紅魔ノ兄   作:紳爾零士

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ルディウス視点に戻ります。
※自己解釈だらけ、お気をつけて


春雪異変・終

真っ二つに裂かれた巨大樹を背に、ダーインスレイヴを握る。違和感。…これほどしかないのであれば、八雲紫が怖気付く必要性は感じない。恐らくは…。

 

「貴様を壊せば、西行寺幽々子は消える。…違うか。」

 

返ってくるのは忌まわしいほどの轟音。ヒステリックなその叫びとともに再生した樹皮からはとめどない弾幕が出される。もはや、ルールなど皆無。それは相手の首を落とし、命火を刈り取るもの。ならば、此方も手段は選べぬ。

 

「『Dáinsleif・(フュンフ)』」

 

魔剣は巨大な盾となる。

弾幕をいくら食らっても欠けも汚れもしない代物だ。避けるよりも受け止める方が楽だと考えた。だが、流石の弾幕。圧力が違う。何せ、これは当たれば死ぬ。対策必死、個々が一撃必殺の弾幕なのだから。

 

「…『食い破る』」

 

後ろに指を這わせ、空間を手刀で切り裂く。簡易的ではあるが、スキマの完成である。その中へと身体を入れると、突如として大樹の死角へと身体を移動させることができる。

 

「少し苦手だが、見せてやろう。『滅冬(ハーデス)』」

 

…目の前に螺旋を描きながら根が迫ってくる。ダーインスレイヴを間に入れ、ガードするが、その一撃は重く、身体は後ろへと吹き飛ばされる。

 

だが、奇声を上げるのは巨大樹の方である。当たった根の先端から白く…そして、凍りつき、朽ちていく。

 

「ご主人様、ご無事ですかッ!!」

 

「誰に聞いている。…八雲紫!!」

 

目の前にスキマが開かれるとそこから結界が広がる。現れるのは幻想郷の賢者、八雲紫。傘をさして現れるも、その顔には般若が宿っていた。

 

「…ここには来るなと言ったはずよ。…まぁ、貴方がはいそうですかと聞くわけないと思ったけれど。」

 

「一つ問う。あれを壊せば、西行寺幽々子はどうなる?」

 

大体の予見はしてある。あれは命が形作ったまさに狂気の大樹である。吐き気を催すほどの邪悪な臭いを鼻に感じている。

 

「…恐らく、消滅するわ。それに数えきれない人の精気を吸っているから…ずっと回復し続ける。貴方の力でもあれは衰えていない。それに…時間がない。満開になれば2度と幽々子は現れない。」

 

「なるほど。では、誰かが封印しなければならないわけだが。」

 

封印。その言葉が意味することは皆わかっているだろう。博麗霊夢に視線が集まる。霊夢もそれをわかっていたのか、眉間に皺を寄せて、考える。

 

「…確かに可能よ。でも、すぐには無理。あれほどの大きな妖怪…完全に封印するには2分は必要。」

 

「2分でいいのだな。」

 

ダーインスレイヴを大剣に戻し、前を見る。氷の呪縛から解き放たれようとする妖怪桜は悲痛な奇声をあげながら、地面を穿ち抜くかのように根を張り巡らせていた。まさに大暴れである。

 

「無理よッ!!いくらお兄ちゃんと言えど、あんなのと…!!それに…弱らせる必要だって「誰に言っている。」…ッ!?」

 

…周りが緊張感に包まれる。あの八雲紫でさえ、額から汗を流すほど。並の妖怪であれば卒倒するほどの…妖気。無論、出しているのは己であるが。右目を見開き、霊夢を見る。

 

「…余に不可能はない。貴様、自分の仕事に注力しろ。不可能とは決めつけでしかないのだ。人は不可能と言われた空へと旅立ち、勝つことなど世迷言と信じられた病にも打ち勝った。…今ここで不可能を可能としなければどうせ死ぬ。なら、立ち向かうまで。」

 

次の刹那、大きな破裂音が響き渡る。結界に西行妖が根を打ちつけ始めたのだ。既にカウンターとして放った滅冬も機能を停止している。苦手なのもあるが、やはり長年生きた妖怪は格が違う。

 

「お喋りはここまでだ。余を信じろ。」

 

地面を蹴り、結界を突っ切る。

 

割れた音と共に頭上から根が落ちてくる。

 

「ふんっ!!」

 

ダーインスレイヴはそれを真っ二つに叩き切る。根は落ちると同時、地面下で朽ちていき消滅する。

 

「魔器『レーヴァテイン』ッ!!」

 

右手にダーインスレイヴ、左手には炎の大槍『レーヴァテイン』を呼び出し、そのまま巨大樹の懐へと飛んでいく。

 

西行妖はそんな余を脅威と思ったのか、樹皮から細いレーザー砲をいくつも打ち込んでくる。避けきれぬ…いや、避けられぬものだ。

 

「素晴らしいッ!!素晴らしいぞッ!!妖怪樹ッ!!」

 

それは文字通り、余の体を切り裂こうとするも余の体は霧散。霧となり、レーザーの照準が合わない懐間際へと飛んでいく。

 

嗚呼、これほどまで怖気付くのも久しぶりだ。当たれば死ぬ。死にたくない。そんな人間のようなことを覚えるなど…幾年、いや、初めてのことだ。死ぬのが怖すぎて…口角が上がってくる。恐怖が享楽へと変わる。

 

「汝もそうだろう?嫌だろう!!負けるのはッ!!」

 

レーヴァを樹皮に這わせ、そのまま飛んでいく。謂わば、妖怪桜の脇腹を切り裂いたと同義。

 

耳をつんざくような奇声。妖怪桜が痛みを感じているのだろう。なりふり構っていられないのか、目の前からムチのようにものすごい勢いの根が飛んでくる。

 

「ハァッ!!」

 

ダーインスレイヴを下から振り上げ、斬撃を飛ばす。斬られた根は支えを失い、此方に飛んでくるものの、レーヴァテインの炎の弾幕を打ち込み、チリとなる。

 

「…弾幕ごっこなんて今の文化はお互い関係ない。お互い、時代に取り残された亡霊だ。…泥臭く、斬り合い撃ち合いといこうじゃないか。」

 

その言葉に答えるように奇声が上がる。根が編みこまれ、捩れ…反発させる。肉もはぜるほどの衝撃波。二刀で受け止めるも、ダーインスレイヴを持っている方の腕はぐちゃりと音を立てて、地面に落ちる。

 

レーヴァの方も皮一枚繋がっている程度だ。簡単に無くなるだろう。

 

「やるじゃないか。」

 

ぐちゃぐちゃと音を立てて、右腕を再生させる。レーヴァを右手に持ち変えるとそのまま左腕を叩き切る。肉の焼ける感覚と血の蒸発させる感覚が左腕に伝わる。

 

そのまま再生させる。無論、その間も目の前から飛んでくる弾幕を避けながら。

 

「神器『グングニル』」

 

次に呼ぶ名は紫の長槍『グングニル』である。

 

「良いものを見せてやろう。」

 

そして、その二つを目の前で重ね、混ぜる。炎がグングニルを掌握し、そのまま混ざり合う。極光と極熱の中、現れたのはレーヴァの如き、炎を纏った巨大な赤槍である。

 

「『スピア・ザ・インフェルノ』。貴様の命まで焦がす。」

 

頭上から並んで落ちてくる根の波。それを横一閃、叩き斬るとその断面から火が移る。これで燃えて力を失えば楽だが…奇声をあげ、その断面を地面に擦り付け、かき消した。

 

そのまま地面を破壊しながら、根を伸ばしてくる。地面から天へと伸ばしてくるそれはたった一振りの元に焦げ散るが…。

 

「チッ。」

 

伏兵である大樹側からの小さな蔓が余の耳を貫き、そのままちぎり飛ばした。一瞬、吐き気を催す。平衡感覚を見失うがすぐに回復。

 

そのまま頭上から太い根によって叩き落とされる。なかなかに無様。…だが、根や蔓には即死効果はない、という教官は得た。

 

炎槍で受け止めたため、多少の衝撃は抑えた。しかし、背中に走る若干の痛みと頭から垂れる血。…擦り傷なんて久々か。

 

「…大いに結構。冬の寒さで少し寝ぼけていたかもしれん。」

 

…さて、暴力だけかと思ったが…。厄介なのは弾幕だ。当たれば死ぬのは確実。それに奴と戦っている感覚は…段々と体力が減っているような気がする。

 

「であれば、速攻か。」

 

直後、余の心臓を貫かんと根が伸ばされる。地面を蹴ってそれを避けるが、胸に一閃、傷がつく。

 

再び頭上から根が叩き落ちてくる。

 

「それしか脳がないのか。…いや、元々、脳はないなッ!!」

 

身体を霧と化し、それを避けると同時、空中へと飛び出る。

 

巨大樹は本能からか、余に向かって蔓による刺突を打つ。

 

「『冥雷(インドラ)』」

 

向かってくる蔓は余の頭上の魔法陣から溢れ出る雷撃に貫かれ、地面へと落ちる。そのまま無数の雷撃が西行妖へ降り注ぐ。樹下は炎に包まれるも、西行妖は体の周りに根を擦り付け、鎮火させる。

 

樹皮は思ったより硬いな。…雷が通らん。

 

だが、炎に対応が追われたな?

 

槍を地面へと捨て、右掌を巨大樹に見せる。炎と真逆の魔力を込めれば、氷だって作り出せるはずだ。自身の力を信じろ。

 

「ご主人様ッ!!前ッ!!」

 

「…慌てるな。」

 

炎の対応を終えた西行妖の蔓がほぼ全て此方へと飛んでくる。その数はもはや、数えきれやしない。しかも、速度は段違いに今までよりも早い。開花も殆ど完了しかけている。

…だが、その状態で凍りつけば…問題ない。

 

冥魂凍(ホメーロス)

 

直後、指先からとてつもない冷気の渦が地上の巨大樹に向かって突撃していく。まさに見えぬ氷槍だ。その一撃は向かってきた蔓を全て凍らせ、塵と化す。

 

「力は抑えてある。だが、しばらく動けんな。」

 

目の前にあるのはかつて妖怪桜として恐れられた巨大樹が白く凍りついた姿であった。…この技は魂から凍らせる。次第に解けていくものの、そのまま死にいくことはない。大きな攻撃に見えて、ただのバインドだ。直接なダメージは少ない。

 

「今だ。」

 

「夢想封印ッ!!」

 

…そして、博麗霊夢の声が響く。帯のようなものが巨大樹を包み、樹皮も元の色へと変わっていく。博麗の巫女の霊力にはどうやら、余の氷ごときでは歯が叩かないらしい。だが、こうなれば暴れようが叫ぼうが後の祭りだ。…妖怪樹は再び眠りについた。

 

「終わったな。」

 

余はその場から立ち去ろうとする。すると余とは違い、西行妖へと向かって行く影があった。

 

「幽々子様ッ!!」

 

桜の根を背にして何が起こったかもわからず、眠りこける主人を迎えに行く従者であった。




なんとか走り抜けたと感覚。
ルディウスの技は〜ドラの神様、精霊に限定していていましたが、氷や水だけ見つからずこのような形に。まぁ仕方ないね。神様や精霊に関係するほどの力を持っている技とだけ考えてくれれば嬉しいです。
宴会か、日常回か。次回はそれに。どちらにせよ後日談です。では。
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