光の四妖精   作:松雨

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今話は少し長めです


妖精生活の門出

 本気の料理を作る。3人の中で1番早く起きていたスターにそう宣言した僕は、キッチンの調理器具と電化製品擬き、保管されている食材の使用許可をスターにもらい、和食作りに取りかかっていた。

 

 大根や人参や白菜などをメインの具に使ったさっぱりめの味噌汁、圧力鍋を使って炊くふっくら玄米、もらったは良いもののどう使おうか迷っていたらしい、豚肉の生姜焼きの3種類が内訳である。

 

「作るのは和食なのねー。メノの得意分野なの?」

「うん。僕も好きだったし、()()()()()()……ごめん、今のは忘れて」

「分かったわ。それにしても、今のあなたは凄く楽しそう。手際も凄く良いし、これは期待できそうね!」

「……ありがと」

 

 僕が料理を作る様子が気になったのか、キッチンに来たスターに見られながらではあるものの、気分は物凄く良い。

 

 勿論、緊張していない訳ではないけど、それ自体は決して過剰ではなく、また嫌な部類に入るそれでもなかった。

 

 まあ、スターは出会ったばかりの僕を昔から居た仲間のように扱ってくれる、心優しい3人の内の1人なのだ。

 

 そうするべき時であればまだしも、理由もなく怒鳴るなどの理不尽を振り撒いてくるはずなどない。純粋な笑顔で僕を見る彼女を見れば、自ずと理解できる。

 

「よし、ひとまずご飯の方はこうしておいてっと……スター。お味噌汁の具材の大きさとかに、何か注文ある?」

「特にないわ。サニーとルナも、余程極端じゃなければ多分大丈夫だから、メノの匙加減で良いと思う」

「分かった。じゃあ、ちょっと薄めにするね」

 

 綺麗な水でしっかりと玄米を洗い、圧力鍋に入れて水を加えたら時計を見て今の時間をメモ、その間に並行して味噌汁に使う野菜を切り、味噌汁用の鍋に投入して火をつける。

 

 豚の生姜焼きに関しても同様に、衛生面はより気を使いつつもしっかりと下準備をしていく。

 

(うん。多少違和感はあるけど、しっかり記憶通りに動くね)

 

 魂にまで染み付いた料理の腕前……前世で、多くの時間を料理に費やしてきた事実を自分で例えただけで、本当にそんなことがあるなんて考えもしなかった。

 

 ただ、現に僕の身体や周りを取り巻く環境を含め、色々と大幅に変化した状態であっても、今のところは料理作りに支障はない。

 良くも悪くも、記憶が全て残っていることが大きく作用してくれているのだろう。

 

「ところでさ、スター。この家、玄米が沢山あったけど、3人ともご飯は玄米派なの?」

「そう言う訳じゃないわ。おととい、人里に行った時にもらったのが偶々玄米だったってだけで、お米ならどっちでも好きね」

「そっか。じゃあ、たまに僕が1人で勝手に炊いたりしても大丈夫かな……? 後片付けは、ちゃんとするから」

「ええ、それくらいなら勿論良いわ!」

 

 しかし、信頼できる3人の内の1人(スター)と話をしながら、3人のために料理を作ると言うのは、()()()()()()()()()()()。決して嘘でも誇張でもなく、本当にそう思っている。

 

 何せ、冗談抜きでサニーたちの家に招かれるまで、()()()嬉しさや幸せを感じた記憶もなければ、楽しかった経験もあまりなかったのだ。

 

 その割に、辛く嫌なこと(理不尽)は結構な確率で襲ってきてたから、何も起きない平穏な一時が過ごせれば御の字と、普通の他人から見れば酷い状況に置かれていたともなれば、至極当然と言えるのではなかろうか。

 

「おはよー。にしても、良い匂いはしてたけど、まさかメノが料理してたとは思わなかったわ。と言うか、スター並……いや、それ以上に手際良くない?」

「私もビックリしたわ。ほぼ完成した味噌汁も、並行して作ってる『豚の生姜焼き』も、絶対に美味しくなるわこれ」

「両方とも和食……もしかしてメノ、人里に居たことがある?」

「私も一瞬そう思ったけど、もし本当なら姿を見たことがないどころか、噂の1つや2つすらないのはおかしい。だから、多分違うと思うわ」

「なるほど。まあともかく、今はメノの料理が完成するのを待とう。玄米の方は、ちょっと時間かかりそうだけど」

 

 そんなこんなで鍋への味噌入れや味見も済ませ、豚の生姜焼きも並行してフライパンで焼き始めたタイミング、寝ぼけ眼で起きてきたサニーとルナもこの輪に加わると、ただでさえ高揚していた気分が更に高揚してきた。

 

 料理を完成させ食べてもらう段階には未だ至らずとも、僕が作る料理と言うものに対し、2人も期待してくれているとすぐに理解できたからである。

 

(結構大変……だけど、前世より圧倒的に身体は軽い!)

 

 今の僕の内心は例えるなら、噴き出す寸前の感情の噴水と言ったところだろう。

 

 無論、幸せ・嬉しさ・楽しさを筆頭とした良い感情の方であり、世間一般的に言う悪い方の感情ではないけど。

 

 そもそも、3人のように優しさの権化とも表せる妖精さんに対し、悪い方の感情を抱く余地なんてあるのだろうか。いや、断じてない。

 

「うん、おかずは良い感じ……ごめん、3人とも。ふっくら玄米は相当時間かかるけど、先に食べとく?」

「そうね、メノさえ良いならそうさせてもらうわ!」

「私もサニーと同じ。時間も結構かかるみたいだし、お米は後でも良い」

「全員分のおかずを入れられる数、あのバスケットないからねー。今度、魔理沙と香霖にあと3つ分依頼しておこうかな?」

「……お金、すっからかんになるよ。絶対に」

 

 大変な作業を()()()()()()()そつなくこなし、おかず2品を先に完成させた後、用意していたお皿やお椀によそって3人の待つテーブルに持っていく。

 

 本来であれば、ふっくら玄米と一緒に食べてもらうのが1番良かったのだけど、如何せんおかず2品と同時進行かつ時間のかかるやり方を取ってしまったせいで、一緒に出来立てを食べることが不可能となってしまった。

 

 加えて、どうせなら出来立てが食べたい3人の要望もあり、先に出した訳なのだ。気づいた時は一瞬ヒヤッとして苦しかったけど、僕の料理を提供する相手が相手なのですぐに落ち着いている。

 

「ん~! この味噌汁、とっても美味しい! 濃すぎず、かといって薄すぎず、具の方もちょうど良い感じね!」

「豚の生姜焼きの方だって、味もそうだけど口当たりが抜群に良い。お店やれるよ、これ」

「ちょっと多めに作ってくれたみたいだし、玄米炊けたら次は一緒に食べようかな。おかずは冷めちゃうけど、まあ温めるから良いわ」

 

 そして、一生懸命作ったおかず2品を口に入れた3人の反応は、思わず大きな声で「よしっ!」と言いたくなる程に嬉しいものであった。

 

 外で輝く太陽のような、満面の笑みを浮かべて言葉をかけてくれたサニー。

 

 夜空に浮かぶ月のように、比較的落ち着いた笑みと言葉を口に出してくれたルナ。

 

 2人のように直接的な言葉には出さずとも、満天の星空のように静か(綺麗)で、かつ褒めてくれているとしっかりと伝わる態度を取ってくれたスター。

 

 普通の人でも嬉しい気分になるであろうこの反応は、僕にとっては心が嬉しさで爆発したかのようだと言って良い。

 

「メノ、とっても美味しかった。また今度、気分が向いたら作って欲しい」

「うん……うん! 勿論だよ!」

 

 故に、ルナからのお願いを二つ返事で了承する以外の選択肢が、僕にはなかった。喜ぶ3人の様子を見れるだけでも、釣り合いは十分すぎる程に取れるのだから。

 

 当然、その際はふっくら炊きたて玄米と一緒に作りたてを食べてもらうため、おかずを用意するよりも先に玄米の準備から始めておこうと、決意を固めるのも忘れない。

 

「さてと、まだたっぷり時間もあることだし……メノ! いきなりで悪いんだけど、私からのお願いを聞いて欲しいわ」

 

 全員がよそったおかずを完食し、一旦この場はお開きかなと思い始めた頃、急に真剣な面持ちとなったサニーから声をかけられる。

 何か僕にお願いがあるらしいけど、一体なんと言われるのだろう。

 

 まあ、サニーのことだからとんでもないお願いではないだろうし、不安などは全くない。

 

「分かった。それで、僕に一体どんなお願い事をしたいの?」

「単刀直入に言うわ。私たち光の三妖精もとい、光の四妖精の一員になって欲しいの」

 

 なんて思いながら待っていると、サニーから光の三妖精もとい『光の四妖精』と呼ばれるグループの一員になって欲しいと言うお願いをされた。

 

 共通点のある自身の名前や能力、高頻度で一緒に外出している点、色々なイタズラを各所に仕掛け続けていたらいつの間にかつけられていた、3人をまとめて表した言葉らしい。

 

 なお、光の四妖精とはその名の通り、今後一緒に暮らすこととなる僕を勝手に一員として計算に入れ、数字を増やして自分たち独自に改名したバージョンとのこと。

 

 きっと、イタズラをすればほぼ確実に怒られる。時と場合によっては、容赦のないお仕置きを受けることにもなりかねない。

 

 しかし、一員になったからと言ってそれを含め、お願いすることはあっても強制される訳ではない。サニー曰く、単に家族のような関係性になるだけみたいだ。

 

「家族……僕が、こんな暖かい家の一員に……? 来てから時間が経ってるならまだしも、ここに来てから1日すら経ってない、他人同然の僕を認めてくれるの……?」

「当たり前よ! そうでなきゃ、こんなお願いなんてわざわざしないわ! まあ、確かに普通じゃないかもだけどね!」

「うんうん、その通り。メノなら良い……いや、メノ()()()良い」

「勿論、断る選択肢もメノにはあるし、断った結果扱いが変わるなんてこともないから安心して」

 

 どうして、3人は僕にそこまでしてくれるのだろう。3人にとって、僕と一緒に居ることが相当な得にでもなると感じたのだろうか。

 

 いや、あの様子を見るに僕の考える『裏』がある感じでは全くない。ある程度の勘違いが作用しているにせよ、僕への純粋な親切心に加えて一緒に暮らすことに対し、楽しさを実感しているだけに見える。

 

(あっ、もう無理限界……)

 

 それに、僕だって理想の家族像そのものな3人と、出来たら家族のような関係性を築きたいと思っていたところに、サニーからのお願いである。もう、あれこれ考える余裕なんてなかった。

 

「ぐすっ……こんなの、こんなお願いの仕方はずるいよ……僕に断るなんて、できる訳ないじゃんかぁ……」

「あはは、ごめんね」

「ううん、これからよろしくね。サニー、ルナ、スター……!」

 

 当然、サニーからのお願いは二つ返事で了承、今を以て僕は光の四妖精を構成する一員として、幻想郷に暮らしていくことが決まった。

 

 と同時に幸せと嬉しさが限界突破、噴水みたいに猛烈な勢いで噴き出してくる感情を抑えることができず、自分でもやかましいと思うくらいに大泣きしてしまう。

 

 もう一生かかろうと、この恩を返せる気がしなくなってきたけど、今だけはそれを考えないで、ただひたすらにこの夢見心地な時間を噛み締めておこう。

 

「うえっ、玄米べちゃべちゃ大失敗……3人とも、ごめん」

「別に構わないわ! メノがこうなるって分かった上で、あのタイミングでお願いをしたんだし!」

「まあねー。でなきゃ、もう少し時間を置いてたわ」

「また今度で良いよ。ふっくら玄米、期待してる」

 

 ちなみに、案の定落ち着くまでに相当な時間がかかったこと、落ち着いた後も3人と家族同然の関係性になったことに浮かれすぎていたお陰か、玄米炊きは散々な結果で終わることとなってしまった。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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