紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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※独自解釈注意


スカーレット家

吸血鬼とは本来ならば恐れられる存在である。

かつて…圧倒的な残虐性の元にドラキュラ公と呼ばれた人物がいた。その直系と呼ばれるスカーレットにはいくつか分家がある。

 

方や人間との間に生まれた半吸血鬼。方や同じ名家に生まれた正真正銘の純血(サラブレッド)。そして、スカーレット家同士で生まれた…近親交配。父親が娘を…祖父が孫を狙い、孕ませる吸血鬼も多くはないが居なくは無い。人の形をする異形とはそういうものなのだ。

 

「…あーあ。壊れちゃった。」

 

英国にある某廃墟。死屍累々の中で男は笑っていた。韓流アイドルのような綺麗な顔にはべっとりと鮮血がついていた。肩甲骨から生える片翼。皮膜はズタズタに切れている。比喩では無く、本当に。

 

ニヤリと笑いながら八重歯を見せるその手には紅色に染まるタクティカルナイフが握られていた。

 

「腕が立つって言ってたからさぁ…。期待してたのにぃ。…これじゃあなぁ。喉すら乾かないよっと。」

 

舌を伸ばして、そのナイフを舐める。血を舐めとるように。廃墟に寝転がる死体の数々は全て…傭兵であった。政府が彼1人を止める為に残した2000人余。それを…歯牙にもかけずに壊滅させた。

 

「おじさんがぁ。結婚を許してくれたんだ。…レミィ…フラン。フィアンセが迎えに行くよ。でも、それにはアレを倒さなきゃ。スカーレット家の“最高傑作”ぅっ!!」

 

嬉々としてタクティカルナイフをぶん投げる。その刀身は宙でぐるりと一回転し、写真の眉間に突き刺さった。その写真はルディウスが写っていた。

 

「吸血鬼は写真に映らないって言うから描かせたんだけどぉ…やっぱり良い男だよねぇ。でも、彼女に群がるイケ男は俺1人でいいからさぁ…。消えてよ。お義兄さん?」

 

…そのまま歩いていき、タクティカルナイフを下へと下ろす。一撃の元に半分となった紙と壁。そして、そこから月明かりが照らすとともに、後ろから銃口が向く。…まだ生きていた。生きていた1人の男がマシンガンのトリガーを握る。

 

「死ねッ!!化け物がぁッ!!」

 

「キミ、生きてたのぉ。…お人形は壊れちゃぁ…ダメだよ?」

 

その銃弾に対して目の前の吸血鬼は目を見開いて、刃を剥き出しにして笑っていた。銃弾が肉を食む。鮮血が月光に照らされて室内に飛び散る。グチャリグチャリと音を立てる中、吸血鬼はただ歩く。

 

「運命ってさぁ…良い響きだよね。運命の出会い、運命の恋、運命の2人。そんな希望があるから絶望もより湧き立つ。…そうじゃなぁい?」

 

「ひっ!?」

 

…すでに銃弾は打ち尽くした。辺りには硝煙と血だけが残っている。耳元から囁き声が聞こえるのが男にとっては絶望そのものだった。次の瞬間、右の顳顬を指が貫いた。男はそのまま絶命。吸血鬼はその指をしゃぶり、ケラケラと笑う。

 

「同じスカーレットで生まれた運命。ちょぉっと…強いお兄ちゃんがいるみたいだけど…恋は壁が大きければ大きいほど燃えるからさぁ!!…さいっこうじゃない?」

 

倒れ骸と化した男にそう問う吸血鬼。もちろん、答えなど返ってこない。銀髪が月明かりに照らされる。恍惚の笑みとそのオッドアイ。黒い目と赤い目。

 

「…さいっこうのハッピーエンドを作り出そうか。…レミリア…フランドール?」

 

そう言って吸血鬼は廃墟から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「やいっ!!吸血鬼ッ!!」

 

…異変後、霧の湖を歩いているとあの3人に絡まれることが多い。そして、学習のしない阿呆どもは余を見るなり積年の恨みを晴らそうとする。

 

「また貴様か。」

 

周りが冷気に包まれる。耳障りな声が耳に響くと同時に目の前から氷柱のようなものが此方へダーツの矢のように向かってくる。

 

「…全く、躾がなってないな。」

 

…地面を蹴って後ろへ跳び、避ける。単調なその技は肌を喰むことすら不可能である。声のした方に弾幕を飛ばすと直後、悲鳴と共に視界を覆う白霧が晴れた。そこにいたのはやはりあの3人である。匂いでそんな感じはしていたが。

 

「常闇の妖怪。貴様はまだ話が通じるだろう?」

 

「…お前は私たちを殺す気か?それなら容赦しない。」

 

金髪の娘はそう言うと異様なまでの殺気を出した。この女は“匂い”が非常に濃い。多くの血肉を喰らい、そして、見た目以上に力を隠している様子が窺える。生命としての危機感が彼女に正常な判断能力を与えているのだろう。

 

「貴様、力を著しく封じ込まれているな?本来ならばもっと強いだろう?」

 

「…だからなんだ。」

 

「その封を壊してやろう。汝とならば、久方ぶりにいい殺し合いが出来るだろう?」

 

…この女は今のままでは弱すぎる。自身を高めるための近道は強者に揉まれ、抗う道を探すのみ。そのためにはいい殺し合いが必要なのだ。ただの蹂躙ではダメだ。味が薄すぎる。もっと濃厚でなくてはならない。

 

「弱者との戯れも大事だが、力を得れば怯えずに済む。そうすればもっと力を手に入れられ、弱者を虐げ、更に血肉を得られる。弱肉強食とはそういうことだ。」

 

「…悪くない。」

 

「ルーミアちゃん?」

 

ボソリと呟いた言葉に緑髪の妖精が心配そうな声をあげる。腐っても我々は妖怪。ただいたずら好きな妖精などとは価値観が違う。恐怖に対する渇望、殺しに躊躇などしない。返答は火を見るより明らかだろう。…だが。

 

「でも…お前なんかの意見は聞きたくない。」

 

「…哀れな。」

 

返ってきた答えと共に周囲が暗闇に染まる。金髪娘の目が怪しく赤く光り、髪がゆらゆらと上がる。…前言撤回か。風見幽香や八雲紫などの大妖怪には遠く満たないがそれでもなかなかやる。

 

「私はお前が気に食わないッ!!」

 

「くだらぬ妄言を垂れ散らかすな。生物として勝てぬことなど貴様をわかっているだろう?」

 

極彩色の弾幕をスマートに避けていく。さっきの氷精とは比べ物にならないが、拙さはある。

 

「時間とは有限である。暇な時間を浪費できるだけで悪くはない。」

 

「何を…!?」

 

金髪娘の懐へと入る。闇が視界を埋め尽くすが、結局は匂いで位置を把握できる故、無意味と化した。そのまま金髪娘の懐目掛けて膝を入れる。鈍い音と共に軽く吹き飛ぶ感覚があった。

 

闇が晴れるとそこには口から涎と血を垂らしながら地面に伏せる金髪娘とそこに駆け寄る緑髪の姿があった。

 

「ごっ…ふっ…!!」

 

「ルーミアちゃん!!」

 

…やはり封印された状態では力の差は明白だ。余に牙を向いたその度胸に銘じて、切り捨ててもいいが。

 

「…ん?」

 

「つ、次は…わ、私が相手ですッ!!」

 

金髪娘の元へと行こうとした時、余と金髪娘の間にあの緑髪の妖精が立ちはだかった。…が、お世辞にも何かできるとは思えない。膝は内股、ガクガクと震えておりその目には涙が溜まっている。

 

「ごふっ…大ちゃ…。」

 

後ろの金髪娘が声を上げる。だが、その声はしゃがれており、音圧もあまり感じない…か細い声だった。

 

「…くだらん。」

 

目の前にいるのは気絶済み、死に体に弱者。こんなものに割く時間など余には存在していない。…が、ここで死なれても霧の湖の見た目が悪くなってしまう。紅魔館の周りが汚れてしまう。

 

「仕方ない。…緑髪。」

 

「は、はいっ!?」

 

「貴様は氷精を連れてこい。紅魔館で治療してやる。」

 

そのまま金髪娘を抱き上げる。

 

「ひゃっ!?な、なにをっ!?」

 

「…妖怪だから心配はないだろうが、ここに居られるよりはマシだ。紅魔館で治療してやる。」

 

何やらギャーギャーと騒ぐ金髪娘をよそに紅魔館へと飛んでいく。どうせ、妖怪だから大丈夫だろうが…ここで野垂れ死なれても面倒だ。紅魔館なら別に殺しても構わない。

 

「行くぞ。」

 

「は、はいっ!!」

 

…緑髪は恐怖からか付き従っている。力の差はわかっているんだろう。…ならば、気にする必要もない。取り敢えず向かうか。

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