光の四妖精   作:松雨

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今話は前半射命丸文視点、後半が主人公視点となっています。


得意な料理

 紅魔館にて、5日前から大々的に開催されている、冬の妖精お泊まり会。

 

 伝え聞いた話では、総勢で100人もの妖精を招待しているとのことで、館に元々メイドとして居る妖精を合わせれば、軽く300人は超えるはず。

 

 流石、妖精の館との別名でも知られている紅魔館の主(吸血鬼)、レミリア・スカーレットだと言えるだろう。

 

「文さん、何かご用ですか? まあ、用件は察しがつきますけど」

「ご名答。1ヵ月もの長期間開催される冬の妖精お泊まり会、これの取材がしたいんですよ」

「やはりそうでしたか。レミリアお嬢様からは、「文が来たら通しても良いわ」と言伝を預かっていますので、入るのであればどうぞ。開催中はフリーパスです」

 

 しかも、その100人の中には私が個人的に取材したいと考えている、光の四妖精を構成する内の1人、テルースメノウも入っていると聞く。

 

 チルノを筆頭とした妖精軍団や、魔法の森を住みかとする光の()()()、紅魔館の二大妖精長と同等の強さを誇る妖気。

 

 そんな彼女たちどころか、幻想郷の中でもトップクラスに速い魔理沙と張り合えるレベルの飛行速度。

 

 あの咲夜や霊夢ですら、手放しで褒め称える程に優れている家事能力。

 

 他にも幽霊と共存しているだとか、色々と興味を引く噂話が出てくるのだし、取材したくなるのも当然だと私は言いたい。

 

「良かった、ありがとうございます。では――」

「あっ、すみません。1つだけ、取材の際には注意事項があります。文さん、メノウちゃんとは相対したことはあります?」

「博麗神社で、三妖精と一緒に居る時に1度だけ。軽く顔合わせをした程度です」

「なるほど。羽の色が青色に光っていた、もしくは逃げようとする素振りを見せるなどしませんでした?」

「うーん……青ではなかったですね。後、警戒はされていても、逃げようとはしていなかった覚えはあります」

「でしたら、相対する時は可能な限り穏やかに接すると心がけ、なおかつ三妖精や妖精軍団の誰かが一緒であれば大丈夫でしょう」

 

 しかし、何が原因なのかは分からないけど、メノウは非常に臆病な妖精であることも知られている。

 

 その情報を元に博麗神社での初対面時、極限にまで発する妖気を減らすなどして気を使ってすら、緊張のためか私との会話中ずっと、側に居たルナの手を握っていたのだ。

 

 果たして、何が彼女をそこまで臆病にしてしまったのだろうか。妖精を精神的にあそこまで追い詰めるなど、余程のことがなければあり得ない。

 

 そして、そんなメノウと友人以上家族以下の関係を比較的短時間で築くことに成功した、目の前の美鈴を含む面々は凄いのではなかろうか。

 

 何となく相性が良かったのか、メノウにとって何かしらの得があったのか、はたまた私の想像の範囲外の出来事によるものなのか、聞いてみないと分からない。

 

「ちなみにですけど、美鈴さんは彼女とどのような関係でしょうか?」

「友達です。レミリアお嬢様についていって話をしていく内に、何だかんだで仲良くなれました」

「ふむふむ。仲良くなれたのなら、相性は良かったんでしょうね」

「まあ、少なくとも悪くはなかったと思いますよ。でも、相性の面だと三妖精たちを除けば、魔理沙さんの方が恐らく誰よりも圧倒的に上かと」

「圧倒的とまで言いますか。仲良しとは耳に入ってきてはいますけど……」

「はい。簡潔に言えば、三妖精たちとほぼ同等です」

「それ、もはや家族同然じゃないですか。魔理沙さんの何がそこまで……?」

「さあ、そこまでは私も聞いてないので、何とも言えません」

 

 取材も兼ねて色々と聞いてみたところ、どれか1つだけと言う訳ではなくて、相性も含めて色々な要素が絡まりあった結果、普通の友人関係を築けていたことが分かる。

 

 考えてもみよう。自分の館に多数の妖精をメイドとして雇い、安全を保証した上で住まわせる程、妖精に対して手厚いレミリアが主なのだ。

 ともなれば、個人差はあれど館の住人も妖精に対して手厚くもなるだろう。

 

 それに、美鈴本人も妖怪にしては温厚な性格。臆病で大人しい性格のメノウに合致し、友人関係を築く助けとなっても何らおかしくはない。

 

 だからこそ、私もその辺に注意して接していけば、取材をして写真などを新聞に載せる許可くらいなら、もらえるようになるに違いない。

 

 上手く行けば、お泊まり会の開催期間中に完全に警戒を解き、友人関係を結び、お泊まり会以降の取材の約束も取り付けやすくなるはずだ。無論、断られたら大人しく引き下がる。

 

(……隙間時間を作っておくべきだったわ)

 

 ただ、良く考えたらあの時以降忙しかったりなど理由があったとはいえ、顔合わせをしていない。期間もそれなりに空いているから、もしかすると私のことが忘れられている可能性もある。

 

 まあ、それでも開催期間中の紅魔館の取材がてら、メノウが三妖精と一緒に居るタイミングを見計らい、何度か顔見せするのは変わらない。変わるとしたら精々、必要回数が少し増えるくらいか。

 

「ありがとうございました、美鈴さん」

 

 頭の中で高速で思考を巡らせながら、色々と話してくれた美鈴に感謝の言葉を述べた後、私はすぐに門をくぐって中に入った。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「わぁ……!」

 

 見るまでもなく分かってはいたけれど、紅魔館のメイド妖精さんたちやレミリアたちの『食事』を支える調理場は、相応に広かった。

 

 当然、料理に必要なありとあらゆる器具、各種食器やワイングラス、ティーカップやティーポットなどの数も、僕の家とは比べ物にならない。

 

 雇われメイド妖精として働き始めたのならまだしも、その前に入って見学するどころか、こうして料理を作ることになろうとは、予想外でしかなかった。

 

「瞳が輝いてるねー、メノウ。やる気が漲ってる感じ?」

「うん! でも、大丈夫……かな。レミリアとか咲夜、怒ったりしない? 僕、まだ他人だし……」

「フランさまにお願いされてやるんだから、心配は要らないよ。二大妖精長のあたしも居るんだし、尚更ね」

 

 あっという間に、お泊まり会5日目となった今日の午前10時、サニーたちやノーゼと館内散歩をしながら遊んでいた時、1人で歩いていたフランさんに「メノウの料理を食べてみたいの。お願いしても良いかしら?」と、お願いされたのだ。

 

 メニューについては和食洋食中華などの分野も含めて問わず、僕の気分で構わない。

 また、最高の一品を作ってくれさえすれば、かかる時間に関しても気にしない。

 

 こう言われたため、作る料理はサニーたちのみならず、魔理沙や霊夢にも大好評だったコロッケと決めている。

 

 どうせなら、定番の味噌汁とか玄米ご飯も入れたかったけど、にとり印の冷蔵・冷凍庫や食品棚を探してみても、材料がかなり少なかったからやめておいた。

 

 それに、フランさんは最高の一品と言っていたし、勝手に品数増やしたらどう思われるか分からなかったから、多分これで正解だとは思う。

 

「本当に良いの……?」

「良いよ。フランさまの希望だし、あたしたちはサポートに回るから、色々と指示出して。あればだけど」

「「「しろちゃん、任せてねー!!」」」

 

 色々考えながら、ノーゼや数人のメイド妖精さんにも手伝ってもらいつつ、材料や調理器具の準備を終えると、早速コロッケ作りを開始した。

 

(……えへへ)

 

 今思うことではないだろうけど、やはりと言うべきか僕の存在のみならず、モリオンがつけてくれた僕の愛称は、紅魔館のメイド妖精さんたちにかなりの勢いで広まっているらしい。

 

 だからなのか、サニーたちと遊んでる時もメイド妖精さんが混ざってきたり、僕にもイタズラを仕掛けてきたり、まるで同じ屋根の下で暮らす仲間であるかのように扱ってくれている。

 

 知らない他人(妖精さん)からの好意的な視線、緊張感はあれどそれと同じくらいの嬉しさも僕は感じていた。本当に、幻想郷へ来てからずっと恵まれていると思う。

 

「ノゼアンさま! しろちゃん、お料理上手なんだね!」

「そう。何せ、あの咲夜が「私の代わり任せても大丈夫そう」って言う程だから」

「咲夜さまが? ふーん……」

 

 適量の塩と手頃な大きさに切った、新鮮なじゃがいもを入れた鍋の水が沸騰したら火を弱め、その間に玉ねぎとおまけの人参をみじん切りにしていく。

 

 で、手早くみじん切りを終わらせたらフライパンに投入、時折じゃがいもの様子を見ながら炒める。今のところ、一切のミスはない。

 

(何だか……照れるなぁ)

 

 その間、ノーゼやメイド妖精さんたちの会話がしっかり耳に届いてくる訳だけど、あまりにも褒めてくれるものだから、物理的な熱とは別の要因で顔が火照る。

 

 しかし、それによって僕のやる気に更なる火がついた。絶対に、美味しいコロッケを作ってみせよう。

 

「しろちゃん! じゃがいも、やっといたよ!」

「うん。妖精さん、ありがと」

「えへへぇ~」

 

 バターやひき肉を投入して良い感じになるまで炒め、塩とこしょうと砂糖を適量入れて混ぜ合わせ、火を止めたタイミングで妖精さんに潰してもらったじゃがいもも混ぜて、味見した。

 

 何のミスもなくできたから、全く問題ない出来である。むしろ、素材が1段階良いやつだからか、いつも家で作る具より若干美味しいかもしれない。

 

 それに、手際の良い妖精さんたちのお陰でいつもよりも大分楽にできている。流石は紅魔館の料理担当、その腕は当然の如く伊達ではなかった。

 

「メノウ、こっちも準備終わらせといたよ」

「ノーゼも、手伝ってくれてありがと。後、まだやって欲しいことがあるんだけど、大丈夫?」

「勿論、そのためにあたしたちが居るんだしさ」

 

 と同時に、小麦粉と溶き卵と特製パン粉、揚げるための油の用意をしてくれていたノーゼにも手伝ってもらい、コロッケのタネの形を整えていった。

 

 そして、良い感じの温度になった油へ跳ねないようにゆっくりと入れ、用意したトングで時々ひっくり返しつつ、およそ3分間揚げていくことを4回繰り返し、合計で16個の熱々コロッケが出来上がる。

 

 が、ここまでやっておいて今さらなんだけど、いつもサニーたちと僕の分を作るノリで作ってしまったことに、不安を少しだけ感じてしまう。

 

 でもまあ、そこそこ多く食べるタイプとは聞いていたから、多分問題ないはず。それよりも、のんびり待っているであろうフランさんに運ぶ方を優先しなければ。

 

「よしっ……ノーゼ、妖精さんたち。お手伝いありがと、凄く楽だったよ」

「どういたしまして。じゃあ、出来たてコロッケ一緒に運ぶよー」

「「「はーい!!」」」

 

 そう思いながら、大皿に盛り付けた出来立てコロッケを、ノーゼたちと一緒に大食堂へと運んでいったのだけど、コロッケを作る前は居なかったはずの知ってる妖怪さんが1人増えていたことに、僕は気づいた。

 




完全に忘れていてすみません。新しいオリキャラ解説を追加しておきましたので、良ければご確認ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=303114&uid=286187

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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