光の四妖精   作:松雨

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第1章
妖精としての『名前』


 輪廻転生。どこの国の人であれ、伝わり方などが多少は違っても、それなりに多くの人が1度は耳にしたことがある言葉(概念)だろう。

 

 かく言う僕もあったら良いなと思いつつ、その概念自体は全く信じていない。

 いや、今となっては()()()()()()()()と過去形で表した方が、意味としては正しいと言える。

 

「大丈夫? まあ、今のあなたにとっては全部が未知だし……それにしても、凄い視力と聴力」

「気遣いありがと。出来るだけ早く慣れるように、頑張るから」

「うん、その心意気や良し。だけど、無理は禁物」

「ルナの言う通りよ。心配せずとも、のんびり過ごしてれば、臆病でも自然に慣れていくわ! 駄目なら駄目で、別に良いし!」

 

 何せ、目を覚ました瞬間の景色が幻想的で、かつ現実に居る訳ない羽の生えた女の子が周りに3人居た上に、更に僕自身がその女の子……妖精と呼ばれる存在になっていたのだ。

 

 五感も前世現実と同様、特に視覚聴覚に関しては人間だった頃よりも鋭敏になっている。

 

 僕の背中に生えている、『古代遺跡』の水晶と似て非なる材質によりできた羽に至っては、腕や足を動かすような感覚で動かすことだって可能なのだ。

 

 本能的に空を飛ぶことだってできると思ったけど、慣れない環境への不安と恐怖心が合わさり、()()試す気にはならない。

 ただ、3人の妖精さんたちも、僕の内心を何となく察してくれたのかは分からないけど、家までは歩きで行ってくれるみたいで助かる。

 

 他にも、目覚めた場所である古代遺跡に居た時、そこから出て森の中を歩いている今聞こえてくる音、そよ風や光、葉や土などの匂い、輪廻転生を確信するに至れる要素は沢山である。

 

(どうしよ……)

 

 後は、僕が記憶喪失である点を含めて、色々と勘違いされていると言う問題が現状存在していた。

 肝心なところで迷って黙り込み、勘違いを訂正するチャンスを棒に振る行動を選んだ、僕自身の責任ではあるけど。

 

 無論、今からでも転生云々を含めて全部説明しさえすれば、最低でも記憶喪失の件は何とか分かってもらえるはずだ。

 

 しかし、このタイミングでそれを聞かされた側は、果たしてどう思うだろうかと、頭の中で考えてしまう。

 

 不安と恐怖感でいっぱいなこの状況下、久しぶりに喋ってて楽しい他人な上に嫌な感じも全くせず、直感的に信用して大丈夫かもと僕が思える相手が、気味悪がって離れていくかも知れない。

 

 3人であれば、関係なく受け入れてくれそうな気はするけど、確信は残念ながらない。それ故に、言い出す勇気が全く湧き出て来ないのである。

 

「ねえ。皆は何で、僕を放っておかなかったの?」

「うーん……同じ妖精だからって言うのもあるけれど、何かこう放っておけなかったの」

「そう。普通の妖精ならまだしも、流石に全裸で倒れてる妖精は無視できなかった」

「あれはねー。おまけに、倒れてる時の顔も何か泣き疲れてるみたいだったし」

「なるほど、そう言う……えっ、僕全裸だったの!? あわわわ……!」

「「「あっ、何かごめん」」」

 

 だから、僕以外の誰かに迷惑になるくらいの、相当酷い方向に勘違いされるまでか、核心を突かれでも(確信に至られない)しない限りは、誰にも言えない秘密として黙っていよう。

 

 幸いにも、種族どころか性別すらも変わっている点に対する違和感はあれど、あくまでも違和感を感じるに留まっていた。これまでの出来事が衝撃的すぎて、打ち消されているのだろうか。

 

 ちなみに、話の流れでそれとなく、うっかりしていた僕の一人称について聞いてみたところ、別に変とは思っていないとの返事が帰ってきている。

 

 そもそもこの世界……幻想郷では、そんな些細な要素を気にする人妖は殆んどいないらしい。

 良くも悪くもぶっ飛び過ぎているものであれば、流石に気にするかもしれないみたいだけど、まあそれはそうだろう。

 

「さてと、ようこそ私たちの家へ! 歓迎するわ!」

「わぁ……!」

 

 他にも色々と、僕が全く知らない幻想郷についての説明を受けながら歩いていると、とんでもない高さと太さを誇る大木が生えている、かなり開けた場所に出た。どうやら、この大木が僕の住む事になる家みたいだ。

 

 この森にある数え切れない程の樹木や草花の中でも、とりわけ生命力に溢れている。

 見た目だけではない、上手く表現はできないけどそう思わせられる何かが、この大木からは出ていた。

 

(……わぉ)

 

 根元にある入り口の扉から中に入ると、随分と近代的な生活空間が広がっていたために、ちょっと驚いてしまう。

 家具や調理器具は勿論のこと、果ては電化製品擬きとも呼べる道具がいくつか置かれていたからだ。

 

 3人の妖精さん曰く、魔法使いで人間の魔理沙さん、魔法の森入り口付近にある香霖堂(お店)の店主の霖之助(りんのすけ)さん、河童のにとりさんが色々と世話を焼いてくれた結果、ここまでの環境が整ったらしい。

 

 前世で安心できる数少ない領域(自宅)を彷彿とさせるから、今まで感じていた不安や恐怖感が和らぎ、身体に込められていた力が良い意味で抜けていく。

 

 神秘的ではあったけど、いかにもな場所に倒れてた怪しさ満点の妖精()を気遣い、連れてきてくれた3人には感謝である。

 

「なんかこの子、家に入った瞬間に表情和らいでるよねー。リラックスできてるようで何よりだわ」

「それに、羽の色が変わってる。その時々の気分で、今回のようにリラックスしてる時は透明感のある黒茶色に変わるみたい」

「と言うことは、この子はこんな感じの場所に居た時間が長いのね。だったら尚更、連れてきて良かったわ!」

 

 まだこれから、色々と初めてのことだらけの幻想郷に慣れる必要があるため、恩返しを計画しても実行に移す領域にはない。

 

 とは言え、この恩に見合うだけのお礼は絶対に返すべきだし、そのためには可能な限り早めに、この状況と妖精としての身体に慣れる必要がある。

 

(不安がってばかりじゃ居られない。僕も、僕自身と皆のために頑張らなきゃ……)

 

 無論、僕と一緒の格好をした妖精さん(ルナ)から言われたように、精神や身体を過剰に削るレベルの無理はしない。一定の余裕を持てるギリギリのラインを見極め、超えることのないように気をつけるつもりだ。

 

「おっと、肝心なこと(自己紹介)を忘れてたわね! と言う訳で……私はサニーミルク! 会ったばかりだけど、サニーって呼んでくれると嬉しいわ!」

「スターサファイアよ。無理強いはしないけど、スターって呼んで欲しい」

「それで、格好が同じな私はルナチャイルド。フルネームでも良いけど、ルナって呼んでくれると嬉しいな」

 

 そんなこんなで家の案内や電化製品擬きの使い方を教えてもらいながら、ようやく一段落つこうとしたところで、妖精さんたちの自己紹介が始まった。

 

 確かに、一緒に暮らす上で名前が分からないと色々不便だし、お互いの距離感も離れている感じがして、変に思えてくるだろう。

 

(うーん……僕の名前、妖精としての名前……あっ)

 

 当然、それは僕の方にも当てはまる訳だけど、こうなる前の名前は今の姿には余計に似つかわしくない。

 

 かと言って、僕だけ名乗らないと『妖精さん』『あなた』『この子』呼びで固定されてしまう。どうしたものかと考えているその時、天啓が下ったかのように『名前』を思い付く。

 

「テルースメノウ……だよ。サニー、スター、ルナ。ありがとう、これからよろしくね」

「「「……うんっ!!」」」

 

 で、それにより思い付いた名前を名乗ると共に、これからもお世話になることに対しての感謝と挨拶をしたところ、3人は満面の笑みを僕に見せてくれた。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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