光の四妖精   作:松雨

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祝福の朝日

 古今東西を問わず、睡眠をしっかり取ることやその質を高めることは、心身の健康を保つと言う点で重要だ。

 

 しかし、やるべき勉強や仕事・家事があったり、気温や湿度などがあまり適さない、酷い悪夢を見続けて怖かったなどの理由で、快適な睡眠を取れない場合も存在している。

 

「んにゃー……!? あぁ、もう良いんだったっけ」

 

 なお、前世の僕の場合は悪夢もそうだけど、当番制とは名ばかりの半強制的な早朝の家事が原因で、睡眠に関してはまあ色々と酷かった。

 現に今も、中学生と言うくくりで見ればかなり早い時間帯に、ピッタリと目覚めていたのだ。

 ここが幻想郷の魔法の森、何のしがらみもないサニーたちの家にも関わらず、である。

 

 でも、今日は睡眠時間もさることながら、寝た時の状況のおかげで睡眠の質が大幅に向上、途中で目を覚ますことも一切なかったためか、目覚めは非常に良かった。

 

 内容は殆んど忘れたけど、途中で見た夢が良いものだったことも一役買っているに違いない。

 

(もう人じゃないけど……新しい僕の人生、より良きものになりますように)

 

 性別が変わった上、種族が人間でなくなったのもあるだろう。気温や湿度など、環境の快適さも決して無視はできない要素の1つだ。

 

 ただ、1番はサニーたちから受けた親切(もらった幸せ)が、僕の心の深層にまで浸透したその事実があるからと言うのが、圧倒的に大きい。誰が何と言おうと、それは不変である。

 

「ルナ。ちょっと失礼するね……よいしょっと」

 

 そんなことを考えつつ、自分の寝ていたベッドのシーツを手早く取り替え、僕の様子をずっと見ていてくれたのか、椅子に座りながら眠っているルナをベッドに移し、椅子を片付けてからキッチンへと向かう。

 

 料理なんて魂に染み付くレベルでやってきたことだけど、楽しいと思った時なんて1度もなかった。

 

 しかし、提供対象がサニーたち3人なら訳が違う。僕の作った料理を食べて、楽しい朝を過ごしてもらいたいなと思っているのだから。

 

(……ん? 何だろう、これ)

 

 最初に案内されたリビングを通り抜けようとした時、テーブルの上に不思議な文様の描かれたふた付きのバスケット、側に「メノにも作ったからあげる」「良ければ食べて」とだけ書かれた紙が置かれていることに気づいた。

 

 既に沢山もらっている立場で、これ以上一方的に何かをもらうなんて申し訳ないなと思いつつも、受け取らないのは逆に失礼にあたるかと考えて、バスケットのふたを開ける。

 

「わぁぁ……!」

 

 すると、中から出てきたのはほんのり甘い匂いを漂わせる、色々な形や大きさをした、()()()()()()()()()()()であった。

 キッチンを含めた家の中の様子から、今さっきまで3人の内誰かが起きていて、クッキーを焼いていたとは考えづらい。

 

 ともなれば、このバスケット本体に食べ物の鮮度を保つ、何かしらの魔法的な仕掛けが施されているのだろう。

 

「美味しいなぁ……ぐすっ」

 

 匂いや見た目だけで分かっていたことではあるけど、やはりこのクッキーは凄まじい美味しさだ。

 特に、口に入れ噛んだ瞬間に広がる程よい()()は、お店に売られているものと遜色なく、超えていると言っても過言ではない。

 

 僕もある程度は作れるけど、クッキーを含めた焼き菓子に関して言えば、明らかに負けている。3人の内誰が作ったのか、全員で協力して作ったのかは分からないので、起きてきたら全員に感想とお礼を伝えるつもりである。

 

(あぁもう、本当にサニーたちは……)

 

 側に置かれていた紙のメモ……メノにも作ったからあげるとの文言を見れば、僕だけのために作ったクッキーでないのは確かだ。

 

 でも、それでも寝ていた僕のことも考えて、ちょっと多めかつ焼きたてを食べれるようにと魔法の道具を使って保管してくれた、その気遣いだけでも十分すぎるくらいには嬉しい。

 

 お陰様で、昨日程ではないにせよ泣き疲れるくらいに出したはずの涙が、再び僕の目からとめどなく流れてきている。

 昨日みたいに声をあげて泣きかけたものの、それは意地でもこらえた。

 

 リビングでの話し声が各々の自室に丸聞こえ、またはその逆となる甘い造りになっている家ではないにせよ、うっかり聞かれて余計な心配をかけたくないからである。

 

 僕のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど、気遣いすぎるがあまり自分たちの生活まで犠牲にして欲しくない。

 この幸せを感じるには、サニーやスターやルナが普段通りに生活していることが、前提条件なのだから。

 

「すぅ……はぁ……うん、ごちそうさま」

 

 ごめんねと内心では謝りつつ、のんびり食べているとこらえきれずに幸せのあまり、声をあげて泣いてしまいそうになるクッキーを少し急ぎ目に食べ終えた後、僕は大木の1番上にあるバルコニーへと登っていく。

 

 本来は料理を作り、起きてきた後の3人にすぐ振る舞えるようにする予定だったけど、今はもうそんな気分じゃなくなってしまったのだ。

 

 まあ、にとり印の冷蔵庫に保管されている食材の使用許可を得ていないと気づいた以上、僕の気分云々は関係なくなっていたのだけども。

 

「メノ、早いけどおはよう。泣いてくれる程に美味しかったなんて、嬉しいわね」

「あわわっ!? スター、起きてたんだ」

「少し前に。あなたの反応が気になってたからか、いつもより早めにね」

 

 バルコニーから、遠くの夜が明けかけている空を見ながら気分転換をしていると、不意に後ろから声が聞こえてくる。

 振り向くと、そこには起きたばかりなのかパジャマ姿で、少し寝ぼけているスターが立っていた。

 

 いつの間にか僕の後ろにつけられていたどころか、クッキーを泣きながら食べていた時から全て見られていたことが判明、後の祭りだと言えよう。

 

「ところで、あのクッキーを作ってたのってスターだけ?」

「サニーとルナにも多少手伝ってもらいはしたけど、基本は私よ」

「そっか……ありがと。心が暖かくなったよ」

「それは良かった。喜んでもらえたのなら、頑張って作った甲斐があったわ」

 

 それにしても、あのクッキーは殆んどスターの手によって作られたお菓子だったとは、凄いお菓子作りの腕の持ち主だったようだ。

 

 お店を出しても、普通に売れるクオリティだと直感する領域にまで技術を磨くには、相当の時間と根気が必要だったに違いない。

 

 しかも、幻想郷では僕の前世とは違って、何を作るかによって左右はするものの、お菓子作りに必要な材料を一式揃えるだけでも結構大変だと聞く。

 

 普通の料理、とりわけ和食や和菓子に使用される材料に関しては『人里』の存在もあり、比較的容易に揃えられるみたいだけど。

 

「ねえ、お菓子作りは楽しい? 料理って楽しい?」

「ええ。どっちも、()()()()()()()()。私の仲間に友達、振る舞う度に喜ぶ顔が見れるもの」

「そうなんだ。僕も、スターたちに振る舞ったら喜んでくれるかな……?」

「えっ? メノって料理できたの?」

「うん。誰も褒めてくれなかったし、むしろ失敗したらその……だから上手くなっちゃった」

「わぉ、凄い過去……」

 

 そして、やはりと言うべきか普通の料理作りも、相当高い水準でこなせるらしい。

 

 サニーやルナ、スターの友人たちが喜んでくれることによるモチベーション大幅上昇が、技術力向上の最たる要因となっているようだ。前世の僕とは、まるで正反対である。

 

「だったら、私がメノの料理を食べてあげる! できたら、サニーとルナの分もあると喜ぶと思うから、今日作って!」

 

 すると、僕の作るであろう料理が気になったのか、話の途中でスターがリクエストしてきた。

 

 前世では決して見ることのなかった、僕の作る料理に多大な期待を寄せてくる、そんな感じの瞳で僕の方を見つめてきている。

 

 スターはもとより、今は寝ているサニーやルナもきっと、多少の失敗くらいであれば怒らないだろう。間違いはない。

 

 しかし、だからこそ僕のやる気に火が付く。僕が何かしら料理を作ることが恩返しの一端となるのなら、絶対に失敗などしてはならないし、してなるものか。

 

「勿論だよ。僕の本気の料理、楽しみに待ってて!」

 

 そんな僕を祝福し、頑張れと応援してくれているみたいに昇ってきた朝日を背に、僕はスターのお願いを受けることに決め、そう伝えた。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

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