サニーたちの手助けに加え、家を訪れてきた魔理沙さんの時間と力も借り、本格的に妖力の扱い方の練習・勉強を始めてからある程度の日数が経った頃、僕は皆と一緒に外出をしていた。
目的地は、魔法の森の入り口にある香霖堂。サニーたちとも親しい、半人半妖の霖之助さんが営む古道具屋である。
皆にとっては数え切れない程、スターとルナに至ってはおととい行ったばかりの場所にも関わらず、僕が居るだけで新鮮だと屈託のない笑顔で言ってくれたのだ。
「サニー。ここ、なんだよね?」
「あはは……初めてだし、メノがそう思うのも分かるわ。でも大丈夫、ボロく見えるのも外側だけだから!」
「香霖の癖のお陰で、物も沢山積まれてるからねー。て言うか、また増えてるわ」
「こんなに増やして、後々どうするんだろう?」
故に、最初に誘われた時既に嬉しかった僕の気持ちは、道中でかけられた言葉で更に増大していった訳なのだけど……到着した時に見えた香霖堂の、予想を超える年季の入りっぷりに、少しだけ心配になってくる。
ただまあ、3人が魔理沙さんと並ぶ程の信頼を置く人物が住んでいる場所であるなら、身に危険が及ぶこともないだろう。
「香霖ー! お邪魔するわね!」
「あぁ、君たちか……おや? スターの後ろに隠れている妖精は、初めて見る子だね。友達かい?」
「大切な仲間よ! テルースメノウ、私たちはメノって呼んでる子なの! 2週間くらい前から一緒に暮らしているわ!」
頭の中でそんな考えを浮かべつつ中に入ると、サニーは僕とほぼ同じ色の髪色で、眼鏡をかけた背の高い男の人……霖之助さんに元気良く声をかけ、代わりに簡単な紹介までしてくれた。
パッと見た感じ、事前に聞いていた通り穏和そうで、滅多なことでは声を荒げるような真似はしなさそうに見える。
(凄い量だなぁ……えっと、どこで集めてくるんだっけ?)
それにしても、お店の中には外に勝るとも劣らないレベルで物が沢山あるけど、一体どれが売り物なのだろう。
商売が半ば趣味みたいなもので、非売品が相当量あるとは知っているけど、
値札か、それに類するものがどこにも見当たらないけど、もしかしたら霖之助さんとの交渉で決まるのかもしれない。
ともなれば、僕が1人でこのお店で何か欲しい物を買うことは、当分の間は無理そうである。
「なるほど。ところで、彼女は他人と接することが苦手な妖精なのかな? かなり、僕が警戒されているようだ」
「ええ。それを語ると色々長くなるのだけど……メノ。香霖に、あなたから聞いた過去の話をしても良い?」
「……うん、大丈夫」
後、僕がここまで知らない他人とのコミュニケーションを苦手とする理由についても、サニーが代わりに説明を買って出てくれたのは、正直助かった。
言わずもがな、霖之助さんが悪い訳では
ただ、魔理沙さんとの初対面時と比べた場合、慣れるまでの時間がちょっとかかりそうだと、実感してしまったからなのだ。
まあ、その辺の事情も考慮に入れた上でサニーからの誘いを受け、行く選択をしたのは僕である。無論、今すぐ帰るなどと言う選択肢は選ばない。
「そうか……全く、数奇な運命を辿ってきたようだね……サニー。言うまでもないと思うが、彼女にしっかり寄り添ってあげるんだ」
「当たり前よ! まだ来てから2週間だけど、大切な仲間の1人なんだし!」
「なら安心だ。しかし、彼女が君たちの仲間である以上、もしもその辺を怠ったならば……まあ、言わずとも分かるだろう?」
「「「……うん!」」」
そんな感じでサニーを経由し、僕の過去話を真剣に聞いてくれていた霖之助さんは、聞き終えた後すぐに神妙な面持ちになっていた。話を聞き終えて、何かしら思うところがあったに違いない。
確かに、僕を思って寄り添ってくれること自体は凄く嬉しいけど、何において優先されるべきはサニーやスター、ルナの意思だと僕は考えている。
あの人たちに僕が前世でされたことを、まかり間違って今世で僕がする側に回るなど、例え想像や冗談でもあってはいけないことのだから。
「さて、この話は一旦終いにしよう。とにかく、いつものようにゆっくりしていってくれたまえ。新しいものも仕入れたからね」
で、サニーと話をしていた霖之助さんより滞在の許可が降りたため、お店の中を3人で回りつつ積まれた物を見ていく。
なお、その中に欲しい物があったら、教えてくれればサニーたちが代わりに交渉してくれるらしい。
しかも、沢山あってもいいみたいだけど、流石に申し訳ないので1つに絞るつもりである。たかが僕1人のために、お金を全て使う必要なんてないのだ。
「えっ、それ本当なの……?」
「うん。霊夢は『ツケ』で商品持っていくし、魔理沙に至っては勝手に持ってくこともある」
「まあ、何だかんだでその2人なら、余程あれじゃなければ香霖も許してるし。私たちだって、結構サービスしてもらってるわ」
「わぁ……えっと、えぇ……うん。なら良いのかな?」
なんて考えていた時、不意にルナとスターからそこそこぶっ飛んだ話を聞かされたものだから、ちょっと困惑してしまう。
幻想郷では常識に囚われすぎてはいけないと言ったって、その行為を許すに値する理由があったとしても、僕にとっては理解が追い付かない。
けれど、香霖堂の主である霖之助さんが許してる以上は、他人である僕が口を出す権利はない。まあ、仮にあったとしてもきちんと言えるかどうかは、また別問題だけど。
(あっ)
色々と手に取り、サニーたちと一緒に見てから戻すことを繰り返しつつ楽しんでいたその刹那、箱に入れられていたあるものを発見してしまい、手が止まってしまう。
僕が中学生になりたての頃、
むしろ、前世で降りかかってきた理不尽に拮抗でき、譲られてからも何とか心折れずに暮らせるだけの『強さ』を与えてくれた程なのだ。
「メノ? どうかした……猫のぬいぐるみ?」
「うん。もう会えないかと思ってた、僕の大切な子なの」
「えっ、ちょっと貸して……香霖ー! このぬいぐるみ、どこで拾ったの?」
「どれどれ……ふむ、そのぬいぐるみなら半年くらい前に、いつもの場所で拾ったものだね」
「へぇ。所々、魔法の糸で縫われた跡があるけど、ボロボロだったの?」
「ああ。目も当てられない程だったけど、一目見た瞬間に捨てられたくなさそうって思ったから、これ自体はアリスに頼んで修復してもらったよ」
まるで新品のように綺麗で、所々不思議な糸で縫われた跡があったり、首飾りの宝石は大部分がなくなってはいた。
でも、尻尾の手作り花飾りも、ちょっと不恰好な猫帽子も、毛色や瞳の色も当時のままなのだ。
余程姿形が原型を留めていないか、
(……)
とは言うものの、霖之助さんにとっては僕の事情なんて全く関係ない。
今すぐにでも戻ってきて欲しいけど、この人が猫ちゃんを気に入っていたならば、もう戻ってこない可能性だってあるのだから。
「ふむ……よし。これは君に
「どうして……?」
しかし、僕の不安は霖之助さんによる最高の一言によって、即座に霧散することとなる。
そしてすぐに、心を埋め尽くさん勢いで幸せの感情も沸き上がってきた。サニーたちが僕を家族と認めてくれた時と、同じくらいの幸せだ。
「なぁに、簡単なことさ。
「……」
なるほど。これは確かに、サニーたちが信頼を置くと同時に商売向きの性格ではないと、霖之助さんを評する訳である。
ただ、その性格のお陰でこうして僕は、
「あのっ……えっと、霖之助さん。僕の思い出の猫ちゃん、守ってくれて……ありがと」
「どういたしまして」
と言うことで一旦深呼吸をした後、僕は霖之助さんに精一杯の感謝を込めて、お礼の言葉を述べた。
だが、僕がお礼を言うべきはこの人だけではない。見つけられた時はボロボロだった猫ちゃんを、ここまで綺麗に直してくれた『アリス』さんも、その対象に入っている。
連続で赤の他人、もしくはあまり親しくない人と会うのは僕の精神にも負担であるため、もう少し時間を置いてからではあるけども。
「良かったねー。メノ、まだ遊べる体力ある?」
「うん! えへへ……むしろ、回復してきた気がするなぁ」
巡りめぐって僕の手元へ戻ってきた。心の中で、この現実に対しても強く感謝の意を表しながら、猫ちゃんを抱き抱え、今世では絶対に手放してなるものかと固く誓った。
遅ればせながら、本小説の閲覧や評価、感想を下さった方々に感謝いたします。
光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して
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作者にお任せ