光の四妖精   作:松雨

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始まりの場所(後編)

 妖精たちの理想郷(フェアリーズユートピア)。古代遺跡のことをそう呼んでいた翡翠の妖精さんとの簡単なやり取りの後、僕たちは最深部……妖精大庭園(フェアリーガーデン)の案内を受けていた。

 

 広大な規模を誇る湖に小さめの森や草原、それなりの広さを誇る丘、楽しそうに飛び回ったり走り回ったりする妖精さんたちに、理想郷固有のものも含めた、多種多様な動植物や昆虫。

 

 噴水や整備された花壇、湖の中央にある小島からそびえ立つ、僕やサニーたちが家として使っている大木よりも一回りどころか、二回りも大きい大木。

 

 外と同じように昼夜のサイクルがある上、必要に応じて天候や気温の変化も起こせるような、原理不明の古代魔法の存在。こんなのがあると聞けば、大体の人は凄いと思うのではなかろうか。

 

(作ったのは妖精さんじゃないみたいだけど、管理してるだけでも凄いなぁ)

 

 この場所を、翡翠の妖精さんは大庭園と称しているけれど、どう考えても庭園の規模ではない。

 前述の要素を鑑みればもはや小さな妖精の町、幻想郷風に言えば、妖精の里と言っても差し支えないと僕は思うのだ。

 

 サニーたちだって「大庭園ってなんだっけ」と、レミリアも「もう里とか町って言って良いわね、これ」と、唖然としていたから尚更である。

 

「ありがとうございます、メノウ様。あなたのお陰で理想郷が朽ち果てずに済み、それどころかたった数ヵ月で全盛期に近いところまで回帰できました」

「えっ。僕、妖精さんに様呼ばわりされる程のことなんか、してないよ……?」

「いえ。この理想郷の中で生まれてくれたことそのものが、十分値しますのでお気になさらず。しかし、幻想郷……本当に素晴らしいところですね。メノウ様の傷ついたその心が、完全に幸せに満ち溢れる日も、遠くないでしょう」

「うん、そうだね。ここに居る皆、ここには居ないけど僕に親切にしてくれる友達に出会えたから、幻想郷は大好き」

 

 それのみならず、元々はこの大庭園(最深部)にすら妖精さんが殆んど居なくて、住んでいる動植物たちも元気がなかったこの理想郷を僕が知らず知らずの内に、極短期間で復活へと導いていたと言うのだから驚きだ。

 

 簡単に表せば、僕の心の状態が理想郷全体の活気に大きく影響していたからとのこと。

 

 こうなった原因に関しては、いくらこっそり調べても理解不能だったらしいけど、翡翠の妖精さんの守護する理想郷にとって、間違いなく得であると断言できる。

 

 翡翠の妖精さん自身もそう考えているのか、もう原因を調べるのは時間の無駄だと止めているらしいけど、まあ当然の流れではある。

 

「サニーちゃん、とっても嬉しそう」

「そりゃそうよ! うちの家族が褒められて、嬉しくない訳ないわ!」

「確かに。まあ、この件がなくたってメノちゃんは凄いもんね」

「飛行速度に家事能力、視力と聴力、優しくて思いやりのある性格……挙げようと思えばまだまだ行けるよー」

「皆してもうっ……でも、ありがと」

 

 ちなみに、僕の隣でこのやり取りを見ていたサニーは、僕が褒められているのが余程嬉しかったようで、ご満悦な様子を見せている。

 スターとルナも、サニーに負けず劣らずニコニコしてくれていた。

 

 他の皆も、僕の話題で盛り上がってくれてるから、分不相応に褒められると言うのも、あながち悪いことばかりではないのかもしれない。

 

 勿論、だからと言って僕は凄い妖精なんだぞと威張り、天狗になるつもりは微塵もないけど。

 

「さてと……すみません、皆様。少々お待ち頂けますか?」

「良いよー。でも、何しに行くの?」

「実は、メノウ様へ重要な物を渡さなければならないのです。勿論、危険な物ではありませんのでご心配なく。妖精たちにとっての危険物は、徹底的に排除しておりますので」

 

 皆が防寒着を脱ぐくらいに暖かい春のポカポカ陽気の中、階段を歩きで上り、少し高い丘の上に立っていた神殿の入り口の前にたどり着くと、翡翠の妖精さんが1人で中へと入っていった。

 

 僕への贈り物があるとのことだけど、いかにもな風格を出す神殿の中にある物……相当凄い効果を持っているのは、考えなくても分かることだろう。

 

 何せ、この妖精たちの理想郷と内部にあるもののほぼ全ては、元々が幻想郷で生まれたものではなければ、僕の前世で居た外の世界(地球(日本))でもない。

 

 いわゆる『異世界』で作られたものだと、案内を受けている道中の話で翡翠の妖精さん自身が、そう言っていたのだから。

 

 そうなると、恐らく理想郷がまるごと幻想入りしたのとあまり差がないタイミングに、僕がその内部で妖精として転生。

 更に、さほど時間も経たない内にたまたまサニーたちが探検に訪れ、僕を発見して今に至る。

 

 何か1つでもズレていたりすれば、この幸せを受け取れなかった。これを奇跡と言わずして、何が奇跡なのだろうか。

 

「皆様、お待たせしました……メノウ様、これを受け取ってください」

「これ、水晶でできたハンドベル……だよね」

「はい。しかし、使われているのはただの水晶ではありません。発する力も希少性も二段階は上の、大水晶を使用して私が作り上げた一品です」

 

 サニーたちとはしゃいだり、来客が珍しいのか寄ってきた妖精さんたちや小鳥たちと戯れていると、翡翠の妖精さんが1つのハンドベルを持って中からでてきた。

 

 柄部分の中心がほんの少し膨れていて、今まで見た水晶とほぼ見た目は一緒ながら、発せられる不思議な力の強さが倍以上もある、翡翠の妖精さんが『大水晶』と呼んでいるもので構成されている。

 

 触った感じはとても硬く、並大抵の衝撃ではビクともしないくらいには丈夫そうだ。当たり前だけど、それを試すためにわざと叩きつけたりとかはしないし、するつもりはない。

 

「妖精さんが作ったなんて凄いね。何か特殊な効果でもあるの?」

魔力(妖力)を込め、行きたいと思いながら鳴らせば、いつ何処に居てもここに来れます。逆に、ここに居る時に帰りたいと思いながら鳴らせば、直前まで居た場所に戻れます。現状、メノウ様を含む理想郷生まれの妖精以外が私を介さずこの場所へ来るための、唯一の手段となりますね」

「そうなんだね。えっと、皆を連れていくにはどうするの?」

「メノウ様自身がここへ連れていく意思を強く持ちながら、魔力を込めて鳴らせば大丈夫です。その際、効果範囲である半径10m以内に皆様を集めてください」

 

 そして、どうやらこのハンドベルはいつでも好きな時に、僕がこの大庭園へ訪れるための手段として使う想定で渡したらしい。

 

 魔力を込めなければ効果を発揮しないようで、これで仮にうっかり鳴らしたとしても大丈夫だし、やろうと思えば鳴らして遊ぶこともできそうだ。

 

(うん、良かったよかった)

 

 それに懸念点であった、僕の意思次第で皆をこの場所に連れてきて、一緒に遊ぶことも問題なくできる。

 

 万が一盗まれた時の対策もされていて、今日帰る時にこれを使えば僕の魔力が記憶され、僕以外は誰も使えなくなる。

 

 更に、いつでも手元に呼び寄せることが可能らしく、うっかり落とすなどして紛失した際の対策もバッチリらしいので、ホッとひと安心だ。

 

 霊夢に魔理沙にあうん、紅魔館の他の皆、霖さん……一緒に遊んでて幸せな気分になれる大切な友達には、是非ともここの景色や賑やかさを味わって欲しい。きっと楽しいだろうから。

 

(あっ……でも、フランさんとパチュリーさんはあんまり外出好きじゃないし、誘っても駄目かなぁ)

 

 勿論、皆の気持ちが最優先事項なことに変わりはない。お願いするだけならまだしも、無理やりなんて以ての外だ。

 

 嫌なのに連れてこられたって、面白いとか楽しいどころか不快でイライラするだけだろうし、それが続けば友達で居てくれなくなる。考えるだけでも恐ろしい事態に陥るのだから。

 

「メノ、良い物をもらえて良かったな! いつでも遊びに来れるなんて便利だし、ここならクラピもラルバも寒さを気にしないで済む!」

「そうそう! 防寒対策ガチガチで遊ぶのも良いけど、やっぱりあたいは暖かい方が得意だし、好きだもん!」

「同感。寒いと元気もなくなっちゃうしさ……メノ。冬の間だけでも良いから、私と外で遊ぶ時はここにしてくれると嬉しいな!」

「勿論だよ、ラルバ」

 

 そして、冬でもピースやラルバが寒さを気にせず、元気に遊べる自然豊かな最高の遊び場所を見つけることができたからか、チルノとサニー……と言うか、皆がとても喜んでいる。

 

 まあ、2人程ではなくてもチルノ以外は暖かい方が好きだし、この反応を見せるのも当たり前ではあるか。

 

 加えて、理想郷の守護者たる翡翠の妖精さんも、そんな僕たちの様子を見てかなり嬉しそうだ。

 

 自分も同じ種族なだけあって、妖精が楽しそうにする様子を見るのが好きなのだろう。

 

 まあ、そうでなければここの守護者なんて、大層な役割を請け負ったりはしないか。当たり前のことを考えてしまった。

 

「ちょっと失礼するわ。もうそろそろ帰った方が良い時間なのだけど……皆はどうする?」

 

 そんなこんなでやり取りを続けていた刹那、咲夜の懐中時計とそっくりな時計を見ていたレミリアが、こんなことを言い始めたので見せてもらうと、時計の針は午後8時を指していた。

 

 確か、紅魔館を出発した時は正午ちょっと過ぎだったから、移動時間も含めれば、いつの間にか8時間弱も夢中で遊んでいたことになる。

 

「うわっ、もうこんな時間!? まだ明るいから気づかなかったわ!」

「あー……大変申し訳ありません。ここの昼夜のサイクルは今は亡き理想郷の製作者の意向で、明るい時が長くなっていたんですよ。幻想郷仕様に調整はしたはずなんですが、できていませんでしたね」

「なるほどー。まあ、そればかりはしょうがないかー」

 

 個人的は気分が高揚しているからか、まだ遊べそうな気もするけど、一緒に付いてきてくれてるレミリアの都合もあるし、何より他の皆がどう思っているかが分からない。

 

 だから、もう少し遊んでいたいとは決して言わず、皆の意見に任せることを僕は決め、黙って待ち続ける。

 

「取り敢えず、今日は帰ろ! また明日でも明後日でも、行こうと思えば行けるんだし!」

「確かにそう。で、メノはどうしたい?」

「皆に任せるよ、ルナ。時間的にはたっぷり遊んだし、僕的には満足してる」

「分かった……じゃあ、今日はこれで終わりってことにしよう」

「「「うん、賛成!」」」

 

 その結果、全員の意見が今日は帰ると言うことで一致したため、翡翠の妖精さんに今日はこれで帰る旨を伝えた。

 

 一瞬、妖精さんの表情が寂しげなものに変わった気がするのは、案内をしながら自身もこの一時を楽しんでいて、もう少し長く居たかったからだろうか。

 

 もしくは、僕にここも()()()()()()()()()言って欲しかったのかもしれない。何となくだけど、こっちである可能性が高そうだ。

 

()()()()()()、妖精さん」

「メノウ様――」

 

 だから、魔力を込めたハンドベルを振った後の刹那、僕は妖精さんに向けてそう声をかける。

 

 最後まで言葉を聞くことはできなかったけど、多分僕の行動は正解だったと思って良いはず。

 

 正解でなかったのなら、あんなに嬉しそうな表情を見せる訳がないのだから。

 

「さて、帰りましょうか!」

「ひぃぃ……やっぱり防寒着着てても寒いや!」

「チルノが羨ましいなー。1人だけ夏の格好でも平気なんだもん」

「まあ、これも紅魔館に着くまでの辛抱だよー。ラルバ、ピース」

 

 そんなことを考えながら、僕は皆と紅魔館への帰路へとつくのだった。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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