「結界は強めておくわよ。」
「助かる。」
…地下室は完全防音、完全防御である。上回る攻撃はまだ発見されたいない。そこへパチュリーの魔法まで合わせれば完璧だ。ここならば、魔法の実験は容易にできる。
さて、まずは得意順に話をしよう。
余が得意なのは炎と雷、そして攻撃こそ出来ぬが創造魔法と転移魔法が可能である。風は玄天を引き抜いた時のみ、扱えるが、あれは散った魔力を形にしないといけないため、余には難しい。
「パチュリー、この女に思いっきりやれば良いのだな。」
「ええ。こあ、死なないでね。」
「ふぇぇ…。」
…目の前で蹲り震える小悪魔という女…というか生命体というか。人間に人間と名付けるようなものなのかと考えるが、知ったことはない。パチュリー曰く、魔法に耐性のある種族であり、魔法で守っているから大丈夫だそうだ。
「言っておくが、消し炭になったら恨むのはパチュリーだぞ。」
「じょ…冗談…じゃないですよね…。」
「加減は苦手だからな。」
…さて、やるか。
魔法に理屈は必要ない。弾幕も魔法も必要なのはイメージだ。例えば、炎。手に纏わりつく紅炎をそのまま手に顕現する。そうすればパチパチという音と共に右手が煌々と燃え上がる。手を合わせて引き伸ばせば弓の弦のようにしなり、左手に移っていく。
炎を顕現できれば次にするのは集約と形成。
「…行くぞ。」
「ひっ!?」
余の体を中心に六つの火球を作り出す。パチンっと指を鳴らせば、前へと飛んでいき、小悪魔を通り抜けその後ろの壁へと当たる。壁材、床材は石のため、燃え上がりはしないが、灰色の壁や床が黒色に焦げる。
「…ふむ。」
これを1とした時、出力を100などとすれば、石まで溶けるか。石まで溶けるようなイメージがあればそれを作り出すことができる。まぁ、その時は…目の前で怯える哀れな小悪魔は骨や肺になるだろうが。
「パチュリー。少し火力を上げるぞ。」
「どうぞ。」
パチュリーにとっても余の魔法は興味深いらしく、気だるげな返事からはわかりかねるほどこちらを凝視している。歯をガチガチと合わせ、震える小悪魔には悪いが、殺すわけではあるまい。
「…では。」
指先に炎を集まる。火炎球は渦巻き、右手の人差し指の先でくるくると回り出す。先ほどよりも大きく、そして数は一つと少ない。
「『
そう名付けた火炎球を前へひょいっと放り投げるととてつもない勢いで地面に炎の軌跡をあげながら、小悪魔へとぶつかりに行く。小悪魔は目を背けるが、炎の弾は小悪魔の正面で二手に別れ、小悪魔の後ろで大爆発を起こす。その炎は天井を焦がすほどであった。
「な、何笑ってるんですかぁ!!」
「…思いの外、楽しくなってきてな。今は虐めだが、これはいずれ使える。…小悪魔、殴ってきていいぞ。模擬戦をしよう。」
「は、はぁ!?勝てるわけないじゃないですかッ!!」
…それもそうか。小悪魔はお世辞にも強いとは思えない。もちろん、今の咲夜以上ではあるが、それでも下から数えた方がいいな。ならば。
「パチュリー。」
「いや。…貴方とやって死なないのはレミィやフラン、美鈴ぐらいよ。」
「余の魔法に興味が湧いているのだろう?」
そう言うとパチュリーは嫌な顔をしつつも下へと降りてくる。その手には魔導書を持ち、身体中から魔力の匂いを漂わせながら、余の前に立ち塞がる。
「…仕方ないわね。でも、こっちは2人でやらせてもらうわよ。」
「何人でも構わん。」
「私もですかぁ!?」
「当たり前でしょ。付き合いなさい。」
気だるげにそう言うパチュリー。すでに臨戦状態なパチュリーを他所に小悪魔はぐずっている。
「誰かに試してみたいと思っておったのだッ!!」
「ぐっ!?…なんて力よ…!!ハッ!!」
先に仕掛けたのはパチュリーだ。
我らを押し流さんとする水流が前から迫り来る。
「セオリーどうりだッ!!」
そりゃあそうだろう。吸血鬼の苦手分野の中に水流があるのだからそこを指してくる。…が、上空に逃げればなんてことはない。翼を広げると目の前には小悪魔が手を突き出していた。
「えいっ!!」
その掌から放たれるのは小さな火球。その足元にも及ばん。
「ハァッ!!」
妖力の帯びた手刀で真下から切り抜く。
即座に頭上に魔法陣が現れる。下のパチュリーだ。
頭上から来るのは落雷。しかし、それは見えている。全て移動だけで避けてみせる。
「嘘でしょ…!!雷を避けられるっていうの…!?」
「ただの雷ならわからんが…魔法の雷というものは多少なりとも予備動作を残すのだ。」
「…じゃあ、これはッ!!」
…その声と共に目の前から火球が飛んでくる。余が扱ったものよりも巨大な火球だ。避けても爆炎に撒かれるだろう。…であれば。
「炎を燃やせばいい事だなァッ!!『
「何あれ…!?」
室内を埋め尽くすかのように余の頭上から炎が走る。それは炎の集中豪雨。着弾と共に地面を焦がし、パチュリーの火球を内から貫く。まさに炎の海を顕現する技。
「室内なのでな。…少々、なんとか加減した。」
「…これで加減っていうの…!?」
…完全に室内は炎の海と化している。
パチュリーはかろうじて魔法の壁で自身の足の踏み場を残している。
「…しかし、少し疲れるな。」
「そんな大技…何度も打ててたまるもんですか。ガス欠よ。魔力がガス欠を起こしてるの…!!全く…。」
「も、もうちょっとで焼け死ぬところでした…。」
慣れれば乱発できるか。…パチュリーの魔法結界は完璧だ。数十メートル離れた小悪魔ですら守れるほどの魔法結界。破ったら紅魔館が火の海に沈む事になるゆえに上の我が妹らを危険に晒す。…幻想郷に行ったら紫にでも試してみるか。魔力量を絞り、出力を狭める。…それができれば乱発も可能だろう。
「もう少し試すか…!!」
「そう来ると…思ったわよッ!!」
風が余の周りを覆い、捕縛する。触れれば肌が風化する風はいつぶりだろうか。
「今回は…魔力を使わせてもらおう…!!」
即座に手を合わせ、離す。掌と掌の間ではバチバチと雷が迸る。
地面から隆起した土の龍が余を喰らおうと口を開けるが、構いやしない。
「砕けよ『
左手に纏った雷撃は周りを埋め尽くす風と共に土の竜を天から貫き、破壊する。電撃の居合である。手刀によるそれは雷の進行方向を導き、軌跡を作る。さすれば、そこに見えるのは炎の消えた真っ黒な床とパチュリー、小悪魔の姿だ。
先程の獄炎は所謂、リミッターを外した素の炎である。いつものDeffertが弾幕用に遠慮をしたものならば、先程のは全く無遠慮なもの。パチュリーを信じた結果の技だ。…つまりは、雷将もリミッターがある。
「少々痺れるぞ!!」
「貴方…またっ!?」
パチュリーが警戒心を上げる。
その目はギロリと此方を睨むものだ。身体中がビリビリと電撃を帯び、髪を押し上げる。炎のついでのように習得した技だが、意外と使い勝手が良くていい。〇〇を操る能力というものではないため、魔力という素を使わねば扱えぬというのは少々不便だが。これぐらいの枷があった方がいいだろう。
「『
…指をパチンっと鳴らすと共に頭上から大量の雷が降り注ぐ。それならいいが、無論、自由雷。変幻自在に枝分かれし、パチュリーノーレッジに襲いかかる。視界も聴覚もおかしくなるほどの極光と轟音。雷一つ一つに意志があるのかと思うばかりにパチュリーノーレッジを四方八方から狙撃する。
「ぐっ!?…ごめんなさい。こあ。先に…謝っておくわ。」
「へ?…キャァァァッ!!」
…そして、その稲妻はパチュリーの強固な魔法結界を打ち破った。無論、力はコントロールしている。痺れる程度になっているはずだ。
「…生きているか?」
「え、ええ…。体が痺れて…動かないけれど…。」
地面にうつ伏せに倒れ、此方を睨むパチュリーを見つつ、床に腰をつける。多少雷が流れているのだろう。触れた瞬間、手に痛みを感じた。
「…あの魔法…一体。」
「説明は後にさせろ。…余は疲れた。」
…流石にあの範囲の魔法だ。まだまだ改良が必要である。
・獄炎(サラマンドラ)
ルディウスの持つ炎魔法の最上位。大小様々な火球を頭上から流星群のように落とし、ルディウスの把握している空間全てを焼き尽くす。火の粉に触れただけで骨まで灰になる。ただし、空間を歪めたり、結界で守り続けたりすれば普通に避けられる。その場合、焼け野原になるため、跳べなければ詰む。なお、口から吸う空気も焼けているため、呼吸をした途端肺から燃える。
・冥雷(インドラ)
ルディウスの持つ雷魔法の最上位。頭上から幾重にも分かれる大量の雷を打ち込む。空間を伝播し、電荷を操り、相手につけるため、どこに逃げても雷を追ってくる他、モタモタしていると力を狂わせる電磁波を辺りにばら撒くため、能力や結界の解除を自身の意識とは別にさせられる可能性がある。対処法はとにかく雷より早い速度で逃げる。
…つまり、どちらの技もチートです。これがあと何個かあるんだから本当この兄上は…。流石に弾幕勝負仕様にはするとは思うけれど。本気の殺し合いなら使ってもおかしくない。耐性を持っていれば別だけれど。パチュリー、小悪魔が無事だったのは魔力に耐性があるのと手加減していたから。本気のはこの技は…近日中に見れるかもね。では。