紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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side霊夢


紅霧異変・弍

「…あのバカ。」

 

先に行った親友。その惨劇は酷いものだ。大破した門とその奥に倒れる女。よくもまぁ、肉の形を保っているものだ。ご丁寧に開いているのだから、正面から入っていこう。門番?なんか、大丈夫でしょ。

 

「お邪魔しますっと。」

 

…外も外だけど中も真っ赤だ。広めの…こういうのを玄関っていうのかな。外国の玄関の名前は知らないし、なんか高い。フキヌケ?…ってやつだっけ。というか、不用心ね。

 

門番は寝てるし、門は空き放題。扉には鍵すらかかってない。…流石の私も心配になるわ。まぁ、簡単に入れていいけど。取り敢えず、この霧の犯人を探さなきゃ。大体、親玉は上にいるでしょ。

 

「…ッ!!」

 

…咄嗟に後ろへと飛ぶ。

危なかった。さっき居た場所には何本かのナイフが突き刺さっている。先に言おう。…ナイフなんて目の前になかった。

 

どこから打ってるのだろうか。

周りを見渡しても人影はない。紫のようにワープしてるわけでもないと思う。何なんだろう。

 

「くっ!?」

 

再び目の前から此方へと飛んでくるナイフを霊力を纏わせたお祓い棒で弾く。軽い金属音と共にナイフが地面に無造作に落ちていく。

 

「これがここのおもてなし?酷いわね!!」

 

…誰も居ないが、確実にいる誰かに聞こえるようにそう言う。カツッカツッ…と何者かが降りてくる音が聞こえる。

 

「アポのないお客様はお客様とは呼びませんので。」

 

冷徹な声が聞こえる。上から降りてきたのはメイド服を着た銀髪の女だった。両手にナイフを展開し、此方を睨むメイド。対する私はお祓い棒とお札を持つ。針も出せるが、まだ良い。

 

直後、メイドと私の距離がゼロになる。メイドはミニスカートに包まれた足で私の顎を撃ち抜こうと蹴りを放つ。

 

それに対して私も蹴りを打つ。お互いの足が空中で交差する。

 

「…チッ!!」

 

足を戻そうとする私たち。しかし、私の目に映るのはメイド…ではなく、私の顔面に突き刺さろうと飛んでくる。首を傾げ、それを回避。私の髪の毛を突き抜ける。

 

「はっ!!」

 

私は見ずに勘で後ろに針を飛ばす。

手応えはない。カンッと甲高い音と共に後ろを振り向くと、メイドの目がもっと鋭くなったのを感じた。そのメイド服に包まれた右腕が僅かに切れているのが見える。

 

「…貴様…!!ご主人様に頂いた高貴なるメイド服を…!!許さないッ!!」

 

手が傷つけられたことよりもメイド服が切れていることに怒っている。おかしなやつだ。両手にナイフを持って、鬼の形相で此方を睨む。直後、私を串刺しにせんとナイフが此方に飛んでくる。

 

霊力を纏わせたお祓い棒で払い落とし、一気に距離をつめにいく。

 

捕えたと思ったお祓い棒の先は案の定、空を切る。だいたいわかった。この女は紫に似た能力を持っている。瞬間移動…いや、もっと似て非なる何か。

 

「はっ!!」

 

走ってメイドを追い詰めるが、すぐに逃げられる。それどころか、壁沿いにナイフで追い詰められる始末。壁に刺さったナイフを飛んで避ける。その上に乗り、攻撃を避ける。

 

「そろそろお仕舞いにさせてくださいなッ!!」

 

直後、私に向かってナイフが降り注いだ。グサグサと体に刺さっていく。…そりゃ、弾幕ごっことしては反則でしょうに。…だが。

 

「なっ!?」

 

…その私が果たして本物の私かどうかは考えなくては行けない。側にそれはふと作ったお札の人形なのだから。式神…とは違うな。お札の集合体だからこそ、ナイフの刃は突き抜け、地面に突き刺さる。

 

「くっ!?」

 

すぐさま背後を振り向くメイド。だが、私の振るうお祓い棒は既にメイドの脇腹を捉えている。

 

「遅いっ!!」

 

「きゃっ!?」

 

そのままクリーンヒット。メイドは地面を滑り、転がる。ゆっくりと立ち上がるが、頭部から血が垂れ流れている。

 

「…ご主人様が…褒めてくれた…銀の髪…。私は…こんなところで負けるわけにはいかないの…。」

 

目は虚。ボソボソと何か呟き、右手にナイフを持ち、ゆっくりと此方ににじり寄ってくる。別に殺したいわけじゃない。

 

直後、私と彼女の距離が縮まる。首筋に向かって伸びてくるナイフの切先。

 

それを顎を引いて避ける。すると次に来るのは姿勢を低くした足払い。

 

後ろに跳んで避けた私の眼前に迫り来る投げナイフ。それをお祓い棒で払い除け、懐から針を出し、投げる。

 

メイドはすでにそこには居ない。針は空を切り、消える。直後、目の前から迫り来るのはナイフの雨。

 

間を縫って避けていく。時にナイフをお祓い棒で払いながら。

 

「はぁっ!!」

 

「無駄よッ!!」

 

投げるのは針ではなく、お札。それはメイドに向かって確実に飛んでいくが、メイドがかかることはない。逆に此方へとナイフが飛んでくる。

 

頬を掠めつつも、そのまま彼女の懐へと入る。そうすれば、彼女は一度、距離を潰す。

 

「っ!?」

 

「気がついた?」

 

メイドの顔がわかりやすく歪む。

手足は空中で結界に縛られ、身動きが取れない。これでお得意の瞬間移動も封じた。人間だから、かかった罠だ。

 

「アンタがどんな能力を持っていようと、これなら何にもできないわね?」

 

「くそっ!!…私はご主人様に…お嬢様方に信じられてここにいるっ!!こんなところで負けるわけには…!!」

 

苦悶の表情になっているが、負けは負けだ。

私はメイドの腹部に手を当てる。…メイドを飲み込んで大きな陰陽玉が爆発した。爆発音と共に室内に爆風が吹き荒れる。

 

「…アンタのご主人様の場所はどこよ。」

 

「言う…わけ…ない…。」

 

…流石は従者というべきか。

メイド服は汚れ、破れ、肌からは鮮血が滲み出ているとはいえ、苦虫を噛み潰したような顔で一切口外をしないメイド。…まぁいい。だったら私で探すだけだ。

 

「…そこで寝てなさい。適当に探すわ。」

 

「ま…て…。」

 

後ろで呟くメイドを他所に私は階段を登っていく。馬鹿みたいに広くて、馬鹿みたいに目に優しくない館だ。これがいいと選んだ主人とやらの趣味を疑う。

 

「ここじゃないかしら。」

 

勘。それ以外の言葉は見当たらない。

第六感でその扉を開けるとそこには椅子に足を組んで座る幼女がいた。ただの幼女だと思ったら大間違い。蝙蝠の羽を背中に携える…どこか懐かしい雰囲気のする女。此方を見るとその真紅の目に私を映し、紅茶を飲む。

 

「咲夜はやられちゃったか。」

 

「アンタがこの霧の異変の首謀者?…迷惑だからやめて欲しいんだけど。」

 

口角をあげてティーカップを覗き込む幼女。私の言葉は届いていないようだ。

 

「断る…と言ったら?」

 

「勿論、あのメイドと同じようになってもらうだけよ。」

 

「流石ね。博麗の巫女。聞きしに勝る蛮勇。…でも、いいのかしら。」

 

幼女は立ち上がると翼を広げ、歯を剥き出しにして笑った。何を仕掛けてくるかはわからない。警戒を上げる。…お祓い棒を持つ右手の握力が次第に強くなる。

 

「私は運命を見通す者。…貴女は私には勝てない。」

 

ティーカップを幼女が置いた…と同時。私の懐を一瞬にして掌握する幼女。拳をギリリと固め、そのまま鳩尾を狙って突く。

 

結界でそれをガードし、一度後ろへと退く。

 

「こんなにも月が綺麗なのだもの。…共に踊り狂いましょう?博麗の巫女?」

 

吸血鬼はそう言って笑うと両手に真っ赤な槍を携えて、此方へと向かってくる。槍は横一閃の光の道を私の目の前で作る。間一髪だ。触れた毛先が僅かに燃える。

 

「部屋が壊れるんじゃないの?」

 

「ふふっ。お生憎様。…壊れてもスカーレットの財力なら何回でも立て直せるの。」

 

「あっそ。」

 

自慢は聞いていない。

私も周りに霊力弾をいくつか展開すると幼女へそれを飛ばす。幼女は天井を破壊しながらもそれを避け、外へと逃げる。確かにこの部屋は狭い。私もそれに着いていく。

 

外は薄明かり。真っ赤な月が辺りを照らしているだけだった。

 

「ここなら存分にやれるわ。我々スカーレットのおもてなしを…と言いたいけれど。」

 

真っ赤な月を背に青髪の吸血鬼は槍を持ち、胸を張る。私の横の方からうるさい声が聞こえる。見ればそこには私の親友…霧雨魔理沙の姿と目の前の幼女に似た女の子…そして…。

 

「…なんで…?」

 

…おんなじ人物だと言う確証はない。

でも、どこか懐かしい。目を疑った。魔理沙がこっちに何か言ってる。

 

「危ねえッ!!」

 

「ッ!?」

 

魔理沙のその言葉に咄嗟に頭を下げる。頭上を槍が通ったのがわかった。もう少しで首と身体が泣き別れするところだった。

 

「あら?うちのお兄様に一目惚れでもしたの?」

 

「…お兄…様…。なるほどね。」

 

異質だとは思った。

初めて会った日のことは覚えてないけれど見せてもらう魔法は全部とてつもなかったし。妖怪の山を1人で殲滅したり、天魔に一人で勝ったり…。でも、まさかこんなところで会うとは思わないじゃない!

 

「どうした?お前らしくねえぜ。」

 

「魔理沙。…そうね。」

 

ぱんっと乾いた音が響く。頬がジンジンと熱を帯びている。頭は冴えてきた。隣にいる魔理沙にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。向こうも3人横並びになる。

 

「…私はもう迷わないわ。」

 

前を見れば、黒いスーツ姿の吸血鬼が羽を広げて、歯を見せて笑っていた。目を見開いた狂気的な笑み。

 

「…アイツはやべえぜ。」

 

「知ってる。…でも、負けられない。」

 

あの人の強さは知ってる。今も不思議と冷や汗が出てくる。背筋が凍るような感覚。こちらを見通すような目。笑っているけれど目は笑ってない。…だけれど、弾幕勝負なら活路はあるはず…!!

 

「…こんなにも月は美しいのだ。」

 

…男の吸血鬼が初めて口を開く。艶やかなかつ、低い耳障りのいい声。

 

「簡単に壊れてくれるなよ?」

 

その言葉と共に私の目の前をたくさんの光弾が埋め尽くした。




咲夜戦〜スカーレット三兄妹戦へ。次かその次くらいに終わるつもり。ちゃんと宴会もやるよ!次回は誰視点で行こうかしら。では!
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