうぞ。


新たなる支配者

…重々しい門の上から木の枝へと飛び移る。音もなく…余と天狗たる彼女だからできることだ。

 

そして、その門の前にはある鬼を中心にした集団が立っていた。

 

「…手負いの勇儀に寝床の鬼子母神。…萃香はどうせどっかで酒をかっくらってる。…今、俺たちを邪魔するもんは…誰もいねぇ…。」

 

低い声が響く。

中心にいるのは大嶽丸とやらだろう。大きな刀を持った巨体の持ち主。逆三角とは奴のことを言うか。だが、星熊勇儀には遠く及ばない。手負いを狙うほどの小物なのだろう。

 

「…俺たちが起こすのは…革命だ。鬼が人間に虐げられたままで…いいのかァ?鬼は最強の種族、そうだろがッ!!」

 

天高く刀をあげてそう叫ぶ大嶽丸。

周りの賛同している若い鬼はそれに対して大きく声を上げた。群衆、組織とはこういうものだ。

 

「…ねぇ。どうするのよ。こんなとこまで来て。」

 

「鬼の内輪揉めだ。余には関係ない。…だが、そうじゃない奴が出てきたぞ。」

 

大嶽丸ら革命派の進行を止めるのはやはり余ではない。中にいる普通の奴らよりもあの大嶽丸は強い。それに比べて得体が知れないのはあの刀だ。真紅の柄を持ち、竜の鱗のような柄を彫られた鞘の太刀。それを片手で持っているのだが、血の匂いが染み付いている。

 

そして、その目の前にはボサボサの短髪の赤髪の青年が立っていた。

 

「あぁん…?勇気と…無謀は違ぇんだぜ?…鬼童。」

 

「…やっぱりテメェか。大嶽丸ッ!!」

 

ねっとりとした低音でそう言い、口角を上げてニィッと笑う大嶽丸。対して鬼童は鬼気迫る顔で戦闘態勢を組んでいた。

 

「能力もねぇ…強くもねぇ…ただの粗大ゴミのテメェに…何ができる?命はぁ…無駄にするもんじゃねえぜ?鬼童よォ…。」

 

「五月蝿ぇッ!!」

 

「中にいるのはジジイとババアだけだろ…?頼みの綱のォ…姐さんも…余所モンにやられて…傷だらけェ…だろ?…無様なモンだ。人間だろうが…余所モンだろうがァ…全部受け入れちまう。…鬼がプライド捨てたら何が残んだ。」

 

「ウォォォォッ!!」

 

…先手を仕掛けたのは鬼童だった。

拳を固め、大ぶりに打つ。顎を撃ち抜かんと振るわれたそれを大嶽丸は易々と胸を晒せ、避ける。

 

「ひゅ〜♪…危ねぇ危ねぇ。血気盛んなのはァ…悪くねぇ。けどなァ…。」

 

そこから雪崩れ込むように鬼童が拳をねじ込む。

 

右…左とワンパターンにさらに大ぶりに振られるそれを風が吹いたかのようにゆらりゆらりと大嶽丸は躱していく。…笑顔で。

 

「…あ〜あ。…ワンパターンは…飽き飽きだァ…。」

 

「ぐっ!?」

 

何度目か打たれた拳を大嶽丸は左手で受け止める。

 

そして、流れるように鬼童の腹へ前蹴りを入れた。

 

鬼童はそのまま後ろへと吹き飛ばされる。

…悲しいかな、勝敗は火を見るよりも明らかだ。

 

「ゴフッ…。」

 

「…おぉ…おぉ?…内臓までいったかァ?…ちゃんと鍛えねえと…ダメじゃねえか…。なぁ?」

 

わらいながら周りに問いかける大嶽丸とその言葉に乗り、笑う鬼の衆。腹を押さえ、苦悶の表情を浮かべるも、鬼童は立ち上がる。

 

「…殺しはしたくねぇなぁ。若い鬼だ。…どうだ?俺の仲間になんねえか?…今なら末席くらいはァ…空けてやるよ。」

 

「はぁ…はぁ…黙れッ!!…俺が倒れたらこの鬼の集落は終わりだッ!!だから…戦わねえといけねえんだッ!!」

 

「ひゅ〜♪…カッコいいねェ…。死に際くらいは…啖呵切りてぇもんだからなぁ…。じゃあ、答えてやるか…。」

 

そう言うと大嶽丸は刀の鞘に手をかける。ゆっくりと見せびらかすように引き抜いていく。見えてきたのは漆黒の刃だった。…なるほど。あれは妖刀だ。相当な人間を切ったと見受けられる。実物を見るのは久方ぶりだが…業物ではあるだろう。

 

「…抉ぐるか、斬るか、刺すか…。やってみるかァ…相当痛えぞ…。」

 

「くっ…ハァァァァッ!!」

 

鬼童は再び右の拳に力を込め、大嶽丸の顔面を狙って撃ち抜く。

 

しかし、首を傾げられ、その拳は空を切った。

 

「おっとぉ…残念…。」

 

直後、右の拳を引っ込め、打突を左拳に切り替えようとする鬼童。

 

しかし、鬼童が見たのは自身の胸から吹き出す血の噴水だった。

 

「グゥゥ…ァァァァッ!?」

 

横薙ぎに入った斬撃はかなり深い。

鬼童はそのまま痛みから地面に転がる。自身の血にぬかるんだ地面に転ぶ。自身の髪と同じ、赤い着物は土汚れと鮮血によって赤黒く傷口が染まっていく。

 

「…うるせぇなぁ…。俺はさぁ…他人の痛みっつうのが…わかんねぇのよォ…。だから…ギャーギャー騒ぐんじゃねぇ…お前の次は…星熊勇儀だ…。」

 

鬼童は完全に腰が引けている。だが、目だけは信念の籠ったいい目をしている。…逆に言うとそれだけだ。威勢がいいのはやはり口だけか。

 

「…ほら。」

 

「ぐっ…!?」

 

鬼童の右太腿に刃が突き刺さる。

 

逆手に持たれた刀はすぐに引き抜かれ、鬼童の額に足の裏が入った。

 

「あーあ。…最後の門番がこれじゃ…鬼子母神も落ちたモンだ…。これならァ…あとは鬼子母神と星熊勇儀を見せしめにするゥ…それだけでいいか…。」

 

額が割れ、血が流れる鬼童。…ボロ雑巾のように斬られ刺され…鬼童はもうボロボロだった。

 

だが、ゆらりと鬼童が立ち上がった。大嶽丸はそれを見て笑みが消える。

 

「…鬱陶しいなぁあ…。」

 

「…負けねぇ…負けられねぇんだ…。」

 

「…折角、サシでやりやってんのによォ…。興醒めだ…。とはいえ…俺の仲間にこんなボロボロォ…相手にさせるなんて酷はない…。名もあげられねえし…勇儀との戦いに備えとかなきゃいかねぇ…。だから、俺が一思いに…切り捨ててやるよ…。」

 

そう言うと大嶽丸は太刀を振り上げ、脳天を目掛け振り下ろす。頭が割れて、噴水のように血が吹き出し、脳漿が皮膚を伝い…垂れ出る。そんな妄想が頭をよぎるが、妖怪にとってはそんなもの、日常茶飯事だ。…死んだらそれだけの男。

 

「ちょっと…ルディウス。…あれ。」

 

「…ん?」

 

…こんなもんか、そう思っていた。

滴り噴き出る血がそれを表している。…が、目の前に映るのは全くもって違った。

 

頭では無く、肩に刃の半分ほどがめり込み、首筋から…頬あたりから肩まで真っ赤に染めていた。

 

「…あぁん?…なんの真似だ…?」

 

「…ぐふぅ…うる…せぇ…。俺が倒れたら…姐さんたちが…。鬼の…集落が…。負けて…ごめんじゃ…ねぇんだ…よッ!!」

 

「…チッ。」

 

拳を固め、前へとただ撃つ。がむしゃらなその鬼童の拳が…今まで入らなかったその一撃が、軽くではあるが大嶽丸の胸を突いた。

 

「…舐めんじゃ…ねェ…ごぼぉぉ…!!」

 

…ただし、威勢がいいのはそこまでだった。

腹に蹴りを食らった鬼童が蛇口を捻ったかのように血を吐く。それは戻しているかのような光景にも見えた。

 

刃は取れたものの、微かに血の滲んだ服を見て気に食わないように静かに睨んでいた。

 

「…あーあ、汚れちまった…。俺は…オシャレなんだがなぁ…。」

 

そう言いながら、地面に伏せる鬼童の頭部を踏み、また小さく笑みをこぼす。

 

「…最後の一撃…漫画や小説みたいに一矢報いるなんざ…ねえみてぇだなぁ…。ヒーロー…にはなれなかった…。若いのに…馬鹿だよなぁ?」

 

「ぐぅ…ぐっ…。」

 

「…じゃあ…あの世で見てな…。俺らの革命が成る…その様を…。」

そう言って刀を逆手に持つ大嶽丸。その刃は鬼童の首筋を狙っていた。

 

「…おい。射命丸文。その団扇をあの男に向かって振り、突風を起こせ。」

 

「は?アンタ、助けるの?」

 

「…死ねばそこまで。だが、殺すには惜しい。」

 

たった少し。鬼童に興味ができた。

自然と口角が上がる。その言葉に射命丸文が吐いたのは…溜め息だった。

 

「…仕方…ないわねッ!!」

 

バサリと枝すらもしならないほどの速度で大嶽丸の前へと出る。

 

「…死…あぁん?」

 

「吹き飛びなさい。」

 

射命丸文を見て即座に刀の向きを突き刺しからガードへと変える大嶽丸。旋風により、起こるのは砂塵。山の枯れ木や葉、砂を巻き込んで突風を吹かす。突風の速さはとてつもないもので、枯れ木の落ち枝は苦無の如く、葉は刃の如く、大嶽丸一味の肉を食み、血を流す。

 

「…やるじゃねえか…天狗のくせして…。」

 

しかし、大嶽丸はその分厚い筋肉でほとんど傷は目立っていなかった。

 

「さぁて。こちらも出るか。『Dáinsleif(ダーインスレイヴ)(フィーア)』」

 

影から呼び出されたダーインスレイヴはまたも姿を変える。それは何本ものナイフ。それが余の周りに円陣を組み、自由に飛び回っていた。

 

そのまま地面へと飛び降りる。と同時、ナイフは吹き付ける風の如く、大嶽丸らへと飛んでいく。

 

「あぁん?…チッ。」

 

大嶽丸はそのナイフを何食わぬ顔で刀で下から切り上げ、それを弾いて身を守った。金属音と共に火花が散る。

 

しかし、そのほかの雑魚は相手にもならん。皆、頭部、頸動脈等の急所を射抜き、或いは斬られ、屍とかしていた。

 

直後、風が無くなる。

目眩しも消えた。と同時、ギロリと大嶽丸がこちらを睨む。

 

「…テメェはァ…あぁ…そうか。勇儀を使い物にならないようにしてくれたァ…吸血鬼か。」

 

「本来ならば…汝らの里争いなど微塵も興味はないが…ここらで鬼に恩を打っておくのも得策だ。」

 

「…仲良しごっこなら横でやれェ…。とりあえず…仲間やられてんだァ…。ぶっ殺す。」

 

あちらは太刀、こちらはナイフを両手に二本。だが、周りにもナイフがある。

 

「射命丸文。…その男を頼む。」

 

「え、ええ。」

 

射命丸文一人じゃ軟弱な鬼でも大男を運ぶことは不可能。だが、守ることは可能なはずだ。

 

「汝の思想は聞いた。報復とはご立派だが、後のことを考えねばならん。汝では鬼の頭領には…器が足りん。」

 

ナイフを逆手に持ち、構える。

余の話を聞き、怒り立つかと思ったが、大嶽丸は黒い前髪を掻き上げ、静寂の中にやりとわらった。

 

「…邪魔すんならァ…斬り伏せる。」

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