賑わう大食堂にて、注文した美味しい料理を食べたり会話を交わしたりして、存分にその一時を楽しんだ後、食後の本格的な休憩のために僕たち6人は一旦解散し、各グループで部屋に戻っていた。
戻っている最中、いつの間にか夜になっていたことに気づいたサニーが、ニコニコしながら「皆でのんびりお風呂に入りましょ!」と提案、僕を含めて誰も反対しなかったからだ。
元々、このお泊まり会に招待した妖精さんたちは、お風呂に入りたいと思ったら、午後10時までに来客用の大浴場を使う手はずとなっている。
人数が多く、水浴びないし入浴中に知らない妖精さんが同じ空間に居ることに対し、僕ほど過剰な抵抗感を抱く妖精さんは滅多に居ないから、至極当然の決まりと言えるだろう。
なお、僕にサニーたち以外と一緒にお風呂に入った経験はないから、勝手な想像に過ぎないのだけど。
「チルノと大ちゃん、リリーとピースとラルバ、ノーゼとスフェ……皆が皆、私たちと親しい妖精ばかり。メノにとって、落ち着ける面々だけが対象なのは良かった!」
「だよねー。メノに対する気遣いが凄いし、相当気に掛けてるんだわ」
「しかも、万が一それでも恥ずかしいとかで無理な場合は、申し出てくれれば別の浴場を用意するとまで、招待状に書いてあった……凄いよね」
しかし、レミリアは僕がサニーたちとお泊まり会に参加することを想定して、期間中専用の浴場を貸し切りにしてくれていた。
僕やサニーたち以外だとチルノや大ちゃん、リリーにピースにラルバ、ノーゼにスフェがそこを使える権利を与えられているとのこと。名前が挙げられている皆は、大切な僕の友達である。
「うん。僕がレミリアに認めてもらえてる感じがして、凄く嬉しい。いつか必ずお礼しなきゃ」
「ふふっ……そうね、メノ!」
確かに僕は、レミリアとは友達だ。他の知らない妖精さんたちに比べたら、多少なりとも扱いに差が出るのもおかしくはない。
しかし、紅魔館の住人はもとより、サニーたちやチルノ一行に比べたら、レミリアと僕の友達付き合いはかなり短い。その割には、家族か親しい友達に対する特別としか言い表せない扱いなのだ。
もしかすると、妖精に対しては手厚いその方針に、僕との友達付き合いに何かしらのメリットを感じているのかもしれない。
(あっ、そう言えば……)
と、ここまで考えて思い出した。レミリアは僕に、可能ならば僕に雇われメイド妖精としていずれ、週に何回か働いて欲しいと言っていたことを。この気遣いも、前払い的な意味合いも含まれている可能性がある。
しかし、初めて出会った時にレミリアが言っていた「友人関係にはなっておきたい」との言葉、僕との付き合いに打算的な意味合いしかないか、ないに等しい弱さであるとしたら、決してこんなことは言わないはず。
嘘をついた可能性に関しても、あの言葉をかけてくれた時の穏やかな表情を思い出すだけでも、皆無であると分かった。
後はそもそも、妖精に対して手厚いと評されるレミリアが現状、相手が僕でなくとも下手すれば傷つきかねない嘘をつくとは、到底思えないと言うのもある。
つまるところ割合としてはほぼ同等、雇われメイド妖精の件の方が、若干ついで感があると見て間違いはなさそうだ。
だからこそ、僕の家事力を頼りにしたがっているレミリアに応えたいとの思いが、今までよりも強くなってきたと見て良さそう。
「さてと……スター、メノ。何だかんだ、そろそろ約束の時間が近くなってきたわ。お腹も大丈夫だろうし、浴場に行きましょ!」
部屋に戻り、わいわい騒がしくお話したり何も考えずにぼーっとしたりなど、食後の本格休憩を取り始めてからおよそ1時間半、約束の時間が近くなってきたこともあり、サニーの一声で浴場へと皆で向かっていく。
僕の家ではない場所で、サニーたちに加えてチルノや大ちゃんと一緒に湯船へ浸かる。きっと、楽しい時間となるに違いない。
ただし、チルノに関しては氷精の割には火や熱への耐性は高い方だけど、それでも弱点なのが問題だ。
お湯の温度にもよるけど、一緒に浸かるのは体調的にも恐らくよろしくないだろうし、楽しむのなら水風呂に浸かるか足湯で過ごす流れになるだろう。
(……)
加えて、場所が場所なだけに仕方ないことだとしても、浴場では否が応でも全裸の姿を目にすることとなる。
家族ないし親しい友達相手に、僕がそういう類いの感情を
「ねえ。チルノと大ちゃん、僕とお風呂で一緒になるの嫌じゃないかな……?」
「心配いらないよ、メノ。サニーが2人を誘った時の反応を良く考えてみて」
「だよね……うん、少し心が楽になったかな。ルナ、ありがと」
それに、僕は今世だと女の子でも、前世では男の子。ルナが優しく声かけしてくれたとは言え、チルノと大ちゃんが何を思っているかが、正直心配で仕方ない。
もっと言えば、リリーとピースとラルバの内の誰か、ないし全員が入っている可能性もある訳だから、尚更だった。
「あっ、メノだ! やっほー!」
「うん。えっと、リリーも今からお風呂に入るんだ」
「そうだよー。サニーたちとはともかく、メノと一緒のお風呂は初めてだから、かなり楽しみ!」
サニーやスター、ルナと話しながら貸し切り浴場と書かれた扉を開けて入ると、今まさに脱衣場から浴場に続く扉を開けようとしていたリリーが僕たちに気付き、ニコニコで話しかけてきた。
僕の前世を知っているリリーのこの振る舞いは、今世の僕だけを見てくれていることの、絶対的な証明である。
「じゃあ、先に入ってるねー」
この様子だと、チルノと大ちゃんはもとより、ピースやラルバも前世が云々とか全然気にすることなく、僕と一緒にお風呂でゆっくりしてくれそうだ。ノーゼとスフェだって、きっと同じだろう。
確かにルナの言う通り、色々と心配する必要なんてない。
むしろ、下手にし過ぎて察され、変に気を遣わせてしまうかもしれないと言う意味では、むしろしない方が良い。
「きゃはは!! 貸し切りお風呂だからやりたい放題できるぜー!」
「クラピちゃん? 確かに私たちしか居ないけど、お風呂で泳ぐのはちょっと……」
「何か壊さなきゃ平気平気! リリー、向こうまで競争しよう!」
「うん! 負けないよー、クラピ!」
「あぁ、リリーちゃんまで……」
「暑いところだとテンション上がるもんな、クラピ。それよりも大ちゃん、お湯に浸からなくて大丈夫? あたいなら足湯で大満足だからさ」
「大丈夫。心配しなくても良いよ、チルノちゃん」
そんなことを考えながら、恥ずかしさ云々は考えず服を脱ぎ、名札をつけてから洗濯かごに入れる。
で、持ってきた着替えとタオルをサニーたちと一緒の棚に置いてから浴場へと入った瞬間、目に入ってきたのはお風呂のお湯で豪快に泳ぐ、ピースとリリーだった。その是非は置いておいて、楽しそうで何よりである。
大ちゃんはチルノと足湯をしていて、その隣では頭にタオルを乗っけたラルバが、はしゃぐ2人を見ながらお湯に浸かってリラックスしていた。
どうやら、ほぼ全員がタイミング良く貸し切り浴場を使っていたらしい。今でも大分賑やかなのに、ここへ僕やサニーたちが加わったら、一体どこまで賑やかになるのだろうか。
欲を言えば、ノーゼとスフェも一緒なら妖精の友達勢揃いで最高だったけど、2人にはメイド妖精としての仕事もあるし、お風呂に入るタイミングが揃う偶然が起きるとは、あまり思えない。
そもそも、一緒に入りたいならまずサニーたちに協力してもらい、探し出して声をかけるくらいしようと言う話である。
「お待たせー! 妖精軍団全員勢揃いだなんて、随分賑やかな入浴タイムになってるみたいね!」
「あっ、サニーたちも来たんだ。こっちは相変わらず、騒がしくやってるよ」
「そうそう。クラピちゃんもリリーちゃんも、当分あんな感じでいるかも」
元気良く声をかけたサニーに続き、スターもルナも妖精らしい元気な声をかけて、少しだけ熱めのお湯に浸かり、リラックスモードに入る。
僕に関しては、サニーたちのように大きな声を出すのは恥ずかしかったから、3人の会話が途切れたタイミングを見計らい、一番最後に入ると同時に普通に喋りかける。
すると、チルノと大ちゃんは言わずもがな「先に入って待ってたよ」と、ラルバも「一緒に楽しもうね」と、側に寄ってきて笑顔で優しく声をかけてくれる。
「ぶはぁ! あたいの勝ち……ん? おおっ、サニーたちに……メノも居るんだな!」
「うん……その、ピース。いつもよりテンション高いね」
「そりゃあ、あたいの大得意な暑い場所だし! 多分、1時間くらいは居るかも!」
「わぁ、結構入ってる。流石は地獄の妖精、暑さ耐性が凄まじい」
そして、リリーとの泳ぎの勝負を勝利で終えたピースは僕に気づくと、大歓迎と言った感じの表情と仕草を見せながら寄ってきて、話しかけてくれた。
もう一度言おう。やはり、ルナの言う通り前世の性別云々の心配は必要ではなく、むしろ不必要なことであったと。
仮に、さっきまでしていた心配通りであったのなら、こうしてわざわざ近寄ってくる訳がない。微妙な表情をして距離を取るか、そそくさと上がっていくかの2択になるだろう。
今、僕の背中の羽の色はきっと、幸せで楽しい感情を表す桜色に輝いているに違いない。
「じゃあ、サニーちゃんたち。そろそろ身体洗おう」
「そうね! て言うか今更だけど、入ってきてからすぐに洗えば良かったんじゃ……?」
「「「あー……確かに」」」
皆が皆、良い感じの温度のお湯に浸かりながらの一時を楽しみ、身体がある程度暖まってきた時、既に先に入っていたラルバとピース以外の全員、身体を洗うために湯船から一旦出る。
洗面器やお風呂用の椅子などのみならず、コンディショナー入りのシャンプーやボディーソープなど、高品質かつ必要なものが完備されている、普段はメイド妖精さんが使っていると言うこの浴場。
脱衣所も快適な場所だったし、毎日ないし1日おきの入浴タイムを少しでも楽しめるよう、レミリアがお金と時間を惜しまずに使い、どこからか取り揃えているのが素人目にも良く分かった。
紅魔館で暮らす妖精さんたちはきっと、毎日が凄く楽しくて幸せそうだ。
「それじゃあ、メノ。背中流すね」
「うん、お願い。ルナ」
ちなみに、僕がサニーたちとお風呂に入る時は、そこそこ高頻度でルナとお互いの背中と羽を洗いっこしている。
初めて家のお風呂に4人で入った時に洗ってくれたのがルナで、それが何だかんだ習慣として続いているだけの話であり、特別な理由とかはない。
なので、その時の気分や流れでサニーやスターと、背中や羽の洗いっこをすることもあるのだ。
「ふぁぁ……ルナ、いつもありがと。洗い心地良かったよ」
「どういたしまして。じゃあ、次は私の背中と羽をお願い」
「勿論、任せて」
なお、妖精の羽は根元が敏感な部分であるため、洗う際はあまり強く擦ったり引っ張ったりしないように気を使う。
一方、本体部分はうって変わって鈍感な方なので、多少強めに擦って洗うくらいならさほど問題にはならない。
仮に根元と同じくらい敏感だった場合、日常生活に支障をきたす確率が高くなりそうだし、ちょうど良いと言える。
勿論、だとしても同じくらいに気を使い、洗うことに変わりはない。これは、当然の摂理であろう。
「……よし。ルナ、今日はどうだった? 洗い心地良かったかな?」
「うん、凄く洗い心地良かった。ありがとう」
「えへへ、どういたしまして」
だからこそ、こうして微笑みながらお礼を言われると、全然痛くなかったんだなと安心できるのである。
そして、ルナとの背中と羽の洗いっこが終わったら、残りの自分で洗える箇所をいつものように丁寧に洗い、頭もシャンプーで同様に洗って熱めのお湯で流せば、後は湯船に浸かってから上がるだけとなった。
(暑くなってきたなぁ……どうしよ)
だけど、こうしている内に暑さがそろそろ厳しくなってきた、そんな感じがしてくる。お湯の温度が、家より明らかに熱めだからだろう。
耐えようと思えば耐えられる程度でしかないけど、それをやったら僕の身体云々でサニーたちを悲しませるのみならず、間違いなく怒られてしまう。
「あのさ、ルナ。ちょっとその……僕だけ先に上がっても良いかな……?」
「先に? 暑くなってきたの?」
「うん」
「分かった。ちょうど私も、どうしようか迷ってたところだし、一緒に上がろう」
と言うことで、フェイスタオルで顔を拭いていたルナに相談してみたところ、ルナ自身も限界近かったこともあってか、先に2人で上がることになった。何となく、気を遣われた感じがしてるけど、言わない方が良いかもしれない。
で、そのことについて皆に伝えようと湯船に向かったところ、先に身体を洗い終えてお湯に浸かっていたサニーとスターから、ピースとラルバが2人で先に上がっていったことが伝えられる。
まあ、僕たちよりも長く入っていたのなら当たり前か。そんなことを思いながら、僕とルナも浴場を後にしていく。
光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して
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チルノ&大妖精
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