決して誰の力も借りることなく、新しい日記帳を入手するために不退転の決意を以て始めた、1人でのお出かけ。
僕も分かってはいたことだけど、見送ってくれたサニーたちの姿と声が全く聞こえなくなった瞬間から、足取りが凄く重たくなってきていた。
歩いている場所は、大好きな家族や大切な友達と何度も通ったことのある魔法の森、最初の目的地は魔理沙の家である。本来であれば、緊張する要素なんてないはずなのだ。
「サニー、スター、ルナ……頑張る、僕頑張るから」
しかし、今は僕が1人だけ。足音や風の音、呼吸音や雪および落ち葉を踏みしめる音しか聞こえないから、不安や緊張感が普段とは比べ物にならないくらいに大きくなっている。
正直言ってしまえば、今すぐにでも引き返してサニーたちについてきてもらうか、お願いして日記帳を手に入れてきてもらいたい欲求に駆られている。そのくらいには辛いのだ。
「駄目……駄目だよ、絶対に。その程度で諦めちゃ……!」
だけど、余程の事態が起こりでもしない限りは、僕は歩みを止めてはならない。できる限り自分のことは自分でやれるようになって、サニーたちにかかる負担を可能な限り減らすのだから。
それに、これが終わったらきっと、頭を撫でたりして褒めてもらえる。
もしくはサニーたちの満面の笑みが見られるか、そうでなくとも喜んでくれるはず。
仮にそれらがなくたって、最低でもサニーたちの負担軽減にはなり得る。つまり、ここで諦めて家に戻ってしまえば、間違いなく後で後悔することになると断言しても良い。
(……あっ)
でも、良く考えたら辛いと言うことは、多かれ少なかれ僕は今無理をしていることに他ならない。
出発時点ではまだしも、現時点での状況を客観的に見てみた場合、無理をしない約束を破っていると言わざるを得ない。
しかし、僕が本気で心からアピールしたからとは言え、最終的に1人お出かけを他ならぬサニーたちが認めてくれている。余程の無茶をして僕が大きく傷ついたりしない限りは、怒られるなんてことはないだろう。
「魔理沙……魔理沙、居るー?」
色々と考えながらも戻ると言う選択肢は
入り口の扉を軽く叩いて呼んでみても、少し強めに叩いてみても返事は帰ってこず、相当魔法の研究に夢中になっているのかもしれない。
もしくは、香霖堂や博麗神社、アリスの家や紅魔館や人里、他の僕が知らない場所に遊びに行っていると言う可能性もある。
後者の場合、魔理沙が帰ってくるのを待ち続ける手もない訳ではないけど、帰ってくるのがいつになるかは分からない。何なら、お泊まりで行っているなんて展開もあり得るのだ。
「……霖さんのところに行こっと」
だから、次の目的地を霖さんの家でもある香霖堂と定め、魔理沙の家から出発した。勿論、そこに日記帳があるなんて保証はまるでないけど、僕には全然関係ない。
とは言え、あまり長引いてしまうと身体的……いや、精神的に疲れきってしまうから、早めに手に入れたいところではあるけど。
「うぉっ……何だ、君か……って、もしかしてメノ1人なのかい?」
「うん、今日は記念すべき僕1人だけでの外出。新しい『日記帳』を手に入れたくて」
「なるほどね。それにしても、予想外だったから驚いたよ」
「ふふっ。僕が言うのもなんだけど、確かにそうだよね。霖さん」
で、これまた環境音にちょっとビクビクしながら歩き続け、いつもより長い時間をかけて到着した訳だけど、店前のガラクタの山で荷物整理をしていた霖さんに声をかけたら、目を見開いて驚かれた。
まあ、これまでは必ずサニーたちかチルノ一行、もしくは魔理沙と一緒に外出していた僕が、いきなり1人で外出しだしたのだ。後ろから声をかけたのも相まって、余計に驚きは大きかっただろう。
(また増えたっぽい?)
にしても、つい先日サニーたちと香霖堂へ遊びに来た時も凄かったけど、少し見ない内にガラクタの山が高くなっているように見える。
相変わらず、皆が無縁塚と呼ぶ場所を含め、そこら辺で拾うか貰ってくる癖は変わらないようだ。でも、霖さんが楽しめていてかつ生活に支障がないのであれば、僕は何も言うつもりはない。
「ところで、メノ。疲れているように見えるんだけど、うちで少し休んでいったらどうだい? 勿論、僕の方から強制することはできないから、君の意思次第ではあるけどね」
なんて考えていると、話が落ち着いたタイミングで霖さんから、そう優しく声をかけられた。
1人お出かけは、確かに僕にとってはかなり精神力を消費する行為であり、身体的には全然余裕でも精神的にはそこそこ疲れている。
このまま休まず、香霖堂で日記帳かそれに類するものがあるか探し、あれば買ってなければアリスの家ないし、魔法の森の外……博麗神社か紅魔館へ向かう余裕はあるけど、帰るまでにヘロヘロになり過ぎるのはあまりよろしくない。
お出かけを認めてくれたとは言え、今の時点でまあまあ心配をかけているだろうに、帰って来たと思ったら倒れましたなんてことになれば、流石に度を越したと判断されるだろう。
それこそ、目覚めた瞬間に泣きながらのお説教をさせることになりかねず、僕としては回避するべき展開である。
サニーたちを嬉し泣きや感動泣き以外、例えば自分の行動によって身体や心を傷つけ、泣かせたり苦しませたり悲しませたりすること。
これは、僕にとってやってはならない禁忌の1つであり、また最大の禁忌でもあるのだから。
「霖さん、ありがと。じゃあ、そうさせてもらおうかな……玄米茶ある?」
「今日は……うん、玄米茶はないなぁ。ほうじ茶ならあるけど、それでも良いかい?」
「うん、大丈夫。僕、お茶なら何でも好きだから」
と言う訳で、ここは霖さんの好意に甘えて一旦香霖堂で休もうと決めた。
サニーたちに魔理沙にチルノ一行程ではないけど、僕が一緒に過ごしていて安心できる人が近くに居る。これだけで、心にのしかかっていた重圧が一気に霧散していくのを感じる。
なお、霖さんは僕をいつもの居間に案内してお茶を出してくれた後、日記帳に使えそうな『本』を探しに、お店の中を回ってくれると言う。僕の方から、一切頼んでいないにも関わらず。
流石にこれには申し訳なく感じたため、途中から一緒に探すよとは言ったけど、少し微笑みながら「ゆっくりしてて良い」と言われたから、大人しくのんびりお茶を飲みながら待つこととしよう。
ちなみに、僕がサニーたちと一緒に
お店の中に一応、売り物として置かれている品々の中にもそれらしきものはあり、希望すればお金を対価に普通に買うことも可能。
無論、サニーたちや魔理沙、チルノ一行と香霖堂へ遊びに来た際に、お金のことを考えるのを前提条件とした上で、何度か既に急須やお茶用のコップなどを買って持ち帰ってきてはいた。
それ故に、僕の部屋のスペースはお茶関係の品々が、そこそこの割合で占められている。
まるで、コーヒー関連の品々が空間を占める割合がそれなりな、ルナの部屋のようになってきていたと、この間魔理沙に言われた。
なお、サニーたちからは「メノに新しい趣味ができて嬉しい」と、満面の笑みで歓迎されているし、何なら人里で定期的に新しいお茶を探しに行ったり、霊夢から色々と話を聞いたりしてくれている。
(……)
多分、僕がサニーやスター、ルナに恩を返しきることは一生できない。毎日毎日、無償で僕に『幸せ』と言う名の贈り物をくれるからだ。
だとしても、恩返しのために動くのを止めるなんてことはしない。しようとも思ってないし、そもそも
「おーい、香霖……なあ、霊夢。見間違いじゃなければ、あの妖精は……メノ、だよな?」
「何言ってるのよ、魔理沙。あの姿、あの仕草、あの力……どこからどう見てもメノじゃないの。信じられないのは分かるけどね」
心の中で、改めて僕に優しくしてくれる大好きな家族のため、恩返しを続けていくことを誓っていたその時、香霖堂に訪れた魔理沙と霊夢の2人と、視線が合った。
光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して
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チルノ&大妖精
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エタニティラルバ
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クラウンピース
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リリーホワイト
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全員
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作者にお任せ