紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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門番vs白狼天狗

「…精が出るな。」

 

「うわっ。びっくりした。」

 

紅魔館の玄関門。そこには中国妖怪の紅美鈴が門番をしている。今日は妖怪の山に行く用事があるゆえにぶらりと寄ったが、太極拳を舞っていた。

 

「普段のように眠っているかと思ったが。」

 

「休息は大事よ。まぁ、侵入者の影があれば起きれるようにはできてるわ。」

 

豊満な胸を張ってそう言う美鈴。門番が寝るなと言いたいが、咲夜もこの口八丁にいつもやられている。実力は確かなのだが…。

 

「しかし、対人がなければその腕、鈍るのではないか?」

 

「あら。修行に手伝ってくれるの?…でも、アンタとやってもボロボロになって終わりじゃない。やだやだ。」

 

そうは言うものの美鈴の口角は少し上がる。余の家族は皆戦闘狂だ。いや、パチュリーと小悪魔は違うか。しかし、美鈴からの提案も魅力的だ。久しくやっていない。体も鈍る一方であるが…今日は違う。

 

「いや、天魔から白狼天狗の教育を任されていてな。今日はちょうどその日だが、白狼天狗は飛び道具をあまり持たぬ。正面からなら汝が適任だろう?」

 

「へぇ。いいじゃない。腕がなるわね。」

 

…ニヤリと笑う美鈴。だが、此奴は…腕力だけなら鬼といい勝負なのではないだろうか。それほど格闘技術には並外れた才がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは実戦だ。」

 

妖怪の山に奇妙な光景が広がる。吸血鬼の前に白狼天狗が数百名。その中心として犬走椛、犬走浅葱の姿もあった。忠誠…などというやわなものはない。あるのは敵意。もはや清々しいまでのだ。

 

「…すいません。ルディウスさん。玄天の意味を何度説き伏せても、聞く耳持たずで。」

 

申し訳なさそうにそう言うのは山の実的な最高権威…天魔。横からそういう奴に対して返すのは笑み。

 

「余を殺すというその敵意。だが、それは威勢だけ…その剣は余の首にかかるまでもなく潰える。」

 

「…なに。」

 

犬走椛の視線が更に鋭くなる。尖ったそれは周りの緊張感を際立たせる。ピストルを引けば、刀を握って此方に前進してくるだろう。同じく浅葱もだ。この両名、とても鍛えられている。

 

「が、故に惜しい。恐らく汝らは我が首を取ることは決して叶うまい。ならば、余ではなくこの女ならばどうだ。」

 

横の美鈴を見る。美鈴は前へと歩いていくと足を肩幅ぐらいまで開き、構えた。まさにやる気だ。集中を表すように口から息を吐き、整える。

 

「…なぜ、その女を。」

 

「この者、紅美鈴は紅魔館が誇る門番だ。実力は対面であれば堅牢。さて、この女を倒さねば余の元へ躙り寄り、刃を振るうことすら叶わぬ。」

 

浅葱に言葉を告げる。特に敵意を隠さぬ2人。彼女らがリーダー、副リーダーなのだから仕方ないのかもしれない。美鈴の目が鋭くなる。周りの空気が一転して低くなったかに思えた。美鈴も主人に敵意を向けられている現状に憤っていると良いが…おそらくそんなことはない。やるからには本気を…そんな女だ。

 

「二対一…でもいいわよ。」

 

「ならば。」

 

「我らが。」

 

美鈴の挑発に2人が乗る。隊の前に出る動きは瓜二つ。一挙手一投足、全てが表裏一体。

 

「はじめッ!!」

 

天魔の声と共に犬走椛が地面を蹴り抜く。次いで、犬走浅葱。2人して駆け抜け、美鈴の周りを反方向に回る。美鈴は目を向けるが一足も動いていない。

 

「ハァッ!!」

 

地面を蹴り、飛び出たのは犬走浅葱。美鈴の背後から袈裟に刀を振るう。完全にとらえた。…だが。

 

「ハッ!!」

 

「くっ!?」

 

美鈴の肘撃が犬走浅葱を捕らえた。カウンターのその一撃に犬走浅葱は盾を間に入れるも盾ごと後ろへ吹き飛ぶ。

 

「ガァッ!?」

 

そのまま地面を背中で滑り、砂埃を上げる犬走浅葱。しかし、美鈴の目は背後を向いている。要は逆に、美鈴の正面からの一撃が死角からの一撃となり得るのだ。そこを狙うのは犬走椛。

 

「ッ!!」

 

椛の切先が天から振り下ろされる。

次の瞬間、吹き飛んだのは…死角を取ったはずの椛であった。

 

「…あの一瞬で鳩尾に入れるか。」

 

「ええ。ですが、椛も衰えていない。」

 

拳を前へと突き出す美鈴。だが、その頬には縦に一線…赤い線が付いていた。美鈴は小さく息を吐く。

 

「ウォォォォッ!!」

 

遠吠えと共に背後から現れる犬走浅葱。瞬時に懐へと入り、下から上へと刃を跳ね上げる。速さだけなら犬走姉弟の方が上である。腹から胸へ。鮮血が空に飛ぶもそれは少量。執念の刃は美鈴にダメージは与えるも、それだけ。

 

地面に強く足を踏みつけ、そのまま犬走浅葱に掌底が打ち出される。

 

「ぐぅっ!?」

 

犬走浅葱の身体が吹き飛んでいく。口からは鮮血を吹き出し、そのまま後ろの大木に頭から突き刺さる。代わりに前に出てくるのは犬走椛である。

 

「うぉぉぉッ!!」

 

上から振り落とされる斬撃。犬走椛のその一撃を美鈴は手首を掴んで、受け止める。

 

「ッ!?」

 

犬走椛の顔が青ざめる。…次に何が来るかはどんな愚者でもわかるだろう。振り上げられた拳が犬走椛の顔面に迫り来る。盾は間に合わない。

 

「グハッ!?」

 

その一撃が効き過ぎた。美鈴の手首を受け止める手が緩まると、犬走椛は口から血を流しながら、膝から崩れ落ちた。犬走椛を心配する声、悲痛な叫びが辺りから広がる。

 

「ここまで一方的とは…。」

 

隣の天魔が声を上げた。

 

「…美鈴の体術が達人の域であるのは確実だが、犬走姉弟は攻めることしか考えていない。対して美鈴は門番だ。守らざるを得ない立場、守ることを戦闘から切り外せない。…プライドや矜持も大事だが、自身の立場を理解できぬ者に勝機はない。」

 

白狼天狗が山を守る立場ならば、それを切り外して考えているうちは何者にも勝てない。…しかし、瀕死の弱者ほど怖いものはない。プライドを持った者ほど足掻くのだ。愚者ほど足掻く。

 

「あ゛ァァねうえ゛ェェェッ!!」

 

咆哮と共に大木から砂塵が宙に舞う。頭から血を流し、右目を鮮血で覆う犬走浅葱が左手に剣を構えて、突撃してくる。彼らにはこれは試合でもなんでもない。戦闘…殺し合いだ。

 

「ガァァァッ!!」

 

「ハッ!!」

 

血反吐を吐き、振り落とされる一刀。美鈴は地面を蹴ってその場から後ろへと跳ぶ。

 

「ハァ…あねう…えっ…。」

 

「…浅葱…私たちは…。」

 

すでにボロボロな犬走椛が立ち上がる。口元左から血が垂れ、足元はおぼつかない。負けたくないという執念で立っているも同義である。弟の方も、掌底によって骨は逝っているだろう。頭からもまるで目元を覆う仮面をつけているかのように血が覆う。

 

「…私たちは…妖怪の山の…白狼天狗…。その…トップ2だ…ッ。腕が千切れようが…目が潰れようが…何もせずに…倒れることは…許されないッ!!」

 

「…姉上…。次が…最後の特攻です…。」

 

「喰らいつけ…!!たとえ…首だけになっても…ッ!!」

 

その言葉を皮切りに2人は地面を蹴り、走っていく。向かう先は美鈴。美鈴も臨戦体制で迎え撃つ。犬走浅葱は盾を捨て、左手から右手に剣を持ち替えていた。

 

ただ上から振り落とされる斬撃。犬走浅葱のそれを美鈴は容易く、胸を逸らして避けていく。カウンターのために拳を握り込む美鈴。しかし、次に美鈴の顔から笑みが消えた。

 

「ぐっ!!」

 

足に刀身が突き刺さっていたのだ。犬走浅葱の剣が突き刺さり、血が足から流れ出ている。勝ち誇った顔の犬走浅葱の頬を拳がめり込み、横へと吹き飛んでいく。美鈴は足から剣を抜くが、その一瞬は美鈴の命取りとなる。

 

「ハァァァァッ!!」

 

「ぐっ!?」

 

遅れて振られる一刀。それが視線の落ちた美鈴の身体を袈裟に捕らえた。それは決して深くないものの、この戦いで犬走姉弟の放った攻撃の中では確実性を持っていた。執念の斬撃…その一刀と共に犬走椛の身体が前のめりに倒れる。

 

「これは…。」

 

「そこまでッ!!」

 

天魔の声に周りの白狼天狗が集まる。血みどろになった2人を心配する声に溢れた。…もはや、ここに我らの居場所はない。

 

「美鈴。帰るぞ。」

 

「…はいはい。あー、痛い痛い。肩貸してよ。」

 

その程度で痛がるような奴ではないとは思うが…。現に痛そうな顔はしていないし。まぁ、それぐらいはしてやろう。

 

「どうだった。」

 

「執念とプライドは凄かったわ。実力の無さを後押ししている感じ。…だからやられた。ちょっと悔しい。」

 

そうボソリと言う美鈴。

 

「まぁ良い。今日は室内で休め。咲夜には言っておいてやる。」

 

「あら嬉しい。血流した意味あったわ。」

 

…休みのためなら怪我でもするのかと言いたいが、それは良いだろう。ゆらゆらと飛んで行き、紅魔館に着いた時に咲夜にすごく問い詰められたが、それは別の話である。




最後は適当ですわ。
戦闘描写は凝ってるようにしてるけどもっと色々見て考えないとね。では。

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