光の四妖精   作:松雨

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今話はレミリア視点です


紅魔館の主の思考

 メノウの存在を認知してから、物資の仕入れなどの準備を行いつつ企画を温め続け、満を持して今日開催した冬の妖精お泊まり会。

 

 紅魔館史上滅多にない超大規模なイベントかつ、結果次第では館の運命をより良い方向へ導いてくれるだけあって、かなり気合いを入れていた。

 

 開催予定期間は約1ヵ月、ノーゼやスフェと同等ないし強力な9人の妖精を含む、能力で運命を見て選んだ100人を招待している。

 

 招待人数はもとより、期間だってお泊まり会の範疇に収まらない長さであるものの、名称がこれしか思い付かなかったから仕方ない。

 

「咲夜、そっちの方の妖精たちはどんな感じだった?」

「上々ですね。今のところ、問題もほぼ想定内に収まっている感じなので」

「なるほど。ひとまず、初日は大丈夫そうね」

 

 私自身も暇な時に直接見て回ったりしているけど、今のところは喧嘩や1回休みの発生と言った問題は起こらず、あってもイタズラなどで物が壊れたり汚れている箇所が僅かに増加する程度で留まっていた。

 

 後は、妖精が集まることによって館全体が更に騒がしくなっている点も、問題として挙げようと思えば挙げられるだろう。

 

 しかし、前述の問題に比べれば何ら大したことではない。私個人的には、それを問題とすら捉えていないのだから。

 

「ところで、咲夜。光の四妖精の姿を道中で見かけたりした?」

「いえ、見かけておりません」

「そう。なら、妖精軍団の誰かはどうかしら?」

「同じく、見かけておりません」

「分かったわ。ありがとう」

 

 こう言ってはなんだけど、それよりも目下の課題は光の四妖精……特に新参妖精のメノウが、紅魔館に対して良いイメージを抱いてくれているか、この大人数の環境に強い負担を感じていないか、である。

 

 純粋に、家事負担軽減のために彼女が持つ咲夜級の家事能力が欲しいと思ったのもあるけれど、館の運命をより良い方向へ導いてくれる要因の1つになると、能力で見え始めてきたからなのも大きい。

 

 果たして、この冬の妖精限定お泊まり会が望み通りの展開となるか、それは私がどれだけ上手く立ち回れるかにかかってくるはずだし、頑張らなければ。

 

「さてと。光の四妖精の様子でも見に行こうかしら。咲夜もついてきなさい」

「承知しました。お嬢様」

 

 そんなことを考えつつ、メノウや他の三妖精の様子をこの目で見て確認するため、私は咲夜を連れて自室を出ていった。

 

 確か、今の時間は夜の8時半。人間とほぼ変わらない生活サイクルではあれど、寝るにはまだ早いはず。

 

 外はかなり冷え込んでいるし、時間帯的にも庭エリアに居るとは考えにくいから、館内を探せば良い。

 

 終盤ならいざ知らず、序盤も序盤である以上必ず2人以上で行動しているはずだから、見つけやすいはずである。

 

 とは言うものの、咲夜の能力で外からの見た目以上に広い紅魔館の館内、すれ違い続けて見つからない可能性も十分にあり得る。

 

 だから、場合によっては妖精軍団の内の誰かに範囲を広げ、メノウや他の三妖精の居場所を尋ねてみよう。

 

「うん、やっぱりそうだった。レミリア、咲夜!」

「わっ、メノ! ちょっと待って!」

 

 しかし、壁の途中から天井までが強化魔法ガラス張りの、憩いの広場へ足を踏み入れた瞬間、ルナと水を飲んでいたメノウがコップを置くと、こちらに駆け寄ってきた。本格的に探し始めてから、たった10分程度での発見である。

 

 今はルナとは一緒みたいだけど、サニーとスターは側に居ないようだ。たまたま席を外しているのか、単に別行動しているだけなのかは分からないけど、そこはさほど重要ではない。

 

「あらあら……その様子だと、お風呂に入ったばかりなのかしら?」

「あ……うん。サニーたちや、チルノ一行も一緒に。沢山お話しながらのお風呂タイム、凄く楽しかった」

「なるほど。じゃあ、2人は先に上がってきたのね」

「そう。僕が暑さにちょっと弱くて……ルナ、改めてありがと。僕のこと、気遣ってくれてさ」

「気にしないで良いよ。このくらい、私にはなんてことない」

 

 何故なら、1番確かめたかったことを確かめることができたからだ。と言うか、会話の流れで他の2人がどうしてるかも知れたし、目的は達成したと言っても過言ではない。

 

(そりゃそうよね。私だって驚いたし)

 

 ちなみに、私たちを見つけるなりニコニコしながら駆け寄ってきた時、メノウにしては大きな声を出していたことに咲夜はかなり驚いていたけど、納得でしかない。

 

 魔法の森にある、光の四妖精が住む家へ遊びに行った時ならまだしも、ルナが側に居る点を考慮に入れたとしても、完全に初めて訪れる場所であるはずの紅魔館でこの振る舞いなのだから。

 

 とは言え、メノウにとってこの館にはまだまだ未知な部分が多い。ルナ曰く、自分たちの部屋以外だと大食堂や貸し切り浴場、そこに至るまでの廊下しかまだ行っていないためである。

 

 更に、大半のメイド妖精はもとより、美鈴と咲夜と私以外の紅魔館の住人……親友のパチェに使い魔のこあ、妹のフランとはまだ相対していない。

 

 こあはともかく、パチェとフランは積極的に自分から外出したがるタイプではないため、不意に出くわしてビックリさせる心配はあまりない。あくまでも、あまりないだけではあるので、早いところ紹介はしておきたいけど。

 

「お待たせー! ルナ、メノ!」

「レミリアに咲夜も居るんだね。4人で何を楽しそうに話してたの?」

 

 頭の片隅でそんなことを考えながら2人と会話をしていると、今さっきお風呂から上がってきたと思われるサニーとスターが、憩いの広場へ入ってきたことに気づいた。

 

 お風呂上がりはここに集合しようと、4人で事前に決めていたのだろう。

 

 手元には大きめの水の入ったティーポット、2人分のコップを持っているのを見るに、綺麗な星空や月を見ながらのんびりするつもりだったらしい。

 

 ちなみに、雪は夕方になった時に既に止んでいて、更に雲もほぼ夜空から消え去っている。なので、状況的には最高に近い星見日和だ。

 

「お泊まり会を楽しんでるかどうか、2人に色々聞いてたのよ。サニーとスターも、今日はまだ1日目だけど、どうかしら?」

「楽しんでるわ! スターもそうでしょ?」

「まあねー。しかも、今回はメノも居るから尚更楽しいし」

「そう。お泊まり会の立案者として、その言葉はかなり嬉しいものね」

「良かったですね、お嬢様。今回、かなり苦労されていましたし」

「物資の量とか、物資の量とか、物資の量とか……本当に大変だったわ。まあ、それに見合うだけの結果は得られそうだけど」

「あー……確かに、1ヵ月も開催するなら、決して避けては通れない問題」

 

 メノウやルナのみならず、サニーやスターもこのお泊まり会を存分に楽しんでくれている。直接確認した訳ではないものの、妖精軍団も同様みたいだから、私としても嬉しい限りである。

 

 この評価を、お泊まり会の最終日まで現状維持ないし上昇させることができれば、メノウがうちで雇われメイド妖精として働くことに、前向きになってくれる可能性が高まるに違いない。

 

 そして、そうなれば連鎖的にスターも、雇われメイド妖精としてうちに来てくれる流れになり、晴れて計画通りとなる訳だ。

 

 当然、対価として金銭と何らかの食べ物や飲み物、もしくは物資を渡す以上そう言う面での負担は増えるけど、それで館の皆のためになるなら安いものだと言えよう。

 

 仮に頼み、それは嫌だとか無理だと言われて断られてしまったとしても、メノウとの友人関係を今更変えるつもりはないけど。

 

「ねえ、レミリア」

 

 すると、サニーやスターとの会話の途中でメノウが、後ろから私の翼を優しく引っ張りながら声をかけてくるので、どうしたのかと思いながら振り向く。

 

(……ああ、そういうこと)

 

 表情と仕草そのものは何度も見たことがある、友人に感謝を伝えようとしている時のものと、ほぼ同じであった。そう言えば、最初に駆け寄ってきた時も何かを私に伝えようとしていたような覚えがある。

 

 私へ向けられる暖かな感情はより露に、羽から発せられる桜色の光もその輝きをより強く、声もいつもより力強くなっている。違う点は、この3つだ。

 

 流石に、家族であるサニーたちやそれに準ずる魔理沙へ向けるものよりは数段、仲良しな妖精軍団などに向けるものよりも、強度や規模は一定程度劣ってはいた。

 

「メノウ、どうしたの?」

「あのさ。本当に、その、えっと……お泊まり会で僕のこと、気遣ってくれてありがと」

「ええ、どういたしまして。私とメノウは種族は違えど友人同士、この程度の気遣いは当然のことよ」

「わぁ……! えへへ、嬉しいなぁ。こんなに優しい友達が居てくれるなんて、僕は幸せ者だよ!」

「ふふっ、喜んでくれて私も嬉しいわ」

 

 しかし、メノウが今この瞬間更に私に心を許し、友人として1段階上の存在へと格を上げてくれたことには間違いなく、嬉しい展開だと言えよう。

 

 相も変わらず、私とかがちょっとした親切や優しくかけた言葉で、泣きはせずとも高頻度で瞳を潤わすから、元気になっているように見えて心はまだまだ癒えきっていない。

 

 まあ、ある意味ではノーゼやスフェよりも辛く厳しい過去を、前世で経験してきているのだ。

 

 今でこそ過去のトラウマを完全に払拭したノーゼやスフェも、ここに至るまでに相当な年数が経っている訳だし、1年にも満たない短期間では当然の摂理だ。

 

「ふぁぁ……何だか、眠くなってきたわ。メノはどう?」

「確かに、僕もちょっとだけ眠たいかも……?」

 

 せっかくと言うことで、私や咲夜も憩いの広場の椅子に腰かけ、光の四妖精との他愛もない話も織り交ぜて会話を楽しんでいると、サニーが眠たそうにあくびをする。

 

 咲夜の懐中時計を見て時計を確認したところ、午後10時を回っていた。夢中で楽しんでいたから気づかなかったけど、1時間半以上も経っていたらしい。

 

 時間帯が夜でなおかつ入浴を済ませているのなら、余計に眠気も強くなってきていることだろう。

 

 他の3人もサニー程ではないものの、眠気のお陰か当初の元気がなくなっているように見える。ともなれば、会話はこの辺で切り上げておこう。

 

「長話ありがとう。4人とも眠たそうだし、私たちはもう行くわ」

「うん、じゃあね。咲夜も色々、僕やサニーたちのためにありがと。その……食堂で食べたあのパスタ、作ったの咲夜だと思うんだけど、凄く美味しかった。それこそ、毎日でも食べたいくらいに」

「良く分かったわね……ええ、お気に召したようで何より。ちなみに、明日と明後日は担当じゃなくなるから、そこのところよろしく頼むわ。メノウ」

 

 と言う訳で、最後に簡単な声掛けをお互いにし合ってから、私と咲夜は憩いの広場を後にしていった。

 

(嬉しそうね、咲夜。まあ分かるわ)

 

 私も、メノウや他の三妖精がこのお泊まり会を、存分に楽しんでくれていることが振る舞いから分かった時、とても嬉しかった。

 

 だからこそ、咲夜がメノウから自分の料理をべた褒めされたことに嬉しがり、魔法のバスケットを購入して作り置きしておいてあげようかと考え始めたのは、当然の流れなのかもしれない。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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