いつぞや、博麗神社へサニーたちと一緒に遊びに行った時、僕に話しかけてきた新聞記者で、大妖怪の文さん。
メイド妖精さんとかレミリアたち、チルノ一行であればまだしも、関係ないこの妖怪さんが居ることは予想していなかったから、ちょっとだけビックリした。
紅魔館へ来た理由は、新聞のネタになりそうな冬の妖精お泊まり会に関して取材をしに来た傍ら、僕との交流を深めていき、いずれは特集を組めれば良いなと考えているからとのこと。
仮に僕の特集なんか組んだとて、文さんはもとより新聞を読んだ人は本当に面白いと思ってくれるのか、正直疑問ではある。
でもまあ、自信満々に「絶対面白い、そうでなくとも興味は引いてもらえますよ!」と言うのだから、他人である僕があれこれ口を出す必要なんてないのだ。
口を出すとしたら、サニーたちや僕の大切な友達を傷つけるようなことを書いて、皆に配り歩いたりした時くらいだろう。
まあ、文さんの目を見ればそんなことはしないって分かるから、心配はしてないけど。
「おぉ! 流石、噂に違わぬ料理の腕前! このコロッケ、非常に美味ですよ!」
「そう? 文さんの口に合ったのなら何よりかな……ところで、フランさんはどう? 僕の作ったコロッケ、口に合ってるかな……?」
「売り物レベルで美味しいわ。流石、お姉さまと咲夜が褒めるだけあるね」
「そっか……えへへ、良かった。2人も、僕の料理を食べて喜んでくれたから嬉しい」
ちなみに、文さんも僕が作ったコロッケを2つ食べているけど、勿論本人自身でフランさんから許可を得た上での行動だ。いつものノリで多めに作ったことが、意図せず功を奏した形となる。
曰く、運ばれてきたコロッケを見て匂いも嗅いだために、食欲が刺激されたかららしいけど、そうまで思ってくれていたなんて何と言う幸せだろうか。
フランさんや文さんも、サニーたちや大切な友達と同じように、僕が作った料理を食べて笑顔になってくれている。
勿論、ちゃんと美味しく食べてもらいたいとの思いを込めた上で、失敗することも一切なく、なおかつ苦手な味の料理でなければとの条件を満たせばだけど。
「ふふーん、そうでしょ? でも、うちのメノはもっと沢山の料理を作れる子なのよ。コロッケの1つや2つくらいで満足するには早いわ、2人とも!」
「自分のことみたいに自慢気ね、サニー。言われなくても、お姉さまたちから何回も聞かされたから分かってる」
「でしょうねぇ。しかし、ここまでのレベルとなると……普通に商売できますよ。間違いなく」
「えっと……する気は、その、僕にはないよ……?」
「私としても、メノがやる気でないなら認められない。諦めて」
「勿論、心得てます。例え話ですよ」
ちなみに、僕のことを2人に褒められたサニーはニコニコで、スターとルナも相当嬉しかったのか、その表情は自慢気だ。仕草だってとっても可愛らしく、見ていてほのぼのする。
(スター……)
ただ、スターが会話の流れで「ほら、私よりも料理上手って言ったでしょ?」とフランさんに言った時は、それは絶対に違うと喉から出かけてしまう。
僕が作れる料理は大体作れるし、言わずもがな凄く美味しい。お菓子系に至っては、僕よりも早く美味しく作ることができるのだ。
初めてスターの作ったクッキーを食べた時、例えどれだけ練習しようともあれと同じものを作れるようにはならなそうだと、今でも思っている。
「スターの料理とかお菓子の方が断然美味しいよ……? 僕にとっては世界一、誰も絶対に超えられないくらいに」
「食い気味にどうしたの、メノ? でもまあ、嬉しいこと言ってくれてありがとうねー。ちなみに、私が作るやつで何が1番好き?」
「クッキー。
「私も同じ……て言うか、ちょっと目が潤んでるねー」
「メノにとっては唯一無二の食べ物だから、当たり前の反応」
「スターのクッキーは絶品だものね! あの時に食べればそりゃそうだわ!」
しかし、僕が料理を丹精込めて作り上げることにより、食べてくれた友達や人がこうして喜んでくれる。サニーたちだって、例え自分で食べなくたって、ニコニコしながら喜んでくれるのだ。
そう言う意味では、誰の料理より美味しいとか美味しくないとかなんて要素は、大して重要ではないのかもしれない。
ある人にとってはもう食べたくないと考える程に不味くても、またある人にとっては世界一美味しいものだと言う可能性もある訳だ。
誰か1人、家族でも友達でも良いから美味しいと言って喜んでくれる人が居れば、その価値を失うことはないのだから。今世の僕のように。
「何かしら、トラウマのようなものを抱えてるとは聞いていましたが、これは少々根深そうですね」
「根深いなんてものではないわ、文。あのお姉さまが「私がその場に立ち会ってたら、そいつを殺してた」って、顔をしかめてたくらいだもの」
「ほう……えっ、それって私に話しては駄目なやつなのでは? 並大抵の過去じゃないですって」
「ううん。文さん、別にもう大丈夫、だよ。何ならこの場で全部話してあげても――」
「文。それに関しては、聞いてる私たちの方が参るレベルの話になるから、知りたければレミリアにでも聞いてねー」
「いや、本当にどんな話なんです……? まあ、分かりました。そうしましょう」
「あっ……ごめん、サニー。怒ってる……?」
「大丈夫よ、メノ。怒ってはいないわ!」
後、クッキーのことを頭に浮かべるだけで泣きかけていた僕の様子を、横目で見ていた文さんが凄く気にしているみたいだったけど、まあ当然だろう。
サニーたちとの会話内容から読み取れる情報だけでも、明らかに普通ではないと分かるのだし。
500年もの長い時を生きてきたレミリアやフランさん、内容は違えど辛く苦しい目に合ってきたノーゼやスフェ、この4人を以てしても僕の過去は相当キツい部類に入るみたいだったけど……やはり、家族の力は偉大である。
勿論、僕に対してでも優しく、いつも仲良くしてくれる友達の力もかなり大きい。こうして繋がった縁を一生大切にしていかなければ、必ずどこかで罰が当たるだろう。
「ごちそうさま、メノウ。美味しかったわ」
「いやぁ、良いものを食べさせて頂きました。取材を終えて帰った後の、記事の執筆が捗りそうですよ」
「お粗末さま。食べたくなったらまた声掛けてね。ここは紅魔館だし、僕はあくまでも他人だから、毎回は無理だって思ってて」
そして、ある程度皆で楽しく話したりした後は綺麗に食べ終えた食器を回収し、調理場までノーゼと持っていった後は、椅子を揃えてからそのまま大食堂を後にしていく。
僕がサニーたちと遊んでいる流れで立ち寄った話をしたからか、料理担当のメイド妖精さんたちが「片付けならやっとくよー!」と言ってくれたからだ。
フランさんに頼まれたからとは言え、コロッケを作るだけ作って後片付けをしないで立ち去るのは、少し申し訳ない。でも、せっかくの好意を無下にするのもあれだから、お言葉に甘えることにしている。
一介のメイド妖精さんがここまで優しいのも、レミリアが力の強い怖いはずの妖怪さんでありながら、穏やかで優しい振る舞いを見せているからだろう。
多分、元々の性格も優しくて思いやりのある感じだろうし、尚更そうだと断言できる。
言わずもがな、どれだけ優しい人妖でも限界は存在するのだから、その優しさに浸かり過ぎたりしないように気を遣わなければ。
なお、さっきまで一緒に居た文さんは「他の方への取材がありますので、これにて失礼します」とだけ言い残し、僕たちとは別れている。
(……大丈夫なのかな?)
そう言えば、僕の過去をレミリアから聞くつもりみたいだったけど、聞いたままを新聞に載せたりするつもりなのだろうか。
まあ、どう考えても面白いとか興味を引く類いの話ではないし、何なら見た人に嫌な思いをさせる話だろうから、載せたりはしないはず。文さんの新聞は、サニーたちの目に入りかねないくらいには身近なのだし。
ちなみに、僕個人としては話してある過去が公開されたとて、全く怖くはない。それによって、誰かから気味悪がられようとも構わない。
何故ならば、もう既に僕の大好きな家族や大切な友達には、快く全てを受け入れてもらっているのだから。
だからこそ、仮に家族や友達にどんな秘密があろうとも、決して拒絶せず全てを受け入れようと、至極当たり前のことを改めて固く誓う。
「メノ。私たち大分長く遊んでるけど、体力とか気力は大丈夫?」
「うん、大丈夫。まだ僕は遊べるよ、ルナ」
そして同時に、どうか家族や友達と楽しくワイワイ過ごす、こんな幸せな一時がずっと続きますように。心の中で、そう強く僕は願った。
光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して
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作者にお任せ