光の四妖精   作:松雨

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今話後半にて、視点変更があります


嬉しさと幸せ

 右も左も分からない僕を仲間として受け入れ、自分たちの家に招いてくれた親切な3人の妖精さん(サニーとスターとルナ)

 

 取り敢えず僕の部屋が用意できるまでと言われ、案内されたルナの自室で何をする訳でもなく、ベッドに腰掛けて考え事をしながらのんびりと過ごしていた。

 

 性別どころか種族単位で変化したこの身体、これから暮らしていくことになる幻想郷について、その幻想郷での生活に慣れるための計画など、こんな状況下に置かれれば殆んどの人が考えそうなことだ。

 

 目覚めた当初よりは圧倒的にマシになったけど、頭の中を渦巻く色々な不安や恐怖感は未だに燻っている。

 性格と多少は説明されたことを加味しても、僕にとってはほぼ全てが未知なのだから仕方ないだろう。

 

(……)

 

 しかし、死んだ感覚は全くなかったにせよ、この身で実際に輪廻転生を経験し、前世とはまるっきり違う生活が始まることに対する希望やワクワク感も、落ち着いた今になって実際に感じ始めていた。

 

 心休まる領域や時がなかった訳ではなくとも、身体はさほどでもなかったものの、精神的に負荷のかかる生活を前世で僕は送ってきている。

 

 無論、幻想郷にもそんな要素が全くないなんて思ってはいないけど、最初に会った3人があまりにも優しい。

 皆にとって同族のよしみがある点を考慮に入れても、僕にとっては間違いなくトップクラスだ。

 

 ここまでに至る経緯も相まって、頭では分かってはいても希望を抱き、ワクワク感を感じるのも何らおかしな話ではないと断言しよう。

 

「メノ、ゆっくりできてる?」

「うん、お陰様で。それよりも僕、本当にここでのんびり休んでて良いの?」

「勿論。私たち自身が良いって言ったんだし、最低でも1週間は大丈夫。それからはまあ、その時になったら考えるけど」

「そっか。ルナがそこまで言うなら、お言葉に甘えるね」

 

 そんな感じに過ごしつつ呑気に鼻歌を歌っていると、僕の様子を見にルナが入ってきた。

 僕のために個室を作ろうと、今は使っていない部屋を2人と一緒に掃除してくれているお陰か、服がホコリなどで少し汚れている。

 

 どう考えても大変だろうし、自室になるなら道具さえ貸してもらえれば、自分で掃除くらいやるとは申し出たものの……嬉しいことに、3人は僕の体調が心配との理由で、頑なとしてやらせようとしてこなかった。

 

 当たり前だけど、部屋の掃除と言う面倒なことをやらずに済むから嬉しいのではない。断じてない。

 

 いや、正直に言うとそれも多少はあるのだけど、僕を仲間として扱ってもらえていること自体が、何よりも嬉しいのだ。

 

「ちょっ、メノ!? 実は大丈夫じゃないんじゃ?」

「ううん、身体()全然大丈夫――」

「身体()大丈夫? じゃあ、精神が駄目ってこと……えっ?」

「あ……違うよルナ。ただ、皆に親切にしてもらえて嬉しいだけだから」

「そうなの。なら安心……いや、やっぱり大丈夫じゃないって! 羽の輝きも、淡いピンクと紫が混じった色に変わってるし……」

 

 だから、ルナにいらぬ心配をかけてしまうくらいの量の嬉し涙が、僕の目からとめどなく流れてくる。

 

 何とか止めようと思っても、悲しみや悔しさや怒りによる涙ではないためか全然止まる様子はなく、むしろ量が増える始末だ。

 

「ありゃ。様子を見に行ったにしては妙に遅いと思ったら、こんなことになってたなんて、予想外にも程があるわ」

「ルナ、何があったのか説明お願いできる?」

「私が様子を見に来たら泣き始めた。親切にしてもらえたのが嬉しいって言ってたから……うん、想像するのは止めとこう」

「精神から来るやつかぁ。ともかく……メノ。落ち着くまで一緒に居てあげるから、心配しないで」

「そうそう! あっ、ホコリだらけで汚かったの考えてなかったわ」

 

 終いには、中々掃除に戻らないルナが気になって来たサニーとスターにも心配され、嬉しさと幸せのおかわりでもう会話をすることすらままならなくなってしまう。

 

 目覚めるまでの面倒を見て、気遣いから3人の家への招待してくれてからの、()()()()()()最高級の幸せの提供。

 ここに来て初日で既に、今の僕には返しきれない恩をもらっているが故に、これから全て返せるかが不透明である。

 

(ありがとう、皆。本当にありがとう……!)

 

 言わずもがな、例え気の遠くなるような時間と手間がかかったとしても、返すための行動を止めるつもりは一切ない。

 

「どう? 落ち着いてきた?」

「ぐすっ……うん」

「なら良かった。それはそうと、メノ。泣き疲れて眠そうだし、遠慮なくおやすみ。時々様子は見に来てあげるから、心配しなくても良いよ」

「……ありがと」

 

 かれこれ目の周りが赤く腫れるまで泣き続けて疲れ、それを察したルナたち3人に寝ることを促された僕は、そのままベッドに横になって寝ることにした。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「全く……どこの誰かしらねっ!」

 

 泣き疲れ、()()()()()()()を見せながら眠っているメノが居る私の部屋に、怒りが込められたサニーの声が響く。

 

 過去に何があったのかは不明だけど、今の一件で心が相当傷ついていると判明したためである。

 

 私たちにとって、かけようと思えば簡単にかけられる程度の親切(やさしさ)が、この子にとっては泣いて喜ぶ程に素晴らしいものだった。

 

 確かに、そう思っていたのならこの反応も理解できる。

 

「それも気になるけど、普段何をされてたかの方が気になるわ。まあ、ロクでもないことなんだろうけどねー」

「で、挙げ句の果てに記憶喪失を起こすくらいに追い詰められた後、全裸で古代遺跡に放置されてたと。妖精相手だからって、何しても良いと思ってる酷い考えの持ち主に捕まってたのかな」

「是非とも私たちの勘違いであって欲しいけど……望みは薄そうだわ」

 

 しかし、それを知らなかった私たちとしては、あっても何か感謝の言葉をかけられるくらいだと思っていたから、正直びっくりした。

 

 まず間違いなく、のんびりゆったり暮らしてきた私たちには想像もつかないような、妖精生活(地獄)を送ってきている訳なのだけど、ある意味では救いがある。

 

 傷ついた心を癒すのに必要なものが特別な魔法や術、道具や膨大な妖力ではなく、私やサニーやスターが()()()()()()を、無理ない範囲で作ってあげれば良いと分かったからだ。

 

 勿論、完全に癒やすまでには途方もない時間が必要だろう。その辺の知識や技術に疎いどころか無知な以上、尚更そうだと言える。

 

(……)

 

 出会って初日、本人についての知識がないに等しい状態であれ、メノはもう私たち『光の三妖精』改め、『(ひかり)四妖精(しようせい)』を構成する内の1人と断言しよう。

 

 とは言え、そこかしこに仕掛けているイタズラへの参加は任意だし、了承を得てさせるとしてもかなり後となる。

 

 精神状態が不安定、妖力量はともかく能力の有無が分からず、幻想郷のルールについてもまだ未知に等しいこの状況で、そんなことはさせられない。

 

 もし、その辺の事情を無視してさせてしまったら、それはメノを苦しめた輩も同然……いや、1度信用させている点を鑑みた場合、それ以上かもしれないのだから。

 

 まあ、そもそも勝手に私が本人の断りなく考えているだけだし、本当に考えた通りの展開になるか、単なる同居人みたいな感じになるかは、今後次第と言ったところではあるけども。

 

「さて。今後のことについて考えながら、掃除の続きをしましょ! 途中放置はしたくないから」

 

 ひとまず悪夢でうなされるなどもなく、メノの様子が変わっていないことを確認してから、私たちは掃除の続きをしにホコリだらけの部屋へと戻っていった。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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