紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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宴会前夜

…紅魔館にある魔術図書の一角。何かを考え、何かを作るのは膨大な時間の無駄なき消費方法の一つである。ソファに腰を据え、足を組み、咲夜の淹れた紅茶を飲みながら、図書を読み漁る。気がつけば月が顔を出していることもある。昔なんぞは3日立っていたこともあった。…いい思い出かは置いておいて。

 

「…血。召喚…遺伝形質…。」

 

…血を操る程度の能力。その本質をまだ理解していない。血を吸う?…吸血鬼としての給餌活動以外の意味はない。あの夢は…あれ以来見ていない。父のありし日の姿に意味はないのだろう。あったとしてももう形すら残っていない。

 

生まれた日は違えども、死にゆく姿は家族で共有する。子どもなんかがいい例だ。親の生まれた姿は見れぬが、死にゆく姿は見ることができる。故に死は誰にでも平等なのである。…血といえばの話だが。

 

「…またやったな。」

 

…紅茶からほのかな鉄分の香りがする。やめろと言っているのに咲夜は余の紅茶にのみ、自身の血を少量加える。ばれぬとでも思っているのだろうか。吸血鬼は血の匂いに敏感だ。何せ、それは餌。…たった少量でもとてつもない匂いを散布する。男ならば少し酸っぱめの…女ならば甘めの…子どもならば青臭い…老人ならば癖のある…など血も性別人種によって十人十色。特段、信頼を置いている相手にはその者の好きな甘美な味となり得る。咲夜はいい例だ。

 

余はこうして結果的には定期的に摂取を出来ているからいいが、本来、人に水が必要なように、機械に油が必要なように、吸血鬼には血が必要である。…最も、摂取しなくてもいいこともあるのだが。所謂、魔力やら妖力やらはそう言った血や肉で補給するため、衰えていくだけであって死ぬわけではない。その点は異なると言える。最高のパフォーマンスを発揮するには血が必要なのだ。…血入りの紅茶も不味くはないため、咲夜が倒れないこと以外の叱責はしていない。利用価値がある女だ。倒れられては困る。

 

「お兄様ぁ。」

 

「…飽きたか。」

 

隣で退屈そうにそう言うのは我が天使の1人…フランドールである。ぷくっと頬を膨らませ、足をブンブンとふる様はなんとも愛くるしい。抱きしめてしまいたくもなるが、今はいいだろう。…レミリアはと言うと。あれはまだ夢の中である。そもそも、フランや余がおかしいのだ。こんな日中から起きているなどと。余は咲夜に合わせるうちに、フランは余に合わせるうちにだんだんと朝方へと昇華していく。…いや、ただしくはいつでも眠れるように…か。特定の時間の縛りを持たないのは確かに良い。だが、フランの生育上…悪くないのだろうか。

 

邪な考えではない。真っ当なそれだが…まだフランは幼い。八雲紫や美鈴のように豊かになるか、咲夜のように慎ましく育つか。逆に背丈だってどのように育つか。…この時間のズレは毎日微量に出る成長ホルモンをさらに減らしていないかが甚だ疑問である。そもそも、我々は成長ではなく変体なのではないか…という話は脱線するので置いておこう。

 

どちらにせよ、500年以上という膨大な時間でフランもレミリアも成長しているのは見て取れてわかる。いつかはこの兄をも超えてくれるだろう。…その障壁はとてつもなく高いとは思うが。

 

「お兄様?」

 

「…なんでもない。」

 

小首を傾げ、此方をルビーのような目で見るフランの頭を優しく撫でる。何年の月日が経とうと変わらずこの子達は居てくれるだろう。…もし、危害を加えようとする愚者がいるのなら兄は文字通り鬼となる。

 

「さて。寝坊助を起こしにでも行くか。」

 

「うんっ!!」

 

微笑みながら頷くフランの手を握る。ソファーの上に置いておけば小悪魔が回収しておいてくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ある屋敷の部屋の中でレミリア、フランドール、余の部屋は特に間取りが変わっていたり、豪勢になっていたりなどの違いはないに等しい。ひとつ言えば、シーツやカーテンの色の違いくらいだろう。部屋の中央で権力を示すが如く、デカデカと存在する天蓋のベッドにレミリアは健やかな寝息を立てて眠っていた。外は日が天上を越えようとしている頃である。よく眠っている。久々に身体を動かしたから、疲れたのだろう。

 

「レミリア。起きろ。」

 

「ん…んぅっ…。」

 

…寝つきがいいのは良いことであるが、起きられないのは如何ともし難い。体を揺すっても起きぬとはこれ以下にと言う感じではあるが…。時間をかければかけるほど、次はフランが眠ってしまう。寝ぼけて破壊でも使われたら厄介だ。

 

「お姉様ぁ?」

 

「ふみゅっ…。」

 

ベッドの上に転がり込んだフランドールにより、その小さな鼻を摘まれるレミリア。怪訝そうな顔と共に小さく呟く。

 

「…何をしている?」

 

「んー?ほら、お姉様、なかなか起きないからこうしてればいつか起きるかなって。」

 

…力加減の知らない我が妹よ。レミリアの鼻が折れてしまっても知らぬぞ。いや、加減はしている。してなければ、案の定、鼻骨は粉微塵だ。

 

「お姉様〜。起きなきゃ、鼻、へし折るよ〜?」

 

この文言を嬉々として言うのだから495歳児は恐ろしいと思う。フランとしては遊んでいるつもりなのだろうが、レミリアとしては寝込みを襲われている。認識の違いとははてさて、怖いものである。だが…。

 

「みゃぁ…。」

 

「ぜんっぜん、起きないっ!!」

 

姉の口から出る摩訶不思議な文言にフランは声を荒げる。怒りや失望ではない、驚愕に近いな。

 

「…布団を剥ぎ取ってやれ。そうしたら起きる。」

 

「うんっ!!」

 

バサリと言う音と共に布団が上へと上がる。ふんわりと上がっていく布団の下では赤いネグリジェに身を包んだ幼き淑女の姿があった。だが、その顔は苦悶の表情だった。元来、吸血鬼は寒さに弱い。真夏であるにもかかわらず…いや、真夏だからこそ締め切った部屋の冷房が牙を向くのだ。暑さにも弱いのだからめんどくさい。

 

「レミリア。…起きろ。すでに時間は期している。」

 

「…んむぅ…。」

 

微かに開けられた瞳に見えるのは朧げな赤眼。かすかに開けられたその目は湿気を浴び、潤んでいる。

 

「置いていかれたくなければ、さっさと支度を済ませよ。1時間は待ってやる。」

 

「ふわぁぁぁ…ん…。」

 

目を手の甲で擦り、コックリと頷くレミリア。そのまま余はフランと共にレミリアの支度が済むまで部屋を出る。例え妹とはいえ、その肌を見てはいけない。見るのは小さな時のおむつ替えぐらいなものだ。

 

「フラン。汝もそろそろ新しい服でも仕立てたらどうだ。」

 

「ん?んぅ?」

 

余の首に両手を回し、左腕に尻を乗せるフランは目をまぁるくさせて小首を傾げる。フランに物欲はあまりない。というよりもお洒落や服装に興味がない。長い間地下生活をしていたせいか、話し相手にぬいぐるみを欲するだけで物欲があまりない。対して、レミリアは体裁を気にする。ドレスもネグリジェも欲しがるため、咲夜が古着から錬金術のように作り出す。パーティ用のドレスもいくつかある。…淑女としてはこちらが正解か…という色眼鏡は置いておいて。フランにも着飾って欲しいのが兄心というもの。

 

「おんなじのがいっぱいあるし。壊れたら咲夜が作り直してくれるから大丈夫だよ!!」

 

「…そうか。」

 

495歳とはかくも幼き心の持ち主だったか。無邪気なのか、閉じ込められたゆえか。どうでもいい。フランがしたいようにすればいい。彼女の頭は余の右腕によって撫でられる。毛並みが柔らかなのは咲夜の努力の賜物だろうか。目を閉じて微笑み、甘んじて受け入れる姿は小動物のようだ。

 

「何してるのよ。」

 

ガチャリと開かれたドアからいつものナイトキャップが見える。身支度を終えたレミリアが不機嫌そうな顔で立っていた。

 

「別に〜!!」

 

八重歯を見せてフランドールが笑い、そう言う。そっけなくレミリアは返事を返すと余の隣に立つ。

 

「早く…行くわよ。お兄様。」

 

「あぁ。」

 

誰を待っていたと…などと言う野暮なことは言わん。レミリアは吸血鬼だ。この時間は眠っていて当然…言わば此処からが本領なのである。黄昏から太陽が身を隠し、空はすでに漆黒の闇と化していた。

 

「行くぞ。」

 

紅魔館にはパチュリーとか悪魔を残して、美鈴を連れ、向かうは博麗神社。そう、今宵は…宴会なのだ。




戦闘全振りだから、日常会がむずいんじゃ。
モチベはある。リアルでやることが多いのじゃ。
と言い訳はいっぱい出てきますが、遅れた事実も事実。まぁ、不定期だけど永く待って頂きたい。ごめんなさいね。

割と恋愛描写に肯定派の人もいれば否定派の人もそこそこって感じでアンケート見てて面白いです。求めているものが違うのですねと。何度も言ってますが、兄上から好き好きってなることはレミフラぐらいなもんです。最凶のシスコンですから。これから加速させていきます。そのメチャクチャな強さも。宴会は前後半か、すぐ終わるか。宴会終わったら何しよう。異変にシフトチェンジは冬なんだよなぁ…あれ。では。

恋愛展開は

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  • いらない
  • して欲しい
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