紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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紅霧異変・終

豪雨の如く…いや、流星群と言うべきか。魔法陣は夜を朝の如く照らし、瞬く間に炎が宵闇を照らし尽くす。言うなれば白夜のような…そんな感覚。茹だるような夏の暑さがどんどんと増していく。…どうするかと思ったが。

 

「ハァァァァッ!!」

 

空中を踊るかのように霊夢は火球を避けている。火球一つ一つは速度、大きさ、共にバラバラというのに。霧雨魔理沙も上手く避けている。

 

まるで既に把握しているかのように。

 

更には霧雨魔理沙は箒で避けながらなお、此方に迫り来る弾幕を張っている。牽制であるため、取り敢えず避けていく。胸を上に逸らし、迫り来る弾幕を躱わす。

 

至近距離に迫り来るのはお札を追従させる博麗の巫女。

 

火球はすでに止んでいる。有限の魔力により、魔法陣が倒壊。まるでガラスの雨が降るかのよう。

 

「鬼哭『ヴァンピールの憂鬱』」

 

魔法の次は弾幕の出番だ。

余の周りを埋め尽くすように背から現れる三重の妖気弾。まるで穏やかな海の波のように空中で揺れる。

 

「くっ!?なんちゅう弾幕だッ!!」

 

「ハッハッハッ!!…まだまだ。」

 

なんだろうか。柄にもなく、心が躍っている。踊りながらも弾幕は周りに並び揺れ広がっていく。なおも、博麗霊夢はその隙間を縫って不遜にも余の懐を取る。

 

お祓い棒から容赦なく落とされる袈裟を左腕で受け止める。左腕の肉は爆ぜ、鮮血の花火が宙へと広がる。その隙間から見える霊夢の顔は悲痛などではなく、覚悟を決めた凛々しい表情だ。

 

「痛みすらいつ頃だろうか。」

 

「ハァッ!!」

 

背後から追撃の弾幕が飛んでくる。霧雨魔理沙だ。つくづく1対2の理不尽さを感じる。霧と化し、その弾幕を突き抜かせる。その姿は朧、何者であろうと掴むことはできない。

 

「ッ!?」

 

「…そして、いつ何時でも余の場所を把握することはできない。」

 

余の目の前には驚愕の表情をする霧雨魔理沙の姿があった。背後から友人の名前を叫ぶ博麗の巫女の声が響く。右手を刃のように形作り、振り上げる。袈裟に落とされたその一撃は霧雨魔理沙の胸を薄く裂いた。

 

「あぐっ!?」

 

少女の鮮血が宙を舞う。箒から身体が落ちそうになる霧雨魔理沙。…そのまま落ちれば頭から柘榴と化す。

 

「う、うわぁぁぁっ!?」

 

「ま、魔理沙ッ!!くっ!!」

 

…案の定だ。霊夢も最高速度を出して、霧雨魔理沙を救おうと飛んでいく。そのまま地面に落ちればいくら柔らかな土であろうと岩石の如き硬さを得るだろう。

 

「ぬぁっ!?」

 

…だからこそ、考える前に手が出た。

彼女の細い足を箒に乗りながら、掴む。その布の中身は見ずに、少女は血が登る頭で考える。なぜ自身は上下逆さまで空にいるのかと。

 

「なっ!?お、お前…!!」

 

「…いつまでも粗末なものを見せるな。興醒めだ。」

 

目の前の出来事に霊夢も飛ぶ足を止める。下から此方を覗き上げるように見る霧雨魔理沙を見てもなんの感情も湧かない。このまま手を緩めて落としてもいいのだが…。殺す意味があるのか。

 

「…っ!?」

 

霧雨魔理沙は顔を赤らめ、反り返ったスカートを押さえる。人間の下着に価値などないだろうが…見ているこちらが不愉快だ。

 

「離せ、いや、離すなッ!?落ちるっ!?」

 

「ならば暴れるな。…余はこのまま手を離してもいいんだぞ。」

 

「うぐっ…。」

 

一際、力を入れてそう言い放つと流石のじゃじゃ馬娘もおとなしくなった。霧雨魔理沙の上半身と下半身をそれぞれの手で分担するように抱き上げる。…確か、咲夜が小さい時にしてくれとせがんでいたか。お姫様抱っことかいう俗的なあれだ。

 

取り敢えず、箒からおり、ゆっくりと地面へ落ちる。何故か、霧雨魔理沙の顔はりんごのように真っ赤に染まっていた。そんなドロワーズを見られるのが恥ずかしかったのだろうか。地面に降りた瞬間、逃げるように離れる霧雨魔理沙。その後ろに霊夢の姿があった。

 

「…やめだ。これ以上やっても不毛なだけ。」

 

「…なんで、急に。」

 

「殺し合いなら終わりは何方か、あるいは何方ともの絶命のみ。…遊びならどこが終着点だ。幾度となく攻撃を仕掛けようが、余には当たらぬ。…故に飽きた。」

 

「飽きたって…。」

 

霊夢がため息混じりにそう言った。遊戯は飽きたらそこで終了だ。それに…もう良いだろう。八雲紫のシナリオの上で踊った。パチュリーは喘息と小悪魔はその看病…故に乗ることはなかったが、皆が頑張った。紅魔館が一つになった。誇らしく思う。

 

「だったら、この霧、晴らしてよ。お兄…ルディウスさん。」

 

「…昔のようには呼んでくれぬのか。」

 

「いや…だって…恥ずかしいし…。」

 

酒気を浴びる霊夢の顔。とっくに絶縁されていたのか、少々寂しい。咲夜にはその言葉を矯正させたが、霊夢には要らない。博麗の巫女が妖怪の妹分となれば、格好がつかないのだろうが…それでも寂しいものは寂しい。髪をくるくると指で弄り、そっぽを向く霊夢にそう感じていた。この状況を知らぬのは霧雨魔理沙のみ。

 

「…わ、わかったわよ。早く、この霧晴らしてよ。呼んであげるからさ、お、お兄ちゃん。」

 

「“お兄ちゃん”?お前ら、兄妹だったのか?」

 

霧雨魔理沙に聞かれ、真っ赤な顔はさらに赤さを増す。小首を傾げた霧雨魔理沙に問いたい。汝の友人は吸血鬼なのかと。

 

「…この人には昔に世話になってたのよ。霊力の制御法を教わる代わりにね。だから、厄介なのはこの人は博麗の巫女の力を知ってるってこと。…だから、戦いたくなかったのよね。」

 

…霊夢が自ら余のいない間に作ったものであれば話は別だが、余は一度見たものになら対応することができる。能力故のことか、吸血鬼としての身体能力か定かではないが、動体視力がとてつもなく高い…だとかなんとか。八雲紫の言ってたことなのでよくわからん。

 

指をスナップで鳴らせば、上空の霧は瓦解。元の幻想郷の…夜空と言いたいが、月はもう姿を隠していた。

 

「さて。」

 

そろそろ寝坊助な姉妹を起こさなければ。あと、そこで寝っ転がっている門番も。…中にはメイドだって寝てるだろう。全く、後片付けが面倒だ。

 

「なぁ。なんで助けたんだ?私のこと。」

 

背中からそんな言葉が聞こえてきた。もう、皆を館内に入れねば日が昇ってしまいかねないのだが。チラリと後ろに目を向けると霧雨魔理沙は此方を一点の曇りもない眼差しで見ていた。

 

「意味などない。汝らは人間。その命は我らよりも等しく劣っている。…が。」

 

「が?」

 

「人の努力には興味がある。汝らは我ら持ちし者を超えるために、渡り合うために努力をするだろう。それを更に我々が超える。その瞬間こそが人の言う成長だ。汝とてその一端。…余の成長のために貴様を生かした、それだけだ。」

 

「なんだよ。それ。」

 

呆れたように言う霧雨魔理沙。どうせ、気まぐれ以外の何物でもないのだから。

 

「…せいぜい、余を楽しませろ。」

 

…横目で後ろの霧雨魔理沙を見てそう言った。さてと、我が天使たちを起こすとするか。いや、このまま寝かしてもいい。取り敢えず布団に入れねば。

 

「ねぇ。お兄ちゃん。…異変終わりだし、宴会の準備しておいてね?」

 

「…は?」

 

「ほら、毎回のことなのよ。紫から聞いているでしょ?」

 

初耳だ。あのスキマ女め。女狐と共に余に隠し事などと…偉くなったものだ。しかし、霊夢も今回の功労者である。酒を飲み、語らうのも悪くないのかもしれない。

 

「…となれば、あのスキマ女に少し話を聞いておかねばな。咲夜に美味い飯でも作らせよう。」

 

「わかったわ。楽しみにしてる。」

 

…口元を緩め、微笑む霊夢。どこ吹く風の如く、あの頃のような幼稚さはあるにはあるが、昔とは違い、子供というよりも淑女になりかけている。だからこそ、その頭に腕が伸びる。

 

「…あのさ。もう、子供じゃないんですけど。」

 

「幾つになろうと汝は童だ。」

 

…数秒撫でて、その場を去る。不貞腐れたように頬を膨らます博麗霊夢は下を少し向き、ほのかにその頬を赤く染めていた。…さて、宴会か。人の多い場所はそこまで好きではないが…少しは我らがここにやってきたことを知らしめるとしよう。




霊夢にとってはずっと兄貴分。ルディウスにとってはずっと妹分。でも、霊夢は素直になれないお年頃っぽいのを演出したい。咲夜はルディウス命なので。ルディウスのオタクなので。様子のおかしな美人です。

今更ですが、オリ異変とかオリキャラ多数とか苦手な人います?数人は出したりしようかなって思ってます。ルディがいずれはお父さんになるかもしれないし…。では。

恋愛展開は

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