僕の服に関するお出かけに、サニーたちだけでなくチルノも加わることになった、冬の訪れを強く実感する今日この日。
楽しく賑やかで、幸せな気分になりながら魔法の森を歩き続けてしばらく経った頃、到着したアリスさんの家を目にした僕は、あまりの衝撃によって一時的に身体が硬直していた。
「えっと、サニー。これ、全部妖精さん……違う? 生命力を全く感じないし、もしかして生きてる子じゃない……?」
「そうよ! 屋根の上を掃除してるのも、庭や花壇の草むしりとかも人形、何なら家事の殆んどもやってるわ!」
「パッと見生きてるみたいだけど、実際は違う。アリスが魔法で
「わぁ、何それ凄い」
敷地内に入ってから少しの間、生きている妖精さんか何かだと思ってしまうくらいに、非常に精巧にできた人形さんたちがアリスさんの家の周りで、色々なことをしていたからである。
表情の豊かさや動きの滑らかさ、時折聞こえてくる喋り声に至るまでとにかく凄く、初見では決して人形さんであると見極めることは不可能だと、そう断言しても良いだろう。
生命力の流れを感じ取る力や、既にアリスさんや人形さんたちのことを知っているサニーたちが側に居たから、僕はあの子たちを人形さんだと知ることができたのだ。
「なんだか僕、凄い見られてる気がする。でもまあ、アリスさんにとって僕は知らない妖精だし、ほぼルナと同じ格好してる訳だから、当たり前だよね」
「そりゃそうだ。でも、あたいとサニーたちが居るから全く問題ないぞ! ちゃんと、諸々の事情は説明してやるからな!」
「ありがと。頼りにしてるよ、みんな」
それに、敷地内へと入った僕たち、正確には僕に対する警戒態勢の取り方も、機械的なものとは全く思えない。
ひそひそ話をしたり、アリスさんの家に知らせに行ったり、僕みたいな感じで他の人形さんや建物の陰に隠れつつ、こっちを見てきたりなど、例えるなら……
「……サニー。新しいお友達と、遊びに来たのかしら?」
「少し違うわ! メノの洋服をアリスに作って欲しくて、その依頼でね! 可能なら、帽子とか靴もお願いしたいわ!」
「メノ? あなたの後ろに隠れてる、新しいお友達の名前?」
「そう! ちなみにだけど、お友達と言うよりは仲間……家族みたいなものよ!」
「なるほどね。相当親しい関係だと」
で、それからすぐに出てきた人形さんの後に続き、アリスさんらしき……いや、アリスさんが出てくると、彼女はすぐに僕たちのところへ近寄ってきて、サニーと話をし始めた。
(むぅ。こんなんじゃ、サニーたちが僕と行きたがってる人里なんて……)
猫ちゃんぬいぐるみを直してくれた恩人で、サニーたちとも親しい間柄だったら隠れないで行けると思ってたけど、いざ相対してみるとやっぱり無理だったのが悔しい。
ただまあ、全く進歩していなかった訳ではない。隠れてしまったにせよ、アリスさんとの距離が1番近いサニーの後ろだったのを鑑みれば、そう言ってもおかしくはないだろう。
「えっと……あの、アリスさんっ! この、猫ちゃんぬいぐるみ……直してくれて、ありがとう」
「あら。そのぬいぐるみ、半年以上前に霖之助さんが持ってきたいわく付きの……あなたのものだったのね」
「うん。僕にとって、サニーたちと同じくらい大切な『家族』なの。だから、直してくれたのがアリスさんだって聞いたから、いつか必ずお礼を言いたくて……」
「ええ、どういたしまして。大切な家族が帰って来て良かったわね」
幾ばくかサニーとチルノとアリスさんのやり取りが続き、それがちょうど途切れたタイミング、是が非でもアリスさんに会ったら言いたかった
(本当にもう、これだから僕は……!)
ただし、結果として僕の意図はほぼ完璧に伝わったとは言え、ここに来る前に考えていた通りには言えていない。
それどころか、会話中ずっと挙動不審も良いところで、見る人が見れば怪しさ満点でしかなかったのだ。実際に自分で確かめた訳ではなくても、それはすぐに理解できた。
しかし、そんな僕を見ても一切表情を変えずに穏和なまま、恐らく気づいていないふりをして会話をしてくれたアリスさん。本当に、ありがたい気遣いである。
「さて。用件はあなたの洋服と、可能なら帽子と靴も作りたいってことだったわね。ここだとあれだから、中に入って。チルノとサニーたちも、ゆっくりしていきなさい」
「「「はーい!」」」
少し長くなってしまった挨拶とお礼伝えを終わらせ、出していた猫ちゃんぬいぐるみをちゃんと閉まったとほぼ同時、アリスさんの一言で僕たちは家の中へと入っていく。
(わぉ……凄い数の人形さんだ。うん、やっぱり家の中のことも手際良くできるよね)
家の周りに居た人形さんの数から、家の中にある人形さんの数も相当多いとは思っていたけど、想像以上に多かった。大きさも容姿も服装も様々だったけど、動いていないものも合わせて軽く50~60体はありそうに見える。
僕が我が家でやるような掃除や片付け、お菓子作りに関しても複数の人形さん同士が凄まじい連携を見せ、テキパキとこなしていた。まあ、外で色々やっていた光景を目にすれば、何ら違和感のない立ち振る舞いだったけど。
「それじゃあ……」
「僕の名前はテルースメノウ、だよ。サニーたちが言ってる
「了解。なら、メノって呼ばせてもらうわ。それで、服とか帽子、靴についてなのだけど……オーダーメイドの都合上、作るにしても色々と測る必要があるの」
「うん」
「つまるところ、私の人形ないし私自身がメノの身体を見る必要があって、その過程で多少なりとも触れる訳なのよ。勿論、メインは人形が請け負うし、常時最大限に気を遣いはするけど」
「そっか。うん、まあそうだよね」
人形さんが用意してくれた椅子に座り、出されたクッキーと紅茶を味わいながら、オーダーメイドの服や帽子や靴作りに関する説明を受ける訳なのだけど、分かってはいたものの僕にとって最大の関門が立ちはだかる。
だけど、ここで恥ずかしいから嫌だと言うつもりは全くない。本当に無理なのであれば、サニーから提案された時点で申し訳なく思いつつも断っていたのだから。
いや、そもそも僕の羽の色とか表情を見て、サニー自身が速攻で提案を撤回していたとは思うけど。
「……アリスさん、お願い」
「分かったわ。じゃあ、隣の部屋でメノの好みとかを聞きながら、色々調べましょうか」
と言う訳で、僕のお願いを聞いてもらえることになったため、立ち上がって隣の部屋に向かうアリスさんについていった。
ちなみに、隣の部屋にはサニーたちやチルノも一緒に入ってもらうことになっている。
今居るリビングに匹敵する広さがあるにせよ、別室で2人きりになるにはまだ勇気が足りないからだ。
勿論、一緒に入ってくれるだけで僕は嬉しいので、出された紅茶やらクッキーを食べながら談笑していても、当然だけど全く構わない。
「ふむふむ、なるほど。結論から言っちゃうと、ルナの体型データをそのまま使っても殆んど影響なさそうね。まあ、当然違う部分もあるから微調整はするけど、要望もそんなに多くないし、楽な仕事で良いわ」
「やっぱり? 服とか靴もそうだけど、その……えっと、下着類もルナの予備だし……」
「でしょうね。それにしても、良くここまでそっくりな妖精が居たものよね。血を分けた姉妹って言われても、違和感なく受け入れられるわ」
「アリス、香霖と同じこと言ってる」
「うん。僕も前、そんなことを言われた覚えがあるよ。チルノにも……確か、
「そうそう! 背丈の関係とかも、本当にそっくりだったし!」
「あらそうなの? 心が通じ合ったのかしら」
で、人形さんたちとアリスさんによる僕の身体調査が行われる訳なのだけど、僕の予想に反して10分もしない内に終わった。
その理由が、ルナと体型がそっくりであり、予想より細かく調べなくても服作りには問題ないと言うものだったため、確かに納得でしかない。
今の調査でも、身長が2cm僕の方が小さくて、羽の根元が若干太かったり、胸が少し大きかったりなど、ルナの予備の服で普通に行ける程度の違いしかなかったのだ。まあ、今まで何の不自由もなかった訳だし、当然の摂理だろう。
ちなみに、髪の毛の長さと性質と色、羽の形や瞳の色もルナとは違うものの、服の着やすさに直接的な影響はないため、考慮から除外している。
「アリス。いつ頃できそうな感じ?」
「そうね……私も色々とやることがあるから、2週間は最低でもかかると思う。予備も含めるとなると、下手すれば1ヵ月近くの時間が必要よ」
「だよねー。なら、2週間以上空けてから、アリスの家に行けば良い?」
「いや、完成次第私があなたたちの家に届けに行くわ。だから、ゆっくり待ってて」
「了解ー。メノ、ちゃんと聞いてた?」
「うん、勿論聞いてたよ。スター」
そして、身体調査や僕からの要望諸々を加味した結果、最速で2週間後には新しい洋服や帽子、靴が僕の家へと届くことが決まる。
勿論、それは全てが理想通りに進んだ場合の話であり、実際にはもう少しかかるに違いない。
(どんな感じになるのかな? 楽しみだなぁ……)
しかし、時間がかかることなど百も承知だ。大切な家族や友達との一時をじっくり味わいながら、ゆったりのんびり待つこととしよう。
「じゃあ、アリス! 本当は存分に遊びたかったけど、お願い事をした手前、私たちは行くわ!」
「ええ、了解……メノ。結構時間はかかりそうだけど、ゆっくり待っててね」
「うん……アリスさん、重ね重ねありがと。よろしくね」
こうして、アリスさんの家に来た目的を達成した僕たちは、内容が内容なので今日はここで遊んだりはせず、我が家へと戻っていくことにした。
本小説を読んで下さっている読者の方々、感想や評価を下さっている方々に、心より感謝いたします。
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