僕に会いに来たと言うレミリアさんたちも含め、庭先で何だかんだ1時間近くはしゃいで、休憩がてらせっかくならと我が家に案内してから更に1時間、僕はいつものように家掃除を行っていた。
ただ、レミリアさんに「可能であればできる限り見てみたい」と、お願いされた上でのそれであるため、やることは一緒でも状況はかなり違っている。
サニーたちやチルノ一行、魔理沙に見られながらやるのはもう慣れたけど、今日が初対面の他人に見られるのは慣れていない……いや、初めての経験だ。
幸せの大波が落ち着いてきた故に、緊張感もある程度は復活してきているので、こんな時に限って変な失敗をしないように気を使う。
「うっわぁ。何これ、想像以上に凄い……てか、これで掃除できてるの?」
「……なるほど。聞きしに勝るとは、まさにこのことを言うのね」
「どう!? うちのメノは凄いでしょ?」
「そりゃあね。こんなの見せられたら頷くしかないわよ」
「当の本人よりもサニーの方が興奮してどうすんだ? でもまあ、この早さで掃除とか普通は無理だろうし、私だって何度見ても凄いって感想しか出てこないが」
「メノにとっては造作もないことだけど、その性格も相まってか無駄に誇ったりしないから、好感度は高めだよね」
まあ、
ただし、知らない誰かとの初対面時と同等、もしくはそれ以上の緊張感に影響されるか、僕がサニーたちに家族として迎え入れてもらったあの日みたいに、心が揺れ動くレベルの出来事が発生する。
これら2つの条件のどちらか、または両方に当てはまった場合にのみ、気を使っているか否かは関係なくなり、失敗する確率が大幅に上がってしまう。
(楽しくなかった家事がこんなにも楽しくなるなんて、前世じゃ夢にすら思わなかったなぁ)
普段であればもう少し気を抜けはしたけど、こと今日に至っては一切気を
あんなにもニコニコで、僕のことをこれでもかとレミリアさんたちに自慢するサニー。
いつぞや、何度聞いても嬉しいと言ったからか、沢山の褒め言葉を投げかけてくれるスターやルナ。
大切な家族の喜びこそ僕にとって最大級の活力源、恩返しの意味も込めているのだから、掃除の終了か疲労云々以外で気を抜かないのも、至極当然のことだと思っている。
「ふぅ。取り敢えずこんな感じ、だよ。どうかな……?」
「パッと見は綺麗そうね。咲夜、ちょっと見てもらえるかしら?」
「分かりました……じゃあ、少し失礼するわ。メノウ」
そして、皆の居たリビングとその周辺の見える範囲内の掃除を、新幹線を綺麗にする人たちが如く超スピードで終えると、見ていた皆に向けて声をかける。
勿論、場所や状況が明らかに違う上、その道のプロが誇る技術や早さには当然及ばないけれど、それでもかなりの自信はあった。
身に付いた技術や早さそのものは良いものであれ、それらを得た経緯自体は全くもって喜ばしいものではないけど。
「元からさほど汚れてはいませんでしたが……お嬢様、部屋は更に綺麗になっています。見た目通りに」
「そう。一応とは言え、咲夜に見てもらうまでもなかったか。流石だわ」
「わぉ。これで綺麗にしちゃうとかただ者じゃないよ、メノウ」
「そりゃあ、ただ者じゃないのは分かるだろ。しかし、これを見ると私の家も頼んでやってもらいたくなるな」
「魔理沙? やって欲しいなら、僕やるよ」
「悪い悪い、冗談だ。自分の家のことくらい自分でやるぜ」
なお、僕の掃除はレミリアさんたちのお眼鏡に叶ったらしく、口々に褒めたりしてくれている。
サニーたちや魔理沙、ピースにもかなり好評だったから、これはもう最高の結果だと言っても良いだろう。
(僕が、認めてもらってる……えへへ、嬉しいなぁ……)
頑張ってやって結果を出せば、今のようにそれ相応の言葉がかけてもらえること。これだけで、僕の心は満たされていく。
「あの……もし、僕が失敗してたら、どうしてたかな……?」
「どうもしないわよ。精々、この娘にもそう言う時があるのねって思うくらいかしら」
「そうだよっ! それにここ、メノウちゃんたちのお家だもん!」
「うん、違いない。サニーたちが何か言うならまだしも、あたしたちが言う権利はないし。まあ、思ってすらいないんだけどさ」
「ノーゼはそう言ってるけど、失敗したとしても私たちは何も言うつもりなんてないわ!」
「私も、サニーと同じ意見だよー」
「右に同じく。その程度で怒るなんてことは、絶対にない」
そして、仮にこの場でいつも通りの実力を発揮することができず、変な失敗をしてしまったとしても、レミリアさんたちは僕を罵倒しないし、暴力も決して振るわないことも分かっている。
(……)
だからこそ、レミリアさんたちに対して少しだけ、信頼しようかなと思い始めたのかもしれない。
とは言え、ここには居ない紅魔館の住人たちに関しては、名前も姿も性格も分からないし、流石に無条件で信頼するのは難しそうだ。
まあ、嫌な人たちではないことだけは何となく分かるから、初対面時の緊張感は多分和らいでくれるとは思う。
「ありがと。ぐすっ、皆の優しさが眩しいなぁ、染み渡るなぁ……」
「どういたしまして。ほら、これで涙を拭きなさい……って、あらら」
「何と言うか、ものの見事に
「相変わらず、他人からの厚意を受けるとこうなるのは変わらないねー」
「そうかしら? これ、どちらかと言えばサニーたちの言葉の方が影響大きそうよ?」
「確かに、あたいもそう思うぞ! 伊達に、サニーたちとメノを見てきてないからな!」
ちなみに、皆からの優しさで刺激された感情の奔流に、途中から嬉し涙を堪えるのがキツかったのだけど、レミリアさんの
ただし、嬉しさや幸せなどの感情によって声を出す嬉し泣き自体は、頻度は減りつつあるけどそれでも結構な頻度であるし、久しぶりという言葉が正しいかは疑問だけど。
「へぇ。スターちゃんたちが、メノウちゃんに優しくしてもこうなるの?」
「うん。まあ、ここまで大泣きするのは珍しいし、最近は頻度も結構減ってきたけど、その分恩返しに凄い力を入れるようになったわ」
「あぁ……これ、元々の性格も多分あるけど、ほぼ確実にあたしとスフェより酷い目に合ってる」
「ノーゼとスフェよりも酷い……お嬢様、想像したくありませんね」
「ええ。奴隷扱いより酷いとなると、ある程度は限られてきちゃうから」
それにしても、本当に今更ながら思う。いくら重要な目的があるにしたって、一応初対面な僕にここまで優しさを向けてくれるなんて、レミリアさんたちは間違いなく凄い。
仮に、僕自身がレミリアさんかそれ以外の誰かの立場に居たならば、同じことができると言い切れないだろう。
同じようにできないとも言い切れないものの、その辺は考えるのを後にしておくか。
「メノウ。少しは落ち着けた?」
「うん、ありがと。ねえ、ノーゼ。僕って恵まれてるよね」
「間違いないね。あたしとスフェがレミリアさまと出会えたように、メノウがサニーたちと出会えたのはまさに幸運だよ」
「そう、だよね」
「あっ」
そんなこんなで、色々と頭の中を考えが巡り続けていった結果、感情の高ぶりも少しずつ落ち着いてきた頃、何気なくノーゼにかけられた言葉が僕の抱くサニーたちへの感謝の気持ちを、思い切り強くすることになる。
妖精の『テルースメノウ』として幻想郷へ転生し、特に危険な目に合わず、偶々古代遺跡へと探検しに来たサニーたちに保護され、何の疑いの目も向けられず
そして今に至るまで、見返りを求めても良いくらいの『優しさ』を、無償で惜しげもなく与えてくれているのである。
まさに幸運、それも並大抵のものとは一線を画すと言えるだろう。言わずもがな、感謝はもとより恩返しはして然るべきことだ。
「サニー、スター、ルナ。僕へ幸せをありがとう、優しさを向けてくれて……その、ありがと……ごめん。もう無理……!」
「ありゃま……うん、どういたしまして! メノ、こんな時は我慢しないで、泣いちゃって良いわ!」
なんて振り返っていたら、せっかく落ち着いてきたはずの感情が急激に高まって抗うことができず、間欠泉の如く噴き出してきてしまった。
サニーが、まるで小さな子供を相手にするような感じで僕を抱きしめ、頭を撫でたり声をかけたりしてくれているのもあり、感じる幸福感は圧倒的としか言い様がない。
だから、今はこの一時をじっくりと味わっていたい。例え、僕がどう思われようとも。
「これ、完全に落ち着くまでしばらくかかりそうだねー」
「私もそうだと思う。で、ノーゼだちはどうする? まだ家に居たいなら考えるけど」
「うーん……レミリアさま、どうしますー? メノウが落ち着くまで、しばらくかかるそうですけど」
「ひとまず、今日の目的は達成できたし、帰ることにするわ。咲夜、ノーゼ、スフェ。戻る準備をして」
「「「了解です!」」」
なお、レミリアさんたちは僕がこんな状態なのと、目的が達成できたこともあってか、荷物をまとめて帰る準備を始めていた。
また、魔理沙は紅魔館にまだ用事があるためか一緒に行き、ピースはどのみち暇だからとの理由で、我が家に残ってもう少し遊んでいくと、会話から判明している。
(……)
何だかんだあったけども、終わってみれば実に平和的で楽しい一時だった。
いつかの話にはなるものの、紅魔館へサニーたちと一緒に訪れるのは勿論のこと、お雇い妖精メイドとしてスターと一緒に働きに行くのも、少しは前向きに考えても良いかもしれない。
「今日はありがとうね、メノウ。また遊びに来るわ」
だけど、嬉しさや幸せなどの感情の奔流に呑まれていて、帰り際のレミリアさんの言葉に頷くくらいしかできなかった僕には、それを伝えるなんて到底無理な話であった。
光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して
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チルノ&大妖精
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リリーホワイト
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全員
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作者にお任せ