紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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突然の…


宴会・後編

「あら。久々に会えると思ったけれど。吸血鬼様は女侍らせて酒三昧かしら。」

 

…嫌に耳に残る声だ。盃に残った美酒を飲み干し、目を開く。赤いチェックの服を着た女が口角を上げてこちらを見ていた。その姿は忘れろと言うには衝撃的すぎる。

 

「…まさかとは思うが、汝が花畑から離れるとは。どういう風の吹き回しだ。」

 

「あそこは夜は闇に紛れるからね。誰も来ないというよりも誰も来れないと言った方が正解なのよ。」

 

花の大妖、風見幽香。

咲夜や霊夢をも前に柔和な笑みの中にも殺気を隠さない。隠し味としては多量すぎる。レミリアやフランもその女に対し、睨みを向ける。だが、羽虫のように相手されていない。

 

「霊夢、咲夜。離れろ。」

 

「…わかった。神社、壊さないでよね。」

 

霊夢はその言葉と共に離れていく。咲夜はすでに泥酔だ。美鈴に引き渡し、三度、風見幽香と相対する。

 

「八雲紫。」

 

「はいはーい!!なぁに?主人様。」

 

「…念の為だ。我らの攻防に適した結界を張っておけ。」

 

間抜け面を晒しながら、現れる八雲紫。その言葉を聞いた途端、彼女の顔から笑みが消える。博麗神社はこの郷の要。…壊されるわけにはいかないのだろう。僅かな殺気が滲み出ていた。

 

「案ずるな。壊さぬように善処する。」

 

「それならいいけれど。」

 

八雲紫がその場から消え、姿を別場所へ移す。周りからは何やら強い力を感じる。結界だ。

 

既にあちらは臨戦体制である。

 

「宴会なんでしょう?…こういう余興も大切じゃない?」

 

「…急に来て知ったような口を。」

 

…まあ良い。ぬるい夜風では多少酔った頭は覚醒せぬ。首を気だるげに回し、骨の音を鳴らす。大衆の前での喧嘩など久々だ。心が湧く。

 

「…壊れるなよ?」

 

「そっちこそね。」

 

直後、地面が爆ぜるような音が響き渡る。爆風と共に余の鼻頭を薙ごうと傘が横に線を描く。

 

胸を上に晒し、外す。左拳に力を固め、跳ね上がる反動と共に一気に撃ち抜く。

 

「ッ!!」

 

風見幽香は即座に対応。傘を逆手に持ち、その中腹で拳を受け止める。が、奴の身体はそのまま地面を滑る。足から砂塵をあげながら、後ろへと。

 

地面を蹴り、前から向かっていく。風見幽香は花の大妖。たった一撃の打撃では膝すらつかない。

 

いつのまにか持ち替えた傘の先端が余に向かってくる。首を少し傾け、外すも左の目尻が僅かに裂ける。しかし、余も前と右足による足刀を放っている。風見幽香の頬が僅かに切れ、此方も鮮血を散らす。

 

直後、風見幽香が左拳を振りかぶり、そのまま余の胸へと放つ。

 

「ふんっ!!」

 

胸の前で腕を交差し、受け止めるが…衝撃までは逃せない。余の体は先ほどの風見幽香のように、後ろへと吹き飛ばされる。

 

「早速だけど消えてもらうわ。」

 

その言葉と共に傘の先端がこちらへと向かれる。予備動作もなく現れるのは霧雨魔理沙のマスタースパークが如き極光。余興だと聞いていたが、これは完全に此方の命を狩りに来ている。全く…。

 

「お互い不器用なものだなァッ!!」

 

空中から玄天を落とし、地面に突き刺す。

 

「『斬風(ルドラ)』ッ!!」

 

数を指定しないことで吹き荒れるのは無数の風。それが光の束を切り刻み、此方への進行を無くす。実際、それによって結界内外問わず暴風が吹き荒れる。周りからの悲鳴には聞く耳を持たぬ。

 

光の束が止むと即座に玄天を引き抜く。風を纏った刀身。そして、後ろから吹きつく風が背中を押す。

 

一瞬で風見幽香の前へと飛び込み、玄天を袈裟に落とす。

 

「ぐっ!?」

 

ガードは間に合わない。鮮血が目の前に散る。…が、流石だ。半足引き、ダメージを刃を浅くとどめている。

 

「あら。胸が裂けちゃったわ。傷が残ったら責任とってくれるのかしら。」

 

「…風で風化させたはずだが。」

 

風化侵食。それにより、人の肌は瓦解を始める。どんな生き物でも風化し、塵と化す…はずだったんだが。思ったよりも力を抑えすぎたか。相手は微笑を浮かべながら軽口を叩く。

 

「汝が売った喧嘩だ。多少の傷など構うものか。」

 

「あ、そうッ!!」

 

即座に目の前から花びらのような弾幕が飛んでくる。風を纏っているため、構いやしない、そのまま突っ込む。周りから風によって散らされ爆発した弾幕の黒煙が上がる。

 

視界が消されても余には匂いがある。

 

「…なに。」

 

突っ込んだ先には何もない。匂いだけが残っていた。風見幽香の妖力の残り香だけがそこに残っていたのだ。滑稽だ。一度でも敵から目を背ければ…。

 

「貰った…ッ!!」

 

…その言葉と共に傘の先が振り向いた余の左眼球を貫く。ぶちゅりと言う音と共に左目から血涙を流す。その左目が最後に捉えたのは歯を剥き出しにして笑う風見幽香の姿。…撹乱と共に自分の力を軽んじた余の浅はかさがそこに現れていた。

 

「貴方から視界を奪っても無駄。だからこそ、その鼻を利用させてもらったわ。」

 

左目を押さえ、後ろへとゆっくりと進む。退くと言った方が近い。すぐ回復するとはいえ、痛みはあるのだ。…微かだが。

 

「…やるな。…花びらで分身を作るとは…。」

 

「匂いだけね。妖力を最小限抑えれば、貴方の裏を描くことなんて簡単よ。」

 

浅はかだった。自身の力に溺れた己が滑稽だった。

 

「終わりよ。負けときなさい。」

 

「…くくくっ。」

 

振り抜かれた傘による刺突。余の喉笛を穿ち抜かんとするそれは霧となった余を捉えることは不可能だ。風見幽香は直後、傘を横薙ぎに背後へと振るう。…しかし、そこにはもちろん何もない。

 

「…余は負けることを許されていない。」

 

「ッ!!」

 

「例え、どんな遊戯であろうと。」

 

…妹らの前で無様な醜態は晒せぬ。左眼球の穴に自身の左人差し指を入れ、引き抜く。生ぬるい感触と共に血の香りがあたりに充満する。

 

「緋弾『吸血鬼(ヴァンピール)の号泣』」

 

実際、目の血でやるのは初めてだ。フランとの修行の際に指が取れて、そこから血を操ることには成功している。血の弾丸を空へと放つ。

 

直後、空から真っ赤な雫型の弾幕が所狭しと落ちてくる。

 

「雨には傘ね。」

 

涼しげな顔で持っている傘を本来の用途で空へと刺す風見幽香。…だが、それが狙いだ。地面を蹴り、距離を詰める。

 

「…片目一つが無くなったとて余は止まらぬよ。」

 

「…なるほどね。」

 

傘を前へとやれば弾幕の雨の餌食に、上へとやればそのまま余の打撃を喰らう。容赦はしない。そんな不自由さも楽しむのが戦闘である。ただ狂者たれ。拳を握り固め、そのまま前進。風見幽香に向かって放つ。

 

「うぐっ!!」

 

風見幽香は咄嗟に反応。腕を間に入れて受け止めるが、腕からは余の耳にも聞こえるほど鈍い音が聞こえた。血の雨が晴れたと同時、風見幽香は距離を離そうと後ろへ飛ぶ。

 

「…鬱陶しいッ!!」

 

…風見幽香は憤りと共に目の前へ傘を横薙ぎに振るう。距離を離そうとしてもなお、余がその距離を保とうとするからだ。鈍器にも刃物にも見えるその傘を喉元を喰もうとするその先端を右手で握る。

 

「ッ!?」

 

口角が上がる。

この女の凶暴性は理解している。だからこそ、捕まえたこの一瞬が如何に自分にとって好気なのかは激しく理解している。

 

「共に踊ろうぞッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

迫り来る拳打に風見幽香は右手を離し、即座にガードをする。余の右手は一撃で3発ねじ込むことができる。それを全てガードしようと言うのだ。交差した彼女の腕からは血飛沫が舞う。

なにせ、片腕が使い物になっていないのだ。その状態で余の打撃を受け止めようなどと愚の骨頂である。

 

「…くっ!!」

 

たまらず、風見幽香は足払いをかける。だが、それすらも読める。傘を奪ったまま後ろへと跳び、それを回避する。

 

「…返しなさいよ。私の傘。」

 

「悪いが、日が登った際に便利なのでな。少し借りておこうと思っている。」

 

「泥棒蝙蝠。」

 

買い言葉に売り言葉。風見幽香は息を整えつつも、地面を蹴り、お互いの距離は何度目かに縮まる。迫り来るのは徒手。固められた拳が余の鼻頭を目掛け、迫り来る。この距離だ。完全に避けることは不可能である。であるため、頭を少し下げ、額で受け止める。

 

額と拳から血が吹き出す。両者割れたか。しかし、この距離は悪くない。風見幽香の腕を両手で取り、そのままへし折る。

 

「ぐっ!?」

 

鈍い音が再び聞こえ、あらぬ方向へと風見幽香の腕が向く。

 

「両腕使えずじまい。それで何をすると言うのだ?」

 

「…こうするわ。」

 

されど、風見幽香の目から光は消えない。跳ね上がった足先が余の顎を狙う。残念ながら当たってやれぬ。後ろへと跳び、追撃に備え、剣を構える…が。すでに風見幽香はボロボロである。

 

「…やめだ。今回は余の勝ちだな。」

 

「…手足もがれても動けはするけどね…。」

 

…清々しく笑いながら風見幽香は立ち上がる。すでに折れた骨は繋がり始めているだろう。しかし、これ以上は博麗神社の倒壊を招く。目も回復してきた。片方の視界は真っ赤に掠れているのが少し珍妙である。

 

「ご主人様っ!!」

 

主人の珍妙な動きに従者は支えに来る。ふらつくのは視界不良による影響か。咲夜の細い腕が余を支える。…まだ、修行が足らん。

 

「偉く酔っていたのに。機敏なものだ。」

 

「主人のためなら酔いも醒ましますわ。それが従者ですから。」

 

そう言ってほのかに赤い顔で微笑む咲夜。

 

「…叫んだ。動いた。だからか、喉が渇いた。」

 

「お酒なら常備しておりますわ?」

 

差し出された酒を喉に流す。ほのかに香る鉄臭さは今宵は気にしないでおこう。

 

「さぁ、皆んな。飲み直しよっ!!」

 

霊夢の声に周りが湧き立つ。トランペットとバイオリン、キーボードの演奏と共に人々が騒ぐ。普段ならこんなもの、煩わしいとしか思わなかった。

 

「ご主人様?」

 

「…いや、なんでもない。」

 

小首を傾げる咲夜を横に盃を空にする。…まぁ、こんなのも、悪くはないだろう。




バトルが書きたくなってもうた。
兄上はだんだん柔らかくなってる…気がする。そろそろ非情になってもらわねば。因みにオリキャラってどこまでが気になります?参考までに。

少し日常会をやりましょう。白狼天狗回、文回、紅魔館組回、れいまり回、八雲家回などなど。やれることは多いですから。不定期なので投稿遅めですがよしなに。
ではでは〜

恋愛展開は

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